過去と可能性
蓮斗「ん、ん.....?」
目が覚めるとそこは知らない部屋だった。私の腕には点滴が打たれており謎の機械から出る多くの管で繋がれていた。周りを見回すとそこは一面がガラス張りの部屋だった。
蓮斗「ここは一体....私は一体...」
そんな事を考えているとこの部屋に1つしかない扉が開き一人の男が入ってきた。
荒山「やぁ祇梨君。気分はどうかな?」
蓮斗「荒山総司令官...気分は普通ですが、ここは一体どこなんですか?なんで私箱の部屋に...?」
そう聞くと総司令官がベットの隣にあった椅子に腰かけ話始めた。
荒山「簡潔に言えば、お主が暴走し、国防軍本部で暴れまわったのじゃよ。」
総司令官の口から出た言葉に私は耳を疑った。
蓮斗「私が暴走して、本部で、暴れまわった!?」
唐突に突きつけられた事実に私の脳は理解不能と言わんばかりにとてつもない速度で回る。
蓮斗「ど、どういう事ですか!?私が暴れまわったって、一体どういうことですか!?」
私は冷静さを欠いてしまった。自分が何故、どう言う目的で?そう思考が入り乱れ目の前が歪んで見えた。その様子を見て総司令官が重い口を開いた。
荒山「お主には伝えるかどうか本部内で話し合ったが、やはりきちんと伝えねばという意見が多かった。故にこうして今話している。」
蓮斗「.......!!!」
荒山「お主がなぜ暴走したのか、それは...」
蓮斗「それは...?」
荒山「それは、お主の中にある闇魔法の防衛本能が暴走し、魔力の強い者を殺すという行動原理で動いたからじゃ。」
蓮斗「闇、魔法...?」
私は意味が分からなかった。何故、私がと思った瞬間、脳裏に一つの光景がよぎった。
蓮斗「黒王、戦鬼...?」
荒山「...!お主、知っておったのか?」
私がそう呟くと総司令官が驚いたように聞いてきた。
蓮斗「あ、いえ、以前魔法についての授業で闇魔法についての話が出た時、私気を失ったんです。そして目が覚めたら知らない場所にいて、音がする方に行ったら黒い鬼がいたんです。」
総司令官は私の話を神妙な面持ちで聞いている。
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荒山「なるほど、そんな事が。だが、あながち間違いでもないかもしれんぞ。」
蓮斗「と、言うと?」
荒山「黒王戦鬼とは500年前に突如として出現し、一国を壊滅寸前まで追いやった本物の怪物だ。しかし、あまりにもその力は強大でその時代の最強が手も足も出ず敗北し、殺された。」
蓮斗「だったら、何故黒王戦鬼は倒されたのですか?話を聞いていると、その国は滅んでないんですよね?」
荒山「ああそうじゃ。どのようにして倒されたのか、それは簡単な話じゃ。冠位が介入したんじゃよ。」
蓮斗「冠位が...?」
荒山「ああ。その時介入したのが英雄だったんじゃよ。英雄の介入を受けて黒王戦鬼は敗北、その魂は天界へと送られた。」
蓮斗「天界に?聞いた感じですが、黒王戦鬼は少なくとも数百万人は殺してるはずですが、何故冥界じゃなく、天界へ送られたんですか?」
荒山「ここからは覇王殿から聞いた話じゃが、黒王戦鬼は英雄が情状酌量の余地アリと判断されたらしい。」
蓮斗「何故、そう判断したんでしょうか…?」
荒山「答えは簡単、その国の人間がほとんど腐っておったからじゃ。」
蓮斗「腐っていた...?」
荒山「ああそうじゃ。黒王戦鬼の大元となった青年はとても優しい存在だったらしい。じゃが、闇魔法という見た事見ない属性を持って生まれ、親からも国の人間からも虐げられ続けた。じゃが、そんな青年にも自身を理解し、一緒に暮らす妻ができた。その二人の間には子が1人でき、暗い森の中であったが、順風満帆の生活をしていた。」
荒山「しかし、そんな生活はある日突然終わった。国にとある病が蔓延した。その病は発症者の体に黒い斑点が出て、最後には死ぬものだった。国王と国民はその青年の仕業と思い込み激昂。3人の住む森に騎士を派遣し火を放った。その時、その青年は森から少し離れた川に行っており襲撃は免れた。だが、騎士に見つかった妻と子は魔女とその娘としてその場で手足を落とされた挙句心臓を剣で貫かれ殺された。」
蓮斗「っ......」
唖然として言葉が出ない。何故そこまで惨いことが出来るのか、私には理解できなかった。だが、総司令官は話を続けた。
荒山「川から戻る途中、森から大量の煙が出ていることに気づいた青年は急いで家に戻った。だがそこには惨たらしく殺された妻と我が子が柱に括り付けられ死体を晒されているのが目に入った。その時その青年は発狂した。すぐに妻子を柱から下ろし声をかけたが返事が返ってくることはなかった。青年は妻子の死体の上で泣き続けた。だが、青年は後ろから心臓を貫かれた。国が派遣した騎士たちがまだ残っており青年が帰って来るのを隠れて待っておったのじゃ。青年は騎士に聞いた。何故妻子をこんな風に殺したのか、俺たちが何かしたのか、と虚ろな目で聞き続けた。すると騎士たちは」
騎士「殺害目標がお前だけだったがそこに居たから見せしめで殺したんだよ!」
荒山「そう言うと騎士たちは妻子の死体を踏み付けにしながら大声で笑った。それが決めてだったのであろう。青年はその場で呪詛を吐いた。永遠と吐かれ続ける呪詛に騎士達は恐怖し、トドメを誘うとした。だが剣を振り上げた手が降りることはなかった。その瞬間その場に居た騎士数十名が一瞬で肉塊へ変えられた。人々への尽きぬ怒りと憎しみ、憎悪が青年を鬼へと変えた。」
荒山「これが、覇王殿から聞いた黒王戦鬼が生まれた経緯だ。」
話し終えた総司令官は暗い顔をしていた。聞いていただけの私がここまで唖然とするのだ、喋っている本人はそれ以上だろう。だが話を聞いて気になる点がある。それは
蓮斗「黒王戦鬼の魂は天界へ送られたのになぜ私の中にそれがあるんですか...?」
そう。黒王戦鬼の魂が天界へ行ったのならば今も黒王戦鬼が闇魔法に憑いてるのが不可解なのだ。
荒山「それは簡単じゃ。闇魔法に憑いているのは黒王戦鬼ではなくその怨念。英雄曰く怨念が強すぎて魂と怨念の2つに分けたらしくその怨念は分けられた瞬間闇魔法に移ったと聞く。」
蓮斗「形のない、概念に憑くっておかしな話ですね...」
荒山「じゃがそんな特異な現象を起こしてしまうほどその青年の怨念が強かったって話じゃ。」
蓮斗「それで総司令官。私は今からどうすれば...
?正直どうすればいいか分からなく、」
荒山「そうじゃ、それじゃ。ここからが本題なんじゃが、お主には今日からとある場所に行ってもらいたい。そこに行けば恐らく黒王戦鬼の怨念を制御してその力を扱えるはずじゃ。」
蓮斗「そうなんですか...!?是非、教えてください!」
荒山「いいじゃろう。だが1つ条件がある。その場所とは計3箇所あるが、そこのとある人物は絶対に怒らせるな。分かったな?」
蓮斗「え、はい。分かりました。」
荒山「お主の両親にも話は通してある。明日から1箇所につき1週間。計3週間の遠出になる。平気か?」
蓮斗「はいっ!」
こうして私は3週間学校を休学することになった。突然突き付けられた自身の力とそれを制御するための遠征?が始まった。
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荒山「新島。祇梨蓮斗を調べて何か変わった所はあったか?」
新島「はい、以前ここに来た時より保有する魔力の総量がここ二日で約10倍になっております。そして、右の額に角のようなモノが生えてきているのが発見されました。」
荒山「それはつまり?」
新島「恐らくではありますが、黒王戦鬼の力を使った反動ではないかと思われます。」
荒山「反動、か...新島、祇梨蓮斗の動向を調べる隠密をもう3人ほど増やせ。大至急だ。」
新島「了。」
荒山「ふぅ、年端もいかん少年に、明らかな厄介の種...これからどうなるか.....」
あの少年のこれからを思うと、どうしても、悲惨な未来が待ち受けるのではないかと誰もいない部屋でたった1人で思うのであった。




