おっさんの大人買い
続きです。
前話と今話で内容の辻つま合わせに四苦八苦しました。
やはり、勢いと思い付きでは限界が有るかもです…。
宜しくお願い致します。
目の前に並べられた魔石と魔法石の質は申し分無く大きさも俺の握り拳より大きく文句の付けようが無い一級品だ。
「それで爺さん、一体いくらなら売ってくれるんだい?」
果たしてそのお値段は……。
「そうさのう…ワシの血と汗と涙と金と趣味の結晶じゃからのう…」
趣味と言うのは解らなくも無いが、金とは何だ?投資か?安い時に買って高くなったら売り払うとか?そうなのか?
「血と汗と涙は解らんでも無いが、趣味も何とか理解しよう。だけど金は俺には理解が出来ないぞ!」
「金と趣味は、物が物だけに魔石と魔法石を集めるのに莫大な金が掛かったって事じゃよ」
解らんでも無いがそれはあくまでも爺さんの問題で有って、俺には関係が無いと思うのだが。
「なんだそりゃ!まさか爺さん吹っ掛けるつもりか?」
「そうとは言っとらん、ただ単純に色々と経費が掛かったから、その経費分も上乗せして計算しないといけないと思っただげじゃ!」
それを世間では吹っ掛ける又はぼったくるって言わないか?
「仕入れで掛かった経費なら理解出来るが、訳の解らん経費なんかは俺は知らんぞ!」
「まあ、お大尽様がそんなに小さな事に目くじらを立てなさんな!」
それを言うなら爺さんもそれなりに資産を持っているだろうに、そこはスルーなのか?
「いや、爺さんがぼったくろうとしているからだろ!」
「何と人聞きの悪い事を言うまいて、商品の仕入れに経費が掛かるのは当然の事じゃて」
ああ言えばこう言う…中々喰えない爺さんだな。長年商売をしているだけあって、のらりくらりとかわされている気がして俺の方が焦ってしまう。
「あのな爺さん、正当な経費なら理解出来るが、それ以外は俺には関係の無い経費だぞ」
「まあまあ、若いもんがそんな小さな事を気にする必要は無かろうて」
あのな爺さん本当は俺の方が遥かに歳上なんだって、流石に言える訳無いよな…。喉元まで出かかっているけど、言えないよな。
「いやいや、ワシ良い事言ったみたいに言って流さないでくれ」
「チッ若い癖にケチじゃのう」
この爺さんは一筋縄では行きそうに無いな。落としどころを見付けたいのだがどこだ?
「おいおい爺さん、今舌打ちしたよな?俺は客だぞ!」
「それがどうした?ワシはこの店の店主じゃぞ!」
おいおい、ここで開き直るのか?まるで俺が弄ばれている気がしてならないのだが…。そんな事は無いよな!
「…なんか物凄く疲れるんだが…」
「お前さんが素直に金さえ払ってくれれば丸く収まると言うのに…」
負けた気分だ…この爺さんには口では勝てない気がしてならない。俺もまだまだだな!
「はいはい解りました!常識の範囲内なら払うから、金額を教えてくれ!」
「はいは一回で良いって親から教わって無いのかの?初めから素直に払えば良いんじゃ!」
全く何て爺さんだ!善良な俺から金を巻き上げるとは。この世に神は居ないのか?って俺の知り合いが神だったか…。
「爺さんあんた良い性格してるな!」
「はっはっはっそんなに褒めてもびた一文負からんぞ!」
何てガメツイ爺さんだ。良くこんな店が潰れずにやって行けるな…。何故だ、世界の七不思議か?
「だから褒めてねえーって!」
俺の悲痛な心の叫びだな!
そして出ました、運命の結果!ハンマープライス!
「そうさの…お前さんなら白金貨20枚でどうじゃ?」
店主の爺さんはニヤリとした表情で、驚きの金額を言ってきた。
「えっマジで?」
俺はあまりの金額に驚いてしまった。それはそうだろう、滅茶苦茶吹っ掛けられると思って身構えていたのに、驚きの良心価格。って言っても、とても一般庶民には理解する事の出来ないとんでもない金額なんだが。
この世界の一般的な貨幣が、小銅貨(¥10設定)、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨からなる。小銅貨10枚で銅貨1枚、銅貨10枚で大銅貨1枚と言う様に10進歩で繰り上がっていくのだが、大銀貨1枚で4人家族の一般庶民なら一週間から10日は生活する事が出来るだろう。金貨5枚有れば余裕で一年間生活する事が出来る金額だ。
そして白金貨20枚…都市とまでは言わないが、かなり大きな町の予算程の金額かな?これだけ質の良い魔石と魔法石の代金と考えればほぼ原価じゃ無いのか?それともこの金額で売っても店主の爺さんには利益が出るとか?
「なんじゃ今更!それだけの持ち合わせが無いとは言わせんぞ!」
「いやいや爺さん…あまりの良心価格で驚いただけだから…」
本当にビックリしたよ。白金貨25枚くらいかと思っていたのに、それよりも遥かに安い金額だったからな。それでも金額的にはとんでもない金額では有るのだが…。
「だから言ったろう、物の価値が解る者に売ると!」
何故か俺って店主の爺さんに怒られれる?もしかしてだけど?
「それは確かに聞いたけど…この金額って殆ど原価じゃ無いのか?爺さんに儲けは有るのか?」
「若いもんがそんな事を一々気にするな」
いやいや、店主の爺さんが何歳かは知らないが老後の資金とか葬式代とか必要だろう?こんなに安く売って爺さんの生活は大丈夫なのか?
「いや気にするだろう。これに掛かった保管や移動の時の警備の経費とか、色々と金を使ったんじゃ無いのか?」
「その分くらいは載せているから大丈夫じゃ」
経費を載せてこの金額って本当か?確かに自分で魔石と魔法石を加工出来ればって…そう言う事か!
「本当かよ?」
俺は何となく安く売っても何故利益が出るのかが解ってしまったから良いか。
「ああ、問題ない!」
爺さん良い笑顔だな!してやったりって感じが溢れているぞ。
「解ったよ爺さんの言った金額で、買わせて貰うよ」
流石は辺境の町だな。なかなか凄腕の魔石と魔法石の職人がいるとは恐れ入ったよ。
「解れば良いんじゃ」
「ったく、変な爺さんだな」
おっと口を滑らせてしまった。半分はわざとなんだが、これくらいの反撃くらいは大目に見てくれると良いのだが。
「なんじゃと?変とは何じゃ、変とは?」
「悪い、変じゃなくて変わった爺さんだな」
歳の割には耳は良いし気も短い。おまけに一筋縄ではいかない役者と来たもんだ。
「どっちも同じ事じゃろうが!もっと目上を敬え!」
「…いや、敬ってるだろ?」
ったく、本当に元気な爺さんだな、こりゃ老後の心配なんてまだまだ必要が無さそうだな。
「知るかっ!」
「全く…」
そこでふと気が付いたのだが、おかっぱ頭のリグード?氏が物凄い形相で俺達の遣り取りを見ていた。…睨み付けていたの方が正しいのかな?
店主の爺さんに適当にあしらわれ、俺からも相手にされず…。ってか、存在をすっかり忘れていたよ、未だ居たのか。
目付きで人を殺せるのなら、今のリグード氏の表情が当にそれだな。細かった目が更に細くなり、歯を噛み締め鼻息も荒くなっている。呪われてしまいそうで、何だか怖いな…。
取り敢えずは気が付いていない事にしておこう。
「爺さん現金で良いかい?」
「そりゃそうじゃろう。お前さんは一見さんじゃからの、現金一括払いで無いと売る事は出来んぞ」
確かにそう言われればそうだよな。一見の俺に貴重な物を見せてくれるだけでも有り難いというのに、売ってくれるとは。爺さんは神様か?いや、違うか!
「解ったよ。これだけ貴重な物を買わせて貰うんだ、俺も誠意を見せないとな!」
そう言って俺は懐から革製の豪華な装飾がされた薄いケースを取り出した。
「やはりお前さんはお大尽様じゃな!」
店主の爺さんはこのケースが何か知っているみたいだ。だがそれも当然の事だろう、この革製のケースは白金貨を入れる為に造られた専用のケースで、これだけの商品を扱う店主の爺さんも当然持っているだろうし、俺以外のお客でも持っている者が当然いる筈だ。
中に納める物が物だけに、登録した者以外では開く事が出来ない魔法のケース。王族、大貴族、大手商会等持っているものは限られているし、一般人にはその存在自体が殆ど知られていない一品だ。このケース自体の価値もそれなりに有るので、売れば一般庶民の生涯収入くらいにはなるのかも知れない。
俺はケースから白金貨を一枚ずつ取り出し、カウンターの上に重ねて行った。
…でも、勢いと思い付きで進めてしまうのでしょう…ね!




