開店準備
ヒスイのお品書き
ヒスイ「なんだか主がとってお美味しそうなものを作ってる・・・じゅるり
本日のお品書き
・揚げ物
・年齢ヒエラルキー
みんな主に対して急によそよそしくなった気がするの、なぜ?」
あれからあっという間に店を完成させた西城。もともと店舗用に買取をしていた建物を改装しただけだが、見た目はかなりいい。3階建てで3階部分が居住スペース、2階部分が休憩室や共有スペース、1階がお店という造りだ。
キッチンスペースは店の奥にあり、飲食スペースは15坪ぐらい。建物自体が30坪ぐらいなので半分を飲食スペースにもう半分をキッチンスペースにしている。もともと販売用の店として買っていた物件だったので、特別広い店ではないが、収容人数は10~15人程度。
3階に住むのはアモスさんと俺、それにハイネとロビンの子供たちの4人。4つの部屋に分かれておりそれなりに広さはある。
そしてここで俺がやる仕事は経理と料理指導。営業自体は西城が雇った料理人と店員が行うのだが、この世界の一般市民は学校などに通うことはなく、字や計算をできるのは商人や貴族ぐらいなのだそうだ。もちろん料理人や定員は一般市民を雇うのでお金の計算は俺がやることになる。ぶっちゃけそこまで大した仕事ではないと思う。どちらかといえば、料理指導の方がメインになる。この店では俺が日ごろ作っている料理をこの世界にある食材だけで、再現をすることをコンセプトにしているらしい。醤油なんかは自分で作れたが、店で使うほど大量にはない。調味料でいえばスパイスや塩のみで作らなくてはならないのでちょっと大変だ。だが、それだけでも作れる調味料は結構ある。
「中条、そっちの準備は出来てるかしら?」
「ああ、お前が無茶言うから徹夜になったが、なんとかできたぞ」
強行軍だったのは店の改装だけではない。店で出すメニュー作りは全て俺任せ、必要な食材なんかは西城が手配してくれるのだが、まさか3日で店のメニューを決めろと言われるとは思わなかった。
「今日は料理人と定員の紹介。西城には料理人たちに料理の指導、私は定員たちに接客の指導よ。研修は今日一日だけだけど、明後日の開店までに完璧に仕上げるわよ!」
なんでこいつはそんなに元気なんだろう。こいつと仕事をして思ったが、いつ休んでいるのか全く分からない。俺がメニューの試作をしている間に、内装工事に人員の手配、商業登録の書類作成に、商業ギルドでの宣伝。隙をみてウエストランドとの交渉もやっていたらしい。本人に聞いたら「隙を見て休んでるのよ」なんて言われてしまった。末恐ろしいやつ。
「明日は必要な食材の搬入と機材のチェックで終わると思うから、なるべく今日中に使えるものにしてね」
紅の家での営業もあるのだが、ぶっちゃけあっちは月1で客が来るか来ないかというぐらいなので、そこまで心配していない。コクロかハクロは必ず家にいるので、客が来たら知らせてくれるようにしている。
ちなみにアモスさんは引っ越しを早々に終わらせてオケアノスと特訓、ロビンは冒険者になると言ったのでギルマスに基礎を教えてもらっている。ハイネは今のところやりたいことが見つからないとのことで、とりあえず店で働いてもらいながら今後を決めていくとのことだ。
「それじゃあ自己紹介から始めましょうか」
キッチン担当は3人。恰幅の良いクマの獣人で名前はカイナさん、10代後半の優しい印象のシリウス君、30代後半で宿屋のご主人をしていたジャックさん。3人とも料理の経験はあるようで、カイナさんは専業主婦、シリウス君は料理人見習い、ジャックさんは宿屋を経営していたときは料理を作っていたらしい。
「ジャックさんご自身のお店はいいんですか?」
「ああ、宿屋は息子夫婦に譲ったんだ。もともと妻と2人で切り盛りできる小さな宿だったから息子夫婦二人で問題ない。それに正直あっちにいてもやることがなくて暇なぐらいだ」
今は息子夫婦と奥さんの3人で問題なく営業ができているらしい。なら遠慮なくこき使わせていただきます。
「それじゃあ食材の下ごしらえから、使用するのは基本は肉と野菜、これらを適当な大きさに切る」
今回使うのはロック鳥のもも肉、それにかぼちゃに似たパンプ、サツマイモに似たベニイモ、大葉に似たフレッシュハーブ、キノコ各種に玉ねぎと人参、これらを食べやすい大きさに切っていく。玉ねぎは薄切り、人参は千切りにして2つは混ぜておく。
「今回みんなに作ってもらうのは天ぷら、これは色々なものに代用できるから、俺が教えたもの以外にも色々と試してみてほしい」
小麦粉と冷水を混ぜ合わせた衣に野菜をくぐらせ、オークの脂肪からとった油で揚げていく。この世界でも植物油はあるのだが、高級品なので動物の脂肪を溶かして油にしている。ちょっと臭いに癖はあるのだが、普通のサラダ油と同じように扱えるうえに、つぎ足すときは脂肪をそのまま油に突っ込んで溶かせばいい。
「大量の油で煮ることを揚げるっていうんだけど、野菜は揚げることで甘みがぎゅっと詰まってそれだけで美味しく食べれるんだ。油の温度は木の串を入れて出てくるぐらい、このくらいかな」
本当は菜箸でやるようなことなのだが、この世界では菜箸を使う文化がない。木の串でも十分に代用品にはなる。
「野菜はそれぞれ揚げ時間が違うからなるべく同じ野菜同士を揚げていく。慣れてくれば別々の物でも揚げてもいいけど慣れるまでは同じ物を揚げていってくれ。注意としては温度を一定に保つこと、具材を油に入れればもちろん温度が下がるけどずっと同じ火加減だと温度が上がりすぎて焦げることがある。衣の色合いを見て、火加減を調整してくれ。それから水分の多い野菜は揚げちゃ駄目だ。水と油は混ざらないので水分が高熱の油に入ったら下手したら爆発し兼ねない。果物は基本的に水分が多いから不向きだな」
そんな説明をして野菜はとりあえず全部揚げきる。俺の場合いっぺんに揚げちゃったけど真似しないようにとは言っている。なんせこればっかりはなんとなくでやっているところが多い、きっちり時間を計って揚げてる人の方が珍しいんじゃないかと思う。
「このまま食べても美味いが、岩塩やこっちのソースを付けて食べても美味いな」
ソースはもちろん手作りした。香りの強い野菜たちを炒め、トマトと出汁で煮詰めて作るウスターソースもどきだ。本当はお酢や醤油を使って味を調整するのだが、それができないため、数種類のハーブと塩で味を調えた。
「本当はもう少しコクがあるんだけど、用意された食材だとこれが限界だな。もし、改良する良い方法があったらどんどん言ってくれ」
俺の説明を全く聞かず、天ぷらを黙々と食べ続ける3人。
「これ滅茶苦茶美味しいじゃないか!!ただの野菜がここまで美味しくなるなんて驚きだよ!!」
「しかも塩で食べればより味わい深くなる。さっくりした触感の衣に甘みのある野菜が凄く合いますね!!」
「さらに驚かされるのはこのソースだな。香りが強いがくどくない、天ぷらと一緒に食べれば何個でも食べれそうだ!」
まず料理人たちには好評でよかった。でも俺の話をちょっとは聞いてほしい・・・・・
「それじゃあ次はメインディッシュ。さっき切った肉を揚げていくよ」
もちろん作るのはとり天と唐揚げ。
とり天はニンニクとショウガをベースに作った俺特性のハーブソルトと少量の牛乳で揉みこむ。この世界に牛乳はあるのだが俺が知っているのは市販のヨーグルトと牛乳で作る方法しか知らなかったので、今回は牛乳で代用。
唐揚げはさっき俺が使ったハーブソルトに少量のはちみつを投入。これを揉みこんで味をしみこませる。
牛乳にもはちみつにも肉を柔らかくする効果があるので、これを入れることでジューシーな肉料理になる。
とり天はさっき使った天ぷら用の衣に付けて揚げる。唐揚げは小麦粉とトウモロコシで作ったコーンスターチに似た粉があったのでそれを同量混ぜ合わせた物に付けて揚げていく。唐揚げは粉をなるべく落としてから揚げるのがポイント。粉が多いと肉の中心まで火が通るのが遅くなり、肉事態が固くなって中心に火が通ってない唐揚げになってしまうことがあるからだ。
「とり天は本当ならさっき使った天ぷら用の衣じゃなくて、卵を加えた衣の方がさっくり揚がる、単体ならこっちのほうが美味しいが、パンに挟んだり衣にソースを吸わせるならこっちの方が俺は好みだな。どっちがいいかはみんなで話し合って決めてくれ。唐揚げはとり天ほど高い温度で揚げず、低温でゆっくり揚げていく。きつね色になったら一旦上げて、お玉なんかで軽くヒビを入れる。今度は高温で10~20秒ほど揚げれば完成だ。どっちもうまいが俺は断然唐揚げ派だな!」
またしても俺の説明をことごとく無視してとり天と唐揚げを頬張る3人。
「なんだいこれ!!肉を揚げただけでこんなにも美味しくなるのかい!下味がしっかり付いてるから何も付けなくても味がしっかりと感じられるよ」
「それにほとんど同じ材料なのにこんなにも違う味が楽しめるなんて、とり天はサクフワ、唐揚げはカリジュワってうま味が押し寄せる感じがする!!」
「隼人さんはさっき衣にもバリエーションがあるようなことを言ってたな。確かに卵を入れたり粉を変えたりすれば色々な触感を出せるかもしれない!」
これも好評なようで何より。せっかくの揚げ物なのでコロッケとかとんかつとかのパン粉を使ったものも教える。基本は下処理をして小麦粉、卵、パン粉の順番で付けたものを揚げるだけなので、そこまで難しくはない。肉を変えるだけで味が変わるし、ひき肉にして揚げればメンチカツ、薄切り肉を重ねてミルフィーユかつなどを一緒に教えていく。そしてメインとなる料理を教えたあとはスープと副菜。これは基本サラダや出汁をとったスープなのでそこまで難しいものではない。
「基本の主食はパンを出すつもりだが、一般的なロールパンの他にもバンズやバケットみたいに日や週によって変えてみるのもありだな。揚げ物は色々なパンと相性がいいから、どの料理にどのパンを付けるか決めるのもありだ」
そして俺は定食屋、もちろんメニューは日替わり定食一択。本当なら色々な定食を好きなように頼んでほしいが、一日では数品の料理を覚えるのがやっとだろう。1か月ぐらいは日替わり定食を作って慣れ。それから人気が高いものをレギュラーメニューにして定着させる作戦だ。とりわけ今日は揚げ物中心に教えたので、揚げ物だけで1週間は持たせれるだろう。他にもハンバーグだったり、シチューだったりもいい。餃子やシュウマイなんかの中華も作ることは出来るのだが、タレをどうするかが問題だ。魚醤のようなものだったら一度みかけたことがあるので、それで代用してもいいかもだが俺自身が食べたことが無いものなので安易にメニューには出せない。
「もちろん俺が教えた料理以外にも料理には様々な可能性がある。以外な組み合わせで恐ろしく美味いものができることだってあるしな。食材の余裕をみて色々試してみてくれ、厨房は基本的にあなたたち3人が使うことになる。だけど食材の無駄遣いだけは気を付けてくれよ」
一応週5で店には顔を出す予定だし、基本3階に住んでいる(3階の部屋と紅の家を繋げている)ので様子を相談があればいつでも言ってほしいと伝えた。それから3人とも狂ったように揚げ物を作り続ける。慣れない揚げ物におっかなびっくりだったが、最後の方は3人とも綺麗な揚げ物を作ることができた。
続けてソースと各種調味料。研究用として俺が作った味噌や醤油も渡しておいた。
「ソースやハーブソルトの作り方は難しくないのでレシピ通り作れば大丈夫だろう。みんな最低限の文字の読み書きはできると聞いているが、心配なら後で俺が説明をする。それからここで作っているメニューに関してだが、基本は店秘蔵のレシピってことで登録されるので作り方や材料は口外しないようにな。これは西城からちゃんと説明があったと思うが、契約魔法によってちゃんと契約されているので、口外したらすぐにバレるからそのつもりで」
「隼人さんちょっといいかい?あたしは契約魔法について詳しくないから聞くんだけど、もしうちのレシピを再現しようとしたり、あたしたちの買い物から食材を予想されたりしたらどうするんだい?それだってバレる危険はあるんじゃないかい」
カイナさんが心配するように調理自体はそこまで難しいものではないし、何度か料理を食べれば食材だってわかってくるだろう。
「契約魔法はあくまで人伝で喋らないってところを重要視しているから料理自体を再現する分には特に罰則はない。だけどそれを使って商売をしようとするなら商標登録が必要になってくる。この店で作る料理は全て登録は済ませてるから似たようなもので商売をしようとするなら審査が入る。俺や西城が許可しないかぎりは同じ料理で商売することは出来ない仕組みだ。まぁ各自自己責任で楽しむ分には問題ないんだけど、正直俺の料理って下処理とか多いだろ。この国ではあんまりない料理だから再現するのは難しいかもしれないな」
この国というより、この世界では下ごしらえは結構適当な印象。というよりもなによりスピード重視の料理が多い。高温で焼く、煮るがメインで豪快といえば聞こえはいいが、悪く言えば大雑把な料理だ。特にひどかったのは甘未類。砂糖を大量にぶち込んで作るお菓子は正直言って食材の無駄遣いとしか思わなかった。砂糖が高値なのも一個のお菓子を作るのに大量に使うためだった。本来の10倍の量を使っているので、これを食べたときは流石に吐きそうになった。
「確かに調味料で揉んで時間を置くなんて発想はなかったな。塩なんかは大量に入れれば味が付くものと教えられてきたから」
「シリウス君のいう通りこれまでは味が薄ければ塩や香辛料を足すのが常識みたいだったけど、俺の故郷では少量の調味料でもグッと美味しくなったり、食材本来の美味しさを楽しむって習慣があったんだ。食べてもらって分かったと思うけど、食材本来の味でも十分美味しい料理はできる。それに調味料を多く取りすぎると体に悪いからね。体の免疫力とかも下がっていくから調味料を頼りすぎないってのが大切だと思う」
そもそもこの世界は塩分を取りすぎていると思う。よくこんな食生活をしていて死者が多く出ないのか不思議なくらいだ。
「そういうもんなのかい?!香辛料なんて多ければ多いほど良いもんだと教わってきたからね。あたしたちの常識が覆っちまったね」
「でも食べてみてそれを実感したな。俺たちが作ってきたどの料理よりも素材の味がしっかり出てて、少量の調味料でここまで味を引き立たせるのは流石だと思うよ」
「もちろん皆さんの食事を否定するわけではないんですけど、俺たちの故郷に慣れてしまっているとどうも味が濃いといいますか、数口でお腹いっぱいといいますか」
必死に弁明してみるがこの世界の料理がクソまずいのは確かだった。
「確かにこんな料理を食べていたならこの国の料理は合わんだろうな。それに隼人さんの故郷だと調味料の種類も豊富そうだ。このもらった醤油や味噌も独特だが食欲を刺激する香だ」
ジャックさんは早速俺が研究用として渡した醬油や味噌に興味深々だった。
「それもこの国で見つけたひよこ豆を使って作ったんです。俺個人で使ってるだけなんでそこまで量を作ってないのと、製造までに1年近く掛かるのでこの店では使えないんですけどね」
「でもこの醤油ってのはサウスランドにある魚醤ってのに似てるね。臭いは全然違うけど旦那と旅行に行ったときに食べた料理に掛けていたソースに使われてたよ。ちょっと癖はあったけどあたしは好きな味だったからその場で定員に聞いて分けて貰ったことがあるよ」
なんとカイナさんはこの世界の魚醬を食したことがあるらしい、しかもそのお店から魚醤の製造元をきいており、機会があれば分けて貰おうと思っていたらしい。
「でもサウスランドの帝都があんなになっちまって今でも仕入れられるか分からないよ。店自体も製造元も帝都から離れてるみたいだから今でも作っているとは思うけど」
そのサウスランドの帝都を滅ぼしたのがまさか目の前にいるとは思うまい。だがやはり魚醤はサウスランドにあった、今後のことを考えてサウスランドとの取引を西城に検討してもらうようにしよう。そうすれば魚介類や海藻がたんまり仕入れられるかもしれない。
カイナさんもだが、残りの2人も魚介類の調理は経験が無いとのことなので、うまく仕入れられたら魚介料理も伝授することを約束した。3人とも料理に関してかなりの勉強家なところがあるようで、そのあとも色々な調理法や食材の話で盛り上がったり、その内容をメモったりしていた。
「中条こっちは一通り教え終わったんだけどそっちはどうかしら?」
西城がキッチンの様子を見に来たのだが、その恰好がファミレスでみるウエイトレスの制服をアレンジしたような恰好で若干ひいた。デザインでいうならサイ〇〇アの制服に似ている。
「お前、その恰好はどうかと思うが・・・」
「なに言ってんのよ!接客に制服はつきものよ。ある程度の防御力に洗浄機能付きでかなり高性能なんだから!!」
また才能の無駄遣いをしやがって!!しかもなんでお前が着てるのが女性用の制服なのかと突っ込みたかったがぐっとこらえた。
「こっちも一通り終わった。あとは各々レシピのチェックだな」
「それならちょうどいいから調理班の3人が作ったやつの試食をやりましょう。お客様役と定員役で分かれて実際の手順でやってみたらどうかしら!」
確かに流れは掴んだ方が良いだろう。とりあえず調理班と接客班の顔合わせを先にやることになった。
「それでこのメンバーはどういうことだ?」
俺が突っ込みたいのは接客スタッフのメンバー。ロビンは元からメンバーと分かってるから良しとして、なぜここにアリス・ローゼン・クロイツとオスカー様がいらっしゃる。しかも3人とも接客用の制服を見事に着こなしている。
「俺は臨時スタッフだから気にするな!」
なにが嬉しくておっさんのファミレス制服姿を眺めにゃならん!!しかも無駄な筋肉のせいで制服がパツパツだ。
「なんだあれ?罰ゲームか何かか?」
「本人はいたって真面目なのよ。私とあんたの店ならちゃんと視察しないといかんって付いてきちゃったのよ。しかも面白そうだからって接客スタッフに立候補。面白くないことにメンバーの中で一番接客が上手い」
「それは、まぁ、仕方ないとして、なんでアリスまでここにいる。あいつ貴族令嬢だぞ」
「冒険者ギルドに店の護衛依頼を出してたのよ。一応治安は良いといっても完全じゃないから。それで来たのがあの子なのよ」
確かにアリスは12歳にしてCランク冒険者。Cランクといえば一人前の冒険者の称号だ。大人でもCランクまでなれるやつは全体の6割程度、その下に位置するDランクまでは単純に依頼をこなせばなれるのだが、Cランクからは一気に難易度が上がる。それだけにCランク以上の冒険者は信頼度や実力を称して一人前と呼ばれる。
「護衛なのになんで接客スタッフになってんだよ!!」
「本人が護衛だけでなく接客もやりたいって言うから・・・・・追加給金はいらないっていうからいいかなって」
そんな理由でお貴族様を働かせるんじゃありません!!
「隼人さん!見てください。凛さんからこんな素敵な服をいただけました!!これで私もお店のスタッフです」
「あ、ああ似合ってるな。いいんじゃないか・・・」
本人が満面の笑顔で言ってくるので何も言えなかった。こんな娘の姿を見たら親馬鹿と兄馬鹿が飛んできそうなものだが、流石に職務中だろう。
一応接客スタッフのリーダーとして西城の商会で働いている双子の兄妹、カイとリーナが来てくれている。二人とも西城の店で接客スタッフとして働いていたようだが、こちらの担当として派遣されたとのこと。
「隼人さん、これかお世話になります。会長からお噂はかねがね」
「接客の他にも経理関係も私たちが担当します。隼人さんには数字の最終確認をお願いします」
カイとリーナは双子ということで良く似ていた。もちろん男女での違いは色々あるのだが、二人とも中性的な顔立ちのためどちらにも見える。瓜二つというほどではないのだが、化粧や服で二人を入れ替えたらバレないのではないかと思うくらいは似ている。
「お二人ともよろしくお願いします。色々と至らない点もあると思いますけど、補い合って頑張りましょう」
とりあえず接客スタッフは以上5名でやっていくらしい。オスカー様は臨時スタッフとのことなので、この店に常駐するのは4名になる。
それから客役とスタッフ役に分かれて練習。といってもメニューは日替わりだけなので人によって違う料理を出して練習をする。接客スタッフにも揚げ物は好評でオスカー様なんか3回も客役を引き受け腹いっぱいに食べていた。
「いやー美味かった!さすが隼人が考えた料理だけあるな。これなら繁盛間違いなしだ!!」
「オスカー様そんなに食べるとどんどん太りますよ。揚げ物はカロリー高いですから、もうお若くないんですから気を付けないとあっという間ですよ」
「日ごろから動いてる俺が太るわけないだろ!まだまだ20代なんだからな!!」
「はっ?オスカー様ちなみにおいくつですか?」
「今年28だ」
まさかの俺と3つしか違わない。だってどう見ても30代後半だと思う顔立ちだし、髭だし、だらしないぼさぼさの髪だし・・・・・・・
「その顔、俺の外見だけで年齢を判断してたな。ちょっと待ってろ」
少し不機嫌になったオスカー様は二階の共有スペースに行ってしまった。何をするかと思って待っているとありえない光景が目の前に飛び込んできた。
「どうよ!俺だってちゃんとすればそれなりに見えるんだぜ」
ぼさぼさの髪は短く整えられ、無精ひげは綺麗になっただけだというのに全くの別人に見える。系統でいえばアモスさんに近い印象だ。陛下と同じ金髪に緑の瞳から爽やかな青年に大変身を遂げていた。
「オスカー様ってやっぱり陛下のお兄さんなんですね。綺麗なお顔立ちなところは陛下そっくりですよ。それにしても俺と3つしか違わないなんて・・・」
「隼人お前その顔で25か?!俺はてっきりまだ10代かと」
確かに俺は童顔だし、この世界の男どもはみんな高身長で実年齢より上に見えるのが一般的ですけど、10代はひどい!!
ただ、俺の年齢にはその場にいた西城以外全員が驚いていた。みんな俺がまだ10代だと思っていたようだ。それからみんなが俺に対する態度がちょっと変わったのは言うまでもない。なぜならこの店で俺の年齢は上から3番目、なんとカイナさんや双子のカイとリーナも年下だった。年上はジャックさんとオスカー様だけだった。
お読みいただきありがとうございます。
少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。




