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マイペースな、おっさん放浪記  作者: きすぎあゆみ
引き籠りなおっさんの旅立ち編
28/34

おっさんを追う!

続きです。

何とか週一で投稿できています…。

宜しくお願い致します。

 俺が屋根の上から路地に降り立った先には、夜でも営業している1軒の店が有り≪カーリッツ薬草店≫と看板が掲げられていた。


 ドンピシャの狙いどおりに、目的の店の近くに来られたので先程俺の後を付けていた奴らの事等、どうでも良いかと思っていた。実際奴らの事よりも買い物の方が、俺からすると遥かに重要で必要で大切な事で有った。買い物の重要性に比べると…比べる比較対象にするのも憚れるな、奴等にはそれだけの価値を見出だせない。


 何の目的で俺の後を付けていたのかは解らないが、昔の様に≪気配察知≫や≪危険察知≫や≪危機察知≫の魔法を起動させているので、俺に近付いて来ると報せてくれるので今は買い物に集中しよう。




 裏通りの街灯が途切れた建物の陰に、武装した2人の男が暗闇の中に身を隠し気配を消していた。そこを通りかかる複数の気配。今日の獲物は1人だと聞いていたのに複数いる事に疑問に感じながらも、獲物が多いと言う事は今日の分け前が増えると思い、疑問より目先の欲が勝ってしまうそんな男達。


「待てっ!ここを通りたかったら…」


 待ち伏せしていた内の1人が剣を構えて、自分達の前を通り過ぎようとしていた者達の前へと躍り出る。


 そしてもう1人が退路を塞ぐかの様に、自分達の前を通り過ぎようとしていた者達の後ろへとこちらも剣を構えて進み出る。そこで異変に気が付いた。


「あれ?獲物は?」


「えっ?」


「奴が消えやがった!」


「何処に行きやがった?」


 待ち構えていた2人が足止めした者達は、おっさんの後を付けていた3人組だった。足止めをした2人も驚いたが、足止めされた3人もあまりの予定外な出来事なのでとても驚いていた。


「お前達が見逃したんじゃ無いのか?」


 待ち伏せ役の男が声を荒げるが、おっさんが居なくなってしまったのだから仕方がなくは無いのだが、獲物が居なくなってしまっては盗れる物も盗る事が出来ない。


「俺達はいつも通り少し距離を開けて付いて行っていたぞ」


 追い込み役の男達も黙っては居られない。いかにも自分達の落ち度の様に言われてしまうと、黙っている事などとても出来る物では無かった。


「そしたら何で獲物が居なくなるんだ?」


 待ち伏せ役の2人も自分達の落ち度ではない事を主張せずにはいられない。


「俺達にそんな事が解る訳が無いだろ!」


 追い込み役の男達も、自分達には落ち度が無かった事を言わずにはいられない。


 それはそうだろう、いくら犯罪行為と解っていても自分達の責任を問われるとなると、最悪自分達の身の安全が護れなくなってしまうからだ。自分達の落ち度や失敗で無い事は声を大にして主張しなければ…消されてしまうかもしれない。言葉通り、物理的に自分達の存在を含めて…。


「……!」


「……!」


 おっさんを狙っていた者達の責任のぬすくり合いは止まらない。足止め役が出てくるのが遅すぎたのやら、後を付けていた者達が距離を開けすぎたやら、折角夜の闇に紛れての強盗だった筈が大声を挙げての言い合いにまで発展してしまうと、本当に犯罪行為に手を染めて来たのか甚だ疑問には思うのだが?


 強盗を目的とした者達が言い争っているその場に、一台の馬車が静かに近付いて来ていた。2頭立ての貴人を乗せるための箱馬車で馭者席は2人掛けになっており、武装した馭者兼護衛が2人並んで掛けていた。箱馬車の本体はと言うと、馬車本体の色もワインレッドに塗装されそこに金細工や宝石等で派手に所狭しと飾り付けられ、更には金細工で作った家紋まで取り付けられていた。


 成金趣味全開に飾り立てられた見ていると目の痛くなる様な馬車だ。しかし流石にお金が掛かっていると言ってもそれはあくまでも外見に限った事で、馬車その物の性能に関しては普通の馬車でしかなく、成金の宣伝用の馬車としか言い様の無い代物だった。


 馬車が近付いて来ている事に気が付いた強盗達は一瞬争う事を止めて馬車を警戒したのだが、直ぐにその警戒を解いてしまった。何故ならばその馬車の持ち主はこの町では良くも悪くも名の知れた有名人で、彼等にとっても関わりの有る人物だったからだ。


「ん、ん、ん、何事ですか道の真ん中で騒々しい!」


 その馬車の持ち主と言うのは、おかっぱ頭の成金魔法使いのリグード氏であった。


「「「「「お疲れ様です、リグードさん」」」」」


 強盗達は1列に整列してリグード氏を出迎える。強盗を働く割に礼儀も少しは心得ているらしい。それはそうだろう、堅気では無い者ほど上下関係の厳しさや理不尽さが顕著だからだ。


「リグードさん済みません、奴を見失ってしまいました」


 強盗一味のリーダーなのか、1人の男がリグード氏に報告している。人族社会において何らかの理由でグループを形成するとなると、報・連・相はとても重要になってくる。たった一つの情報が伝わらなかったが為に大きな損害を被ったと言う様な話は枚挙に暇がない。それを思うと、彼等のグループはその点だけはまともなのかも知れない。やって居るいる事は、ただの犯罪行為なので他人に誇れる事では無いのだが…。


「ん、ん?私の聞き間違いですかね。もう一度お願いします」


 そんな報告を耳にしたリグード氏は、自分の聞き間違いかと思いもう一度報告をする様に強盗のリーダーに促す。見た目は豪華な指輪を着けた小指で、自らの耳をホジリながら…。


「…リグードさん申し訳有りません、奴を見失ってしまいました」


 もう一度報告を聞き直したリグード氏は、ほじっていた指を耳から抜くと指先を一度確認すると、指先に付いていた耳垢をフーッと息を吹いて飛ばした。


「…見失ってしまいました?それなのに貴方達は道の真ん中で言い合いをいていたのですか?」


 リグード氏の目が少しずつ細まって行き、その表情も強張ってしまう。


「…いえ…何処で見失ったのかの…確認をしていたところです…」


 そんなリグード氏の表情の変化に気が付いた強盗リーダーは、今更ながらリグード氏の歪んだ性癖を思い出すと背中に冷たい物を感じてしまうが、出来る限りその矛先が自分に向かない様に祈りながら、しどろもどろになってしまったが何とか報告をすることは出来た。


「それで?何処で見失ってしまったのですか?奴を探し出す目処は付いているのですか?」


 リグード氏の強盗リーダーを見る目は、最早要らなくなってしまった物を見る様に何の感情も感じられない。正に路傍の石を見る様な、そんな無感情な目で見つめられ強盗リーダーは全身から汗を噴き出してしまっていた。


「…いえ…有りません…」


「…有りません?無いのに道の真ん中で騒いでいたのですか?」


 その一言で更にリグード氏の機嫌は悪くなってしまい、もしもリグード氏の瞳が相手を呪い殺せる魔眼ならば、今頃強盗リーダーは死んでしまっていただろうと思わせる程に冷たい感情を読む事が出来ないくらい冷めた目をしていた。


「…はい、申し訳有りません」


「…そうですか…」


 リグード氏は冷めた目で、強盗達を一瞥する。


「……!」


 そして他人には聞き取ることの出来ないように、小声で何かを口ずさむ。


「ぐはっ…」


「おっ…」


「ううっ…」


「……」


「ああっ…」


 その直後、強盗達は胸を掻きむしる様にしながら次々と倒れ込んでしまう。


「これで少しはやる気になりましたか?」


 冷たい視線で苦しむ強盗達を見ながらそう口にするリグード氏だが、人族に対する扱いと言うより家畜やペットを躾ている感覚なのだろう。当然躾られている側にも言い分は有るのだろうが、この状況で反論出来る者は誰一人として居ない。


 リグード氏の護衛の2人も巻き込まれては堪らないと思っているのか、護衛として辺りを警戒こそしているが関わろうとしない。


 苦しむ強盗達を見て怒りが収まったのかそれとも自らの手を汚したくなかったのか、強盗達の顔色が血色の無い物に変わり始めるとリグード氏はもう一度小声で何かを口ずさむ。


「……!」


 そうすると先程まで苦しんでいたのが嘘だったのかの様に、強盗達は胸元を掻きむしるのを止めた。そんな彼等の顔色も少しずつだが血色が良くなっている。。全身から多くの汗を噴き出していて荒く早い呼吸を繰り返している。


「この様に苦しみたく無いのでしたら、奴を捜し出して私の元に連れて来て下さい」


「「「「「……」」」」」


 リグード氏が声をかけても反応が無い。それはそうだろう苦しみから解放されたばかりなのでそれ所では無いのだから。しかしリグード氏にはそんな事は関係無い。彼等の行いは自業自得だと思っているのだから。


「解りましたか?」


「「「「「…はい…」」」」」


 強盗達は何とか全員が起き上がれる様になるとこれ以上ここにいるともっと酷い目に合わせられると思ったのか、慌てて我先にと薄暗い夜の町に消えて行った。

花粉症の薬を飲んでいますが、鼻と目の調子が…。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] “ぬすくりあい”はさすがにわからなかったので、できればなすりつけ合いとかにして頂いたほうが良いのではないかと思います。
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