おっさん次の行き先は?
続きです。
桜の季節ですが、相変わらず花粉の猛威が凄いですね。(クシュン)
宜しくお願い致します。
俺は豪華な装飾で飾り付けられた皮製のケースから一枚ずつ数えるように白金貨を取り出し、合計20枚の白金貨を10枚ずつで2山カウンターの上に積んだ。
「1、2、3…20っと、爺さん代金の白金貨20枚だ確認してみてくれ」
店主の爺さんは俺のそんな様子を多分とは思うのだが、静かに見ていた。しかし、俺の背中側はそうでは無かった。複数の視線が感じられ、何だかむず痒い。その視線には、嫉妬や羨望、欲望や殺意まで感じられる。俺からしてみればその様な視線など慣れているので全くと言っていい程何も感じないのだが、何と言うか鬱陶しく思うのだけは仕方が無いだろう。
「いや、確認する必要は無いじゃろうが、まあ、そう言うのなら一応確認させて貰おうか」
そう言うと店主の爺さんは、俺の積み上げた白金貨を一枚ずつ隣に積み替えながら数え始めた。
「確かに白金貨20枚確認した、毎度有り。そしてこれは保証書と鑑定書じゃ」
数え終わった白金貨を自分の持つ皮製のケースに入れると店主の爺さんは、そんな事を言いながら紙の束をカウンターの上に置いた。約30個の魔石と魔法石の保証書と鑑定書、計六十枚の紙の束。
「何だ爺さんこの魔石達は書類付きなのか?でも俺は使う為に買ったのだからこの書類は直ぐに紙切れになってしまうぞ?」
最悪の場合には使い捨てになるかもしれない物なのに保証書と鑑定書が付いて来るとは、資産としての価値として見るのなら理解出来るのだが俺の場合は本当に使ってしまうからな。有っても無くてもどちらでも良いのだがな…。
「そんなもんは気にせんで良いよ。高価な品の取引だったから形式として渡しただけじゃ」
気にしなくても良いと言われても、保証書と鑑定書を作る手間もタダでは無いと思うのだが、店主の爺さんがそう言うのならそう言う事にしておいた方が良いんだろうな。
「解ったよ、爺さんがそう言うのなら、有り難く頂いておくよ」
「折角作った物じゃからな、そうしてくれるとワシも作った甲斐が有るって事よ」
今日始めて来た店だから店主の爺さんの性格がいまいち掴めないのだが…怒ったと思えば機嫌が良くなったり…まさかとは思うのだが呆けているとかでは無いよな?
「…何じゃ?ワシの顔に何か付いとるのか?」
俺がそんな不躾な事を考えていたので無意識に爺さんの顔をみていたのだろうな、また爺さんの機嫌を損ねてしまったみたいだ…。
「い、いや…思いの外良い買い物をさせて貰ったから、有る所にはお宝が有るもんだなって思ってだな…」
「その割には生暖かい視線を感じたんだがワシの気のせいかの?」
この爺さんは本当に鋭いな。俺ってそんなに表情を読まれ易かったっけ?
「…そんな事は無いと思うぞ…おっ俺は年上は敬う事が出来る、おっ大人だからな!」
「…あま、そう言う事にしておいてやろうかの」
何とか矛を納めて貰って助かった。近年人との関わりが無かったから、ついうっかりと表情に出てしまっていたのかもな。もう少し気を引き締めた方が良いのかもな…。
「…それじゃ他のお客も居る事だし俺はこの辺で失礼するよ。今日は本当に良い買い物をさせて貰った、次は何時になるのかは解らないが、その内また寄らせて貰うよ」
「おお、ワシも久しぶりに良い取引をさせて貰った。また寄ってくれ」
結局この爺さんの性格は良く解らんが、機嫌を直してくれたのならそれで良いか。
「了解した。また寄らせて貰うよ、それじゃ失礼するよ」
「是非とも寄ってくれ、毎度あり!」
俺と店主の爺さんは握手を交わした。何だかんだ言ってこの店の品物は物が良いので、近いうちにまた寄る可能性も有るからな。
俺が魔石屋を出て、裏通りを歩き出して暫くすると、俺と一定の距離を取って後を付けてくる気配に気が付いた。
そう言えばこの数百年他人との関わりが希薄になっていたせいで、気配察知系の魔法類は使っていなかったな。人族社会で生活していた時には常に≪気配察知≫や≪危険察知≫や≪危機察知≫等の魔法を発動させていたのだが、流石に数百年も引き籠もっているとそういった感覚も忘れてしまって居たらしい。
俺の後を付けて来る奴の気配の消し方が下手なのと、人と接する事で少しずつ昔の感覚が戻りつつ有るからなのと、それともう一つ実は俺が使役している夜行性の鳥や動物からの報告も有ったからなのだがな。
だからと言う訳では無いが、俺が先に付けて来る奴の気配に気が付いて、その直後に動物達からの報告が有った事は断言させて貰おう。決して動物達からの報告で、付けて来る奴に気が付いた訳では無いからな!
取り敢えずは≪気配察知≫や≪危険察知≫や≪危機察知≫の魔法を起動させた方が良いだろうな。面倒な揉め事に巻き込まれるのも嫌だし、明らかに悪意の有る者達と関わるのは御免だからな。
…しかし、夜なのに暇な奴も居たもんだ。って、夜なので目撃者も少なくなるからって事だよな。1、2、3…俺の後を付けて来る者が3人。そして俺の前方を塞いで、俺を足止めしようとしている者が2人か。
俺を普通のおっさんと思っているのなら問題の無い人数だと思うが、もし仮に俺の正体を知っているとしたらこの世界最高峰の強者を集めた事になる訳だが…それは無いか。
さてと、どうしたもんかね。5人程度なら囲まれても問題は無いのだが。立ち止まってしまうと、奴らに俺が尾行されている事に気付かれたと思われる可能性が有るが、気が付いていないふりをしてこのまま進み続けるか、はたまた後ろに戻ってみるのか…どうするかな?
「…いや、待てよ…」
先程起動させた≪気配察知≫や≪危険察知≫や≪危機察知≫の魔法に反応が有った。…後ろの3人のそのまた後ろには、馬車が少し距離を開けて付いて来ている事を魔法が報せている。魔法が反応していると言う事は、俺に何らかの悪意を持つ存在と言う事になる。多分この馬車の中に首謀者がいると思うのだが、折角の買い物の邪魔をされるのも癪だよな!
って事で君子危うきに近寄らず。別に君子では無いが、面倒臭いから逃げるが勝ちって事で!
「その前に、奴等をマーカーしておこう」
俺は更に使役している動物と共有し連動している≪地図≫魔法に奴等の位置を表示させるために、起動させていた≪気配察知≫の魔法に奴等の存在を登録した。
この≪気配察知≫は≪危険察知≫や≪危機察知≫や≪地図≫魔法と連動しているので、登録している者が何処に居るか一目で解るし、例え≪地図≫魔法を起動していなくても一定の距離よりも近付くと≪気配察知≫や≪危険察知≫や≪危機察知≫が教えてくれるのでとても助かるのだ。
そう言う事なので俺は自身に無詠唱で≪身体強化≫と≪軽量化≫と≪空歩≫の魔法をかけると、強化と軽量化された身体で目の前の建物の屋根に向かって飛び上がり、屋根の上に飛び乗った。一発で屋根の上に上がれたので≪空歩≫の出番は無かったのだが、今から活躍すると思うので問題は無いかな。
≪飛翔≫や≪浮遊≫等の魔法でも良かったのだが、屋根から屋根への移動になるので、自身の≪身体強化≫と≪軽量化≫ともしもの時のための≪空歩≫は外せなかった。
「さてと、暫し夜空の散歩でも楽しみますか」
俺は建物の屋根から屋根へと飛び移りながらの、移動を開始した。と言っても、俺の前方を塞ぐ役目の2人の後ろに回り込めれば良いので、そこまで時間は掛からないだろう。と思ったのだが建物の屋根の高さが違うので、意外と歩き難い。この辺りの建物は2階建てか3階建てが多いのだが、この通り沿いの建物もそうなのだが2階建てと3階建てが交互に建っているので、上がったり下がったりと上下の移動が多く≪空歩≫の魔法が大活躍だ。
屋根の上での更なる上下移動が有ったのだが、強化と軽量化された身体と≪空歩≫を使って、裏通りの路地を2つ程飛び越えると俺の前を塞ぐ役目の2人を飛び越えられたし、更には次の目的の店の近くに来る事が出来た。
≪身体強化≫と≪軽量化≫と≪空歩≫の魔法の効果を活かして、建物の屋根から再び路地へと降り立つ。
次に行くのは薬草屋だ。この町は辺境の町なので、魔石同様に辺境ならではの珍しい薬草や希少な薬草を取り扱っているのだ。まあ、それも金次第なのだがな。それだけ珍しい薬草や希少な薬草になると、当然値段も高くなってしまう。流石にそんなに珍しい薬草や希少な薬草となると使用する場面も限られるし、余程の事が無ければ使用する事は無いだろう。
しかし、俺が欲しい薬草はそんな
珍しい薬草や希少な薬草では無いので関係は無いのだけどな。
何故ならば俺の住んでいる山奥の館にはそれこそ、珍しい薬草や希少な薬草が普通にそれも大量に生えているので、欲しい時には欲しいだけ採取する事が出来るのだからな。今回の俺の狙いは、俺の館の周りで採取する事の出来ない、ごくありふれた薬草の数々なのだ。しかも、品質もそこまで拘る必要も無いので、目的の薬草で有れば腐っていなければ多少の痛みや品質の悪さ等関係無く、薬草で有りさえすれば良い程度の物が欲しいのだからな。
人族の生活圏の周りのそれこそ山や森の中などでは何処にでも当たり前の様に生えている薬草、種類こそそれなりに有るのだがその薬草が俺の目的の品なのだ。
感想やアドバイス等頂けると嬉しいです。




