1.壁ドン♡ ~上司からの告白~
真夏なのに白い手袋を貰った。
真っ白な、真っ白な手袋。
モコモコで、かき氷と白熊のイラストが描かれている。
本当に、何処でチョイスしたらこんな代物が見つけられるのだろう。
首を傾げたくなる。
冷え性の私に対する嫌がらせか。
隣の、仕事場の上司に目を向ける。
のほほんとした糸目には穏やかな笑みだけが浮かべられている。
私よりも、若いんだっけ……?
その上司が就任した日を思い出す。
自己紹介で上司は、年齢の事を気にすることなく、どんどん意見してくれと訓示していた。
「気に入ってくれましたか?」
黙って白い手袋を持っている私に、流石に訝し気な顔をされる。
「ハッキリ言って、季節外れです」
「そうだねー」
「……分かってたんですよね?」
「うん」
上司はにこりと笑う。
おかしくて仕方ないというよりも、明らかに私の反応を見ている。
「ただね」
上司は、缶珈琲を片手に呟く。
「君は、冷え性そうだから」
そら来た。と私は心の中で言う。
「冬まで待てなかったんだ」
「え?」
「冬まで、待てなかったんだよ」
「いや、繰り返さなくても……」
はあ、と上司は溜め息をついた。
「解らない? 部下にプレゼントする上司の心」
上司が私を見つめる。
「君に……」
糸目が、真剣みを帯びる。
いつの間にか私は休憩所の壁際まで追い詰められていた。
「君に、惚れたからだ!」
壁ドンされる。
「ほ⁉」
私は素っ頓狂な声を上げる。
気に入られるような仕事振りなんかしていないだろうに!
「いいね、上司命令。その手袋を大事に冬まで持っている事」
そして、と上司は続けた。
「クリスマスまでに君を必ず惚れさせるからな、僕に」
「はい……」
こうして、真っ赤になった私のクリスマスの予約が取られたのだった。
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