授業
滝壺「今日は魔法の訓練は休みにしようかな。」
滝壺さんは社に来て一言目にそう言った。私と新島さんは突然の発言にどう反応すればいいのか分からず2人してその場で固まってしまった。
蓮斗「た、滝壺さん?どうして今日は休みなんですか?どこか具合でも悪いんですか?」
私は混乱する頭で滝壺さんにそう質問した。すると滝壺さんは数瞬置いてから大きく笑った。
滝壺「いたいや、俺は全然元気だよ。ただ今日は魔法について勉強してもらうだけさ。」
新島「勉強?」
滝壺「そう。魔法の階級や相性、種類なんかを覚えてもらうよ。」
蓮斗「なるほど、分かりました。じゃあ、今から準備しますね。」
滝壺「分かったー。30分後位に始めるから待っててね。あ、新島さんはどうする?」
新島「そうですね....私も受けてみたいです。」
滝壺「了解。じゃあ2人とも準備よろしく。」
2人「はい。」
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30分が経ち部屋に滝壺さんの他に月柳さんが一緒に来ていた。月柳さんも授業の手伝いなのかと思っていると滝壺さんが喋りだした。
滝壺「えー、では魔法に関する授業を始めたいと思います。皆さん準備はできましたk、アダッ」
滝壺さんが話し出した途端月柳さんが滝壺さんの頭を思いっきりひっぱたいた。その音はまるで銃の発砲音のような破裂音。私と新島さんは驚きのあまりその場で固まっていると叩かれた衝撃で吹っ飛ばされていた滝壺さんが壁から這い出してきた。
月柳「間宮よ、おぬし、何をふざけたことをしておる。なんじゃその喋り方と格好は。」
月柳さんがそう言いたい気持ちは分かる。現在の滝壺さんの格好と言うと先程まで着ていなかった黒のワイシャツに白衣を纏った風貌。喋り方は学校の教師のようだった。
滝壺「月柳は分かってないね。こういうのはまず形から入らないと。2人もそう思うでしょ?」
そういきなり私たち二人にキラーパスが飛んできた。なにか言おうとすると滝壺さんは再びひっぱたかれていた。
月柳「2人を困らせるんじゃないよ。2人とも済まないねぇ。こやつには妾からキツく言っておく。」
2人「ハ、ハハ。」
私たち二人は苦笑いすることしかが出来なかった。
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滝壺さんはあの後部屋の外で正座させられた状態で10分ほど説教されていた。部屋に戻ってくるとどことなくしょぼくれている様にも見えた。
滝壺「えー、気を取り直してまずは魔法の種類から説明しようか。魔法には大きく分けて4種類の分類が存在しているんだ。蓮斗君、分かる?」
蓮斗「4種類ですか?そうですね、すみません分かりません。」
私がこう言うと月柳さんが付け加えるように説明を始めた。
月柳「間宮、お主は聞き方をもう少し考えたらどうじゃ。妾から分かりやすく説明しよう。まずこの四種類には自身、他者、増減、攻撃の大きく分けて4つがあるんじゃ。例えば強化系統魔法の身体強化。これは自身の力を増強させるという括りで一つ、自己完結型。2つ目に他者に環境的不利を押し付ける他者妨害型。3つ目は他者に攻撃するもので他者排除型。そして4つめが味方を支援する他者援護型の4つに分けられる。と言ってもこの4つに当てはまらんものも多くある。ここはしっかり覚えておけ。」
蓮斗「分かりました。」
滝壺「ありがとう月柳。じゃあここからは俺がするよ。」
月柳「ふざけるなよ?」
滝壺「はい。」
新島「(完全に手網を握られている。)」
滝壺「まず攻撃魔法はそのほとんどが3つ目の他者排除型に含まれる。しかし攻撃魔法の中にも相手を直接狙わずに環境そのものに干渉する物があるから気をつけて。例えるなら土系統上位魔法の奈落沼がいい例だね。これは相手を攻撃する魔法だけど相手には当たらず大地に巨大な沼を形成するんだ。これは排除型の中でも限りなく妨害型に近い魔法だね。」
新島「なるほど、そう言う分け方もあるんですね。国防軍の講習で使うのもアリかも。」
蓮斗「滝壺さん、四つ目の他者援護型と言うのは具体的にどう言った魔法を指すんでしょうか?」
滝壺「他者援護型は主に回復魔法や大型結界なんかを指す括りだね。他に質問は?」
月柳「特に無さそうじゃな。では次に行くぞ。次は魔法の階級についてじゃ。童、お主の知る魔法の階級を言ってみい。」
蓮斗「分かりました。下位、中位、上位、最上位、根源のです。」
月柳「ふむ、概ね正解じゃ。」
蓮斗「え、概ね正解って、なにか抜けてるんですか?」
滝壺「そうだね、1つ抜けてるね。」
滝壺さんはそう言いながら魔法を使いながら説明を始めた。
滝壺「まずこの1番小さい炎が下位魔法。そして次に小さいのが中位魔法。そしてこの3つの中で最も大きいのが上位魔法。ここまでは分かるかな?」
新島「はい。魔法は階級が上がるにつれ消費魔力が上がる一方、その分威力も上がります。この3つの場合だと上位魔法が1番魔力消費が激しく、その分威力も高い、という訳です。」
月柳「うむ、満点の回答じゃ。ではここに四つ目の炎を出すとしよう。間宮。」
滝壺「了解。」
そう言うと滝壺さんはいきなり先程の3つより遥かに大きい炎を出した。
蓮斗「ちょ、危ないですって!」
月柳「心配せずとも良い。燃えはせん。」
滝壺「この炎はいわゆる最上位魔法と言われるものを表しているんだ。この炎を見たら分かるように最上位魔法は上位魔法よりも桁違いに魔力を消費する。だがその恩恵は凄まじく、一撃放つだけでも上位魔法の数十倍から数百倍の威力になるんだ。」
蓮斗「最低値が数十倍って、伸び幅が凄いですね。ちょっと感覚がおかしくなりそうです。」
新島「アハハ、頑張って蓮斗くん。」
滝壺「最上位魔法は攻撃する他にも環境にすら干渉する排除妨害型でもあるんだ。蛇炎を例に出すとまず蛇炎はその巨大なからだでの突進攻撃が強力なんだけど、それ以上に厄介なのが蛇炎が這いまわった地面が蛇炎の熱によって融解してまともに立ってられなくなるという点だ。」
蓮斗「地面が融解するほどの熱が突進して来るって考えると余計に厄介な魔法ですね。」
滝壺「とまあ、このように最上位魔法は2つの型の複合型なのがデフォルトだから、対処が難しいと言うことだ。じゃあ次が根源魔法だね。」
そう言うと滝壺さんは先程まであった4つの炎を消してしまった。私はてっきり5つ目の炎を出すと思っていたのだがそうではないらしい。
滝壺「根源魔法って言うのは簡単に言ってしまえば人が神に近づく事だね。」
新島「人が...?」
蓮斗「神に近づく...?」
滝壺「そう、根源魔法とは厳密に言えば人間が誰しもが持つ根源をその属性の神に近づけ制限を無くすというのが本質なんだ。そして根源魔法の利点は魔力が切れても発動は止まらず自分の意思で発動と解除を選択できるという事、使用中はどの階級の魔法でも大幅に魔力消費を抑えて魔法を放つことが出来るということ。これが根源魔法の利点だね。」
蓮斗「そんな利点があったんですね、知りませんでした。でも、それならなぜ使用者がここまで少ないんですか?やはり難しいからでしょうか?」
滝壺「理由は簡単。根源魔法ともなれば使用者に多大な負荷がかかるんだ。それに順応出来れば普通に生活できるけど、順応できなければその時点で死ぬ。いわば、諸刃の剣というやつだ。」
新島「今国防軍には各属性の根源魔法を扱う人は6名在籍してるんだ。根源魔法は本当に少数の人物しか扱えないからこんなに多く集まってるのはとっても珍しいんだよ。」
そう新島さんは得意げに言った。
蓮斗「その6名って誰なんですか?やっぱり、荒山総司令官もその1人なんですか?」
新島「残念ながら総司令官は根源魔法を使えません。国防軍でも屈指の実力を持ってる総司令官でも扱えないので、それほど希少なんだよ。」
そう言いながら新島さんは苦笑いをした。それはさておき新島さんが話し出した。
新島「竹内団長が「土系統」、星見団長が「風系統」、天内団長が「氷系統」、西野団長が「火系統」、清水団長が「水系統」、小鳥遊副団長が「雷系統」だね。」
説明された全ての人物は国防軍の団長と副団長を務めるほどの優秀な人達だった。私は錚々たる面々に驚きつつも納得していた。
蓮斗「なるほど、納得のいく人選ですね。私も、小鳥遊副団長にはボッコボコにされましたから、嫌という程その実力は分かってます。」
私はそういい前回の手合わせを思い出しながら苦笑いをした。
蓮斗「私もいつか、根源魔法に至りたいな...」
私がそんな風に呟くと月柳さんが口を開く。
月柳「童よ、お主も、根源魔法は使えるぞ。」
蓮斗「え?」
唐突に告げられた言葉に私は上手く反応出来なかった。今彼女は私が根源魔法を扱えると言った。
蓮斗「え、ちょ、本当にですか!?」
私が食い気味にそう聞くと滝壺さんと月柳さんは首を縦に振った。
蓮斗「それって、どの属性か分かったりするんでしょうか!?」
月柳「あぁ、分かるぞ。知りたいか?」
蓮斗「是非、聞かせてください!」
私はそう言うながら月柳さんにひれ伏していた。
月柳「いいじゃろう、お主が使える根源魔法は、闇じゃ。黒王戦鬼が闇系統の根源魔法の姿じゃ。」
蓮斗「えっ......」
私は再び固まった。今月柳さんの口から私が扱える根源魔法が黒王戦鬼と言われたからだ。
蓮斗「そ、それって、間違いないんですか...?」
月柳「あぁ、間違いない。」
蓮斗「う、嘘だ....」
私はその場で両手を床につけ項垂れた。とてもだが、受け入れ難い言葉だったため、少々絶望した。
滝壺「あの、次進んでいい?」
蓮斗「はい、、、進んでください。」
新島「蓮斗くん、あんまり落ち込まないで。」
そう言いながら新島さんは私の背中をさすってくれた。
滝壺「じゃあ最後の階級は極大魔法だ。」
2人「極大魔法?」
滝壺「あぁ、極大魔法っていうのは大きく分けて2つの条件をクリアしている者にのみ許された最上位魔法のその先の魔法だ。その条件を2人に答えてもらおう。じゃあ1つ目を新島さんに答えてもらおう。」
新島「はい、えーっと、根源魔法が使える人物である事でしょうか...?」
滝壺「正解だ。極大魔法って言うのは厳密に言えば根源魔法に至った存在が使える奥義みたいなものだ。その威力は最上位魔法とは比較にならないほど絶大。簡単に言ってしまえば極大魔法1発で国一つが容易に消えるくらいのものだね。」
蓮斗「国が1つ...!?とんでもないですね。」
滝壺「じゃあ2つ目の条件を蓮斗君に答えてもらおうかな。」
蓮斗「分かりました。それじゃあ、保有魔力が多い事ですかね?」
滝壺「ぶっぶー。不正解だ。正解は複数の属性を全て同レベルで扱える技量でした。」
新島「複数の属性を全て同レベルで扱える技量、ですか?それってどういう事何ですか?」
滝壺「平たく言えば、複数の属性で根源魔法に至るって事だね。」
新島「複数の根源魔法を扱えなければ極大魔法は使えないって事ですか?」
滝壺「そういう事だね。」
私は今の説明を聞いて唖然とした。正直言って、難易度が高いなんてものじゃない。正直言ってその条件をクリアできる者はこの世界に存在するかも怪しいと思った。
蓮斗「えっと、極大魔法を扱う存在って今何人いるんですか?正直今の説明で該当者がいるとは思えないんですけど....」
滝壺「該当者は3名いるよ。」
蓮斗・新島「3名!?」
私はその言葉に耳を疑った。ただでさえ1つの根源魔法に至るのにも類稀な才能が必要なのにも関わらずそれを複数必要必要とする時点で不可能と思っていた。しかし、その条件を満たす存在が現在3名居るという言葉に私は驚愕せざるを得なかった。
蓮斗「それって、誰なんですか!?」
滝壺「それはみんな知ってると思うよ。」
新島「みんな、ですか?」
滝壺「あぁ。極大魔法を扱える3名はこう呼ばれてるんだ。冠位指定執行官ってね。」
蓮斗「冠位指定執行官...!確かに、冠位であれば、可能ですね...」
滝壺「この3名は1人で複数の極大魔法を所有していて、そのどれもが必殺かつ必中。まず発動されれば人はおろか、国は壊滅するだろうね。」
新島「冠位なら国1つを消し飛ばしても、納得がいくね、蓮斗くん。」
蓮斗「そうですね...」
私と新島さんは少し疲弊していた。正直言って冠位がどれだけ化け物なのかこのタイミングで思い知るとは思ってもいなかった。しかし私は疑問がひとつあったので滝壺さんに質問をする。
蓮斗「なぜ極大魔法は、複数属性を高い水準で扱えなければならないんですか?」
滝壺「それはね、極大魔法が複数の属性を掛け合わせた複合魔法だからだよ。」
新島「なるほど、だから複数属性が必要なんですね。」
月柳「さて、今日の授業はここまでじゃ。数刻後、訓練を再開するがゆえ、準備を怠るな。」
蓮斗・新島「はい!」
こうして、唐突に始まった魔法の授業は幕を閉じたのだった。




