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不人気ダンジョンと感想戦

「さてまず最初に聞くことがあるが、それが何かは分かってるよな」


 俺の問いに、道場で正座しながら三人とも頷いた。


「俺が定めた条件、その真意は気づいてたか?」


 それにまた揃って頷くと、唯愛が口を開く。


「今回の状況は、多分誰かの武器が奪われてしまっての奪還戦だと思います」

「ふむ、その理由は?」

「まず不慮の何かで武器を無くした……普通に状況を考えれば単に武器が壊れてしまったと思うのが自然ですけど、だったら態々『不慮の何か』なんて遠回しな言い方をする必要がありません」


 単に武器が壊れたと言えば良いですから、と答える彼女に俺は頷く。


「その通りだ。俺が潜ってる『福島』の上層みたいなところではあまりに珍しい事例だが、大規模ダンジョン……近場だと『仙台』の中層以降とかだな……そういうところだと、冒険者の武器や道具を奪って自分の物にするモンスターっていうのは全体からみても少なくない。何なら奪うんじゃなくて暗殺してくるようなモンスターもいるからな」


 そして冒険者の武器というのは奪われてそのままにしていると、モンスターによっては特殊な個体になる事があるらしく、死んだ冒険者の死体は持って帰れずとも武器は持って帰れと標語になるくらいだ。


「これが単純に壊れたのなら比較的問題ないんだがな。さすがに折れた剣なんかで攻撃してくるモンスターは居ないからな」

「あれ?でもお父さんが幽霊(レイス)系のモンスターってぼろぼろになった剣を使ってくるって聞いたんだけど」

「まぁそういう例外もたしかにいるが、あれはぼろぼろにはなってるが折れたりはしてないしな」


 そういうモンスターが出るのは近場だと会津の南の方に行かなきゃ居ないし、さすがにそっちまで遠征するつもりは今のところない。


「ただし、魔力銀(ミスリル)とか緋火金(ヒヒイロカネ)硬鉄金(アダマンタイト)みたいなダンジョン産の特殊な素材の武器はたとえ壊れたとしても間違っても投棄すんなよ。ダンジョンの生態系がバグって大変なことになる」


 ダンジョンでしか採取できない特殊な金属を、その金属が採れないダンジョンのモンスターに与えると本当に厄介なことになる。

 例えばミスリル、これを使って錬成した武器はさっきも名前が出た幽霊(レイス)のような実態のないモンスターを倒すことができるが、昔これを取り込んだレイスがどういうわけか斬られる度に分裂するというふざけた能力を得てしまったがために多大な犠牲が出た事件が起きた。

 例えばアダマンタイト、その硬さはタングステンの2倍以上でありながら鉄並みに加工しやすく軽いというインチキ染みた性能をしているのだが、これを取り込んだ亀型の階層ボスモンスターが全身……文字通り甲羅も中身も全身アダマンタイト並みの硬度になってしまったのだ。しかもボス部屋のために倒さなければ援軍も来ないし撤退もできないという最悪な状況に陥ってしまい、結局三日三晩徹夜で、しかも途中で武器が全損し、それでも素手やフィールドを利用して攻撃し続けることで何とか倒せたという。


 そういう事件が度々起こったせいで、基本的に武器はモンスターに盗まれたら必ず回収する、壊れても基本的にその場に放置しないというのが暗黙の了解のようになったわけだ。

 もっとも、そういった特殊金属を使った武器の値段は文字通り桁がいくつも跳ね上がるし、ミスリルに関しては対幽霊(レイス)専用の金属だから、そこを専門に活動する冒険者以外に使い道はないから、こいつらには今は関係ないだろう。


「んで戦いの方だが……はっきり言って考えなさすぎる。今回がはじめての訓練で、あのバックパックを背負ってという状況を考えても、もう少し頭を回転させても良いとは思う」


 俺のその言葉に三人とも少し不機嫌な表情をしている。まぁたしかに、結果的に俺に勝てたのに酷評されればそうなるのも分からなくはないが、当然理由はある。


「まず順番に言っていくわけだが、まず茅音からだ」

「はい」

「俺が用意してもらったバックパックは当然確認したとは思うが、どうして手斧1つだけで前に出た?少なくともカメリアや唯愛の鞄にも同じものは1つずつ入っていたはずだ、それを使って二刀流にするのは考えなかったのか?」


 その問いに茅音は答える。


「考えてなかったです。たしかにそうすれば手数は増えたかもしれませんが、バランスを崩しますし、幾ら『武芸百般』と『最適化』があってもまだ難しいかなと」

「その認識がまずズレてるな。お前の『武芸百般』に似たスキルで『格闘百般』ってスキルを持ってる高位ランカーの冒険者を知ってるが、そいつ曰く『スキルを常に無意識で意識してれば、自然とスキルがどう体を動かせば良いのかを教えてくれる』そうだ。矛盾してる気もするが、俺も似たような感覚はある」


 冒険者のスキルは基本的に『意識していれば自然とできる』ものが殆どだ。俺の場合は『投擲』、このスキルはものを投げる動作がどのようにすれば長い距離を飛ばせるか、どのようにすれば正確に投げられるかが自然とわかる。それを利用して鎖を放って、かつどのように操ればモンスターを倒せるのかを理解し、行動する。


「スキルは大まかに分けて、俺の『空間収納』や唯愛の『模倣』のように自分の意思で発動する『アクティブ型』と、茅音、お前の『武芸百般』や『最適化』、俺の投擲のように意識していれば自然と使える『パッシブ型』の2種類がある。茅音の今の課題は常にスキルを無意識に意識して使えるようにすることだな」

「……具体的にはどのようにすれば良いんですか?」

「パッシブ型のスキルは基本的に反復練習と意識の問題だからな。暇な時間は常にスキルを使うことを意識しろ。持つものはペンでも良いし、定規でもいい、ハサミやカッターみたいな刃物以外で『武芸百般』を使うことを意識して、さらに頭の中でどう動けば良いのかを『最適化』するしかないな」


 俺の時は最初、暇さえあればゴムボールでお手玉してたが、意外と難しくてボール5個のお手玉に半年ぐらいかかった。その頃に『空間収納』を発現しなかったら、今頃投げナイフを武器にダンジョンを潜ってたかもしれない。


「次にカメリア、『錬成術』禁止の縛りがあるとは言え、流石は格闘技経験者。動き自体は三人の中でも群を抜いていた」

「いや~それほどでも~」

「ただしバックパックの重さでふらついたのは、まぁ慣れない点を考慮して今回はなにも言わないが、立ち回りで背後を取れる場面で取らないのはいただけないな」


 勿論そこも格闘技経験者故の立ち回りの癖というやつが出てしまったのだろうが、ただでさえ戦闘系のスキルが手に入らない確率の高い『錬成術』使いが冒険者をやるのなら、ここを矯正させるのは絶対だろう。


「カメリアの課題は立ち回りの訓練とたとえどんなに重たい荷物を背負っていようと常に同じスピードで走れる体力と走力のレベルアップだな。さすがに専門外の『錬成』は俺には教えられないからな」


 特に遊撃担当はどんなときでもふらつかない強靭な足腰が必須だ。まだ小学生女子に求めるのはかなりハードルが高いが、そこは今後の成長次第だろう。だが


「そして唯愛だが……個人的な意見で言うのなら良くも悪くも初心者過ぎて問題外だな」


 彼女に比べれば二人ともまだマシだと考えていた。

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