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マイペースな、おっさん放浪記  作者: きすぎあゆみ
引き籠りなおっさんの旅立ち編
20/34

おっさんと宿とその他と

続きです、宜しくお願い致します。

 創作料理ザ・ゼンを出た俺は、ルーチェちゃんとアービィー君と共に裏通りの細い路地を抜け、大通りへと出て来た。この辺境の町アスケレードに入ったのが昼過ぎだから、もう少ししたら日が暮れて来る時間になっていた。


 この辺境の町アスケレードは、いつ何時何処かの勢力に攻め込まれても良い様に町の造りが少し変わっていた。何処かの勢力と言うのは外国の軍勢で有ったり魔物の軍勢で有ったりと人族の軍勢とは限らないし、もしかしたら魔物の氾濫の可能性も有るので一概には言えないげどな。


 何処かの勢力に攻め込まれてもある程度持ち堪えられる様に、その間に一般市民を頑丈な建物に避難させる事が出来る様にと考え設計され造られた町それがここアスケレードの町だ。この町の通りで馬車が通れる幅の道を含め、真っ直ぐな道は殆ど無い。僅かに弯曲していたり、突然直角に折れていたり、はたまた行き止まりになっていたりと、この町で生まれ育った者でも普段行かない場所では迷う事が有る、そんな困った事も度々有るとか無いとか?


 しかし基本的に町の重要な施設は大通りに面しているので、その辺りは他の町と同じになっている。町の各役場や公共施設、神殿や商業施設等が基本的に大通りに面しており、そうで無い場合は大通りから一本入った通りに大体造られているか、町に入って直ぐの場所に有るかが町造りの基本かな?


 普通?の町では町の中心から大体四方へ大通りが伸びていて、大通りと町を囲う外壁が交わる所に門を造りそこから街道へ出る事が出来るのだが、この辺境の町アスケレードではその常識は当てはまらないから少し面倒な気もする。


 一体何処のどいつがこんな迷路の様な町を設計したのか問い詰めたい所だが、それはブーメランになるので辞めておこう。この町を設計した時には、人族と魔族問わず様々な種族が互いの生存圏を護るため、または広げるために血で血を洗う争いを繰り広げていて、その争いが漸く収まると言う時に態々この辺境に新たに町を造る事になったのが始まりだった。そこで趣味と実益と悪乗りを兼ねて俺が設計してしまったのだ!


「ライナーさん、それでは私達は神殿に戻りますのでここでお別れですね」


 ルーチェちゃんが少し寂しそうに?言ってきた。確かにこの先に神殿らしき建物が見えるな。


「ああ、何か色々有ったけど楽しかったよ」


「じゃ、さようなら」


 アービィー君は相変わらずだな。そう言うと一人で神殿に向かって歩き出してしまった。


「ライナーさんに豊穣の女神様のご加護があらん有らん事を!」


 ルーチェちゃんが俺のために祈ってくれたのだが、何処まで効果が有るのやら…。だって、豊穣の女神様は少し苦手なんだよな…。


「では失礼致します。また、会えますように!」


「ああ、また今度?」


 ルーチェちゃんはお辞儀をするとアービィー君を追いかけて行ってしまった。何とも忙しない事だな。もう少し余裕と言うか落ち着きが有ると、貴族の令嬢として何もおかしくは無いのだが、あの性格が少し残念な気がして勿体無いな。


 大通りに出てルーチェちゃんとアービィー君の二人と別れたので先に宿を確保する事に予定を変更しておこう。少し別の買い物をする用事も出来た事だしな。


 俺は山奥の館を出発する前にこの町の下調べをした際、目星を付けていた宿に向かう事にした。大通りに面している宿はかなり料金がお高いのと俺の見た目が見た目なので、料金がそこそこでプライバシーが保たれている宿を何件か候補に上げていた。まあ、食事の質と量も候補に上げる際には、選考基準にはしていたけどな。


 そして今俺が向かっている宿は、俺が候補に上げた宿で一番のメシウマの宿だ。元々は大通りに面した高級宿の料理人として働いていた主人が独立して、奥さんや親族とで開業した宿でこの町でも一二を争う程の料理の質と量を誇り、しかも値段はそこまでお高く無いと来たらそれは一度は泊まってみたいよな!


 そう言う事なので俺は使役している鳥に、空から目的の宿までの道案内をして貰う事にした。使役している鳥による空からの目線が俺の頭の中に浮かび上がる。鳥瞰図とでも言えば良いのだろうか?要は町の様子を上から俯瞰して見る事が出来て、しかも目的の店等には予めマーカーを付けているので、その店までの最短距離や人通り等によって数種類の道順が示され、その道順に従い勝手気儘に歩いて向かう。少し道を外れたとしても、その都度新たに道順を変更出来る仕様なので、とても便利な物で出掛ける時には何時も大変重宝している。


 頭の中に浮かび上がる道順を元に、気になる店を見付けては立ち寄ったりと道草を食いながらあっちにフラフラこっちへフラフラと歩いていると、漸く目当ての宿に着く事が出来た。


 その名も≪旨い飯屋亭≫いくら料理自慢の店だからと言って安直過ぎでは無いだろうか?誰もこの名前に反対はしなかったのか、そんな事を考えるのは俺だけか?


 大通に有る宿屋に比べると建物は小さいが、それでも宿屋と言うだけ有って裏通りに建つ他の建物に比べると大きいのが目に見えて解る。三階建ての建物で一階が食堂兼飲み屋兼店の関係者の住まいなのだが、その食堂には夕食前の時間の筈なのに賑わっているみたいだ。


 少し間を空けて並んだ二つのドア、左から≪宿屋旨い飯屋亭≫と≪食事処旨い飯屋亭≫


 俺は左側のドア≪宿屋旨い飯屋亭≫と表示の有るドアを開け店の中に入った。ドアを開けると「チリーン」と鈴が鳴りドアを閉めると再度鈴が鳴った。


「いらっしゃいませ、お泊まりですか?」


 建物に入るとドアの横に人が通れる巾を空けてカウンターが有り、そこが受付になっていた。外にはドアが二つ有ったのだが、中で繋がっているとはどういう事なのか?その通路とカウンターの向こうにはほぼ満席の食堂が見えているので、混雑を避けるために敢えて宿と食堂の入り口を分けたのかな?


 受付に居たのは若い人族の女性だが、いや、若い女性と言うよりは女の子…子供が踏み台に乗っているのか?この宿屋の子供かな?


「ああ、泊まりで取り敢えず一週間頼む」


「かしこまりました、お食事はどうされますか?」


 見た目は子供なのだが言葉遣いもしっかりしていて、この宿の看板娘か何かかな?


「朝晩食事付きで頼む」


「かしこまりました、それでは七日のご宿泊で朝夕の食事付きで宜しいですね」


「ああ、それで頼む」


「それではこちらの台帳にお客様のお名前の記帳と、先払いで代金の銀貨七枚をお願い致します」


 七泊で大銀貨七枚、高くもないが安くも無い。この国や周辺国の貨幣は、銭貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨になり、大銀貨一枚で四人家族が切り詰めれば一ヶ月生活出来る金額になるので、それを思うと、少し高いのかも知れないな。


「はいよ」


 俺は台帳に「ライナー」と偽名で記帳すると、代金の銀貨七枚を女の子に支払った。


「確かに、銀貨七枚お預り致します、それではライナーさんお部屋に案内しますね」


 言葉遣いだけで無く字も読めるとは、どう見ても十歳にはなっていないと見えるが家の手伝いのために頑張って勉強したのだろうな。そう言えば計算も出来るみたいだし、なかなかの頑張り屋さんだな。


 そんな事を考えていたのが悪かったのだろうな、気が付いた時には俺を部屋まで案内してくれるために前を歩いている女の子の頭を撫でてしまっていた。


「…あの…ライナーさん…」


 俺の前を歩いていた女の子が、振り返り赤く染めた顔で上目遣いに俺を見上げて来る。


「すっ、済まん!お嬢ちゃんの頑張りを見ていると、つい撫でてしまっていた!」


「…いえ、ありがとうございます」


 そんな無作法な俺の行為に対して、女の子は怒る事も無く恥ずかしそうにするだけだった。ふう、衛兵への通報沙汰にならなくて良かった。


 階段を上がり三階の一室に案内された。


「ライナーさんこちらの部屋をお使い下さい」


 鍵を空けて部屋のドアを空けると、女の子が部屋の中に案内してくれる。


「ああ、ありがとう…お嬢ちゃん」


「…ナリアです」


 そう言えば名前を聞いていなかったな、幾ら何でもお嬢ちゃんでは不味かったかな。


「ありがとう、ナリアちゃん」


「はい、どういたしまして、夕食の準備が出来ましたらお呼びしますね、それでは失礼します」


 そう言うとナリアちゃんは一階の受付へと戻って行った。異様に長く感じられる一日が漸く終わりに近付いて来たが、まだこの宿の料理を食べていないし他にやる事を思い付いたので、先ずは部屋で少し寛ぐとしようかな。

可能で有れば、週一で投稿出来る様に頑張るつもりです。

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