神との邂逅
学園都市エーゼルファリアを訪れて3日が経った。その3日とも魔力操作を訓練し続けている。日課のランニングに勤しんでいると制服姿の戸塚さんとばったり会った。
戸塚「き、今日も精が、出ますね、祇梨さん。」
蓮斗「戸塚さん、おはようございます。今は登校中ですか?」
戸塚「はい、今日も午後から、伺いますので、訓練、頑張ってください。」
蓮斗「はい。戸塚さんも気をつけて登校してくださいね。」
戸塚「へへ、分かりました。」
話が終わると戸塚さんは学校へ向かった。
蓮斗「私も早くランニング終わらせて、訓練を始めよう。」
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蓮斗「魔力接続・地脈...」
この3日間である程度コツが掴めてきた気がする。今日はこの状態を何分保てるだろうなどと考えていると楽海さんがやってきた。
楽海「今日も頑張ってるね祇梨君。初日と比べるとだいぶ様になってきてるね。」
蓮斗「有難うございます。でも、まだまだです。」
楽海「謙遜しなくなっていい。君には、才能がある。現にその魔力接続、使えるようになるまで常人だと1年はかかる。」
蓮斗「そんなにかかるんですか!?」
楽海「あれ、戸塚さんは、その辺教えてくれなかったの?」
蓮斗「はい、そんなにかかるとは聞いていなかったですね。」
楽海「あー、確かに彼女も天才だからなー。」
蓮斗「やっぱりそうなんですか?」
楽海「その口振りだと、彼女が天才って気づいてたの?」
蓮斗「薄々とは。彼女、他の人と比べると保有魔力が多いですし、それでいて魔力の使い方がとても綺麗だったので。」
楽海「祇梨君見る目あるね。彼女はこの学園都市の中でも1、2位を争うほど魔力の使い方がうまいんだ。魔力消費を抑えたり空気中の魔力何かも操作して魔法が使える。正しく天才だよ。」
楽海「私、そんな凄い人に訓練見てもらってたんですね。」
そんな話をしているとふと気になった事を楽海さんに聞いてみる事にした。
蓮斗「楽海さんって、ご家族が神職だったりします?」
そう質問すると今まで笑っていた顔がスっと無表情へ変わった。
蓮斗「(あ、もしかして、地雷踏んだ...?)」
そう思い急いで質問を撤回しようと口を開けた瞬間楽海さんが話し始めた
楽海「私には親はいないよ。君が感じたのは多分以前、私が遭遇した邪神の残滓みたいなものだよ。」
蓮斗「えっと、すみません。デリケートなこと聞いちゃって。気をつけます。」
気まづい空気がその場に流れた。しかしその空気は一人の女性によってかき消された。
???「湿っぽい空気だけど何かありました?」
楽海「新城。いや、何でもない。祇梨君。今日私がここに来たのはこいつを紹介したくてね。」
蓮斗「あの、この方は...」
新城と呼ばれたその人物の方へ目を向ける。しかしその人物を視界に入れた瞬間私は全身に悪寒が走った。私は瞬時に後ろに飛び退き戦闘態勢に入る。
蓮斗「貴女、生物ではないな...?」
楽海「マジか、こいつも一目見ただけで見抜いた。ハハッ!やっぱり祇梨君、君才能あるよ!」
私の態度とは裏腹に楽海さんは笑いながらそう言った。私の頭の中は疑問符でいっぱいになり戦闘態勢を解き話を聞くことにした。
楽海「紹介するよ。こいつの名前は新城。君の見立て通り、ただの生物ではないね。」
蓮斗「(やっぱり...!でもこの感じどこかで...)」
新城「初めまして、私は新城。この学園都市を守る神の一柱です。」
蓮斗「.......ん?え?神?」
蓮斗「(え、今この人自分の事神って言いいましたよね?え、神様?)」
私はその一言で混乱した。いきなり飛び出した情報量の多い出来事に一時的に脳が理解を拒んでいるのか、それは定かではないが頭が働かない。数分して徐々に冷静さを取り戻し、漸くちゃんと思考でき始めた。脳が先程の言葉をようやく理解し私はその場で驚愕してしまった。
蓮斗「神様!?え、どういう事ですか!?」
楽海「おお、すごい驚きぶり。はは。てっきり、いつもの調子で受け流すと思ってたけど流石にか。」
新城「主よ。あまり少年をからかってはいけませんよ。」
そう言い新城と名乗る神ははぁととため息をついた。私は驚きのあまりその場に尻もちをついていた
楽海「大丈夫?祇梨君。」
蓮斗「大丈夫ですけど、今この人楽海さんの事主って言ってませんでした?」
楽海「そうだよ〜。この新城って神は以前俺が勝負に勝ってこの学園都市を守護してもらう為に連れて来たんだよ。優秀で、こっちも助かってるよ。」
蓮斗「神様って、勝てるものなんですか?」
楽海「うーん。まぁ、冠位代行執行官とかそれより上のレベルの存在なら勝てるんじゃない?荒山厳十郎も前邪神を倒してたし。」
蓮斗「(この国ってどれだけ神様居るんだろう...ん?冠位代行執行官やその上のレベル...?楽海さんってそうだっけ?)」
新城「少年。それ以上考えるな。そこから先は何人も犯してはならん。」
蓮斗「!?」
私は驚き振り向いた。そこには顔をこちらに寄せる新城が居た。問題はそこじゃなかった。今、確実にこの神は私の思考を読んでいた。
蓮斗「あなた、人の思考が読めるんですか?」
新城「ああ、こう見えて神だ。人と比べて多くの権能を所有している。その恩恵だ。」
そう言い新城は近づけていた顔を離した。明らかな制止と態度。私は1つの結論へ至った。
楽海「本来の要件を話してもいいかな?」
蓮斗「はい、お願いします。」
楽海「君、黒王戦鬼を制御したくて、ここに来た。でいいんだよね?」
蓮斗「はい。」
楽海「そう。私も最初は制御できるように訓練を課すつもりだったけど、もう、その段階ではないらしい。」
蓮斗「そう言いますと...?」
楽海「君のその額に関係があるんだ。」
蓮斗「額...?」
楽海「触ってごらん。」
私は言われるがまま自身の額に触れた。すると右の額に触れた時違和感を感じた。何か、鋭い物が掌に当たった感触がしたからだ。
蓮斗「これは一体...」
楽海「鏡を貸してあげるから自分の目で確かめてみるといい。」
そう言って楽海さんは私に鏡を手渡した。その鏡で恐る恐る自身の顔を見るとそこには、
蓮斗「なんだこれ、角...?」
そこにはまるで暗闇の様な黒さをした角が生えていた。私は再び混乱した。その時楽海さんが話し始めた。
楽海「恐らくではあるけど、先日君が暴走した際、止めに入ったのが冠位である覇王だったからだと私は思ってる。」
蓮斗「それはどういう意味ですか?」
楽海「簡単に言ってしまえば君の中の力が強い力に反応してるんだと私は思ってる。君は先程新城を一目見ただけでただの生物じゃないと看破した。恐らくあれは君の中の力が人間とは別の存在と区別しているのではないか?と考えたんだ。案の定、神である新城を前にした途端角が生えた。えらく難儀な身体になったものだね。」
蓮斗「.......」
私はその事実に愕然としていた。今までは黒王戦鬼の力を制御できると思っていた。しかし、その力は私の意識の外で既に行使されていた。それにより、私の中で制御出来るのかという疑問が湧き出た。するとその様子を見た楽海さんがこう言った
楽海「祇梨君、まだ諦めるには早いんじゃないか?手が無いとは言っていないだろう?」
楽海さんは笑いながらそう言った。その言葉を聞き私は顔を上げた。
蓮斗「あるんですか...?何か手が、あるんですか!?」
蓮斗「ああ、ある。」
私はその言葉で希望を見いだした。すると先程から黙っていた新城さんが口を開いた。
新城「少年のその力は言ってしまえば呪いのような物だ。何故かは分からないが、その呪いは少年につくことでその力が増していると感じた。故に...」
蓮斗「故に...?」
新城「君の中に神の因子を加える。」
蓮斗「神の、因子...?」
新城さんの口から出た言葉に私は頭を傾げる。因子という今まで聞いたことの無かった単語が飛び出し、私は理解が出来なかった。そう考えていると思考を読んだのか新城さんが説明を始めた。
新城「因子というのは簡単に言ってしまえば現象を起こす際に生じる力の様なものだ。神は全員が持っている。」
蓮斗「なるほど、つまり新城さんが保有する因子は呪特化の因子という事ですか?」
新城「違う。」
蓮斗「違うんですね。」
新城「因子の種類は少なく、5種類の因子しか存在しない。私が所有しているのは再生の因子だ。再生の因子は負を跳ね除け、癒しを与える。それを少年に授ければ抑え込める可能性がある。」
楽海「説明も終わったな。さて、どうする?決定権は君にあるが。」
楽海さんがそう言った。私の中ではもう決まっていたし今の私に考えてる暇はなかった。
蓮斗「お願い、します...!」
楽海「分かった。新城、始めるぞ!」
新城「分かりました。準備します。」
そい言い2人が動き出した。すると新城さんが小声で一言呟いた。
新城「霊基解放...」
その一言呟いた途端突風が吹き荒れ、竜巻のようになり新城さんを覆い隠した。1分ほど経っただろうか。風が止み新城さんの姿が顕になった。そこにあったのは先程までの人型ではなく大きな龍のそれだった。
蓮斗「え?新城さんって、龍だったんですか...?」
恐る恐る聞くと楽海さんが口を開いた。
楽海「神や冠位といった強大な力を持った者は自身の力で周囲に影響を及ぼさないようにするために自身の力を縛るんだ。それで今使ったのは自身にかけられた縛りをとく際に使われる者だよ。つまりあれが新城の本当の姿なんだよ。」
蓮斗「な、なるほど...」
新城「驚かせたな少年。では気を取り直して、少年、手を前に。」
私は新城さんの指示に従い左手を前に出した。その瞬間その場を眩い光が包んだ。光が落ち着き目を開け左手を見ると、小指と薬指から手の甲にかけて龍の顔の様な模様が浮き上がっていた。
蓮斗「あの、これって...」
新城「それは人や生き物が神から何かを授けられた際にできる目印のような物だ。害はない為、そこまで気にしなくていい。」
楽海「祇梨君。左手も気になるだろうけど今は角の方が先だ。」
私は楽海さんのその一言で目的を思い出した。恐る恐る自身の額に触れるとそこに先程まであった角が見当たらない。角が無くなっていたのだ。楽海さんの方を向くと笑いながら
楽海「そうなるかと思ったけど、成功でね!」
そう言った。
蓮斗「や、やったー!!成功だー!!」
私は気づくと大きな声で喜んでいた。私は2人に頭を下げお礼をした。
蓮斗「お2人共、ありがとうございます!」
新城「礼には及ばん。それに神は人や生き物を導く為にある。気にしなくていい。」
楽海「ああ、そうだ。子供を導くのが大人の責任だ。だから気にするな。」
蓮斗「はいっ!」
楽海「じゃあ俺たちは今日の要件が済んだから帰ることにする。今日も特訓頑張りなよ。」
蓮斗「はい!」
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楽海「あの少年に触れてみてどう感じた?新城。」
新城「端的に言えば、化け物です。最初は中のモノだけを警戒していましたが、あれは正直それ以上のなにかです。」
楽海「お前もそう思うか。中のアレも今の段階でも厄災の特記個体並だからな、本調子ならどれだけの化け物なんだろうな。」
新城「そうですね。あ、あと1つ奇妙なモノがありました。」
楽海「奇妙なモノ?」
新城「はい。彼に触れてみて分かったんですか、彼の中に魂が複数あったんです。」
楽海「複数...?二重人格って事か?」
新城「いえ、人格は1つなのですが、3つの魂があったんです。」
楽海「1つの肉体に3つの魂ねぇ...あいつに聞けば何かわかるかな...?」
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戸塚「あ、朝ぶり、です。来ましたよ。」
蓮斗「戸塚さん!学校お疲れ様です。」
戸塚「はい、ありがとう、ございます。今日も、特訓、頑張りましょう。」
蓮斗「はい、頑張りましょう。」




