毒と薬
ヒスイのお品書き
ヒスイ「zzz( ˘ω˘ )zzz( ˘ω˘ )zzz( ˘ω˘ )」
どうやら待ち疲れて眠ってしまったようだ。
本日のお品書き
・万能薬
・劇薬
腹ごしらえも終えると俺のいない間西城とビオラさんでちゃっかり情報交換をしていたようだ。
「それじゃあ凛ちゃんたちも黒幕は掴んでないのね」
「ええ、王族が関わっているのは確かみたいなんだけど。そいつらがアンデットまで使役できると思えないし、外部の死霊使い(ネクロマンサー)を雇い入れているとみてるわ。そいつの実力も相当だと思うけど」
「ドラゴンゾンビを使役できるのなんてAランク冒険者でも難しいのに、ただでさえ少ない死霊使い(ネクロマンサー)でそこまでの使い手がいたかしら?」
死霊使い(ネクロマンサー)なんて冒険者か暗殺者、闇ギルドなどでしか見たことがない。暗殺者であるビオラさんならそっちの事情にも詳しいはずなのだが、彼女からそこまで高ランクの死霊使い(ネクロマンサー)の情報は出てこなかった。
「実力を隠していたか、私たちが知らないような僻地からの実力者、後は考えたくはないけど短期間で実力をつけたとか?」
「目的はなんであれ、大量虐殺をしている以上まともな思考の持ち主とは言えないわね」
「そんな人たちがこの町を壊したんですね・・・・」
さっきまでサンドイッチをお腹いっぱい食べて機嫌もちょっとは落ち着いたと思ったのだが、ココから怒りと悲しみの感情があふれ出している。
「黒幕がそいつだろうが、別の奴だろうがここまでやらかした罪は償ってもらわないとな」
気合いを入れなおしてみたものの、この後どうしようか悩むところだ。半日以上この町を調べつくしているビオラさんたちでも元凶を見つけられていない。しかも人造魔導士の研究所らしきものも見つけられていない。暗殺者であるビオラさんの索敵能力は最高峰であることから俺たちの能力で見つけられるとは思えない。
「ビオラさんでも見つけられないなら普通に隠されてるわけじゃないのかもしれないな」
「それもあるけど人の出入りがないというのが一番難しいのよ。こういう隠された施設っていうのは人の出入りがあるときが一番見つけやすいから。完全に人気のない今の状態じゃ探すのも一苦労よ。魔法的な施設で完全に隠されてたら私ではお手上げに近いかもね」
「そうなると魔力感知で深くまで探るのが手っ取り早いか。数分ぐらい無防備になるからその間守っててもらえると助かるんだけど」
俺の提案に3人とも頷いてくれたので早速魔力感知を発動させる。常時発動している魔力感知は自分を中心にして球状に魔力を広げるイメージをしている。今回はより広く、より上下の範囲を広げるため細い糸を蜘蛛の巣のイメージで空、地中、街中に張り巡らせていく。広げる範囲によって馬鹿みたいに魔力を食う上に、集中しているので完全無防備になるので一人では絶対にできない。隠蔽されているだろうから魔力感知でも見つけられないだろうが、地中に不自然な空間を見つける。強い隠蔽魔法の特徴として、地中に含まれる微量な魔力すら隠蔽してまうため、隠蔽魔法を使っている空間は不自然に魔力をなにも感じない。
「見つけた。多分ここだ」
「さっすが“万能”、索敵もお手の物ね」
「あんまりからかわないでくださいよ。俺からしたら何かに秀でているビオラさんたちの方が羨ましい限りですよ」
「隣の芝は青く見えるものよ。それより目的地がわかったらな早速乗り込みましょう」
「いえ、おそらくさっきの魔力感知で俺たちの存在がバレたのか、こっちに物凄いアンデットが向かってきてます。黒幕も一緒か分かりませんけど、ここで足止めをしてもらう役が必要です」
できれば西城かビオラさんにお願いしたい。目的地を理解しているのは俺なので候補としては3人、だがココさんの実力からしてアンデットの大群を退けられるとは思えない。
俺の視線で理解したのか西城がここに残ってくれるようだ。
「言っとくけど、私に戦闘能力を期待するのはお門違いなんですからね!私の本業は商人!!手持ちの武器が尽きたらさっさとヒスイのところに逃げさせてもらうからね」
西城の言っていることも最もだった。こいつの強さは武器の強さに比例している。今は最強の防具(なぜウェディングドレスを着ているのに誰も突っ込まないかは謎)と現代兵器の併用で前線でも戦えているが、武器も無限にあるわけではない。武器の在庫が尽きれば西城に戦う術はない。
「分かってるよ、最悪お前の最終兵器を使ったっていい。俺の準備もほとんど終わってるからこっちはいつでも発動できるしな」
お互い国一つを滅ぼすための秘密兵器は持っている。各々命の危険を感じればそれを使っても文句は言われないだろう。西城もそれに納得したようにこちらに向かっているアンデットたちの処理を引き受けてくれた。
俺とビオラさんとココさんは敵に気づかれないように移動する。このときビオラさんの隠形のスキルで俺たちの気配を遮断してくれているのがでかい。ビオラさんほどの腕前になると気配どころか姿すらもある程度見えなくすることができる。あまり大きな声を出したり、ぶつかったりすると隠形が切れてしまうらしいがそれでも破格のスキルだ。
俺たちは魔力感知で怪しいと踏んだ場所は王城のさらに地下。おそらく城の中から入ることができるのだろうが、城門は固く閉じられ中に入る術がない。
「こういうときも私の出番ってわけね」
いきなりビオラさんがその場からいなくなると、数分もしないうちに城に入る裏口を発見してきてくれた。
「こういう城ってあちこちに隠し通路があるものなのよ。王族とか偉い人が逃げられるようにね」
もちろん隠し通路には罠があることがお約束なのだが、そこもビオラさんが次々と罠を解除していってくれている。
「あいかわらずビオラさんの隠密行動能力は流石ですね。俺たちだけだったら罠を全部壊していくしかなかったですよ」
「こういう時はパーティーを組むメリットが多いのよね。ハヤト君はなんでもかんでも一人で出来ちゃうから、あんまりパーティー組んでる様子はないけど」
「そうですね。依頼されて一時的なパーティーを組むことは多いですけど、長くパーティーを組むってことはもうほとんどありませんね」
俺だってパーティーを組めるものなら組んでいる。実際パーティーを組めば足りない部分を補いあえるし、いくら付与魔法が便利でもできないことだってある。だが、俺がパーティーに入ると致命的な欠点が生まれてしまう。
「仕方ないわよね。隼人君が入るだけで強くなった気になってパーティーがどんどん潰れていっちゃうんだから」
「えっとそれってどういう意味なんですか?」
「ココちゃんは隼人君と一緒に戦ったら戦闘はしやすいかしら?」
「そうですね。最高ランクの付与魔法でサポートしてくれるのですから、相性はあるでしょうけど今より弱くなるなんてことはないと思いますけど」
「そうよね。でも隼人君と組むと普通のサポートとは比にならないくらい強くなっちゃうのよ。しかも隼人君には相性とか全く無意味、どんな相手だろうと完璧に相手に合わせたサポートをしてくれるの」
「さ、さすがSランク冒険者ですね。でもそれなのにパーティーが潰れるってどういうことですか?」
「簡単な話さ。俺がいることに慣れてしまうと俺が不在の時に必ずパーティーが壊滅するんだ。自分たちの力を過信してな」
短い間パーティーを組めばそこまでひどいことにはならないが、1か月や2か月パーティーを組んで仕事をしているとメンバーたちが自分たちの力を過信し始める。もちろん付与魔法ありきの力だと皆分かっているのだが、そのくらいになってくると付与魔法に依存し始める。
「俺の付与なら冒険者ランクを平気で2つぐらい上げれる。だけど俺の不在中に依頼を受ける奴、鍛錬と言ってパーティーで倒せた敵に挑みに行くやつ。そんな奴が後を絶たなかった。極めつけは、俺の付与が間に合わないと全て俺の責任になる」
以前パーティーを組んだ前衛2人が一番ひどかった。敵の索敵から味方の付与、結界に敵の減退に至るまで全て俺に任せてきた。しかも2人とも指示に従わず好き放題に動くもんだから付与を掛けるのが一手遅れてしまった。その結果自分たちの実力より2ランクほど高い魔物に突っ込み片手を食いちぎられた。その時に二人から言われた言葉が今でも忘れない。
“お前の付与があれば倒せるはずだった!俺の腕がこんなになったのはお前のせいだ!!”
“サポートのくせして俺たちに命令するんじゃねーよ。お前らは俺たちが守ってやってるんだから後ろから俺たちの面倒見るのは当然だろ!!“
「その時思ったよ、俺は人をダメにする毒なんだって。それから俺は固定パーティーを組むのをやめたんだ」
「でもそれはその人たちの責任であって隼人さんの責任では」
「それだけ“万能”の力は便利すぎるのよ。彼の力はなにも戦闘にだけ役立つものじゃない。野営での料理やアイテムボックス、どんな悪環境でも快適に過ごすことのできる付与魔法。傷んだ武器や防具も付与魔法を使えばある程度直せるしね。今聞いたものでも隼人君に依存するには十分だと思わない」
「確かに。私もさっきいただいたサンドイッチだけでも隼人さんに依存してしまいそうです」
「料理人にとっては光栄な言葉かもしれないけど、人を便利アイテムみたいに思われるのはちょっと嫌かな」
だから俺は面を着けて姿を隠した。それでもアモスさんやビオラさんみたく万能の隼人ではなく、ただの中条隼人を必要だと言ってくれる人もいる。冒険者ギルドを辞めないのはそんな人たちがいるからだ。
「私としてはうちのクランなら隼人君もやりやすいと思って勧誘してるんだけど、いっつも断られちゃうのよね」
「ビオラさんのお誘いは嬉しいんですけど、冒険者ギルドからもパワーバランス的にSランクがそうそう組むもんじゃないと言われてますし、なによりビオラさんには俺なんか必要ありませんよ」
この人の強さは技術や魔力じゃない。ステータスなら俺が勝っているだろうが、本当の殺し合いをしたなら間違いなく彼女に殺されるのは俺だ。
「こうなったらココちゃんと私の色香で隼人君を悩殺させるしかないわね!!」
二人でイチャイチャしてもらう分には目の保養になっていいのだが、やっぱり同じイチャイチャをみるならBLの方がいいなぁ。こればかりは生粋の不男子なので仕方ない。
「残念ながらそれでは悩殺は難しいですね。俺を悩殺させたいなら素直になれないツンデレ年上受けとおバカわんこ年下攻めとかを持ってこないと難しいです」
「隼人君が言っていることはよく分からないけど私たちじゃ役不足なのは分かったわ」
一般男性だったら間違いなく悩殺されているだろうが、おそらく俺は恥ずかしくてアタフタするだけだろう。ちなみにゲイじゃないので普通に女性からこういうことされるのはうれしいのだが耐性がなさすぎる。
「そういえば聞いていいのか分からなかったので聞かなかったんでけど、どうしてメイド服なんて着てるんですか?それ西城が作っただけあって結構な防御力ありそうですけど」
「ようやくそこに突っ込んでくれたわね。正直凛ちゃんのドレスも突っ込もうか迷ってたぐらいだったのだけど。私が突っ込まれないのに凛ちゃんだけ突っ込むのもなんだと思って放置してたの。それで私がメイド服を着ているのは今仕えている主がいるからよ」
Sランク冒険者であり、自らもクランを立ち上げそこのマスターをしているビオラさんが主と仰ぐ人がいることに驚きしかなかった。
「ちなみにその主ってどなた?」
「ひ・み・つ・よ。でも隼人君も会ったことある方だから、そのうち分かると思うわよ」
俺の知り合いでビオラさんを雇える人なんているのだろうか?国王とかオスカー様か、それともローゼンクロイツの方々か、西城の取引先の豪商の方とかかな。こう考えると金を持っている人ばかり思浮かぶが、案外真に使えるべき主に出会ってとかだったら金とか関係ないか。でもそんな人がメイド服なんて着せるか?
「おしゃべりはその辺で、どうやら通路を抜けるようです」
先頭で警戒をしてくれているココさんが通路の出口を見つけたようだ。
「私としては隼人君は毒じゃなくて薬だと思うけどね」
隣で歩いていたビオラさんはその言葉だけ残して姿を消した。おそらく通路の先に先行してくれたのだろう。本当に自分にも他人にも厳しい人だ。俺にこんな役を任せるなんて。
「ココさん止まってください」
「は、隼人さん一体どう・・・・!!」
棍を構えてココさんから距離をとっている俺にさぞ驚いたことだろう。
「ビオラさんが露払いを買って出てくれたんですから、俺もきっちりと役目を果たします。あなたの目的、話してもらえますか?」
お読みいただきありがとうございます。
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