おっさん未知の料理を食す
続きを投稿しました。
宜しくお願い致します。
俺は一番手前に置いて有った、スープ状のカリーをスプーンで掬い口に運んだ。スプーンを口に近す付けると香辛料の香りが鼻を抜け、更に食欲を掻き立てる。スープには細かく砕かれた香辛料の小さな欠片と油がが浮かび色鮮やかな野菜達が浸かっている、匂いに釣られて見た目も食欲を掻き立てる。
スープを口に含むと、動物から取ったスープと若干の甘味と酸味を感じられた。香辛料の香りからは想像出来ない濃くはない味付け、そこでスープを飲み込んだ時に異変が起きた。口の中を少しずつ辛さが込み上がって来る。辛みを感じるが決して辛過ぎる訳では無い。もう一口欲しくなる、そんな辛さだ!
もう一口欲しくなる、しかし大きなお盆の上には他にも何種類ものカリーがある。だが、このカリーをもう一口味わいたいと言う欲求を押さえる事は難しい。。そこで俺の目に入ったのが白いライスと黄色いライスそしてナンだ。
俺はスプーンで白いライスを掬うと、先程食べたスープ状のカリーにライスを軽く浸し口に運んだ。一口目とは違い動物のスープと白いライスの甘味と香辛料の香りが口の中を満たし、予想通り後から辛さが追いかけて来る。しかし今回は、辛味を白いライスの甘味と香りが中和してそれは旨味に変わってしまった。これには俺の予想を裏切られた、白いライスは辛味を軽くする為の物かと思っていたのだが、白いライスはカリーをまろやかにしてより美味しくする為の調味料の役割も果たしていた。
白いライスで食べると、カリーはより美味しく変化した。となると、大きなお盆の上には黄色いライスとナンが有る。このナンでカリーを食べると、カリーはどの様に変化するのか?俺はこの考えが頭に浮かんだ瞬間好奇心には勝てず、無意識の内にナンを一口大に千切りカリーに浸し口に運んだ。
カリーと少し焦げた麦の香りと甘味とナンに仄かに付けられた炭の香ばしさ、それらの味と香りが口の中で混ざり合いそれを更に辛味が追いかける。
残るは黄色いライスだ!俺はスプーンで黄色いライスを掬うと、匂いを嗅いでみた。鼻に抜ける爽やかだが若干植物独特の匂いと極僅かな泥臭さ?を感じる。これは泥臭さでは無く、芋等の土中で育つ野菜が持つ土中の養分の匂いか!それは腐葉土に似た養分の匂いだ。しかし極僅かな匂いなので気にはならない。
黄色いライスをカレーに浸して口に運ぶ。黄色いライスは、香辛料の香りをより引き立て、黄色いライスはカリーの具の一つになった様に鳴りを潜める。しかし、食感は残るのでライス独特の少し芯の残った食感と増幅された香辛料の香りと味を楽しむ。香辛料の香りが濃く感じられるので、辛味も強く感じられるがその他の香辛料も主張しているので辛味はしつこく無い。黄色いライス、これは香辛料と野菜の共演を楽しむ為の指揮者だろう。
この一言が有れば充分だろう。それ以外の言葉は無粋に感じる。
「旨い!」
俺はそう言って、その他三人の顔を伺う。ルーチェちゃんとアービィー君は味が変化する度に驚いて表情を変えているが、食べる手を止める事は無く無言で食べ進めている。俺の視線にも気が付いていない。アービィー君は気が付いているだろうが…。
ウォレンツ君も、無言になり夢中にカリーを食べ進めている。ウォレンツ君が連れて来てくれた店だが、当の本人は絶賛カリーと格闘中だ!
俺は口休めに野菜炒めと肉炒めを食べて口の中をサッパリとさせる。
そして次のカリーへと移る事にした。とろみの有る豆のカリーだ。スプーンで掬い一口含む。だがこのカリーは先に辛味が来るカリーだ。しかし辛味と動物のスープが混ざり合い、辛味の中から旨味と豆の甘味が追いかけて来る。
当然、ライスとナンで風味の変化も味わう。
そしてその他のカリーも同じ食べ方で一通り楽しむ。そこで更に味変を楽しむ事にする。
それは、カリー同士を混ぜると言う、この辺りではマナー違反とみなされる禁断の行為だ。
俺はライスの皿の端に、二種類のカリーをスプーン一杯ずつ掛ける。ライスとカリーを軽く混ぜてスプーンで掬い口へと運ぶ。俺はここで更に衝撃を受けた。全く味の異なるカリー同士が混ざり合い、更にライスが味をまろやかにしてくれる。そしてナンでも食べてみる。それは当然ナンにも合い、ナンがカリーの味を更に旨くさせる。
そしてカリー同士の別の組み合わせを何種類かで味わい、カリーの残りが少なくなった所で全てのカリーを混ぜて口へと運んでみた。カリーは冷めて温くなっていたが、温くなった事で辛味が和らぎそれがまたカリーを飽きさせない。
ライスと全てのカリーを混ぜ、更残った野菜炒めと肉炒めも混ぜそれを残りのナンの上に載せて食べる。少し行儀は悪かも知れないが、俺は最後の〆に全部混ぜを全部載せにして食べる。混ぜる事で増した旨味と辛味が刺激的で、そしてそれを追い掛けるように付いて来る甘味と酸味が味を纏めてくれるので、それ又が旨い。
カリー、それは香辛料達の集う所。
カリー、それは野菜達の最高の舞台。
カリー、それは肉達に取っても最高の舞台。
カリー、それは全てで個、しかし個が全てと言う相反する食材達の共演。
カリー、それは食べ方、食べる者によって、味が異なる完成が見える事の無い未完の料理。
カリー、それは俺の胃袋を久々に掴んだ食べすには居られない、至高の一品。
やられたな、俺はカリーの魅力に取り付かれたかもしれない。一度食べたらまた食べたくなる、不思議な料理。ここに連れて来てくれたウォレンツ君に感謝だな。
しかし身体か熱い、全身が火照った様になり額に汗が浮き上がる。腹の周辺も熱をおび、満腹だと言うのに胃の辺りから時々キュルキュルと音が鳴る。
そうか!香辛料の多くは薬草としての役割も持っていた筈だ。だから様々な薬草を身体に取り込んだ事になっている。言うならば薬膳料理と何ら変わらないな。だから新陳代謝が良くなり、老廃物を身体の外に出そうとしているのか?
カリーを完食した俺は、懐から手拭いを取り出し額と顔の汗を拭う。
「フー、旨かった」
「香辛料が独特でしたけど、癖になる味でしたね」
「そうだね、又食べたいね」
「そうだろう!君達もこのカリーの魅力を解ってくれたか」
確かにカリーの魅力は否定出来ないな。初めて出会った香辛料が沢山有った。香辛料の香りと味、そして薬効成分。香辛料は薬草として使える物も沢山有るので、俺の趣味の一つで有る薬の研究に役立つ可能性が有るな!
「ああ、確かにこの味を知ってしまったらこれは、はまるな」
「ええ、この料理の様に香辛料を沢山使った料理は初めてでしたので最初は香辛料の香りが気になりましたが、食べ進めて行くうちに香辛料の香りを美味しさの一つに感じられる様になりました」
「香辛料って美味しいんだね」
この町にもそれなりに香辛料は出回っていると思うのだが、元とはいえ貴族の二人でも食べた事や匂いを嗅いだ事の無い香辛料を使う店。独自の仕入れルートでも有るのか?
「うんうん、満足して貰えて良かった、ここは俺の取って置きの場所だからな!」
「しかし、こうなると他の料理も気になるな!」
そうだ、この店の名前は≪創作料理ザ・ゼン≫創作料理の店だ。カリー以外のメニューも非常に気になるぞ!
「そうですね、香辛料をふんだんに使ったカリーにその他、どの様な料理が有るのか気になりますね」
「僕は美味しければ、何でも良いよ」
「そうだな、酒の肴になる料理も沢山有るが、それは次回自分達で確認してくれ」
酒の肴か。それ以外の料理も気になるし、他にもカリーが有るのかも。この店は通う価値が有るな。
「そうだな、俺は一時この町に居る予定だからこの店に通うかもな」
「私は一度神殿に戻り神官長にお伺いを立てないといけませんので、次は何時来れるのか未定ですね」
「僕もそうなるかな?」
二人は神殿の仕事でこのアスケレードの町を出発して間も無く、とんぼ返りをする事になってしまった。神殿の上司次第で、又明日にでもこの町を出発する可能性が有るかも知れないな。
「そうか、まあ今日は迷惑を掛けて済まなかった、俺は大抵警邏隊の詰所か本部に居るから何か有った時は訪ねて来てくれ!」
「ああ、何か有った時には頼らせて貰うよ」
「私達神殿関係者が余り辺境伯家の関係者と関わるのは印象が悪くなりますが、何か有った時には宜しくお願い致します」
「まあ、その時には宜しく」
「ああ、任された!」
初めて食べた東方の国の料理。独特な香辛料の使い方や味や食べ方の作法等、この国の物とは全く違うが、今日は良い出会いが出来た。それは俺と共にテーブルを囲んで居る三人にも言える事だが、その事は言わない方が良いだろうな。
勢いと思い付きで書いております。
読んで頂いている皆様、内容の齟齬等はご都合主義と言う事でご容赦下さいませ。
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