不人気ダンジョンと郡山ダンジョン
暫くは主人公ルート入ります(なお弟子達の話もそのうちちゃんと書きますので悪しからず)
郡山ダンジョンは鉱石系の準大規模ダンジョンだ。福島が一応中規模ダンジョンに分類されるため、規模的にこちらの方が広く、そして鉱石系のダンジョンということもあって東北では結構人が多く来るダンジョンの一つだ。
「久しぶりに来てなんだけど、やっぱり人が多いな」
ゆえにダンジョンに入るのにも順番待ちすることは当たり前で、それまでに他の冒険者を眺めてどれ程の使い手か図るのは、冒険者としての習性というなにかなのだろう。
「お前は福島に籠りっぱなしだからな。たまにはパーティ戦の感覚を養うのも必要だろ?」
「俺の武器考えたらソロの方がやりやすいんだよ。言っとくけど、流れてぶつかっても文句言うなよ」
「安心しろ、お前の前には入らねぇから。あ、けど払う時は言ってくれ、さすがに避けるのは厳しいし」
「わかった」
短い会話だが、こいつとは冒険者になるまえからの付き合いだ。これぐらいの会話でお互いにやるべきことは把握できるし、連携もそれなりにはできる。
「個人的に心配なのはむしろ、お前の家に残してきた三人の方なんだよな」
「……多分大丈夫だろ。あれももう無いし、簡単にできるものじゃないからな」
「むしろ簡単に作れた方が問題だよ」
当初の予定どおり、弟子三人と保護者兼監視役の麻賀さんは康成の家で武器選び&葛さんによる座学の授業を行わせている。俺としては三人だけでも良かったのだが、麻賀さんもついでに学びたいと言っていたからそれは構わないんだが、
「葛さん、座学となると鬼だからな」
俺は知っている。教官としての葛さんは料理人としての暖かで愛想の良い美女という雰囲気から一変して、笑顔で文字通り知識を叩き込ませるというような女傑へと変貌することを。そして、
「というか、俺としてはなんで葛さんがお前にゾッコンなのか、未だに懐疑的なんだよな」
「ハハハ、安心しろ。俺もたまに思う」
なんと葛さんの方から康成に対して猛アピールしたことも。いや、確かにこいつは当時まだ『魔剣鍛冶』のスキルに進化してないとは言え、たった二年でBランクに上がった期待のホープ冒険者だったし、それでいて公私ともにソロで活動していた冒険者の中では見た目も良いのは間違いないと思う。
が、葛さんからすれば仙台スタンピードの後からどうやら意識していたらしく、正式に付き合うまで約一年、そこから半年で結婚に漕ぎ着けたというスピード結婚。何が彼女をそうさせたのか、俺ら二人の永遠の謎でもある。
「そんなことより、最初から6階層まで降りるが良いよな」
「6階層だとサンドゴーレムか?」
サンドゴーレムはEランク扱いされているモンスターの中でもハズレ扱いされているモンスターだ。文字通り全身が粒の荒い砂でできている、鉱石や岩石でできている物質型のゴーレムと違って、文字通り砂でできた流体型のゴーレムだということだ。
そのためサンドゴーレムはゴーレム系のモンスターの住みかである鉱石系のダンジョンに置いて、唯一打撃武器があまり効きにくい相手でもある。
ドロップアイテムもサンドゴーレムの素材となっている大量の砂で、人気御礼の郡山ダンジョンでは基本的にはハズレモンスター扱いされている。売価もドロップする土嚢袋に20kgで6000円と、おなじEランクのアインゴーレムが落とすインゴットが約1kgで2000と考えると、Eランクモンスターの中では最も重く最も安い、普通に考えれば倒しても旨味があまり無い。基本的には。
「インゴットの作成に必要なんだっけか?」
が、一部の鍛冶師にとっては……特に魔剣鍛冶師にとっては何よりも必要な素材の一つでもある。
「あぁ。金属と非金属素材を繋ぐ役割でな。所謂接合材の代わりみたいなもんだよ」
「けど、なんで砂なんだ?別に鉄分とかでも良いだろうに」
「サンドゴーレムの砂は、それそのもので使うならちょっと質の良いだけの砂なんだが、そもそもが魔石の魔力を大量に浴びてるから、砂そのものが一種の魔力物質でもあるからだな」
曰く、金属素材と非金属素材を合わせてインゴットにするには、純度の高い魔力物質が必要になるという。大体の魔剣鍛冶師の場合、その魔力物質に魔石を使うらしい。
が、康成の師匠によると魔石の場合別種のモンスターの魔石を組み合わせて容れてしまうと必ず失敗ができてしまうという。だが同じモンスターの種類の魔石を個別に分けて大量にストックできるかというとかなり難しく、かといって性能を上げようとすれば相応の魔力量の魔石が必要不可欠。
竜種系のモンスターなら一つで充分以上の魔力を秘めているが、そもそも竜種系の最下級と呼ばれるリトルワイバーンですら個体ランクはCランク相当であり仙台だと30階層以下にならなければ出てこない。しかもワイバーンは種類問わず群れで行動するため、実質ランクは一つ上がるし、パーティを組まなければ俺は絶対に戦いたくないと断言できる面倒臭さなのだ。
「何より魔石は売った方が金になるし、砂も20kgの土嚢袋なら5個もあれば一年は使える」
「ふーん、まぁ確かにサンドゴーレムの魔石って1個あたり3800円もするからな」
同じEランクのオークに比べても高いが、その場合サンドゴーレム戦では魔石を壊さないように倒す技量も同時に求められるのは言うまでもない。他のゴーレムモンスターと違って、サンドゴーレムを倒すには魔石を壊さなければならないからだ。
そんなことを思っているとふと視線が向けられていることに気づいた。少なくとも好意的な視線じゃないが、
「康成、どう思う?」
「あー、警戒しながらも普段見かけねえ奴だからカモだとでも思ってるんだろ。ついでに一人、話を聞いてたのかめんどくさそうに説明してやがる」
「へぇ、なんで?」
「そりゃ当然、空間収納持ちだって事で面倒なカモだと思ってるんだろ」
そりゃなんというか、こちらからしても面倒な連中だ。
(感じる視線の数は3人……いや、中にも4、5人居そうだな)
冒険者を狙う連中は頭は悪いが地頭は良いタイプが多く、総じて狡猾な連中が多い。自分で稼ぐという考えを持たず、苦労してモンスターを倒してる冒険者を狙うふざけた連中だが、どこぞの世紀末のヒャッハーなやつらと違って策を幾つも立てて、自分達が有利になるように立ち回る。そして相手の実力が自分達よりも上だと判断すれば、ほとんどの場合手を出しては来ない。
しかも冒険者の証であるステータスプレートには、基本的に何を倒したのかの記載はされないから、たとえ冒険者を殺しても何にも影響はない。だから冒険者キラーを排除するのは現行犯しかないのだ。
「一応聞くが、容赦はいるか?」
「襲ってきたら要らねぇだろ。そもそも、実力で言えば俺もお前も実力はC以上だぞ、そんなやつを襲おうと思うか?」
「視線の奴らが相手の実力を客観視できてるのなら無いだろうな」
おそらく視線の鋭さから実力的にはDランク中番ぐらいの連中だ。ランクが二つ違えばどうなるのかといえば、文字通り格が違う。
「で、どうする?普通に6階層に降りるのか?それともどっかで潰すのか?」
「仕掛けてきたら対応するだけだな。こっちからはアクションを起こすつもりはない」
「だと思った」
冒険者のルールとして、襲われたりしない限り、他の冒険者とダンジョン内で殺しをするわけにはいかない。仮に盗賊冒険者にこちらから仕掛けた場合、嘘八百並べられてこちらが不利になることも珍しくないからだ。
「ならそのときは、アイツらに格の違いを見せるとするか」
「まぁ、狙ってきたらだけどな」
もっとも、ああいう自分の利益しか考えてない連中のやり口は一つしかないだろうがな。




