王侯貴族
オルタ「初めまして、私は深淵世界を統べる王、深淵龍様によって生み出された第一真祖、オルターウェイド。以後、お見知りおきを。」
私と天羽君はその発言に絶句した。そうしても無理もない。今私達の目の前に立っている存在はこことは別の世界、深淵世界を統治する第一から第七の真祖だからだ。普通なら会うことも、その姿を直に見ることすら絶対にない、上位存在。何故、そんな存在が目の前にいるのか私達はわからずその場に立ち尽くした。その様子を察したのかオルターウェイドが口を開いた。
オルタ「そんなに緊張しないでください。私達はただ、人の子が我々と同じ同一化の力を持っていると聞き、様子を見に来ただけですので。」
香織「な、なるほど...?」
天羽「あの、だったらなんで俺も呼ばれたのでしょうか?俺は香織と違って同一化の力は持っていませんよ?」
天羽君がそう疑問を呈した。するとオルターウェイドの隣に座っていた男性が喋り出した。
???「それは簡単なことだ、天羽綾人。改変の特殊異能を俺が持っているからだ。」
そう声が聞こえた瞬間喋っていたはずの男性が私たち二人の眼前に突如として現れた。私は咄嗟の事で反応出来なかった。しかし天羽君は反応していた。
天羽「風系統中位魔法・鎌鼬」
魔法を発動し、相手に攻撃しようとした。しかし、天羽君の放った魔法は空を切り、魔法自体が消えた。それを見て動揺したのか一瞬天羽君の動きが止まる。その瞬間その男性が天羽君の顔めがけて上段蹴りを放った。しかしそれは天羽君の顔の既で止まった。一連の流れを目で追うのがやっとだった私が困惑していると男性が笑い出した。
???「ハハハ!急接近した瞬間、なんの躊躇もなく中位魔法を発動するなんて、君面白いな!」
天羽「え、え...?」
天羽君は今の状況を上手く呑み込めていないのか、困惑した顔でその場に立ちつくしていた。するとその男性が自己紹介を始めた。
マッド「初めましてだ少年。俺の名前はマッドフェイド。一応、深淵世界の第二真祖だ、よろしく。」
天羽「よ、よろしくお願いします...ん?今俺、深淵世界の貴族に攻撃しましたよね...?これってマズいんじゃ...」
天羽君はそう言いながら凄い勢いで校長先生と理事長を見た。2人の顔はとても慌てているような何かを悟った様な顔をしていて、それを見た天羽君は顔面蒼白になり、すぐさまその場で土下座をした。
天羽「ほんっとうに、申し訳ありません!!!」
それを見ていた真祖たちは一瞬ポカンとしていたが直ぐに笑い始めた。
オルタ「気にしなくていいよ。今のはどう見てもマッドが悪いから。」
マッド「変な心配させちまって悪いな少年!俺達は気にしてないから、謝んなくてもいいさ!」
天羽「は、はぁ...」
そうして私と天羽君は席につき話し出した。
香織「あの、私達に会いたいって聞いたんですけど、どういったご要件で...?」
オルタ「簡単な事です。美月和香織さん、天羽綾人さん。貴方々お2人を我らが国、深淵世界に招待したいのです。」
天羽「招待、ですか?なんででしょうか...?」
マッド「理由が簡単、俺達は君たち二人を深淵世界に連れて行きたいからだ。」
香織「え...?連れて行く?」
私はマッドフェイドのその言葉にとてつもない寒気を感じた。私が不安がっているのを察したのか天羽君が口を開く。
天羽「俺達を連れて行くって、それは強制って事ですか?もしそうなら、俺達が黙って着いて行くとでも?」
そう天羽君が発言した瞬間その場に重苦しい空気が流れた。天羽君が真祖達と睨み合う。私はこの場の圧だけで動けない。ふと天羽君の方を見ると冷や汗を流していた。
香織「(天羽君も、怖いんだ...)」
私がそう思った時、静寂を破るように誰かが手を叩いた。音の方向を見ると第一真祖のオルターウェイドがマッドフェイドの頭を小突いていた。
オルタ「もー、子供を困らせちゃダメでしょー!?マッドはただでさえ顔が怖いんだから、気をつけてよね?」
マッド「顔が怖いは言わなくていい。それと、誤解を与えてしまった事は謝罪する。そして訂正させてくれ。俺が言った連れて行くという発言は、その力を上手く扱えるように、俺達で鍛えてあげようと思ったからだ。」
天羽&香織「???」
マッド「君たち二人の力はこの世界でもごく稀にしか生まれない。だから、その力を扱うのに長けた俺たちにお達しが来たって訳。」
香織「お達し...?」
オルタ「えぇ。国防軍の荒山総司令官から直々に頼まれたのよ。だからこうして、ここに来たの。」
天羽「な、なるほど。でも俺たち学校が...」
マッド「その悩みは考えなくていい。深淵世界の時間の流れはこの世界とは少し違う。だから、学校が終わった後、こっちに来ればいい。」
香織「それならいいのかな?どう思う、天羽君。」
天羽「そうだね、香織さんの力は正直、真祖達に指導してもらった方が上手く扱えるようになると思うよ。俺も最近鍛錬が行き詰まってる所だったから、この申し出は結構嬉しい。」
香織「そっか、じゃぁ....」
2人「よろしくお願いします。」
オルタ「うん、よろしくね、2人とも。」
マッド「あ、深淵世界に行く方法なんだけど、これに魔力を込めると扉が形成されるから、安心して」
そう言いマッドフェイドは私達二人にネックレスとピアスを渡した。
香織「これってなんか合い言葉とかってあるんですか?ひらけごま的な...」
マッド「いや特にないな。本当に魔力を込めるだけ。」
天羽「へー、便利なものもあるんですね。」
オルタ「じゃあ、訓練の日程はどうする?」
天羽「そうですね、香織さん予定とかってなんか入ってます?」
香織「特にないかな。だから今日からでも行けます!」
オルタ「そうなんだ、じゃあ今日からにしようか!楽しみだな〜!」
マッド「姫さん楽しそうだな、ヴェルフ。」
ヴェルフ「あぁ、新しい事に触れられて嬉しいんでしょうね。あ、マッド、さっき姫様を困らせた事、後から説教だからな。」
マッド「へーへー。」
理事長「じゃあ2人は戻りなさい。」
2人「はーい!/分かりました。」
校長室を出た私たちはどっと疲れた。今日から、どんなことが起こるのか分からないが、
香織「これで強くなれるね、天羽君。」
天羽「そうだな。」
少し楽しみな自分がいるのも事実だった。




