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不人気ダンジョンと作戦会議

「さて訓練開始……といきたいが、流石に最初の訓練だってのに、俺もいきなり無策で戦えとは言わない。5分間だけ作戦会議をする時間をやる。三人で積極的に話し合え」


 俺はそういうと少しだけその場から離れて会長の側による。


「中々最初からハードな訓練を叩きつけたのう、主は」

「いえ、これぐらいの事はダンジョンじゃ珍しくないでしょうし、それにこれは三人の発想力が試される問題でもあります」

「そうじゃのう、『冒険中に武器が壊れた』という想定となればその通りじゃろうて」


 そう、俺は理不尽な内容でも一応攻略のためのヒントは仕込んでおいた。あとはされにあいつらが気づけるかどうかだが、


「ん?」


 そう思っていると暫くして、何かに気づいたのか、ずっとバックパックを背負ったままだったカメリアがそれを下ろしてその中身を確認しだしたことに、俺は少しだけ笑みを浮かべた。


「ほう、主から見てあれはどう映るかの?」

「さぁ、それはこれからの彼女達の行動次第ですね」


 ※※※


「どうする唯愛、正直あの人に勝てると思う?」


 茅音ちゃんのその言葉に、私は私達の師匠をチラリと見て首を横に降った。


「多分だけど無理だと思う。この中で武器がなくてもある程度戦えるカメリアちゃんが自由に動けるならまだしも、このバックパックを背負いながら普段通りに動くのは」

「うん、ぶっちゃけ難しいね~。というか、担いでるだけでもかなり疲れるし」


 ダルそうにずっとバックパックを背負ってるカメリアちゃんがそう答える。実際、私もこれを背中に置きながら戦うのは、小学生の身では無理があるし、何よりここまで大きくて重いものだと慣れてないと歩くだけでふらつきそうだ。


「カメリアでこれなら、私達は尚更ね」

「だけどいきなり想定してることが二歩も三歩も行きすぎだとアタシは思うんだけど。普通最初の訓練で武器を無くしてモンスターと出会っちゃったなんてやる?」

「そうだよね、不慮で武器を無くして……あれ?」


 そこで私は不自然な引っ掛かりを覚えた。


「ねぇ茅音ちゃん、師匠ってこの訓練の状況って何て言ってたっけ?」

「え?たしかこのバックパックを背負って、かつ不慮の何かで武器を無くした状態でモンスターと出くわした……って言ってたわね」


 そう、その通りだが、この場合で指導者が最初に教えるのならここからの撤退方法のはず。なのにあの人は『格闘戦』をしろと言ってきた。その意図はなんだろう?


「お、唯愛ちゃんなんか閃きそう?」


 閃くとはちがう、私達は何かを見落としてる。それが何かを思い浮かべる。


(師匠は私達に『起こり得る理不尽を知る』訓練を暫くはやるって言っていた。ならこの理不尽が起こり得る状況はなに?)


 私にできること、茅音ちゃんみたいに武器をうまく使えるわけでもなく、カメリアちゃんみたいにその場で武器にするようなスキルもない、そんな私にできることは考えること。思考を常に止めないことだ。


(武器が無くなる、それが起こるのは武器が壊れてしまうということ。武器が壊れるのはどういう状況……単純にモンスターと戦ってるうちに壊れたと考えるのが普通。けど武器はそんな簡単に壊れるものじゃないし、冒険後はかならず手入れするのなら、武器が壊れそうな状況でダンジョンには入らない……つまり普通に考えたのなら『手強いモンスターと戦って壊れた』って考えるのが一番かな)


 だけど何かが違う。それならば態々モンスターとの格闘戦を選ばずに逃げるのが最善のはず。なのに今回の条件に『撤退』に関するルールが一切出てきてないことはあまりにも不自然だ。


(つまり表向きには言ってないけど、今回の状況では『逃げてはいけない』状況でもある。それが起こるのはなに?)


 考えられるのはダンジョンの上層と中層を分けるフロアボスと呼ばれるモンスターとの戦い。でもそれは流石にあり得ない。何故なら不慮の何かで武器がないのなら、そもそもボスには挑まないからだ。

 ならばダンジョンの罠でも凶悪と名高い『モンスターハウス』に潜り込んでしまったかと聞かれてもこれも違う。だとすれば態々師匠一人だけが相手する理由にならない。

 分からない、武器を無くす理由が違うのか。そう考えた時だった。


「そういえばさ、なんで師匠は剣を使うんだろ」


 突然カメリアちゃんがそんなことを呟いた。


「それはさっきも言ってたでしょ。剣を使うモンスターが多いから、その練習だって」

「それはそうだけどさ、剣にしてはそこまで長さないよ、あれ」


 そう言われて視線をあの人が持っている剣に移してみれば、


「確かに長くない……ていうか、短い?」


 お爺ちゃんから聞いた話だが、片手持ちの剣を扱う場合はおおよそ腕の長さと同じぐらいのものが良いそうだ。理由は幾つかあるそうだけど、その一つに手首を間接と見立てて可動しやすく、かつ片手で長時間持っても重すぎない為らしい。

 本当か嘘かは分からないけど、もし本当だとして師匠の持つ木剣の長さは50㎝あるかどうか……大人用のショートソードが長さ70㎝前後だったから、それよりも短い剣をわざわざ選んで出した理由は何か?


(格闘戦……撤退できない……不慮で武器がない……そして短い剣)


 そして思い出す、彼が剣を出したときに態々言った一言を。


『『福島』だと手斧のコボルドやライカンが主流だが、全体的には剣を使うモンスターは多いからな。』


(今思えばあんなこと、別に言っても言わなくても変わらないのに、なんであんなことを……)


 わざわざ言わなくても良いことを、あえて彼は言った。つまり、そこには何かしらの意図があるはず……そこに隠された何かの意味、それがさっきまでの疑問と組み合わさるものは……


「…………あ」


 瞬間、私の頭の中の何かがパチリと、まるでパズルのように組み合わさったような感覚を覚えた。


(……あ、ある!!こういう状況になって、かつ逃げるわけにはいかない理由が1つだけある!!)


 そして私は思い付いた。この状況が指し示す起こり得た理不尽な状況と、それへの回答札になる可能性が。


「カメリアちゃん、バックパックの中身って確認した?」

「え?全然してないけど」

「開けて中を見てみて」


 その一言に首を傾げながらもカメリアちゃんはバックパックを外してその中身を確認する。


「へぇ、重りって大きな重石がどーんって入ってる訳じゃないんだ」

「そうね……拳大のものや軽い袋、細長い棒のような重石も入ってるわ」


 おそらくこの中身はダンジョン内に持っていく物やドロップしたものをイメージとしているのだろう。軽い何かが複数入った袋……魔石を纏める袋が入ってるのが何よりの証拠だ。


「できる限り本番に近しい中身ってことはもしかしたら……」


 私はそのカバンの中身を全て取り出して確認する。時間は殆ど無いが、予想が当たっていれば……


「やっぱりあった」

「え」

「うそ?」


 そして見つけた、この場での最適解になり得るものを。そしてこれが意味することも見つけ出した。


「二人とも、作戦ともいえない作戦に乗るつもりはある?」


 その質問に友人二人は、笑顔と共に頷き、短い時間で可能な限り作戦を伝えた。

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