おっさん今夜の予定は?
年末に更新するつもりが…
遅くなりまして大変申し訳ありませんorz
続きです。
忘れられていませんでしたら宜しくお願い致します。
皆様に楽しんで頂けましたら幸いです。
店員に連れられて再び、カーリッツ薬草店の倉庫に戻って来た。そこには針葉樹の板で作られた木箱が積み重ねられ、悪戯好きな俺としては下の木箱を数個引き抜いてみたくなって来たけど、そこは一応大人なのでグッと我慢した。
「品物はこちらになります、検められますか?」
「いや、良いよこうすれば一瞬で解るから」
俺は積み重ねられた木箱を懐から出した皮の巾着袋へと、無造作に入れていく。俺の掌よりも大きい程度の小さな巾着袋に、それよりも遥かに大きな木の箱が納められていく。その様子に店員は信じられないと言った様子で両の目が眼窩から零れ落ちそうなほど両目を見開いて、口も半開きになっている。
巾着袋に木箱が入ると同時に俺の頭の中には、木箱の個数と中身の状態が浮かび上がってくる。薬草が種類や状態別に分けられ木箱に入れられてそれが約三十箱、仕事が早いしそれでいて丁寧に木箱の蓋には封印までされている。
「確かに検めたよ、短い時間に丁寧に梱包してもらって済まないな」
「…いえ、こちらこそ。廃棄予定の物まで引き取って頂けるのですから、こちらこそありがとうございますあの…大変不躾とは思いますが、お客様はもしかしてどなたかご高名な魔術師様、あるいは魔術師様の御関係者様なのでございましょうか?」
何だ何だ本当に不躾だな。こんないかにも目立ちそうに無い何処にでも居そうなおっさんを捕まえて、高名な魔術師とか関係者やら何とかかんとかそんな事答えるわけが無いだろう。だってオレは普通のおっさんだからな。
「えっどうしてそう思うんだ?俺は見た通りいたって普通のただのおっさんだぞ」
「はい、お客様の見た目はそうかも知れませんが、お客様のお持ち物を拝見させて頂きますと…とても庶民いえ貴族様でも滅多に手に出来ないような品をお持ちの様でしたので…」
「んー?こんな襤褸を纏ったおっさんがそんな事無いよ。その昔師匠から破門されてしまった魔術を少しだけ齧った、しがないおっさんだよ!これはその時の餞別で兄弟子からの頂物だよ」
「はあ、そうでございますか?そういう事にさせていただきます。」
いや、嘘じゃ無いのだけど信じてないっぽいかな?うーん人に物事を伝えるのって本当に難しいな。まあ、本当の事だけれど真実では無いから仕方が無いのか?一部に真実を織り交ぜてはいるけれど、あくまでもそう言う設定だからな。
「ああ、そう言うことだから、あまり畏まられても慣れないから、普通に接してくれ」
「承知致しました。次回からは普通に応対させて頂きます」
普通って言われてもな…店員とお客としての普通なのか、お得意様相手としての普通なのか、それともただのおっさん相手への普通なのか解釈が難しいところだな。まあ、その時になったら解るだろう。
「まあ、宜しく頼む。薬草が必要になったらまた世話になるよ」
「次回お見えになる前に早めにご連絡頂けましたら、もう少しお客様の御期待に添えるかも知れませんが…どうでしょうか?」
「うーん、そうだな有難い申し出なんだか…一時この町に居る予定なんだが俺は流れのおっさんだから一度この町を離れてしまうと次はいつこの町に来られるかは解らんのだが…そうだな名前を教えるくらいなら問題は無いか…」
まあ町を離れたとしても俺の替わりの者にお使いを頼めばいい訳だし、それに別に俺の名前を出さなくても俺以外の者が俺と似たような買い物をする者が世の中に何人か居てもおかしくは無いだろう。
「そうですか、ありがとうございます。今回担当させて頂きました私はブロイと申します、今後もお付き合いさせて頂けますと幸いです」
「俺はライナーだ。見ての通りただのおっさんだ」
「以後、宜しくお願い致します」
「ああ、宜しく」
そう言って俺達は握手を交わした。ブロイの手は店の店員にしては厚みが有り力も有るみたいだ。仕事で重たい物も抱えるだろうし、自衛のためや身体を動かすために何かしらの武術なりを習って居ても不思議では無いのか?
「今回はいい買い物をさせて貰った、もしこの町に来る事が有ったらまた寄らせて貰うよ」
「その時には是非とも私共カーリッツ薬草店を宜しくお願い致します」
俺を担当してくれたブロイと倉庫に居た従業員数名に見送られながら、俺は裏口である倉庫から店を後にした。こちらは従業員や出入り業者用の出入口なので、ここからお客様をお見送りする訳にはいかないとは言われたが店まで戻るのが面倒なのと次に寄りたい店が裏口からの方が近いからと言うと渋々だがこちらから出る事を認めて貰えた。
カーリッツ薬草店を出る直前に待機状態だった≪気配察知≫≪危険察知≫≪索敵≫の魔法を再起動させた。それと同時に目視で辺りを見回して異変が無いかを確認する。「足元ヨシ!」とか「頭上の安全ヨシ!」とか指差し呼称まで付けると完璧なのだが、こんな夜中の町中でそんな事をしていたら通報ものだよな!警邏隊も見回りをしているみたいだし目立たない事に越したことは無いよな。
まあ、それは良いとして再度俺の頭の中にこの町全体の地図が浮かび上がり、その地図上で動いているいくつかのマーカーが確認出来た。先程俺の後を付けていた連中と待ち伏せしていた連中、それとおかっぱ頭の成金魔法使いのリグード氏とその護衛だった。
「夜中だって言うのに働き者だな。俺だったら適当に理由を作ってサボって呑みに行ってるのにな、最近の輩は勤勉なのか?」
流石におかっぱ頭の成金魔法使いのリグード氏と護衛は店なり自宅なりに居るみたいだが、悲しいかな雇われの使い走りっぽい輩達は夜の町を元気に走り回っている。それだけ真面目に働けるのなら堅気の仕事にでも就けば良いのにとは思うのだが、輩達には輩達の考えが有るのだろう。
世に言う「働いたら負け」的な考えとか?
知らんけど!
いちいち相手にするのも面倒なのでマーカーを付けたのだが、夜中にこれだけ町中をうろついて居るのならもう一度くらいはニアミスが有るかも知れないな。マーカープラス警告音を付けて早めに接近が解かる様にして出来るだけ関わらない事にしよう。
カーリッツ薬草店を出て商店が並ぶ通りから、飲食店が並ぶ通りへと歩いて行く。夜中なので開いている商店はほとんど無く開いているのはごく一部で、昼夜問わず人の出入りの有る繁盛店や裏稼業の人間も訪れる店や夜の仕事をしている人達向けの店だろう。
飲食店が並ぶ通りもほとんどの店は閉められ明かりが点いていない。その飲食店が並ぶ通りを通り過ぎ別の通りへと入って行くと、夜だと言うのに明かりが灯された通りに出た。いわゆる繁華街とか歓楽街とか言う通りだ。
「ここは昼でも夜でも盛況みたいだな、正しく眠らない町って奴だな」
少し派手な装飾をした店やケバケバしい装飾の店、この場にそぐわない落ち着いた雰囲気の店や、打ち壊しでも有ったのか外装が今にも崩れ落ちそうな店まで有る。看板も有る店と無い店が有り一目見ただけでは何の店かは解らない。
路地には夜で薄着では若干肌寒さを感じるとは思うのだが、薄着の若い女性達が通りを歩く男達に潤んだ視線や熱い吐息に乗せて男達の本能へと問い掛けている。話が纏まったのか男と女は恋人の様に店の中へと消えて行く。
「若者達は元気で良いな、俺なんか何百年もご無沙汰なのにな」
「なぁにおじさん寂しいの?おじさんも発散したくて来たんじゃ無いの?」
何の気無しに呟いた言葉に返事が有ると、誰でも驚くよな。警戒はしているが俺に害意を抱いた人間が居なかったのと、俺に危害を加えられる人間も居なかったので少し気を抜いて居たのだが、まさか独り言に返事が有るとはね…おっさんびっくりだよ!
「いやー、おっさんは最近めっきり元気がないから遠慮しておくよ」
「こんな所に来ているのに、その気が無いって事は無いんじゃ無い?」
「この通りを抜けた先の呑み屋に行きたいから、近道で通っただけだよ」
「呑み屋に行くのなら私の店で一緒に呑まない?サービスするわよ」
目的地がこの先に有るとはいえこの様な有らぬ疑いを掛けられるとは…決して不本意では無いが少しだけならって気も起きてくる。しかし俺にはどうしても行かなくてはいけない場所が有るんだ。せっかくのお誘いだがここは心を鬼にして泣く泣く断る他無いな…。
「いやーごめん、おっさん見ての通り貧乏だからさ、そんなにお金を持って無いんだよ。だから女の子の店に行くと一瞬でスカッピンになっちゃうよ!」
「あら、それは残念。ならお金が有る時にまた来てね」
なんて言いながらほっぺにチュッって…ほれてまうだろ!
そんな事を思ったり思わなかったりしている、年齢不詳のおっさんがそこに居たとか居なかったとか…。
続きが気になる方、応援をお願い致します。
出来ればブックマークして下さると、モチベーションが上がります。
評価や感想も、お聞かせ下さいませ。
誤字脱字の報告も合わせてお願い致します。




