もう1つの課題と質問
昼食が終わり私は社の外で涼んでいた。何故だか分からないが先程目が覚めてから新島さんの動きがぎこちないものになっており私はそれがどうしても引っかかる。
蓮斗「(それにしてもさっき目が覚めた時、なんか、違和感があったんだよな...いつか体験した様な気がするんだが、いつだったか.....。)」
そんな風に1人で物思いにふけっていると背後から誰かが歩いてくる音がした。私がそちらに目を向けるとそこにはこの神社の主、月柳さんが立っていた。何か用かと思ったら月柳さんが喋りかけてきた。
月柳「なあ童よ。お主は黒王戦鬼の事を、どこまで知っておるのじゃ?」
聞こえた内容はそれだった。どうしていきなりとも思ったが、1週間お世話になるのだ。それくらい話してもいいだろう。
蓮斗「正直言いますとほとんど知りません。でも前回私が黒王戦鬼になった後、荒山総司令官が話してくれました。黒王戦鬼が迫害された青年で家族を殺されたことによって生まれた悲しい存在って事を。正直、私は少しだけ黒王戦鬼に同情しています。」
私がそう言うと月柳さんは私の隣に座りながらこう言った。
月柳「確かに、生前の境遇を聞いてしまえば同情してしまうのも分かる。だが、ソレはもうその青年じゃないんじゃ。ただ憎しみと怒りが1つの魂となり、長い時間を彷徨う亡霊じゃ。同情し過ぎれば心を食われて戻れなくなる。」
そう彼女は真剣な表情で言った。彼女の言う通りだ。最早今の黒王戦鬼は自我を持たない狂気そのもの。彼女の言葉を受け私はこれ以上黒王戦鬼には同情しないと決めた。
月柳「ところで童よ。お主は今日からここで修行を積むことになるがそれとは別で妾からも1つ課題を出そう。」
蓮斗「課題、ですか?」
私はいきなり言われたその台詞に戸惑った。私はてっきり滝壺さんとの訓練だけだと思っていたため不意にでた課題という言葉に意識を向けた。
月柳「その課題とはここ妖人街に住む7柱の神の試練を受けてもらう。無論そこには妾も含まれるがゆえ、気を抜くでないぞ?」
蓮斗「分かりました。それで、試練というのは一体どういったないようなのでしょうか?」
私は了承こそしたものの、その試練の内容を知らない。そこを質問すると月柳さんは驚くべきことを言い放った。
月柳「簡単じゃ。お主には7柱全てと戦い一撃を入れて貰う。それが出来れば神はお主を認め因子を譲渡するじゃろう。」
蓮斗「因子、紙が持ってると言われる世界に五種類しかない因子の事ですね。」
私がそう言うと彼女は正解と言わんばかりに笑った。
月柳「ここ妖人街には妾の他に、麻姫、黎明、黄昏、刹那、花園が居る。その者達は固有の権能を有しており一筋縄では倒せん。その代わり全員に一撃入れることが出来れば生命、死、再生、破壊の4つの因子を取得できる。」
蓮斗「4種類も、今の私には、断る理由がないですね。分かりました、その試練を受けます。」
月柳「そうかそうか。ではその様に他の神立ちに伝達しておく。」
そう言いながら月柳さんは何処かえと姿を消した。
蓮斗「(学園都市に続いてここでも髪の因子が得られるとは、幸運だな.....!)」
そう言いながらその場に寝っ転がると上から誰かが覗き込んでいた。滝壺さんだった。
滝壺「ごはん、美味しかった?」
蓮斗「はい、とても優しい味でとても美味しかったです。」
私がそう言うと滝壺さんは笑顔になった。
滝壺「そうか、口に合って何よりだ。それはそれとして、蓮斗くんは今楽しいかい?」
日常会話をしているといきなり空気が変わった。滝壺さんはこちらにこそ目を向けていないがその表情は真剣そのもの。この目を私は知っている。これは大人が子供を心配する時に見せる目だ。のらりくらりとした態度をとってはいるがこの人も立派な大人なのだと私は思った。
蓮斗「...どうしてそんな質問をするか聞いても、良いですかね?」
私がそう切り返すと彼は少し寂しそうな目をしながら話し出した。
滝壺「境遇は違えど、俺は君みたいな子供を沢山見てきた。夢を追う者、それを応援する者。俺は昔そんな環境にいた。でも、俺は選択を誤った。俺の行動があの子たちの夢を殺した。今の君の姿を見ているとかつての教え子の姿に重なるんだ。」
そう静かだが、悲しい目で彼は言った。その時私は理解した。ここに来た時月柳さんが言っていた言葉の意味を。
蓮斗「そう、ですね。今は夢なんて語ってる暇、私にはありません。でも、夢を諦めた訳ではありません。たとえ挫折しても、どんなに歯痒くても、その日その日を精一杯頑張って、楽しんで生きています。それが私の答えです。」
私がそう言うと滝壺さんは少し驚いた表情を見せたがすぐに通常の表情に戻った。
滝壺「まさか、自分よりも圧倒的に年下の少年に気を使われるとは思わなかったよ。でも、いい答えだ。」
そう言いながら彼は私の背中をぽんっと叩いた。
滝壺「さてと、君の考えを聞かせて貰ったし、訓練を始めようか!厳しく行くから覚悟しろよ!」
先程よりもほんの少しだけ明るい笑顔を見せながら彼はそう言った。
蓮斗「望むところです!」
そういい私達は社を後にした。




