ある巫女さんの独り言
「うー、さぶい~」
一月の七日正月も終えた頃、ようやく私の風邪が治った。
あ、私、とある神社の巫女さん(バイト)です。
貴重な稼ぎ時、いや、ゴホンゴホン、皆様からの献金ならぬ何とやらでお正月は大変お世話になっております。
我が神社は、所謂寂れ神社である。
宮司さんが頭が禿頭に成る程のその悩みはさておき。
我が神社には、恋人になるきっかけを絵馬に書くとその恋は永遠に続くという、変なジンクスがあります。
の、割には人が来ないけれど。
一応、学問の神様も祀っているんですけどねー。
だから、受験生がたまにちらほらとやって来ますけどねー。
そんな神社でどうして私がバイトをしているかは、さておき……。
私は巫女さんスタイルの格好に着込みに着込んで箒で参道を掃除中。
そして、絵馬の掛ける所に来る。
「ほわ~、相変わらず増えてないんですね。……ん? あ、幾つか増えている、かな?」
私が増えた絵馬をしげしげと眺める。
どうせ早朝のこの時間、不躾なこの行動も、寂れた神社の神様くらいしか見ていないだろうし。
『会社の年下の上司から、白い手袋を真夏に貰いました。それが、きっかけでクリスマスデートしました。今では恋人です! いつまでもこの人と一緒に居たい! ○○♡△△』
「ふーん……」
真夏に白い手袋? しかも、どんな趣味で?
気になる……!
むふー、と私は白い息を盛大に吐く。
次は、っと。
『学校の後輩の男子から白い手袋貰った。真夏に貰いました。それがきっかけで大晦日デート。悔しいけど、今では恋人です。大事なこの後輩の一生の先輩で居たい。 ◆◆♡▨▨▨』
「あれ?」
この人も、白い手袋……?
なに、この偶然! ミラクル!
私の瞳は、次に目に付いた絵馬に思わず移る。
『同級生から、真夏に白い手袋を貰ってあげたらそれがきっかけで、彼氏(仮)が出来ました。受験が迫っているので、二人とも合格願い!! ☆☆♡♠』
「は~い? 何これ!」
私はあまりの偶然さに興奮し、思わずその場に倒れる。
あ、熱い。熱いわ!
真夏に白い手袋を貰ったカップルが偶然にも三組!!
何これ、もうすごいじゃん!
きゃわきゃわ騒ぐ掃除中の巫女さんを、祀っている神様が生ぬるくきっと見ているだろう。
めでたし、めでたし!
何だか、強引に締めてしまいました。すいません<(_ _)>
ここまでお読み下さり、本当にありがとうございました!