おっさん応接室にて
続きです。
内容はあくまでも私見ですので、ご容赦願います。
宜しくお願い致します。
店員が部屋から出て行き、俺は部屋に置かれたソファーに腰を下ろした。しかし良いソファーだな、固過ぎず柔らか過ぎずお尻と背中を優しく包み込んでくれて、そして長時間座っていても疲れない座面と背もたれの角度もとても座り易い良い物だな。イカンイカン今はソファーの良さに浸って居る場合では無かった。
俺がソファーに座り少し落ち着いた所で給仕の女の子が声を掛けて来た。
「お飲み物は如何なさいますか?」
給仕の女の子は二十歳前後で、白い肌に緑の瞳と桜色の唇、鼻は少し低いが鼻筋は通っていて中々の美人だ。長い金髪を後ろで一つにくくって世に言うポニーテールにして、黒を基調とした給仕服を着ているのだが、何と言っても彼女の一番の特徴は少し先の尖った耳では無いのだろうか?
この少し尖った耳と言うのは妖精族で有る事の特徴なのだが、彼女の少し尖った耳と凹凸の乏しいスレンダーな体型を見ると自ずと彼女の種族が解ってしまう。彼女の種族が解ってしまうと彼女の外見での年齢も、宛にはならない事も解ってしまう。
そもそも妖精族とは、人族と比べると長命な種族が多く尚且つ高齢になっても若い姿で居る種族も多い。中には人族同様に年齢に合わせて老化していく種族も居るのだが、彼女は年齢と共に老化していく種族では無い。
ここまで言えば解るだろう、彼女は妖精族の中でも一番有名な種族、エルフ族の女性である。エルフ族と言っても大まかな種族分けなので、正確には何エルフ族なのかは見た目では解らない。
有名なところだと、王候貴族などの支配者階級に多いハイエルフ族や、庶民などエルフ族の中でも一番人口比率が多いエルフ族またの名を森エルフ族、その他住む所により独自の文化や生活様式を築いた、山エルフ族や海エルフ族や砂漠エルフ族などなど、異種族との混血のハーフエルフや闇堕ちしたと言われるダークエルフ族も有名かな?
しかし、ダークエルフ族に関しては闇堕ちと言われるがそれは当たらずも遠からずだと俺は思う。ダークエルフ族は洞窟などの暗い場所で生活している者が多いエルフ族で、夜目が効いたり闇属性の恩恵を受ける事が多いだけで、生活環境に選んだ場所がたまたま薄暗い所が多かっただけでそのために独自の進化を果たしたに過ぎないのたが…実際にエルフ族の中では洞窟エルフや洞穴エルフと蔑称で呼ばれる事もある。それ以外にも闇エルフや黒エルフなんて呼び名も有るみたいだが、自らもダークエルフ族と名乗っているので今ではそれが正式な種族名になっている。
で、この部屋の給仕のエルフ族なんだが、緑の瞳なので一般的なエルフ族の可能性が高い。所謂森エルフ族と言われる庶民階級のエルフだ。エルフ族は何故か住んで居る?居た?所の環境が瞳の色に現れると言われている。瞳の色が緑だから、森エルフ族と言う訳だ。
まあ、それも偽装魔法や魔道具で姿を変えていなければと言う事になるのだが…。
プライドの高いエルフ族に多い人族を見下した態度を取る訳でも、感情を押し殺した態度でも無く普通に接客している。やはり大店で雇われるだけ有って、接客中はエルフ族に多い高いプライドは鳴りを潜めて居るのか、それとも感情のコントロールが上手いのか?
「一見なのでこの部屋に入るのは初めてなのだが、何を頼めるのか聞いても?」
当然一見の俺には、ここで出される飲み物の種類なんて知る訳が無いのだが、そんな俺の質問にも嫌な素振りを見せる事無く対応してくれて居る。
「はい、申し訳ございませんでした。メニューですが、香草茶(香茶)と紅茶カフェと数種類ですがお酒も御用意出来ます」
紅茶なら無難に誰でも頼めるだろう、常連相手なら酒を出す事も有るのでは無いだろうか。しかし、香草茶(香茶)となると入れる香草の分量次第で好みが別れてしまうし、カフェなんて知ってる人しか知らないぞ!
「カフェが有るのか、ならカフェをお願いするよ」
香茶も好きだが、今はカフェの気分だな。ここは是非ともカフェを飲みたい。
「畏まりました御用意致しますので、少しお待ち下さいませ。」
そう言って給仕の女の子は部屋の隅に置かれたワゴンで、カフェを入れるための準備を始めた。
カフェとは俺が未だ引き籠り生活を始める以前、遥か南方で発見された新たな島、新大陸。そこで発見された飲み物だ。発見されたと言っても、此方から新大陸へ探索に向かった者達が発見した訳では無く、新大陸に住んでいた現地人が眠気覚ましや体内の毒素を抜くための薬として使用していた物を、仲良くなった現地人から分けて貰った訳なのだが。
これが味と香りそれと物珍しさなどの要因が重なり、当時の権力者や貴族や富豪達の嗜好に合致してしまい、たちまち人々の間に広まったのだった。
さてこのカフェなのだが、南方の暖かい地域に植生しているカフェの木の実の中から取れる種から作られるが、飲める様になるまでには幾つかの工程が必要となる。
先ずカフェの木には赤い実が生る。この木の実はそのまま食べてもとても美味しく、甘味と酸味のバランスが良く果物として普通に食べる事が出来る。しかも、疲労回復の効果が僅かにだが有るとか無いとか…。しかしカフェの原料となるのは実の中にある種の方なのだ。
新大陸の原住民はこの種を生のまま煮た汁を、薬として使用していた。眠気覚ましや、体内の毒素を抜くために薬として飲んでいたのだが、現地を探索していた者達がそれを真似してお茶の代わりとして飲んだのが初めとされている。
その時は変わった風味と香りと味で、香草茶の代替品として飲まれていたのだが、偶然カフェの種やその他野菜などの食糧を保管していた食糧庫が火事で燃えてしまった。その時に偶然にもカフェの種だけが、多少焦げてしまってはいたが原型を留めた形で焼け跡から発見された。
幸い他の食糧庫は無事だったため損害は小さくは無かった物のそれ程大かった訳でも無かったのだが、限られた食糧を無駄にする訳にもいかず、だからと言って焦げてしまったカフェの種を捨てるのも勿体無いと言う事で、焦げたカフェの種を何時もの様に煮てお茶の代用としたのだが、出来たのは薄黒い液体で有った。
しかしそれは、今までのカフェとは全くの別物になってしまっていたのだった。カフェの種が焼かれた事でより一層強香り高く香ばしくなり、味もより一層濃く芳醇な味わいとなっていた。しかし、苦味や酸味も強くなってしまったために、少し薄めに淹れて飲む様になったみたいだ。
カフェは発見された当初から、探索を支援していた国々へと送られていたのだが、このカフェを飲む事が出来たのはほんの一握りの者達で、探索を支援している国々の権力者や支援者や出資者とその者達に近しい者達で独占されていた。
当然カフェの種が火事で焦げた件も彼等に伝えられたので、火に掛けて少し焼き色を付けてから飲む事を真似る者達も当然出てきたので有る。カフェの種に焼き色を付ける事で出た苦味や酸味は、権力者や支援者や出資者達はミルクや当時でも希少な砂糖を入れて飲む事で飲み易くしていた。まあ、これは飲み易くするのと同時に自分達の財力を見せ付ける一面も有ったのだが…。
その後カフェを扱う事で財を成そうと画策した者達により、カフェの栽培方法の研究が始められる事となった。
しかし、カフェの木自体は種を撒きさえされば何処ででも芽が出るし大きく成長するのだが、実を付ける事が無かった。それはカフェの種を植えた様々な場所全てに言える事で、そうならなかった例外が有るとすれば、それは偶々温室で育てたカフェの木に他ならなかった。
元々、新大陸で発見されたカフェの木も一部の暖かい地域に限られ、それ以外の場所では見付けられてはいなかったのである。その事からカフェの栽培はスタート直後に躓く事になったのだが、カフェを新大陸で栽培する事でカフェの供給量を増やす事に成功した。
その後栽培方法が確立された事により、カフェは富裕層を中心に爆発的に広まったので有る。カフェが多くの人達に飲まれる様になり、カフェの淹れ方や飲み方も研究される事となり、カフェの種を焼くから煎る方法が編み出され、更にはカフェの種を細かく砕く事により、より一層カフェの味わいを濃く深みを出させる方法まで編み出された。
今では≪カフェ≫と一言で言っても、国毎や地域毎により様々な淹れ方飲み方が開発され、そして淹れ方や飲み方により≪カフェ≫の名前も様々な呼ばれ方に分けられる様になったのだった。
内容は私見が多分に含まれています。
ご意見、アドバイス等頂けると助かります。




