停止世界
蓮斗「闇系統中位魔法・黒天」
宵ノ森「...!!」
私が魔法を発動させた瞬間宵ノ森さんは距離をとった。あの様子ではこの魔法が引き起こす事象を知っているのだろう。
蓮斗「でももう遅いです。」
その瞬間宵ノ森さんは急速に私の方に引き寄せられた。私はその瞬間を見逃さず、すぐさま攻撃を放つ。しかし、私の体は一瞬硬直した。
宵ノ森「遅い!!」
宵ノ森さんはそう言いながら私に向け蹴りを放つ。
蓮斗「ぐっ.....!!」
宵ノ森「蓮斗君、君が得意なのは魔法と近接戦を合わせた戦法だ。だが、今の君はその力を十分に制御できていない。故に体がグラつく。だから、まずはその状態に慣れろ。話はそこからだ。」
そう言い宵ノ森さんは再びスタートを切った。相手は万全、しかしこちらは慣れない力で動きがガタガタ。傷を負うのは私だけだった。
蓮斗「(せっかく、少しは扱えたのに、このままじゃ、意識が...!!)」
そう思った瞬間後方で新島さんが叫んだ。
新島「蓮斗くん!!魔力を体に流して!!そうすれば、動きは軽くなる!!!」
蓮斗「新島さん...ありがとうございます!」
蓮斗「地脈接続....!」
私が魔法を発動させている最中も宵ノ森さんの猛攻は続く。しかし、体に大量の魔力を流したことによって、先程までの体のガタつきも多少改善された。
蓮斗「これなら、行きます!」
宵ノ森「あの人、目がいいな。はは、良いバディーを持ったな!蓮斗君!」
そう笑い声をあげながら宵ノ森さんも駆け出した。私と宵ノ森さんは近接戦に移行した。
宵ノ森「いいぞ蓮斗君!先程までのガタつきも消えて、動きがより洗練された!ここからが本番だ!」
蓮斗「はいっ!」
互いに殴る蹴る、躱すのやり取り。体が熱くなり、目と鼻から出血が始まる。
蓮斗「脳がスピードに追い付けなくなって来たのか...!?でも、あと少しで...!」
宵ノ森「傷んだ傍から治癒していけ!でなければ君が倒れるだけだ!!」
蓮斗「分かってます!!」
蓮斗「治癒系統下位魔法・再生」
蓮斗「(これで怪我した傍から治していく。脳が焼き切れる前に治し続けろ!)」
宵ノ森「さぁ!次のステージに進もうか!」
宵ノ森さんは僕と近接戦を継続しながらそう叫んだ。それとほぼ同時に後ろへ飛び退き、魔法を発動させた。
宵ノ森「空間系統最上位魔法・停止世界」
そう簡略詠唱の声が聞こえた瞬間、全てが停止した。何かは分からない。しかし、そうだと言える確信があった。
蓮斗「これは一体...何が起きたんだ?」
私が状況を上手く呑み込めずにいると宵ノ森さんが話し始めた。
宵ノ森「今私が発動させたのは空間系統魔法の最上位の1つ、〝停止世界〟だ。」
蓮斗「停止世界...?」
私は聞き慣れない名前に驚きそう口にした。すると宵ノ森さんは停止世界の効果を話し始めた。
宵ノ森「停止世界って言うのは、文字通り全てが停止した世界だ。私がこの魔法を使っている間は、空気も、光も、生物すらも止まる。私が指定した存在以外はな。」
蓮斗「そんな魔法が...」
宵ノ森「この魔法は通常の魔法とは異なり、世界そのものを塗り替える。故に、概念すら停止する。」
そう言いと宵ノ森さんは地面に落ちている小石を拾えと私に指示を出した。私はそれに従い小石を拾おうとしたが、小石はビクともせず一切動かすことは出来なかった。
蓮斗「これは...これも停止世界の影響なんですか?」
宵ノ森「あぁ。停止した世界は一切の変化が失われる。そのため、物理的な影響や魔法による攻撃も全てが無意味になる。」
蓮斗「そうなんですね。ん...?そう言えば空気も停止するって事は私呼吸出来ない筈じゃ?」
私がふと思った事を宵ノ森さんに質問する。すると
宵ノ森「それは君が持ってる特殊異能〝万象の拒絶〟によって私の停止世界が打ち消され続けているからだ。だが君が移動すれば、今まで君がいた場所の空気は停止し、君が移動している場所だけは時間が経つんだ。」
蓮斗「なるほど、そういう理由があったんですね。」
宵ノ森「まぁ一部の連中はその特殊異能を持って無くても好き勝手動き回るんだけどね。」
そう宵ノ森さんは恨めしそうに言った。
蓮斗「それで、次のステージって言ってましたけど、具体的には何をするんですか?」
宵ノ森「簡単だ。この空間を破ってもらう。」
蓮斗「空間を、破る...?」
宵ノ森「えぇ。君のその〝万象の拒絶〟を使って、この空間を消してみなさい。でも、さっき通り私は全力で君の妨害をするけどね」
そう言いながら宵ノ森さんは楽しそうに笑った。それを見た私は苦笑いをすることしか出来なかった。
蓮斗「これはまた、無理難題ですね。」
宵ノ森「出来ないって言って逃げ出す?」
蓮斗「そんな事しませんよ。根源魔法も不完全とはいえ宵ノ森さんのお陰で使えるようになりました。だから貴女の課す課題は全てクリアしてみせます。」
宵ノ森「うん、その意気だね。あと龍灯って呼んでって言ったじゃん。」
蓮斗「あ、すみません。」
そう言い私と宵ノ森さんは再び戦闘を始めた。




