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オケアノスとスーツ

ヒスイのお品書き


ヒスイ「新しいお友達ができたの!!男の子でツンデレ属性って主が言ってた!ツンデレってなんだろう?


本日のお品書き

・オケアノス

・見た目は子供戦闘力は大人その名は・・・・・


シンラがその恰好をしているとなんだかすごい頭良く見えるね」

取り合えずシンラは縛り上げて行くとして、問題はアモスさんだ。未だに状況の整理ができていないのかすごく大人しい。


「そういえばアモスさんの従魔契約がまだだよな。やるならさっさとやった方が良いよ」


アモスさんの首元でずっとご機嫌な様子だったシーキャットが従魔契約という単語に反応したのかアモスさんと向き合いちょこんと座る。


「なあ隼人、俺ってもしかしなくてもとんでもない面倒ごとになってるか?」


「・・・・・そんなことない」


しまった!心にもないことを口走ったせいで片言になってしまった!!


「やっぱり面倒ごとに巻き込まれるよな。ってか聖獣の加護だよな。それって世界の4分の1を収める聖獣の力を借りれるってことになるのか?!」


「はぁ~、アモスさんよく聞いて。聖獣の加護はあくまでこのシーキャットが保有しているスキルになるわけで、アモスさん自身は契約者としての力しか行使できない。そもそも人間が聖獣の力をコントロールできるわけないので、その一部を借り受けられるぐらいに考えていい。それと一応ギルマスとクラマス、王様ぐらには報告しないとまずいだろうが、それ以外にはなるべく秘密にしたほうがいいな」


「まぁよく考えたらお前の方がよっぽど苦労してるよな。聖獣と直接契約しているし、災害級の魔物が従魔だし、Sランク冒険者だし、凛のやつと同郷で友人だもんな!!」


それに比べればと少し元気になったアモスさんだったが、俺の苦労と比較されるのはなんだか納得できない。


「物凄く不愉快だけど、さっさと契約を進めてもらえますか!」


「それなんだが、俺って従魔契約とかしたことないんだがどうやればいいんだ?」


本当になぜこのシーキャットはアモスさんを選んだのか不思議でしょうがない。


「双方で認め合っているのであれば自然と契約の魔法陣が出現するはずだ。その時に名づけをすれば契約は完了する。ハクトは邪魔するなよ」


「さすがにここまで来て邪魔はいたしませんわ。それにハイネ様にこちらの方が美味しいのだと教えていただきましたし」


最後の方は聞き捨てならないが、おそらくアモスさんが心から従魔として従える決意をすれば契約の魔法陣は出現するはずだ。


「最後に確認するぞ。お前は本当に俺でいいんだな」


「にゃー!!」


アモスさんの問になんの迷いもなく答えるシーキャット。それほどアモスさんにほれ込んでいるのだろうか。


「分かった。お前の決意に答えよう」


アモスさんの言葉と共に2人を中心に魔法陣が広がる。


「それじゃあアモスさんその子に名前を付けてあげてくれ」


「そうだなぁ・・・・・・にゃん太郎なんてどうだ?」


「にゃ、にゃ~・・・・」


どうやら名前が気に入らないようだ。アモスさんも真剣に考えているみたいだけど、そのあともでてくるのが「にゃん次郎」「にゃん三郎」「にゃん丸」「にゃん〇ゅう」とことごとくシーキャットのお気に召さない名前だった。


「これでもダメか・・・・・」


俺もコクロやハクト、ヒスイは見た目で名付けてしまったので人のことは言えないが、アモスさんのセンスもなかなかである。


「あのアモス様、オケアノスと言う名はいかがですか?アモスさまのお名前は星の名でございますし、同じ星の名で水の星と呼ばれる名を与えるのはどうでしょう」


ここでセンス抜群の万能メイドユーリからの提案に反対する者はいなかった。


「それじゃあからお前の名前はオケアノスだ」


「にゃ~~!!」


魔法陣輝きが一層強くなると契約が完了したのか魔法陣は跡形もなく消えた。


「オケアノスじゃちょっと長いから呼ぶときはアノスって呼ぶがいいか?」


「にゃあ!」


「よろしくなアノス!」


もしかしたらリヴァイアサンの加護がアモスさんの体に影響があるかもと思って様子を見ていたが、とくに変わった様子はないようで安心した。


「さて、契約もすんだところで、アモスさんとオケアノスには俺と一緒に王都まで行って諸々に報告してもらう。護衛にシンラも連れてくから大人しくついて来いよ」


「え~~~~~!!!!僕行かないとダメ?」


「西城がお前も連れてこいって言ってるんだから連れてかないと俺が怒られる。それにどうせSランクの授与式以降王様たちに挨拶なんてしてないだろ。そういうのも大事なんだぞ」


「僕には関係ないもんね」


その一言で目の前から消えたシンラだったが、ここにいるのは俺たちだけじゃない。


「は、離して!!!」


いくら人間離れしたスピードでも聖獣最速をほこるコクロから逃れられるわけがない。


「お前に同情しないでもないが、主だって行くんだ大人しく付いていけ。なにより姉御が来いと言っているのに行かないのは自殺行為だ」


前半は俺のためにと感動したのに本音は後半だろう。


「でもここから王都まで結構かかるだろ。移動はどうするんだ?」


この家から王都にある西城の店とが直結していることは限られた人しか知らない。しかも知っている人物たちには強力な誓約魔法で口外できないようにしている。


「この際だからここにいる奴らにも秘密を教えておくか。西城の手紙的にシンラには教えて・・・・いや、俺たち2人なら走っていけると思ったとかか?」


建物通しを繋げるのは西城のスキルで作った建物に限定されるので、すでに建っている建物には繋げられない。言い方を変えれば西城が作った建物なら自由自在に繋げられるということになる。長距離転移がどれだけ有用なものなのかはどの世界でも共通していえることだ。一瞬にして距離を縮められる技術はそれだけでその世界の文明を1ランクも2ランクも上げてしまうほど脅威なのだ。もちろんそれは西城自身が一番よくわかっており、このスキルは必要以上に使わず、知りえる人も限定するとのことだった。


「このスキルを利用すれば世界全体の約90%の流通を掌握できると言っても過言じゃないわ。だけどそんなことをすればこの世界のパワーバランスやルールが一気に崩れてしまう。だからこのスキルは王都とこの家を繋いでいるだけ、他の国や町には作らない。これは絶対よ」


紅の家と王都の店舗を繋げた際に西城に言われたことを思い出す。安易に教えてしまおうと思ったわけではない、ここにいる人たちは信頼できるし、誓約魔法も拒みはしないだろう。だが、この秘密を知っているからこそ危険を伴ってしまうこともありえなくはない。


「コクロ、申し訳ないけど王都まで俺たちを運んでもらうことはできるか?」


「主だけなら乗せていくこともできるが、他の奴らは無理だな。聖獣を乗りこなすことができるのは契約者本人であるか、特殊なスキルを持っている奴だけだろう。それが無ければ走り出した途端振り落とされる。これは腕力とかの技術の関係ではなく、特殊な獣に騎乗する際には必要なスキルがある」


おそらくハイネとロビンが持っている霊獣の加護などのスキルが必要なのだろう。


「だが、俺に乗らずともアモスはそいつに乗ればいいだろう。シンラなら俺たちのスピードにも付いてこれるだろう」


「アノスに乗るのか?流石にこいつに乗るのは無理だろう」


アモスさんの肩にちょこんと乗る程度の大きさでしかないオケアノスではアモスさんは運べない。


「そいつはあのジジイの加護持ちなんだろ。だったら巨大化位できるだろうし、主の支援魔法で強化すれば俺たちに付いてこれるだろ」


「アノスそんなことできるかの?」


「にゃあ!!」


オケアノスがアモスさんの肩から飛び降りてそのまま裏庭に出ると軽自動車ぐらいの大きさに姿を変えた。


「すごいなこれなら俺も乗れる。乗せてもらっていいか」


「にゃ~~!」


もちろんと言わんばかりにオケアノスは伏せの状態になってくれた。アモスさん背中にまたがるとオケアノスは嬉しそうに飛び跳ねる。


「おお!!こんなに動くのに全く落ちる気配がない」


「それが契約者の能力だ。そいつならある程度の騎乗スキルがあれば乗れるだろう、ジジイの加護があるとはいえ、元は普通の魔獣だからな」


ちなみに聖獣であるコクロたちを乗りこなすには相当高い騎乗スキルがいるらしい。ハイネとロビンが持っている霊獣の加護でもコクロたちを自由に乗りこなすことができるわけではないようで、振り落とされないようにするのが精々らしい。


「あの時は主が乗っていたからこいつらのスキルでも乗ることができたというべきだな。こいつら単体で乗ってたら振り落とされてたろうな」


こう聞くとやっぱり聖獣って扱いにくい奴らなんだなと思ってしまった。もちろん俺可愛いお犬様たちなので愛でる分ならなんの問題もない。


「それならアモスさんはそのままオケアノスに乗ってもらって、シンラは走るで大丈夫か?」


「うん、平気だよ・・・・・途中で休憩おやつよろしく」


本当に王城に行きたくないようでテンションが滅茶苦茶低い。さすがにちょっと罪悪感が出てきてしまった。


「元気だせって!ひと段落したら手合わせでもなんでも相手してやるから」


ほんの気まぐれ、ぽろっと出てしまった一言だったがこれがいけなかった。


「え?!本当ですか!!絶対、絶対ですよ!!!」


シンラのテンションが爆上がりしてしまった。そしてこいつの相手をしたら最後、疲れ果てるまで付き合わされた過去を思い出した。


「いや、俺の都合もあるし、ひと段落ってのもいつになるやら」


「急いで王様にご挨拶して、さっさと終わらせましょう!!」


シンラが物凄いスピードで森を走り抜けていってしまった。


「おい、お前王都の方角分かってるのか!コクロ悪いが追いかけてくれるか。ハイネとロビンは留守番しててくれ、ユーリ帰ってきたばかりですまんが留守を頼むぞ」


「はい、心得ております」


「「いってらっしゃい!」」


俺は急いでコクロにまたがってシンラを追いかける。方向的には間違っていないようでひとまず安心。


「アモスさんもオケアノスも無理しない程度で付いて来てくれ。疲れたら休憩するから、一応持久力とスピードを上げる付与魔法を掛けておくけど何かあれば言ってくれ」


オケアノスには持久力とスピード、アモスさんには風をもろに受けないように障壁を付与しておく。アモスさんなら必要ないかもしれないが、物凄いスピードで走っているときに木や石に当たったら怪我ではすまない。こういった防御魔法を使っておくことが必須である。少し走ってみたがオケアノスは問題なくコクロに付いてこれているようだ。シンラにもすぐに追いつくことができ、そこからはお互いの速度を合わせて並走している。途中で休憩をとってものの数日かかる距離を数時間にまで短縮できたのは単純にこのメンバーの能力の高さが伺える。


「オケアノスは生まれてまだ数年にしてはすごいよな。俺の付与魔法を掛けてるとはいえ、コクロやシンラに付いてこれてるのは素直にすごいと思うよ」


時速で言えば100キロは出ているだろうスピードに付いて来たオケアノスの能力はいかほどなのか単純に興味がある。


「でも流石に疲れたみたいだ」


今はアモスさんの肩の上で荒い呼吸でダウンしている。


「俺から言わせれば人間であるシンラがあれだけのスピードと体力があるのが驚きだな。俺たちはあくまで従魔に乗ってるのにあいつは素の脚力だろ」


アモスさんが関心しているはシンラ。確かに人間が出せるスピードを軽く超えてるし、これだけ走ったのに息もあがっていない。


「僕の場合は精霊の力で走ってるようなもんですし、お二人とあまり変わりませんよ」


風の精霊が風でサポートしてくれるうえに、魔法が効かないシンラの体を強化してくれている。それに加えて自の身体能力が高いためあれだけのスピードと体力を生み出せるらしい。


「それにしても相変わらず王都は入るのに時間掛かりますよね。せっかく急いできたのに」


俺たちは今正門前で立ち往生している。正確に言えば、門から入ろうとしたら門番に止められてしまった。


「すまんな俺たちのせいで」


理由はオケアノス。アモスさんがギルドに従魔登録をしていないため、オケアノスを入れるための手続きが難航してるようだ。ギルドで登録していれば入る分にはなんの問題もないのだが、手続き前だと結構審査に時間が掛かる。そういえば俺も最初は無茶苦茶時間掛かった覚えがある。ただ、よく考えてみたら基本的に従魔は町の外で契約なんかをするもんだから、契約をしたら毎回こんなに時間が掛かるものなのか疑問に思った。


「普通はここまで時間はかからねぇな。普通のシーキャットだったら討伐ランクはCだから簡単な手続きでいいんだろうが、こいつの姿を見られたのが大きくなってるときだったからな。まずシーキャットだと信じてもらえてないんじゃないか?」


俺はシーキャット自体見たことなかったから知らなかったが、シーキャットは大きくても小型犬ぐらいの大きさしかないとのこと。人を乗せられるほど大きい個体は前例がなく、討伐ランクが決められないらしい。ちなみに討伐ランクが高ければ高いほど審査に時間が掛かるらしい。


「俺たちの時ってどうだったっけ?」


「あの時は半日ぐらい待たされたな。流石にフェンリルを従魔にしたなんて信じてもらえなかったけど、俺たち自身が主の従魔になったと言ってようやく入れてもらえた」


コクロからの説明でそんなこともあったなと思い出される。あの時はこの世界に来たばかりで常識とかもなかったからすっごく大変だった。ってか、大変すぎて記憶から抹消した。色々あったんだよ・・・・・・色々。


「結果が出た。そいつのランクをAランクと位置づけ、鑑定師をこちらに呼ばせてもらう。鑑定師の派遣料は従魔の主持ちだが問題ないだろうか」


「ああ、それがルールなら従うよ」


正直このルールは納得がいかない。鑑定師の派遣はあくまで向こうの都合であって俺たちの都合ではない。正直俺とシンラが冒険者ランクを明かして、俺がこの場で鑑定すればいいのではないかと思うのだが、鑑定師はギルドが正式に雇った審査官であり、国が保有する国家資格である。いくら俺に鑑定のスキルがあってもこの資格を持っていなければ証拠としては不十分になる。かといって国家資格なんて取ってしまっては、国に縛られるようなものなので絶対に取らない。


「鑑定師の派遣だって安くないでしょうに、本当に面倒ですよね」


こういった堅苦しい手続きとかルールに縛られるのをシンラは嫌う。冒険者は他の職業に比べれば自由度が高いことで有名だが、そのかわり危険が付きまとう。だが、シンラにとってはそちらの方がありがたいということだろう。


「こればっかりは仕方ないさ。俺だって見ず知らずの奴が従魔と契約した、安心だから家に入れろと言われても、はいどうぞとは言わないだろうからな」


「アモスさんのは極端すぎですよ。僕たちは町に入ったらすぐにギルドに行って従魔登録をするつもりなのに!!」


「それだって本当に行くかどうかは分からないだろ。そういう例外を良しとしてしまえば、悪人たちはそれを利用して町に魔獣を連れ込む可能性だってあるわけだしな」


なんだかアモスさんが一番の常識人に思えてくる。さすが一番年上、俺と一個しか違わないけど・・・・・


それから鑑定師にアモスさんとオケアノスの従魔契約が正しく行われていることを確認してもらってようやく町に入ることができた。

その足でギルドに向かいアモスさんのギルドカードに従魔登録。門で鑑定自体は終わらせていたのでかなりスムーズに終わった。


「そういえばあの鑑定師、オケアノスが加護持ちなのをなにも言わなかったけど大丈夫だったのか?」


「聖獣の加護は普通の鑑定スキルで見破られることはまずない。それにギルドの基準は知らんが従魔の能力やスキルまでチェックするものじゃないだろう。さっきの鑑定師とかいうやつもレベルの高い鑑定は使っていなかったようだし、見られるのはちゃんと従魔契約をしているかどうかなんじゃないか」


「コクロの言う通りだな。従魔登録でそこまでしっかりとした鑑定はしないぞ。お前みたいに自分からすごいスキルを持ってるとか、聖獣だとか言わない限りはな」


アモスさんがガハハハッと笑いながら言っているが、つまり俺たちは最初からかなり非常識なことをしていたということだ。それにコクロたちをフェンリルとしてではなく、その辺にいるグレートウルフとか言ってギルド登録してれば色々面倒ごとに巻き込まれずに済んだと今更ながら後悔した。


「言っておくが俺をその辺の雑魚魔獣として登録してたら主に落雷の一発や二発はお見舞いしてたからな」


なんで俺の周りにいるやつらは俺の心が読めてしまうんだろう。


アモスさんの従魔登録を終えればようやく城へ行くことができる。さっきまでの冒険者衣装から正装に着替える。いつ呼び出されるか分からないので西城手製のフォーマルスーツをアイテムボックスに入れているのでギルドの休憩室を借りて着替える。


「ちょっと待て!!なんでお前らはそんな恰好なんだよ」


俺が突っ込んでいるのはアモスさんとシンラの服装。どちらとも軽鎧や武器を着けたまま、身支度さっきと一切服装が変わっていない。


「いや、俺たちは別に・・・なぁ」


「そうだよ。僕たちは別にちゃんとした格好で来いなんて言われてないし、僕に関しては護衛役なんだからこの恰好で問題ないでしょ」


確かに冒険者が王城に出向くときに正装する決まりはない。王への謁見も武器などは事前に預けるが、持っていく分にはなにも言われない。だが、俺だけ正装してるとなんだか納得できない。


「いいや!二人とも流石に王城、王への謁見なんだからちゃんとした服装じゃないと失礼だろ」


「でも俺たちそんなちゃんとした服なんて持ってないぜ」


「そうだよ!もしかして今から買いに行くとか言わないよね。それこそ待たせることになって失礼でしょ!!」


二人ともちょっと必死である。そんなに正装が嫌なのだろうか。


「こんなこともあろうかと西城から持たされてる衣装があるんだなぁ」


俺がニコニコした笑顔で言うと2人の表情がどんどん険しくなっていく。ちなみに部屋の入口には蝶ネクタイを着けたコクロがお座りしてくれている。


「俺だってこんなたかっ苦しいもん付けてんだ。お前らだけ楽なんてさせねぇよ」


うちのわんこがとってもいい顔をしている。

コクロが見張っていて逃げることなんてできるわけもなく、二人は渋々用意した衣装に着替えてもらう。


アモスさんには俺と似た紺のフォーマルスーツ。見た目がシンプルな分、タイピンやカフスにきれいなアモスさんの瞳と同じ色の宝石をあしらっている。ネクタイもこっちで流行っている(西城が流行らせた)ストライプ柄のものを着けている。はっきり言ってできる上司感半端ない。髪をセットするのは勘弁してほしいと言われてしまい、ぼさぼさの髪を軽く梳かす。すると野性味が強かった印象が薄れ、体育会系さわやかイケメン上司の完成!


シンラには青いジャケットに灰色のショートパンツ、サスペンダーに赤の蝶ネクタイとどこかの小学生名探偵を思わせる服装だった。これで眼鏡を掛けてくれれば完璧だったのだが、西城から眼鏡は預かっていなかった。しかし、シンラの幼い体型ともマッチしてとても似合っている。


「二人ともよく似合ってるよ!」


お互い服装のおかげで普段よりシンラは若く(幼く)アモスさんは落ち着いてみえる。やっぱり服装って大事だよね。


「僕こういう堅苦しいの苦手なのに」


「俺もこんな服を着る機会なんて滅多になかったからな。でも昔来た物よりも随分動きやすいな。腕なんかも全然動かせるし」


俺たちがスーツなどを広めるよりも前は漫画でよくある貴族らしい服装というものがやはり主流で、見た目の派手さに重点をおいて、機能性は二の次という代物だった。確かに見た目は派手で綺麗なのだが、腕は肩より上に上がらないし、装飾品で重さもかなりある。正直言って趣味が悪いと思えるほど。


「西城が作ったやつだからな。少々堅苦しくはあるが、2人の動きをそこまで阻害したりしないし、使われてる宝石も魔石を加工したものらしいからそれだけで防御効果もあるらしいぞ」


このスーツたちの総額を聞いたときは驚きはしたが、西城が手掛けるものに手を抜くことなどありえない。ちなみにその辺の高品質防具よりも全然高い。


「でも俺たちのサイズなんてよく分かったな。これ袖の長さも丈もぴったりなんだが」


「僕もです。凛さんに服は作ってもらいましたけどズボンとか靴までサイズを教えた覚えはなかったんですけど」


冒険者は日々鍛えているので防具を作るときに決まったサイズを指定しない。絶対にその場でサイズの調整をするものなのだが、2人が着ている服は全てにおいて完璧なサイズで作られている。


「魔石のいくつかにサイズ調整の付与を施したからな。多分その効果だと思うが」


西城に頼まれて魔石にいくつか付与を施した覚えがある。どの装飾品に付けられているかは詳しく鑑定してみないと分からないが、それの効果だと思う。


「そんな付与もできるのか?つくづくお前って万能だよな」


「いや、そこまで強力な付与じゃない。数センチ程度の誤差を修正するものだから。さすがに今アモスさんが着てるものをシンラが着ることはできないよ」


「それでもサイズ調整なんて付与でどうにかできるものなんですか?」


「服の生地を伸縮させるイメージかな。それをもう少し細かく調整してるんだけど、伸縮の付与自体は難しいものじゃないし、多分俺じゃなくても付与魔導士ならコツさえ掴めばできると思うけど」


付与魔法の技術自体はそれほど難しいものではない。ただ、付与にはかなりの魔力が必要になってくるし、物体によって込める魔力量の適正が違うのでコツをつかむのが難しい。それに付与に限らず魔法にはイメージが大切なので、現代で似たような性能をもつ機械をイメージできる俺はこの世界でも特殊なのだろう。


「お前の影響もあって付与魔導士の評価も上がってきて、付与魔導士を目指すやつも増えたからな。そのうち講習でも開いてやればいいだろう」


「嫌だよ、面倒だし」


実際はギルマスに何度かお願いされたことがある。だが、俺の付与魔法は魔力ゴリ押しの部分も多いので参考にならないし、イメージしている物を伝えてもこの世界の住人では理解できないだろう。


そんな話をしていると予定時間になったので王城へ向かう。さすがに正装で街中を堂々と歩くのは目立つので西城の店で馬車を借りることにする。こちらは西城が事前に手配してくれていたようで、店に入ってすぐに馬車を用意してくれた。その馬車で運ばれること数分、この距離なら歩いて行けると思うが、王城に入るのに徒歩で行く者はほとんどいない。城に住む貴族や王族に呼ばれた場合は基本正門から入ることになるのだが、徒歩などで行こうものなら呼び出した者の品位に関わってくるらしく、その辺りはちゃんとしないといけないらしい。ちなみに一般人も城に入ることはできるのだが、それは別の裏門が設置されており、そちらで面倒な手続きを踏まないといけないらしい。城なんか行ってなにが楽しいのか俺には分からない。


正門でも入るまでに時間が掛かるのだが、西城の店の馬車ともなればほぼ素通り、それだけ西城の店はこの国で力を有している証ということなのだろう。


城に到着すると西城のいる部屋に案内された。案内役に連れていかれた部屋は王族関係のフロア、ここに案内されるのは一体何度目になるだろう。


「随分遅かったわね。私をこれだけ待たせるなんていい度胸しているじゃない」


部屋に入って一番最初に言われたのがこの言葉。どこの女王様だよ。


「こっちにも色々あったんだよ。それよりなんで俺が呼ばれるんだ?サウスランドの件ならお前とリュートさんの説明だけで十分だろ」


「こっちにも色々あったのよ。本っ当に王族とか貴族とか面倒な奴らしかいないわ。この国は私が掃除してあげたから大人しい方なんだけど、他のところが五月蠅いのよ」


珍しくご機嫌が悪いのはその対応をしていたからだろう。この国にも権力をちらつかせて命令をしてくる貴族や王族はいたのだが、そこは西城があれやこれやをして黙らせたらしい。


「あのときも大変だったけど、今回はあの時以上に面倒なのよね・・・・もういいわ、考えても頭が痛くなるだけだし、それよりアモスさんもシンラ君もそれ着てくれたのね!嬉しいわ」


さっきまで不機嫌だった西城はアモスさんとシンラの服を見て嬉しそうに2人を見る。


「ああ、凛が用意してくれたんだってな。正直ここまで動きやすいとは思わなかった。ありがとうな」


「ちょっと堅苦しいですけど、とっても素敵な衣装ですよね。ありがとうございます」


「やっぱりイケメンたちに服を作るのはいいわねぇ。これをみるだけで疲れが吹っ飛ぶわ。でもアモスさんならもっと爽やかな色合いが良かったかしらね。あれとか、あの素材とか使ったら・・・・シンラ君もとっても似合ってるけどサスペンダーの素材はあっちの方がよかったかしら、それに眼鏡をつけて蝶ネクタイに変声機とか付ければ尚更」


「西城そこまでにしろ!!」


このまま行くとこの場で二人の服を手直しするとか言いかねない。それにシンラをあの小学生探偵に近づけるのは止めなさい。


「リュートさんも大変な役目を押し付けてすみませんでした」


西城の隣でずっと寡黙を貫いているリュートさんに労いの言葉を言う。


「いや、俺の前では凛はかなり大人しいぞ。やはり気ごころが知れている隼人の前だからこそ生き生きとできるのだろう」


「ちょっとリュートさん、変なこと言わないでください!」


珍しく西城が翻弄されている。リュートさんの素直な言葉には西城も弱いようだ。

そんなリュートさんもいつもの革鎧ではなく、しっかりと黒いスーツを着こなしている。アモスさんのようにがっしりとした体形のリュートさんだが、大きめのスーツを着るとスッキリとして見える。あれは着瘦せするタイプなのだろう。


西城もサウスランドで着ていたウェディングドレスではなく。後ろのスカート丈が長いフィッシュテールタイプのドレスを着ている。西城にしては珍しくブラウン一色で染め上げたドレスに赤いネックレスとシンプルな装いだ。


「それで俺が呼ばれたのってもしかして・・・・・・」


「そうよ。私が何を言っても聞く耳を持たないからコクロと中条に手伝ってもらおうと思ってね。陛下もあの時と同じことをやるとおっしゃってたの」


「だからシンラのやつまで連れて来させたのか。リュートさんもここで待機してるってことは巻き込む気満々じゃん」


また俺の胃がキリキリしてしまう・・・・・


「なぁ、あんまり話が見えないんだが、具体的に何をするんだ?」


「この際だからアモスさんにも手伝ってもらおうかな。簡単に言えば私たちに喧嘩を売ったらどうなるのか実演するだけよ。Sランク冒険者だろうが容赦しないってことを分からせるの」


西城の笑顔がとても眩しいのに対して、俺とリュートさんはどんどん顔色が悪くなっていく。


お読みいただきありがとうございます。


少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。

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