食料調達
みんなと別れてアモスさんとシンラと一緒に聖国に向かっているときに問題が起こった。
「あ、備蓄していた食料が無くなってる」
「「「なにーーーー!!!!!」」」
俺が乗れるサイズになっていたコクロを筆頭に全員が大声を上げた。
「やかましいわ!」
「それどころじゃねーだろ!食料が無くなってるってどういうことだ!!」
ひときわ大声をあげるコクロだったがこればかりは仕方ない。
「借金の返済に店に卸したり、ここ最近全く狩にも食料の買い出しも言ってなかったからなぁ。これでもよく持った方だと思うぞ。まぁ、保存食の干し肉とか固パンならあるからそれで凌げるだろう」
ネットショップを使えばこの場でも食料を買うことはできるのだが、あれは値段がべらぼうに高い。金銭的余裕がない俺にとってはここ最近使っていないスキルの一つだ。
「あんな美味くもねぇ肉やパンなんかごめんだからな!!」
コクロは完全に拗ねてしまった。単純に狩をしたり買い出しに行けばいいのだがなるべく早く聖国に向かいたい俺たちにとっては削れる時間は削るべきだと思った。
「な、なぁ隼人。コクロもこう言ってることだし次の村で買い出しをするのもいいんじゃねーか。ほら、干し肉と固パンがあるとは言っても色々と足しとくものもあるだろ」
「そうです!万全の状態を作っておくためにも買い出しは必要なのです!!」
アモスさんもシンラもやけに熱弁してくる。
「確かに色々と買っとくのも大事か。でも俺今金あんまねーからなぁ」
「金なら俺が出す!」
「僕もです!」
2人が出してくれるのならそれに甘えよう。ぶっちゃけ2人とも金は結構持ってるはずだし、この際これまで食ってきた分も含めて買いあさってやろう。
「(隼人の料理食ってて今更保存食に戻れるわけねーよな)」
「(隼人さんと別れて一人とかならまだしも、隼人さんがいるのに干し肉や固パンを食べるなんてありえない)」
なにやら二人ともひそひそと話し込んでいるようだが、数週間分の食材を買うために近場の村を目指すことになった。
村に着くとコクロには肉の確保をお願いする。ぶっちゃけこのメンツは食材の消費量が多い。村で入手できるものにも限界はあるので少しでも足しにしなくてはいけない。
「それじゃあ狩った獲物はこれに入れて帰ってきてくれ。一応この村で一晩過ごすつもりだから明日の朝までに戻ってきてくれれば大丈夫。少ないけど残ってた食材全部つかって弁当も入ってるから腹がすいたらそれ食べてな」
コクロに弁当の入った大き目のマジックバックを持たせて送り出した。
「待ってろ肉―――――――!!!!!!」
本人は十分やる気だったので俺たちは町で食材を確保する。
「そいえばこの村って養鶏もやってるみたいだから卵とか鶏肉とかを中心に仕入れていくぞ!」
それからシンラとアモスさんの金で食材を買いまくる。他人の金ってのもあるが思った以上に様々な食材が売られており俺のテンションも上がってしまった。
「これってパプリカだよな。こっちはカシューナッツみたいな木の実だし、これで中華炒めとか作ったらうまいだろうなぁ」
目につく食材を次々と買いあさっているとひときわ大きな建物から美しい女性が出てきた。長い藍色の髪はキラキラと輝き、白い肌は光を反射するかのごとく。これまでこの世界で出会った女性の中でもベスト3に入る。
「すいぶん綺麗な人だよなぁ」
「あれ?隼人さんって男性が好きなんじゃないんですか?」
でたよ!腐男子の恋愛対象が全員男だと勘違いしているようや輩。
「何度も言っているように俺は男同士の美しい恋愛が好きなの!女性が苦手ではあるけど恋愛対象はちゃんと女性なの!!」
まぁこんな性格と女性が苦手なせいで年齢=恋人いない歴になってしまっているが。
「それにしてもあの姉ちゃんは綺麗だったな。胸もでけぇし、揉み心地よさそうだよなぁ」
な、なんかアモスさんが下世話なことを言っている。
「あ、アモスさんでもそんなこと言うんですね。女性経験とか皆無かと思ってました」
「あーはっはっはっは、なんか女の人に誘われて店とか行くと結構やらせてくれるぞ。いきなり服脱がされた時は驚いたけど、気持ちいいことは俺も好きだからな」
な、な、なんですとぉーーーーーー!!!
恋愛に関しては朴念仁のくせして、やることはしっかりとやってらっしゃる!しかも店に連れていかれていきなりやってるとか、まさかのヤリ〇ン野郎か!
「アモスさんって胸派なんですね。僕たちは種族的に大きくならないんで、お尻とかの方が人気なんですよ。胸とはまたちがった揉み心地なんですよぉ」
ま、ま、ま、まさかシンラまでそっち方面は経験済みですと!!!確かにこんな可愛い顔して俺と2歳しか違わないわけだし、それに2人とも高ランク冒険者にして黙っていれば超イケメンだ。よく考えれば女性たちがほっとくわけがない。
「なんだシンラは尻派か。俺も尻は好きだが気持ちよさでは胸だな」
「いえいえ、美尻に擦り付けたときの感触は何物にも代えがたい快感なんですよ」
どうしよう2人の下話が盛り上がってしまっている。聞く限り2人ともかなり経験豊富な感じがする。そんなことと無縁そうな2人だけに真実を突きつけられると劣等感が半端なくなる。
「にゃ!にゃにゃにゃにゃぁ!!!」
ここでオケアノスが嫉妬にかられた女性のように猫パンチをアモスさんに連打。
「なんだよアノス、腹減ったのか?」
こういう鈍感なところが恋愛には向かないんだろうな。でも一夜限りとかならアモスさんは好物件なんだろう。
「2人とも真昼間からそんな下ネタを話さない!俺として2人とも女性とだけでなく男性とその、あんなこととか、こんなことをやっている話とかの方が」
「まぁ女性に比べれば話すこと少ないからなぁ」
「僕もそこまで男性経験は多くないんですよね」
な、な、な、なんですとぉーーーーーーーーーーーーーーーー!!
「そ、そ、それって二人とも男とや、やった経験があるってこ」
「あの、すみません」
俺が渾身の質問をしようとしたところで邪魔が入る。
「ちょ、今大事な話の途中なんで後にして」
「そんな大事な話でもねーだろ。それよりお嬢さんは俺たちに何か用か?」
クソ!!!俺にとっては何よりも優先される最重要の話だったのに・・・・・まぁ聖国に行くまでの間まだまだ時間はある。
「あの、この辺りで見かけないお方でしたので冒険者の方とお見受けいたします。よろしければ私の依頼を受けていただけないかと」
話しかけてきた女性をよく見ると先ほど大きな家から出てきた美女だった。一歩下がったところに用心棒のような男が2人立ってこちらを睨んでいる。
「確かに俺たちは冒険者だが、この村には物資の補給でたちよっただけだからな。明日には出るつもりなんだが」
「そこをなんとかお願いできないでしょうか。何分こんな小さな村では高ランクの冒険者は在籍していないのです。Aランクの依頼ともなると受けていただける方がいらっしゃらなくて、実力もある殿方だとお見受けいたしましたので是非ともお受けいただきたいのです」
言っていることは最もなことなんだが、この女性なんか嫌らしいんだよな。さっきからアモスさんに胸を猛アピール、上目遣いでウルウルとさせ、健気な美少女特有の動きをこれでもかとアピってきている。もちろんこれが素の天然さんな可能性も否定できないが、俺からしたら何か下心があるようにしか思えなかった。
「うーん、ちなみにお嬢さんが頼んでるAランク依頼ってどんなやつなんだ?あまり時間が掛かるようなら申し訳ないが先を急いでるから」
「あなた様ならそこまでお時間の掛かることはないと思いますわ」
やっぱり、俺もシンラもいるのにアモスさんにしかこの女性の目には映っていない。依頼を理由にアモスさんとお近づきになりたい女性の典型パターンだな。
「アモスさん、申し訳ないけど先を急いでるしお断りして」
「ジュリアンナ!!」
もらおうと思って声を掛けたら槍を持ったイケメンが叫んでいた。20歳ぐらいで栗色の髪に丈夫そうな軽鎧、少々強面だが整った顔立ちをしている細身。受けか攻めかでいえば受けっぽい。俺の予想からしたらツンデレ受けだな。
「その依頼なら俺が請け負っている。よそ者なんかに頼む必要はない!!」
いきなり現れて酷い言われようだが先に依頼を受けている者がいるのならそっちに任せるのが筋だ。
「先に依頼を受けている人がいるのなら俺たちの出番はなさそうだ。さっさと買い物を済ませよう」
俺たちがその場を離れようとすると「お待ちくださいませ」とジュリアンヌと呼ばれた女性がアモスさんの腕をつかむ。我慢の限界だったがオケアノスが女性に向かって爪をたてようとしているのをアモスさんが止めている。
「ハンスはソロBランク冒険者。とてもAランクの依頼を完遂できるとは思えません。お願いします、私の依頼を受けてはいただけませんでしょうか」
「ジュリアンヌいい加減にしろ。俺が依頼を受けている以上他の冒険者がお前の依頼を受けることはない」
ジュリアンヌがどういう条件で依頼をだしているかは分からないが、基本一つの依頼を複数人で受けることは少ない。よっぽど大規模なものか、量産型の依頼でもなければ依頼を受理した冒険者、またはそのパーティーが最後まで請け負うのがルール。ハンスと呼ばれた青年がこう言っているところをみると特殊な依頼ではないのだろう。
「お嬢さん、その男の言う通りだ。そっちの男が依頼を受けているのであれば俺たちが受けることは出来ない。これはギルドで定められたルールだからな。もし、こいつ以外の奴に受けさせたいのであればキャンセル料を払ってちゃんと条件を付けて依頼を出すべきだ」
依頼のキャンセル料はかなり高額になる。一度出された依頼を受理する前なら金は掛からないのだが、すでに受理された依頼をキャンセルする場合、報酬の半分を請け負った冒険者に払い、依頼料の4分の1をギルドに払わなければならない。冒険者に支払われるのがかなり高額だが、諸々の準備をしていたり、命がけで依頼を遂行している可能性も考えるとこれぐらいが妥当なのだろう。そして金を出すのを渋っているところを見るとジュリアンヌの依頼報酬はかなり高額なのだろう。キャンセル料を払って再度同じ依頼を出すのであれば単純計算して元の報酬の2倍は用意しないといけない。
「そういうことだからそっちの奴に任せることだ。俺たちは先を急ぐからな」
ようやくアモスさんがジュリアンヌから離れてくれた。俺とシンラは完全に蚊帳の外って感じだったのだが、今このメンツ的にリーダーを設けるなら俺かシンラだ。これは適正などではなく、臨時パーティーを組む際ソロランクで最も上の者がリーダーとなるというのが決まりだ。いくら俺やシンラに適正がなかったとしても表立って話を聞いたり決定を下すのはあくまでもリーダーの役割だ。そういう意味でもあのジュリアンヌという女性は冒険者に対してかなり失礼なことをやっているということになる。
「綺麗な人でしたけどアモスさん狙いが見え見えで気分が悪いですね」
「そもそもよそ者である俺たちにいきなり依頼を受けろと言ってくるのも非常識なんだよな。冒険者が依頼を受ける受けないはあくまで本人の意思、俺やシンラが全くSランク依頼を受けてくれないってギルドはいっつも文句言ってるけどな」
もちろん緊急性の高い依頼なら強制力も少しはあるのだが、冒険者は慈善事業ではない。緊急性の高い依頼でも断ろうと思えば断ることは可能だ。それ相応のリスクもあるがな。
「あのジュリアンヌとかいう女は俺をリーダーと勘違いしてたんだな。まぁ俺が一番でかいからそう見えただけだろうがな。がっはっはっはっは」
相変わらず朴念仁前回のアモスさん。さっきからオケアノスの機嫌がすこぶるわるくなっていることに気づいていない様子。
「これ以上こっちに関わってくることはないと思うが、早めに村を出た方が良いな」
俺たちは買い物を早めに切り上げ、急いで宿泊する宿に向かう。こんなことなら買い物が終わったら村を出て野営すればよかった。
「お部屋は2階の一番奥になります。ごゆっくり」
宿屋の女将さんから鍵を受け取ると俺たちは部屋に向かった。別々の部屋がよかったのだが、今大部屋しか空いていないということで3人一緒の部屋となった。
「明日は朝イチで村を出よう。これ以上この村にいると面倒に巻き込まれそうだ」
「あの人以外にもアモスさん狙いの女性が来るってことですか?」
「??俺がなんだって」
アモスさんも自分がモテることを自覚しようよ。それか街中でスキルでも発動させれば女性陣はドン引きだろうから少しはそのモテ度も下がるんじゃないだろうか。
コン、コン、コン
部屋のドアが叩かれたので俺は扉を開ける。そこには眼鏡を掛けた小太りな中年オヤジが2人の屈強な男を連れて立っていた。
「あの、何か?」
「私はこのクルタミラの冒険者ギルド、そこのギルドマスターを務めておるシャタンだ。貴様たちに指名依頼が出されておってのぉ。私自ら依頼を持ってきてやったのよ」
シャタンはずかずかと部屋に入るとアモスさんに依頼書を無理やり渡す。
「依頼の詳細はそちらに書かれておる。速やかに行動に移し、依頼を完遂させよ」
「ちょっといきなり現れて指名依頼を押し付けるなんて」
俺がシャタンに反論しようとするとシャタンの取り巻き2人が俺の肩をつかむ。かなり力自慢なのだろうがぶっちゃけこの程度なら振り払える。
「まー、まー、隼人もシンラも落ち着けって。シンラはそれ以上動くなよ」
気付くとシンラがシャタンの背後で拳を構えていた。これにはシャタンも取り巻き二人もかなり驚いていた。
「アモスさん、その依頼受ける気ですか?」
「まぁな。ちゃんとした依頼書みたいだし、正規の手続きをして来た依頼なら俺は受けるよ。それが冒険者だからな。そうだろギルマス」
「え?あ、ああ、その通りだよ。やはり指名依頼を受ける程の冒険者となると心意気が違うねぇ。それじゃあ、その依頼は頼んだよ」
シャタンは上機嫌で部屋を出ていく。理由はともあれ依頼を受けてしまったことに一言言ってやりたい気持ちがあったが、アモスさんの表情がなにやら怪しかった。
「それでどうしてあの依頼を受けたんですか?」
「そう怒るなってシンラ。俺も最初は受けるつもりなかったんだけどな、あのギルマスの名前を聞いてちょっと思い出したことがあってな。あのギルマス不正と裏金でかなりあくどい事してるって有名なんだよ」
アモスさんの話によると、あのシャタンというギルマスはその地位を利用して色々とあくどいことをしているらしい。
「商家と結託して冒険者から買い取った素材を売りさばいてるとか、金を積んできた冒険者を試験なしで高ランクにしたり、他にも色々とやってるみたいだ。そんで冒険者ギルドでも色々と調べてるみたいなんだけどなかなか尻尾を出さないって王都のギルマスが言ってたんだよ」
あの剥げ親父そんなことを冒険者にペラペラ喋っちゃ駄目だろ。
「それでアモスさんはこの依頼を受けることであのギルマスの尻尾を掴もうとしてるわけですね。でも、僕たち急いで聖都に行かないとなのに依頼なんて受けてて大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。だってこの依頼Cランク程度のもんだからな」
お読みいただきありがとうございます。
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