妖達が住まう場所
学園都市を離れ私と新島さんは日本の北部、関西に来ていた。
蓮斗「関東の次は関西ですか、移動距離が凄いですね...」
新島「まぁ、行く場所は総司令官が決めたからね。移動距離はもう考えないようにしよ。」
そういい新島さんは少し疲れた顔で言った。
蓮斗「そうですね...そういえば次行く所ってどんな場所なんですか?私は行く場所聞いてないんで。」
そう私が新島さんに問い掛けると彼女はスマホを操作し目的地について説明を始めた。
新島「次向かうのはここ関西にあると言われている妖達が住む街、妖人街です。そこには様々な妖達が住んでいて人間社会とは別の発展の仕方をしてるらしいです。」
蓮斗「妖人街ですか、何度か聞いたことはありますが、詳しい内容は知らないですね。今回は妖に訓練をしてもらうんですか?」
新島「いいえ、今回もその妖人街に住む人間に訓練をしてもらいます。総司令官からもそう指示されています。」
蓮斗「なるほど、それはそうと妖人街ってどんな場所なんですか?名前の通り妖だけかと思いましたが、人も住んでるんですか?」
新島「えぇ。妖と比べると数は減りますが10数人は住んでいたはずだよ。」
そう説明されながら歩いていると寂れたトンネルが見えてきた。草木が生い茂り人通りが無いのだとひと目でわかる廃トンネルがそこにはあった。私が進むのを躊躇していると新島さんがスタスタとそのトンネルに向かって歩いていく。
蓮斗「新島さん、そのトンネル通るんですか?危なくないですか?」
そう私が質問すると新島さんが説明を始めた。
新島「蓮斗くんはこの世界に複数の世界があるのは知ってる?」
蓮斗「一応は知っています。」
新島「その別の世界には本来干渉はできないんだけどこんな感じであっちとこっちを行き来するための通り道があるんだ。それがこのトンネル。妖人街にはこのトンネルを通ることで行けるんだよ。」
蓮斗「なるほど、分かりました。」
そういい私は新島さんの後ろを歩きトンネルに入った。トンネルの中はとても暗く前を見ても光が一切見えない。本当に大丈夫なのかと思い始めた頃目の前に一筋の光が見えた。
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明るい光に照らされ見えたそこは人間社会とは異なった世界だった。様々な妖達が街を行き来し、多くの出店があった。
蓮斗「すごい...まるで物語に出てくるみたいな現在と過去が合わさったみたいな光景だ...!」
私は内心とても興奮していた。様々な妖達が人と変わらずに生活し、街を発展させている。見渡す限りに美しい景色、自然と一体となった街づくり。私はどこか懐かしさの様なものを感じていた。そうやって街並みを見ていると複数の妖達がこちらに向かってきているのが見えた。
???「お久しぶりです、新島さん。そちらが先日連絡を頂いた少年ですね?」
新島「お久しぶりです、月柳さん。はい、こちらが先日連絡を入れた少年、祇梨蓮斗くんです。」
蓮斗「初めまして、祇梨蓮斗と申します。今日から1週間宜しくお願いします。」
月柳「はい、宜しくお願いします。」
そういい月柳と呼ばれた女性は小さく微笑んだ。しかし私はこの人に以前新城さんから感じた同種の圧力を感じた。
蓮斗「質問をひとつよろしいでしょうか?」
月柳「ええ、もちろん。」
蓮斗「貴女、神、なんですか...?」
私の質問にその場に居た全ての存在が驚いた。月柳さんは一切表情を変えずに変わらず微笑んでいるだけ。正直すごく怖い。すると
月柳「あなたの見立て通り私はこの妖人街、ひいてはここ幽世を守護する7柱が一柱、狐神です。」
月柳「霊基解放」
そう言うと月柳さんは姿を変えた。先程までは和服姿の女性という印象だったが今は狐の耳と尾を生やした姿になった。その変化に呆気にとられていると月柳さんが話し始めた。
月柳「なるほど、荒山の小僧がいきなり連絡してきたと思えば、これは随分と禍々しい存在じゃな。その力を制御する為に各地の有力な存在に知恵を貸して貰う。違うか?新島よ。」
新島「はい。その通りです。」
そう新島さんは返事をした。月柳さんが私の方を見る。その目はとても鋭く私の全てを見透かしている。そんな印象を受けた。
月柳「童。お主は自身の中に何がおるのか分かっとるのか?」
蓮斗「はい。黒王戦鬼、ですよね...?」
月柳「半分正解じゃ。」
月柳さんは半分正解と言った。私と新島さんはその言葉の意味がわからず顔を似合わせる。
月柳「童、黒王戦鬼、あと1つ、その魂はなんだ?」
蓮斗「...?」
私は質問された言葉の意味が分からなかった。黒王戦鬼の怨念が魂としてカウントされているなら2つのはず。しかし今あの女が言った言葉は私の魂と黒王戦鬼の他にもう1つあると言うこと。私が言葉に詰まっていると新島さんが口を開いた。
新島「月柳さん、ひとまず移動しませんか?立ったまま話すのもアレですし。」
そう言うと新島さんは私の方へ振り向き大丈夫?と小声で話しかけた。
蓮斗「(はい、少し混乱してただけです。)」
そう返すと月柳さんが
月柳「それもそうじゃな。それでは妾の社へ来い。広いが故、2人増えたところで問題無い。」
そう言われた私たちは月柳さんの社へ向かう事になった。
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月柳「着いたぞ。ここが妾の社、稲荷豊穣神社じゃ。ここでは気を抜いてゆっくりするといい。」
蓮斗「凄く、綺麗な場所ですね。」
階段を上り鳥居をくぐるとそこにはとても立派で美しい社があった。
蓮斗「ここから見るだけでも細部にまでこだわって作ったのが分かりますね。」
月柳「そうじゃろう、そうじゃろう。ここは街の者達が丹精込めて作ったいわばこの街の象徴の1つじゃ。もっと褒めても良いのじゃぞ?」
そう言うと月柳さんは無邪気な笑顔を見せた。周りを見渡していると私はあることに気づいた。
蓮斗「あれ、ここ他の場所よりかも魔力が強い?」
私がそう言うと新島さんがしゃがみながら口を開いた。
新島「早速特訓の成果が出てるね蓮斗くん。ここは月柳さんの領域で〝神域〟とも呼ばれているの。そしてその特徴は外界と比べて魔力濃度が高くて回復力が高まったり時間の流れが異なったりするの。」
蓮斗「やっぱりそうか、だから少し減ってた魔力が回復してたのか。」
そう思っていると新島さんが何かを撫でているのに気がついた。私はそれが気になり新島さんの近くに歩いていきそれを見た。
蓮斗「尻尾が3つある子狐...?」
そこには尻尾が3本ある子狐が新島さんに撫でられながら寝っ転がっていた。私が動揺していると月柳さんが話し始めた。
月柳「そやつは妾の眷属の子じゃよ。時折こうして姿を見せるのじゃが、初対面の者がいる場合殆ど姿を現さんのだが、やはりお主、邪悪なだけでは無いらしいな、童よ。」
蓮斗「は、はぁ...」
私は子狐から離れ月柳さんに質問をする。
蓮斗「月柳さん、私はここでの特訓では人間が担当するって聞いてるんですけど、その人ってどんな人なんですか?」
月柳「それの話もせんといかんかったな、お主の指南役はここ妖人街一と言われるほど魔法に長けた男じゃ。名を滝壺間宮という。」
蓮斗「滝壺間宮、その人ってどういう人物なんですか?」
月柳「そうさな、よく言えば紳士、悪く言えばスケコマシじゃな。」
蓮斗「(今スケコマシって言いましたね。)」
新島「(今スケコマシって言ったね。)」
月柳「ここ妖人街一と言われるほど戦闘に長けた存在にも関わらず、求婚されても何度もその申し出を断り続ける阿呆よ。そのくせ誰彼構わず助けるもんだから恋敵が増えるのなんの。」
蓮斗「(これって、)」
新島「(そういう事、だよね?)」
私達が顔を見合せ小声で話しているそばで月柳さんは永遠と文句を言っていた。
蓮斗「えーっと、そういう事ではなくどういう魔法を使うかって言う質問なんですけどぉ....」
私が恐る恐る聞くと月柳さんは少し顔を赤くして話し始めた。
月柳「間宮はここ妖人街に住まう人間の1人でずば抜けた魔法の扱いと大鎌による近接戦を得意とするいわば、魔法戦士、のようなものじゃ。扱う系統は火系統。確か、現在ある火系統の魔法は全て使えるんじゃなかったか。」
蓮斗「え、火系統魔法を全て?それって根源魔法や最上位魔法も含まれてるんですか...?」
月柳「当然じゃ。あやつの戦闘力は並の神では手も足も出せん。それに妾も間宮に負けたうちの一人じゃ。」
新島「そんなに強いお方なんですね。知りませんでした。もしかして、他の6柱も...」
月柳「無論、間宮に負かされておる。それも全員一度にじゃ。正直悔しいのじゃ。」
蓮斗「え、それヤバくないですか?」
新島「ヤバいね。総司令官でも月柳さんクラスの神は同時に相手できて二柱までだし、それ考えると異常な強さと言わざるをえないね。」
そう話していると私の頭にひとつの考えが浮かんだ。
蓮斗「(楽海さんと滝壺さんって、どっちが強いんだろう。楽海さんもあの殺神を一方的に消滅させてたし、近しい力なのかな...)」
そんなことを考えていると神社に上がるための階段を誰かが登ってきているのに気づいた。
新島「誰か来るね…」
蓮斗「えぇ。それも、とてつもなく魔力が強い人が。もしかして....」
階段の方を見ていると1人の男性が現れた。
???「やぁ月柳。その少年が俺が稽古をつける子かな?」
男性はそういいこちらに目線を向けた。
月柳「そうじゃよ、間宮。お主が1週間、気の済むまで稽古をつけてやれ。」
蓮斗「(やっぱり....!)」
新島「(この人が!)」
滝壺「初めまして。俺の名前は滝壺間宮。気軽に滝壺って呼んでくれ。」




