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オネエの怒り

ヒスイのお品書き


「主がアンデットに囲まれちゃった!大変!大変!!


・BL作家は神

・オネエの予感


主のためにお姉ちゃんと大活躍しちゃうよ」

ようやく祈りの光が消えるとアンデットは一匹も残ってはいなかった。


「やっぱりアイナ先生は神!あの方を崇めていればアンデットになぞ負けることはない!!」


元の世界で俺の最押しBL漫画を描いている神を思い出す。神棚まで作って漫画を飾っていたのはいい思い出だなぁ。


「それにしても西城のやつ俺を囮にしてまで行くとは思わなかった。早くヒスイを救出しないと!!」


馬車はなくなってしまったが、身体強化の付与をかければそれなりの速度が出せる。今から追いかければ西城たちが首都に着く頃には追い付けるだろう。


ただ、西城らしくない方法だったのが若干気になっている。あいつの性格ならいくら穏便に行動したかったとはいえ、ここまでコソコソと動き回るのはちょっと違和感がある。あいつなら「向かってくるならここで迎え撃つまでよ!!」とか言ってここで戦闘するぐらいしそうだ。まぁ、あいつにも考えがあるのだろうが、ヒスイを巻き込むのは正直腹が立つ。


「待ってろ、ヒスイ!!」



「そんなに心配しなくてもあいつなら大丈夫よ」


中条を囮にしてアンデットの群れを突破してようやく安全な道に出ることができた。群れを突破した後も所々にアンデットが見張りをしており、なるべく見つからないように馬車を慎重に進めていた。その間ずっと彼の従魔であるヒスイが心配そうにオロオロと落ち着かない。


「あいつの強さは知ってるでしょ。心配するだけ無駄よ、無駄。それよりもこのあと合流する中条のために色々と準備する方が大切じゃない」


このグラトニースライムは他のスライムに比べてかなり知性が高い。しかも、主である中条を唯一心配する優しい心の持ち主だ。しゃべることこそできないが、こちらの言葉をしっかり理解して体全体を使って感情を表現してくれる。


「きっとヒスイちゃんが活躍してくれれば中条も喜ぶと思うわよ」


だが、生まれて数年の子供。言いくるめのは簡単だ。


「きっと中条はヒスイちゃんのことをいっぱい褒めてくれるわよ」


じっとこちらを見つめていたヒスイは、やがてやる気が出たのかポヨンポヨンと飛び跳ね始めた。


「(ちょっと良心は痛むけど、中条を囮にしちゃったから私の守りが手薄なのよねぇ。ここはヒスイちゃんに頑張ってもらわないと)」


中条とは違って私の戦闘能力は極端に低い。神から貰える恩恵のほとんどは生産系のスキル、魔法がない世界から来たので魔法の適正はゼロ、もともとの身体能力も世界の差なのか文明の差なのか分からないがかなり差がある。何もしないで腕相撲や短距離で勝負をしても5歳の子供にも負けてしまうだろう。


それでも私がこの世界でやってこれているのは、神からもらった生産系のスキルと元の世界で培った知識と経験があったからだ。これを使えばBランク冒険者にだって戦闘面では遅れはとらないだろう。


それでも中条と違って規格外の力を常時使えるわけではない。準備には時間が掛かるし、奇襲にすぐ対応できるわけじゃない。だからこれまで荒事はすべて中条に任せてきた。だけど、今回に関しては自分から最前線へ行く決意をした。この世界でお世話になったロイドさんとアマンダさんのため、私は受けた恩は必ず返す。


「だから、あんたたちみたいなのを相手にしている余裕はないのよ」


獣型のアンデットに見つかったが問題ない。数体なら私一人でも対処はできる。


「炎魔法で焼き付くすか、聖魔法で浄化するかよね。とはいっても聖魔法なんて教会の人間か中条ぐらいしか使えないし、これしかないわよね」


私が作って中条に付与をさせたお気に入りのポーチ。もちろんタダのポーチじゃない。中は中条のアイテムボックスと同じように亜空間とつながっており、無限に物が入れられる伝説級のアイテム。そこから取り出すのは元の世界で開発された火炎放射器。もちろんこの世界には重油やガソリンなどは存在しないので、これは魔石を用いた簡易火炎放射器。火の魔石には魔力を流せば火を発生させる効果がある。たが一般的に使われている魔石では火力が足りない、せいぜいがコンロの火程度だろう。だが、この火炎放射器は神の恩恵を受けた私が作った特別制。可燃性のガスと炎を生み出す魔石を組み合わせて何倍もの火力を実現させた優れもの。


「燃え尽きなさい!!」


その火力は上級魔法に匹敵するほど。アンデットたちは為す術もなく灰になるしかなかった。元の世界で扱われていた化学兵器をこちらで生産し、使いこなすことこそ私のアドバンテージ。ただ、この兵器たちはおいそれと衆目にさらすことができない。なぜなら魔法の素養がない人でも指先一つで上級魔法と同等の火力を作り出せるのだから。そもそもこの兵器たちは本来この世界では作ることができないような代物だ。簡単なように見えて、同じように他者が作ってもほとんど機能しない代物になってしまう。これは神からの恩恵を受けた私にしか作ることのできない兵器。そして使いこなすことができるのも私だけ。だけど、そんな制限を設けると当然使用する際にも制約がついてくるものだ。その制約は“神の依頼でのみ使用可”というもの。そのため、冒険者ギルドで受けた依頼や獲物を狩るためにこの兵器たちを使用することができない。


だが、そもそも私は戦うことが目的ではない。元の世界でできなかったこと、やりたかったことを今度こそ、この世界で実現させることが私の目的。それには現代兵器なんて必要ない。ロキたちからの依頼だけこの兵器を使えれば十分だ。


「これぐらいなら中条ほど注目はされないはず。なんとか今日中に首都に到着したいわね」


数匹のアンデットを灰にしているとヒスイがプルプルと震えている。


「これって、もしかして・・・・・」


私では危機感知なんかはできない。だが、ヒスイは魔力や殺気、気配という様々な感覚を察知することに長けている。この震えももしかしたら危険を感じているのかもしれない。


「とにかく急いで首都に向かわないと」


馬車を動かそうとするとヒスイが目の前でポヨンと跳ねてなにかを訴えかけている。


「前に進むなってことかしら?」


どうやら正解だったようだ。体を上下に頷くような動作をしてくれた。


ヒスイが危険と感じているということはこの先、首都に何かよからぬ物や危険があるということ。なにも準備しないで行くにはリスクが高すぎる。


「一旦中条と合流しましょう。どうやら私たちだけじゃ行っても危険が増えるだけみたいだし」


私の嫌な予感は結構的中する。サウスランドの首都にある支店からの報告がここ数日なかったときから嫌な予感はしていた。最悪店の従業員が捕まっているか、裏切ったかしたのかと思ったが、これはそれ以上に面倒な予感がしてきた。


「最悪首都に住む人たちを人質にでも取られる覚悟はしてたんだけど、これはそれ以上にやばいかもしれない。もしかしたら住民はもう・・・・」


問題が起きたとき最悪を想定するのは商人の鉄則。だが、今回の予想は外れてほしいと心からそう思う。


来た道を引き返そうと馬車を反転させて走り出した瞬間巨大な何かが地面から現れた。とても表現しにくいものではあったがあえて近いものを上げるとするなら。


「アンデットの集合体・・・・」


アンデットの体を無理やりつなぎ合わせて円形にしたもの。所々に人の顔らしきものや四足歩行の胴体、鳥らしき翼といった体の部位が所々に見受けられるが、どこをみても原型を留めているところはなかった。


これにはさすがに吐き気がしてくる。アンデットとはいえ、ここまで残酷なことができるものなのかと思えるほど。それを確信したのは、球体の表面に浮かぶアンデットの装いだった。私自らがデザインして支店ごとに模様や色を少しづつ変えたもの。サウスランドは海に近く漁業が盛んだからと鱗模様のレースに海の青をデザインした。それが無残にも引きちぎられ血まみれになって判別は難しいが、あれは間違いなくサウスランド帝国支部で働く従業員の制服。


「本当に気分が悪いわ。こんな悪趣味なものを作り出すやつも、それを傍観しているだけのやつも」


先ほどのアンデットならどこかから呼び寄せた可能性もあった。だが、ここまで変質したものは人工的に作り出されたものにほかならない。しかもサウスランド帝国で働いている者がアンデットになっているということは、すでに首都にいる人間は殺されアンデットにされていると思った方がいい。


アンデット特融の悪臭で吐きそうなほど気分が悪いが、今は怒りがそれを上回っている。


本当に嫌になる。支店を任せるために送り出したツインテールがお似合いの可愛い子。弟のために働くと言って、一生懸命業務をこなすその姿を見て、支店を任せるにふさわしいと思って声を掛けた。


「私のせいね。私がサウスランドなんて任せなければ、あなたはこんな目にあうこともなかった」


恨んでくれて構わない。だけど、あなたに支店を任せたことを後悔はしていない。だって、あなたは私の期待に十分に応えてくれたから。


「だから安心して、十分な働きにはそれ相応の報酬を、それが私の流儀。後のことは全部私たちに任せて安らかに眠って」


ポーチから取り出すのは聖白のウエディングドレス、瞬間装着機能はこの世界に存在しないのだが、神の恩恵とオネエの維持で私に限り、取り出した瞬間に着替えれるような使用になっている。そしてもう一つ取り出したのは巨大な砲台。


「まだ試作段階のうえに、コストが半端ないけど。これまであなたが仕えてくれたせめてもの手向けよ」


集合体の大きさは有に100メートルを超えている。手持ちの火炎放射機では火力が足らない。火炎放射機以外の手持ちでこの大きさのアンデットを相手にできるのはこれだけだ。


「現代では実現不可能と言われている空想の兵器。電子、陽子などを粒子加速器によって亜高速まで加速して発射するその兵器の名は、“荷電粒子砲かでんりゅうしほう”」


もちろん現代技術で作り出したものではなく、魔石や特殊素材で似たような効果を作り出す偽物。だが破壊力はおりがみつき、青い色の光線に触れた物体はマイクロ分子まで分解され消滅する。発射時に魔力制御をおこなわないといけないため、砲台に触れていないといけないのが欠点。発射の瞬間砲撃は爆散し、辺り一面を焼野原にするある意味自爆。つまり使った者も撃たれた者も等しく消滅する自爆兵器なのだ。


「このドレスを着てないと使えたもんじゃないわね」


圧倒的破壊力の荷電粒子砲もベイカーへの愛で作り上げたドレスにはシミの一つもつけることはできない。目の前には焼けただれた地面と酸化して真っ黒の炭となった物体だけが残っており、徐々に亀裂が入ったと思えば粉々に砕けサラサラの塵と化した。


「せめて、あなたたちが安らかに眠れることを祈ってるわね。あの世で私とベイカー君の結婚式をお祝いして頂戴」


さて、こんな糞なことをしてくれた奴にお礼をしないといけないわね。


とりあえず中条と合流をして、さっさとこの気色悪い国を壊してしまわないと。


お読みいただきありがとうございます。


少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。

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