不人気ダンジョンと作戦会議
一先ず第6層に戻った俺達は、嘉藤さんら片平組の面々と作戦会議を始めていた。
「まずはあのゴーレムの能力を確認するが、仮称は『ガトリングカッパーゴーレム』、重機関銃のガトリング砲を四門も装備したうえに、毎分約1万発強の銅製の弾丸を1つの砲門から飛ばしてくる」
「毎分約1万発強って、わざわざ測ったんですか?」
「いや、自衛隊で昔使われていた戦闘機、それの機銃として使われていたガトリング砲でおおよそ毎分7000発前後らしいからな、ただ戦闘機のそれが六連装式だったのに対して、あのゴーレムのは十二連装方式だから単純に倍か、もしくはそれに近い数字にはなるだろう?」
なるほど、論理的には納得できる数字だし、予想としてはハズレとは言いがたいレベルだ。
「そして続けるが、その毎分1万発以上射てるガトリングが、あのゴーレムの右腕、左腕、そして両肩の計四門装備されてる……合わせて約5万発の分間掃射が予測される」
「5万発か……」
「あぁ、これを防ぐのはまず不可能だと考えた方が良い。弾丸もフルメタルジャケット弾に使われるような真鍮製じゃなく、純銅製だから硬度こそ鉄より劣るが、仮に鉄製だろうがカーボン製だろうが、盾なんて構えてもあっという間に蜂の巣になってジ・エンドだろうな」
たしかに、仮にその量の弾丸が飛んできたらおそらく10秒も保たずに、文字通り消し飛ぶことになるのは考えるまでもないが、そこで1つの疑問が浮かんだ。
「けどゴーレムとはいえ、さすがに弾切れを起こさないってことはまず無いだろ?どれだけ頑張っても30秒全力掃射させれば、あのゴーレムの体積からいって残弾は無くなる、つまり倒せると思うんだが」
戦闘機での機銃も、分間7000発と言ってるがあくまでもそれは理論値の話だ。実際はそんなに弾は詰め込めないし、ジャムる……銃身等に銃弾が詰まったり、装填などの行程で異常が起こることだってあるからし、そもそもそんなに討ち続ければ銃身が焼けついてまともに射てなくなる可能性もある。
だからあのゴーレムも同じく、長時間長く打ち続けるのは不可能だと指摘したが、嘉藤さんの視線は怖いままだった。
「良い指摘だが、残念ながらそいつはほぼ期待できねぇ」
「なぜです?」
「もう試したんだよ。例の半グレの連中捕まえてあのゴーレムの前を逃げ回らせた結果、あのゴーレムは5分間掃射し続けても弾切れ、ジャム、銃身が焼けついたりといった異常が見受けられなかった」
まさかの事実に唖然とするが、そういうことならと納得すると同時に頭を抱えた。とんでもない弾幕を張る相手が弾切れもジャムも無いと考えた場合、倒す手段がかなり限られてくる。
「ただ弱点がないってわけでもない。あのガトリング砲はたしかに厄介なんだが、砲身は基本的に正面以外に向かないのが1つ。そして動きながら射つことはできるが、移動の速度はかなり遅いことが1つ」
「それは……けど弱点って言うほどか?」
確かにうまく活かせばなんとかなるかもしれない。が、問題はあのゴーレムの射程範囲内から、気づかれずに接近したうえで倒せるかということだ。
「そうだな。少なくともパーティを2つに分ける必要があるが、それでも弱点には違いない」
「……まさかと思うが、俺らを餌にするつもりか?」
「いや、それはむしろ俺らの仕事だ。俺のスキルがあれば、無傷でとはいかないが奴を釘付けにすることはできる」
そして語った彼のスキルに、俺も康成も驚いた。
「……康成、どう思う?」
「悪くはねぇと思う。が、それでも俺じゃやつを一撃で倒すのは不可能だな。あのゴーレムを倒すなら一撃必殺が好ましいと思う」
「やっぱりそこだよな」
となると、こいつの出番というわけか。
「結弦、やっぱりオプションのアレ、使うしかねぇな」
「そうなるよな、まぁ」
作戦会議を始めた時から何となく予感はしていた。が、問題がないわけでもない。
「けどアレを使うには3分程時間がかかるし、その間俺は無防備になっちまう」
「そこだよな、いくら結弦でも、あの弾幕を相手に3分も気づかれずに予備動作にかかるなんてのは不可能だ」
「それに相手が俺の方を向かないようにするために、囮側にも最低限攻撃してもらわなきゃならない。けど、あのゴーレム相手に近づいて攻撃するなんてのは自殺行為だ」
「そこは俺ら『片平組』の出番だろうな。今回は組から全員、7.62㎜のアサルトライフルとサブマシンガンを持ってきてる。有効打にはならなくても牽制ぐらいはできるはずだ」
となると、必要になるのは
「砂だな、大量に砂が必要になる」
「砂?……土嚢か。それなら簡易の陣地用の壁にできるか」
「そうだ。戦争で土嚢を簡易の壁にしてたことはよくある話だ。あのふざけた弾幕相手に有効かは分からないが、気休め程度にはなるはずだ」
だがそうなると土嚢の数が圧倒的に不足してる。それこそサンドゴーレムから300は手に入れないといけないほどに。
「嘉藤さん、協会からサンドゴーレムの砂を貰ってくることはできますかね?」
「できるとは思うが、協会でも備蓄は少ないだろうな。何せ重たいうえに買取額が安いから冒険者が持ってくることが少ないうえに、ものがものだから嵩張るから、すぐにアスファルト業者や農家みたいなところに卸しちまう」
となると自分達で集めなきゃいけないわけで、少なくとも丸一日はそれに時間を費やさなきゃならなくなる。
「せめて、『複製』のスキル持ちがいれば楽になるんだが」
「いやさすがに無い物ねだりだろそりゃ」
康成の返しに分かってると答えつつ、どうするべきか考える。確かに時間を掛ければ砂は大量に用意できる。が、用意してる間にあのゴーレムがさらに厄介なことになるのだけは、冒険者としては避けなくてはならない。
「……そこを悩んでも仕方あるまい、我々はこれより人手を分けてサンドゴーレムから土嚢を大量に手に入れる。最低目標は240、期限は丸一日!!もし途中冒険者と出会った場合、即金でサンドゴーレムの土嚢と交換して貰い、また事情を説明して退避してもらうように説得しろ!!分かったか!!」
「うっす!!」
「それから俺とこのお二方は一度ダンジョン協会に会ってくる!!少ないだろうが協会にも土嚢は備蓄してあるはずだ、それを受け取り次第、こっちに戻る!!それと阿井川!!」
「うっす!!」
「お前は宇久井と幡野と一緒に待機だ。お前はうちで少ない『空間収納』持ちだ、集めた土嚢は俺達が戻るまでお前のスキルに詰め込め。件の半グレが報復にくるってことは無いだろうが、お前が死んだら作戦に支障がでるってことを忘れるな」
「分かりました!!」
「いいか!!ここからは時間との勝負だ!!全員、なんとしても生きてここから帰るぞ!!」
嘉藤さんがそう号令をかけると、部下の連中が一気に散り散りになる。
「それじゃ、俺らも行きましょうか」
「あぁ……良い部下を連れてますね」
「当然、俺の自慢の舎弟達ですよ。だからこそ、一人も死なせずにこんなとこから帰してやらないとって、思っちまうんで」
俺の一言に嘉藤さんは静かに笑っていた。俺には兄なんて呼べるような人はいなかったが、もしそう呼べる人間が居るのなら、こういう人が良いと少しだけ思ってしまった。
(ま、だからヤクザの若頭なんてできるんだろうな)
これもある意味リーダーの形の1つだと思いつつ、弟子達への土産話が1つ増えたと心の中で微笑んだ。




