おっさんは悪人?
続きが書けましたので投稿しました。
宜しくお願い致します。
ウォレンツ君の後に付いて警邏隊の詰所に入ると、部屋の真ん中をカウンターで仕切られた造りの部屋だった。
カウンターの向こう側には、ウォレンツ君と似た装備をしたゴツイ野郎達が五人立っていた。
「済まないが此の装置に身分証を翳してくれないか?」
「ああ、良いぞ」
「解りました」
「はい、はい」
ウォレンツ君がそう言って俺達を連れて来たカウンター端の上には、人族の頭より少し小さい位の透明な球体が置かれていた。その球体の中心には透明な水晶の様に透き通った素材で造られた縦長六角形の三十六面体が浮き、ゆっくりと回転していた。
「これが何だか解るかい?」
「何だこりゃ?中で何か回ってるぞ!飛び出して来ないのか?」
「私は見た事が有ります!」
「確か、神殿とかにも有るよね?」
「何だ知っていたのか…これはかの英雄ライナス・フェールストンが開発に関わったとされる、身分証の詳細を確認出来る装置だ。だから大丈夫だ、飛び出して来る事は無い!」
「何?ライナス・フェールストン?」
「あっ、私聞いた事が有ります!」
「ふーん、それで?」
ああ、確かにそんな物を造った様な気がするな。身分証の仕組みが知りたくて、物質や物体の詳細を解析する魔法を使ってみたり、魔力の流れを解析する魔法を使ってみたり、それらを利用して身分証の複製を造ってみたり、犯罪者の身分証をバラバラに分解してみたりとあれやこれやをしていた時に、人族に身分証関係をもたらした存在と出会ったんだよな…。
「何か、反応が薄いのが約一名いるが、まあ、良いか。かの英雄ライナス・フェールストンは魔法、魔術の達人で有るだけで無く、魔道具等の製作や開発、更にはアーティファクトの研究者でも有った」
「へー、そうなんだ…」
「今有る便利な魔道具の幾つかは、ライナス・フェールストン様の造られた魔道具が元になっていると聞いた事が有ります!」
「何か、そんな話を聞いた気もするね」
「そこでこの装置だが、この装置は身分証の詳細が見れる装置だ。そもそも、身分証を造るにはアーティファクトが必要で、身分証自体もアーティファクト級のアイテム扱いになっている!」
「へー…凄いな…」
「そのお話も聞いた事が有ります。確か、本人も知らない事でも知る事が出来る、魂の記憶?が身分証には記録されているとか」
「ふーん」
確かにそんな感じだったかな?人族に限らず生きとし生ける者には、自身の記憶力には、限界が有るので自分では気にも留めない些細な事や興味の無い事や無意識に行ってしまった事等、とても記憶出来無い事が膨大に有る。
しかしその膨大な出来事を記憶出来る物を生命体、もしくは生きとし生ける者は産まれながらに持っている。それが魂と言うやつだ。
その魂の記憶に働き掛けるのが、今目の前に置いて有る装置で有り、俺がとある存在に問い掛けた疑問の答えでも有ったのだ。
「そう、魂の記憶みたいな物だ。我々に与えられた権限は犯罪行為等、取り調べに必要な事を確認するだけだが、飽くまでも噂だが上位権限を持った方で有れば、その人物の趣味趣向性癖まで判ると聞いた事が有る」
「それは怖いな…」
「それは自分でも知りたくは無いですし、絶対に他人には知られたくは無いですね!」
「うわっ嫌だな」
「そう言う事で、君達の犯罪歴を調べさせて貰う。順番にこの装置に身分証を翳してくれ!」
「ああ…自分でも知らなかった事が解ってしまうのか…どーしよう?新たな性癖に目覚めるのかも?」
「ライナーさん、ここではそこまでは解らないと、今ウォレンツさんが言われていませんでしたっけ!」
「おじさんの性癖なんて、聞きたく無いよ!」
魂の記憶に嘘は無い、と言うか魂には嘘がつけない。それが出来るのは神や悪魔等の生きとし生ける者よりも遥か上位の存在、もしくはそれらに類する別次元の存在になるだろう。
しかし、無意識で有り自覚が無い事で有るので、たとえ本人で有っても全く知らなかった事を知る事が出来る。
メリットかデメリットかで言えば、それは人それぞれだろう。
「いや、ライナーさん。それはここでは確認出来無いから大丈夫だよ!」
「そうか、本当にそうなのか?」
「ライナーさん警戒し過ぎですよ!まさか何か良からぬ行いに心当たりでも?」
「やっぱりおじさんは、悪いおじさんだったんだね!」
「やっぱり?悪いおじさん?ライナーさん何か悪事に心当たりでも有るのか?」
「いや、ただ雰囲気作りでボケてみただけなんだけど…俺って悪人に見えるのか?」
「いえ、そんな風には見えませんけど、昔から人は見かけによらないって言いますし…」
「そうそう、良い人面して近付いて来て油断させて、騙したり拐ったりとかしそうだもの!」
やはりアービィー君は黒いな。こんな優しくて普通のおっさんを犯罪者の如く、貶めようとしているのか?
ルーチェちゃんも人は見かけによらないって!俺は皆にどんな風に見えているのか問い詰めてみる必要が有るな!
「何!そうなのか?ライナーさん!まさかあんたは、彼奴らの同類なのか?」
「そっそんな訳無いだろう!最初か言っているけど、俺は普通の優しいおっさんだぞ!」
「ライナーさん、やっぱり私を拐うつもりで近付いて来たのですね!」
「うわぁ!おじさんは悪い奴だったんだね!」
おいおい、誰か俺の話を聞いてくれ。いくら優しい普通のおっさんでも、いい加減切れるぞ!確かに怪しい所は多々有るとは思うが…ってやっぱり俺って怪しいかな?何か自分に自信が持て無くなって来たぞ…。
しかもカウンターの向こう側に居る警邏隊員達が俺に狙いを定めているのか、隊員達の目が剣呑な物になって来ているぞ。詰所に入って来た時はカウンターの向こうに居た隊員は五人だったのに、今では倍の十人に増えて居るし…。野郎ばかりだった筈が、二人若い女の子を見つけてしまった。
警邏隊員に若い女の子も居るんだなって、今はそんな事を考えてる場合では無いのだが、革製の鎧のお陰でメリハリの有るボディーラインが見て取れるとか、いかん、現実逃避したくなって来たよ…。
「ライナーさん、あんたは違うと思っていたが俺の勘違いだった様だ!素直にお縄に付いて貰うぞ!」
「マジか!皆は俺をそんな目で見ていたのか、解った、今度からは見ず知らずの人助けはしない様にしよう、善意の行いを仇で返されるとおっさんも辛いからな…」
「そんな、確かに捲き込んだのは私ですし、悪いかなとは思っていたり思っていなかったりですけど…」
「そうそう、おじさんの運が悪かっただけだよ」
皆にここまで言われるといくら俺でも泣くぞ!百歩譲って怪しいのは認めよう。しかし、俺は困った人を放ってはおけない性分なのだ。ついつい関わってしまう、どうしようも無いのがこの俺なのだ。
「さて、冗談はこの位で!」
「何、冗談か…変だと思ったぞ、こんなにも優しくて親切で良いおっさんを、犯罪者扱いして…泣くかと思ったぞ」
「ライナーさんごめんなさい。つい皆さんにつられてしまって!」
「でも、おじさんは怪しいかな?」
おいおい、折角纏まった話を混ぜ返すなよ…。やはりアービィー君は油断ならないな…はぁっ…疲れた。
勢いと思い付きで書いております。
読んで頂いている皆様、内容の齟齬等はご都合主義と言う事でご容赦下さいませ。
感想やアドバイスを頂けると嬉しいです。




