おっさんカーリッツ薬草店にて
続きです。
中々内容を纏める事が出来ず、昨日まで悩んでおりました。
宜しくお願い致します。
暫く待っていると先程の店員が店内に戻って来た。
「それでは倉庫にご案内致します」
俺はする事も無かったので、再び店内の商品を見て回っていた。品揃えは多く種類も品質も様々、倉庫の方はかなり期待が持てそうだ。
「ああ、頼む」
店内の品は粗方見て回れたので、倉庫を見てみたい気持ちが増して来ていた。
「此方へどうぞ」
先程店員が入って行ったのとまた別の通路を使って店の奥へと向かって行く。町の建物が密集した地域なので通路には窓が無いが、その代わりに明かりが灯されている。まあ、夜なので窓が有っても、明かりは殆ど入って来ないけどね。人の気配も俺達二人の他には警備の人間らしき二人の気配が在るが、姿が見えないので基本的にお客にからは見えない様に警備をしているのだろう。
通路を抜けた先には大きな空間が広がっていなかった。って言うか通路が続き通路の両側に部屋が作られていて、在庫の多い薬草は種類毎に部屋が割り当てられていてその中で品質毎に置き場が作られていてた。当然、生の薬草とと乾燥させた薬草は別々に保管されているので、部屋は別になっている。在庫の少ない薬草は薬草同士の相性等も有るので此方は狭い部屋に保管されていた。その他稀少な薬草はまた別に保管場所が有るそうなのだが、そちらには用が無いので今日は行く予定は無い。
風邪薬、傷薬、打ち身の薬、火傷の薬、肌荒れや手荒れの薬、下痢止め、下剤、毒消し、鼻づまりの薬、咳止め、頭痛薬等々、基本的に何処ででも手に入れる事が出来る薬草を材料として作られる薬の数々である。
そして使用頻度も高いために、薬草の品質や作り手の技量により薬の効能の差も出易く、薬師の技量を測るための基準にもなるのがこの薬達なのだ。
通路を歩きながら何ヵ所かの部屋に入り薬草の数々を品定めしていく。しかし、中には出荷先や買い手が決まっているのか、もしくは予約や定期的に一定量を買いに来る薬師が居たり配達もしているのか、薬師や納入先の名前らしき札を付けられた薬草も大量に有った。
しかしそれでも札が付けられていない薬草も大量に有るので、その薬草を買い付ける事にした。急に大量の発注が有った時には≪カーリッツ薬草店≫が困るだろうが、在庫一掃セールをしてお金に替えられたのでそこは我慢して貰うしか無いな。
各部屋を見て回り、最後に通路の一番奥の部屋に入った。そこは多くの種類の薬草の匂いが混ざり有った独特な空間で、更にはすえた臭いとカビ臭さが混ざり合いまるで大量の生ゴミの中にでも居るかの様なそんな錯覚に陥らせられるそんな空間だった。
「こちらは処分、廃棄予定の品の置き場です」
「そうだろうな…この光景を見るとそうとしか思えないな…」
壁一面に薬草が積まれている。カビの生えた物や乾燥し過ぎた物が積まれ、すえた臭いを発する物は木製の樽の中に入れられているのだろうか?変色して嫌な臭いを発する樽が幾つも置かれている。
「こちらも買い取って頂けるのでしたら私どもも非常に助かるのですが…」
店員は一刻も早くこの空間から出たいのだろうが、俺も気になる事が有るので聞かなくてはならないし、そもそも今は商談中なので我慢して貰いたいな。おれは嗅覚を鈍らせる魔法を唱えて、取り敢えずはこの部屋の臭いが気にはならなくなって居るのだが、それは別に言わなくても良いか!
「因みに、この使えなくなった薬草の行き先は?」
「農家に格安で畑の肥料として卸しております。残念ながら農家で買い取って貰えなかった物は、廃棄せざるを得ませんが…」
ただ廃棄するだけならお金を生まないが、格安で卸すとなると多少はお金を有無生む事になる、農家も廃棄される物とは言え薬草を大量に格安で手に入れられるので有ればお互い損は無いのだろう。薬草を肥料にするのなら、普通の肥料より少しは栄養が有りそうだし。
…これも研究してみると面白いかも知れないな。この世界の農業は天候に左右され、豊作や不作になったり飢饉にまで発展する事も珍しくは無いからな。でもその前に農業用水路などの整備や、水不足のための溜め池などの整備が必要だろうな。いくら作物のために安くて良い肥料を作っても、水が無ければそもそも種を撒くことすら出来ないのだから…用水路などの灌漑設備を造るための魔道具とかの研究も面白いかも知れないな。
そうなると家で稼働している魔道人形やゴーレムを、土木作業用に特化させた物を作って売り出すのも悪くは無いかも…。でもそうなると悪用されない様に出力を下げないといけないし、工事中の事故を減らすために怪我人の運搬や人命救助にも使える物にした方が良いのかな?
うーん、薬草を買いに来ただけなのに、どうしてこんなにも造ってみたい物が出てくるんだ?これは病気か何かか?それとも死ぬまで働けと言う、神の策略か?
…まあ、今のところ寿命は無いに等しいし、即死魔法や究極級魔法の直撃でも死ぬ事は無いだろうし、そもそも神達からの恩恵?祝福?で、ほぼ不老不死になった訳だし…そうか、そうだったのか!これはきっとこの世界を発展させろと言う神達からの神託に近い物なのかも知れないな。そうとは知らずに俺は、数百年間自分の趣味に走っていた訳だが…。
実際、俺の館の畑では環境を一定に保っているので、不作になる心配は無いし必要な設備は全て俺が造るか魔道人形やゴーレム達が何とかしているみたいだし、初めの頃は何かと畑にも手を掛けていたが、そう言えばこの数百年は畑仕事に関わっていなかったな…次に館に帰る時には久し振りに畑にも顔を出そう。
神達から直接言われた訳じゃ無いから関係無いって言えばそうなのだが…今度、豊穣の女神や農業神や工業神に聞いてみよう…。素直に答えてくれるかは解らないけど。
「そうか、それなら農家が引き取りそうに無い物と、買い手が付いていない品を全て買い取らせてくれ」
いくら廃棄予定の物とは言え、農家が肥料として買いに来る物まで買い占めると流石に欲張り過ぎだな。少しは他のお客の迷惑も考えないとな。
「承知致しました、代金を計算いたします。因みに品物はどの様に運ばれますか?」
「1ヵ所に纏めて貰えると助かるかな、この部屋の物と使える薬草はまた別の部屋にお願い出来るかな?」
この言葉だけで俺が何をどうしようとしているのかは解る筈だし、理解出来なかったら商人としては勉強不足だな。
「解りました、では作業の方を進めさせて頂きますので、作業が終わるまでお客様は別のお部屋でお待ち下さいませ」
彼は俺が何をしようとしているのか理解したようだ。しかも別室に案内とは、一見の客でもお客はお客って事なのか。流石はこの町でも一番の薬草屋って、所かな?それじゃ遠慮無く待たせて貰おうか。
「此方へどうぞ」
そう言って案内されたのは応接室の一つで、内装にそれなりの金額が掛けられているが決して成金趣味でも華美でも無く、落ち着いた雰囲気の色と調度品で統一されたパッと見は豪華には見えない部屋だった。
「作業が終わりますまで暫く此方でお待ち下さいませ。飲み物などは係の者にお申し付け下さい」
部屋の隅には給仕服姿の若い女の子が立っていて、頭を下げた。
「解った、待たせて貰うよ」
「では作業に戻りますので、失礼致します」
そう言って店員が部屋から出て行った。しかし、若い女の子と密室で二人きりとは久々過ぎて緊張してしまうな。…って、俺にも未だにそんな感情が残っていたんだな…。人生数百年生きているけど未だ渇れて無かったんだな。うん、新たな発見だな。
暑いですね。
猛暑ですね。
そして熱帯夜ですね。
クーラーの無い田舎のボロ屋では、熱帯夜は地獄です。




