スパスタ
宵ノ森「じゃあ蓮斗君、今君が出せる本気で、かかっておいで。」
訓練をするため移動していると前を歩く宵ノ森さんがそう言った。
蓮斗「今私が出せる本気ですか...」
宵ノ森「ん?どうしたん?」
新島「それがですね、今の蓮斗くんの本気って私も蓮斗くん自身も分からないんですよ。」
宵ノ森「と言うと?」
新島「前回蓮斗くんが使ったのは闇根源魔法の不完全な状態だったんですよ。それでは出力が足りなくて、無理をして完全体に近しい力を使ったんです。それが原因なのか、今蓮斗くんはまともに根源魔法を使えないんです。」
宵ノ森「ふむ、なるほど...」
そう言い宵ノ森さんは足を止め私の方を見た。数秒間何も言わず、ただ私を見ていた。すると
宵ノ森「それって、黒王戦鬼と目的が一致してないからじゃない?」
新島「目的が、」
蓮斗「一致していない?」
唐突に言われた言葉に私と新島さんは宵ノ森さんの言葉をオウム返ししてしまった。そんな様子を見て宵ノ森さんは再び歩き始めながら話し始めた。
宵ノ森「前回、根源魔法を使った時は確か、邪神との戦闘で致命傷を負った時だよね?その時蓮斗君は何を考えていた?」
蓮斗「そうですね、また皆に会いたい、自分でした決意に嘘をつけない、とかですかね。」
宵ノ森「そうそれ。君はおそらく、普段は無意識下で黒王戦鬼を抑えてるんだよ。でも、そんな事を考えてる余裕が無い時、君自身の恐怖を凌駕する意志を持った時、初めて根源魔法を扱えるんだと私は考えている。」
新島「なるほど、」
蓮斗「確かに、それなら有り得る話ですね。でも、どうやったら上手く扱えるんでしょうか...」
私がその事を考えていると宵ノ森さんが口を開く。
宵ノ森「簡単さ。その力を怖がるんじゃなくて、誰かを守るために使うって考えれば良い。難しく考えたらダメ。少しは頭を柔らかくして、柔軟に考えよう。」
蓮斗「分かりました。」
私は宵ノ森さんのその言葉に少し考えさせられた。
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私達は目的の場所に着いた。周囲を見渡すとチラホラと人影が見えた。
蓮斗「誰かいるんですか?」
宵ノ森「あぁ。うちに所属する子達だね。単なる野次馬さ。」
新島「今から戦闘訓練をするって言うのに、危なくないですか?」
新島さんがそう質問すると宵ノ森さんは笑いながら答えた。
宵ノ森「大丈夫さ。私が構築した結界で守ってるから、まず外には影響は無いよ。あと、新島さんも外に出てた方がいいよ。」
新島「分かりました。蓮斗くん、頑張って!」
蓮斗「はい。」
そう言い新島さんは結界の外に出た。結果以内には私と宵ノ森さんの2人だけ。私は上着を脱ぎ、訓練の準備をしていると宵ノ森さんが話しかけてきた。
宵ノ森「君には2つの課題を課す。1つ目は、不完全でも良いから根源魔法を物にすること、2つ目は、私に一撃を入れることだ。」
蓮斗「分かりました。よろしくお願いします。」
宵ノ森「じゃあ訓練、開始だ。」
その言葉を聞いた瞬間、私の視界は反転していた。
蓮斗「え...」
遅れた思考が追いついたと思った瞬間私の背中に強烈な衝撃が走った。気付くと私は床に背をつけ倒れていた。
蓮斗「(な、にをされた!?攻撃された?見えなかった!宵ノ森さんはどこに...!)」
そんな事を考えていると不意に私のいる場所が暗くなった。上を見ると巨大な氷塊が落ちてきていた。
蓮斗「嘘でしょ!!!」
蓮斗「火系統上位魔法・炎乱滅火」
私はすぐに体勢を整え魔法で迎撃に移った。しかし何故か宵ノ森さんの姿が見えない。
蓮斗「(どこに行ったんだ...?魔法か.....!?)」
突如得体の知れない悪寒に襲われ私は即座に防御魔法を展開した。しかし防御魔法は簡単に破られ私は結界まで殴り飛ばされていた。
蓮斗「痛った....防御無視の魔法か...?」
宵ノ森「そんなんじゃないよ。今のはただの打撃。ただ君の防御性能じゃ、私の打撃に耐えられない。それだけの事だよ。」
そう言いながら宵ノ森さんは姿を現した。しかし、私だって今までとてつもない強者と接してきた。だからわかる。
蓮斗「今まで姿が見えなかったのは、自身の周りの空気中の水分を凍らせて、光を反射して自身の姿を隠していた、そうでしょう?」
宵ノ森「お、一目見て気づくなんて、察しがいいね。その通りだよ。」
蓮斗「これでも、多くの強者と戦った事がありますからね、少しは鍛えられてますよ。」
宵ノ森「へぇ...面白いね。あ、訓練内容、伝えてなかったね。」
蓮斗「今言うんですね。」
宵ノ森「私が行う訓練は、1週間ぶっ続けの殴り合いだ。休憩があるなんて思わない方がいい。人間誰しも、土壇場が一番成長するもんだ。」
蓮斗「スパスタですね...!」
宵ノ森「さぁ、訓練は始まったばかりだ、祇梨蓮斗!」
蓮斗「望むところです!」
こうして私は最後にして最大の訓練に挑む事になった。




