万能の二つ名
ヒスイのお品書き
ヒスイ「二つ名ってカッコいい!!ヒスイも欲しい。
本日のお品書き
・なんでも入ってるアイテムボックス
・一体何者?
主のアイテムボックスにはヒスイの食事、おもちゃ、その他色々入ってるの」
変な誤解を受けたが、取り急ぎ鶏照り定食を10食仕上げる。もちろん代金はすべて頂くよ。金貨50枚ゲットだぜ!!
「そんで、時間たっちゃったけどいつも通り、俺への指名依頼を受ければいいわけ?」
ようやく本題に入れた。定食作るだけで今日が終わるかとちょっと焦ったけど、ここに呼ばれた理由は溜まっている俺への指名依頼を受けさせることだった。
「おう、選定はすんでるから出来るところから始めてくれ。それから今回の補佐なんだが、新人しか手が空いてなくてな。すまんが、そいつを付けるがいいか?」
いつも通りなら俺への指名依頼はかなり量がある。そのため金を払って臨時の補佐をしてくれる子をギルド内で用意してもらう約束をしているのだが、よりによって新人か・・・・・大丈夫だろうか。
「そんな心配そうな顔するな。新人と言っても、実力は折り紙付きだ」
「隼人さん、あの子は私が直接指導した中でも特に優秀な子です。どうかご安心ください」
ガラドの言葉だとちょっと信用が足りなかったが、ヘレナさんが言うなら心配ないだろう。
さっそく補佐の子を呼んでもらう。扉がノックされると眼鏡をかけた男性スタッフが入ってきた。
「お呼びですか、ギルマス」
「おう、この前話してた補佐の件だ。今日一日こいつの補佐をやってくれ」
男性スタッフは頷くと俺に向かって自己紹介を始める。
「ヴァンと申します。まだギルドに入って日は浅い若輩者ですが、今日一日よろしくお願いします」
礼儀正しい子だった。年は14.5歳といった感じで若く見える、黒いスラックに同色のベストと赤のネクタイといった男性スタッフの制服をきっちり着こなしている。濃い紫がかった髪で片方の目が隠れているが、なにか傷でもあるのだろうか。印象としては学校のインテレ生徒会長と言った感じだった。
「あなたの主な仕事は依頼完了の受理よ。隼人君の場合、依頼達成のスピードが尋常じゃないくらい早いから覚悟してね。それが受理が終わったらギルマスにすぐ確認してもらうためにこの部屋で作業を行ってもらうわ」
「この部屋で、ですか?」
「そう、最初は驚くかもしれないけど、こうでもしないと処理しきれないのよ」
なんだがお手数をお掛けしてるみたいで、申し訳なさを感じてしまう言い方をされている。別に悪いことしてないし、むしろ早く片付くのはいいことのはずなのだけど。
「ヴァン君だっけ、俺は隼人って言います。今日一日よろしくね。さっそく片付けちゃいたいから依頼書から採取依頼のものを読み上げて行ってもらっていい」
一通りヘレナさんから説明を受けた後さっそく依頼をこなしていく。
「ガラドさん、いつも通りこの場で依頼達成できるものしか受けませんからね。残った奴はギルドの方でどうにかしてください」
俺の言葉でヴァン君が少し怪訝そうな顔をする。まぁそうだよね、自分で言ってても自分勝手な言い分だと思うよ。でも俺への依頼を全部こなしてったら終わるのが一体いつになることやら。依頼を受けてる最中ですら、指名依頼が入ってくるから追いつかない。
「それで問題ねーよ。ヴァンもそんな顔すんな。こう言ってるけど大体問題ないから」
まだ若いのか感情を隠すことに慣れてないようだ。ギルマスに注意されてしっかりと表情を元に戻せるのだから優秀である。
「失礼しました、そういうことでしたらさっそく。まずはキラーマンティスの羽と魔石ですね」
「はい、これ」
アイテムボックスに入っているキラーマンティスの羽と魔石を渡す。
「!!!こ、これは確かにキラーマンティスの羽、魔石は鑑定しないと分かりませんけど」
「そいつは問題ねーよ。鑑定は俺がするし、お前は数があるか確認しながら受理だけしていってくれ」
これも驚くよね。俺のアイテムボックス内にはコクロが暇つぶしといって狩ってくる、魔物の素材がわんさか入っている。しかも高ランクの魔物ばっかり。本人の目的は肉などの食べられる部分のみでそれ以外はいらないとのこと。俺の住んでいるのは特級危険地域、魔の森である。その辺の魔物より相当強いし、手に入る素材も一級品ばかりだ。
最初こそ驚いて手が止まっていたが数件受理をこなせば、基本数と見た目で分かる範囲で問題ないかの判断だけですぐに受理をしてギルマス確認にまわる。
それからビックタートルの甲羅、アサシンスネークの毒袋、オークキングの牙、ビックフットの毛皮、ユニセロスの角や各種魔石など次々と依頼の品を出していく。
「まさか、採取依頼の品すべて手持ちにあるなんて・・・・」
数十件あった採取依頼の紙には全て受領印が押され、現在ギルマスが素材の鑑定を忙しなく行っている。
「今回はたまたま、手持ちがあったけど俺だって毎回持ってるわけじゃないよ。たまにある“寿命を延ばす薬”とか“この世のものとは思えない宝石”とか変なのは無理だし」
そんな依頼受理しないでもらいたい。当然そんな曖昧な物や怪しい物の依頼は受けません。
「本来そういう依頼は受けないのが普通です。恐らくギルドで長年放置されていた依頼だと思います」
恐らく俺ならあるんじゃないかと言った輩がいるのだろう。まったく困ったものだ。
「採取依頼は終わったし、残りを片付けちゃお。後はどんな依頼がある?」
「えっと、古代文の暗号解読、希少種魔物の解体作業、狂暴な魔物の討伐依頼、城壁の強化、魔剣の修復です。どれも時間が掛かって難易度の高いものばかり、しかも分野がバラバラ」
本当になんでもかんでも俺に投げるのやめてもらえないかね。
「暗号解読はすぐできるからその古代文見せて・・・・・『汝の右目は此方の手へ、汝の左目は此方の足に、受け継がれし伝承を紡ぎ、導く道へ帆を進めよ』だって、なんのことかさっぱりだけど、これで暗号解読も終わり」
「古代語読めるんですか?!」
「まぁね。この世界の全種族の言葉と文字を読めるようにするスキルがあるんだけど、古代語もそれに含まれるみたいで読めるだけなんだけどね。意味なんかはさっぱり」
これも神様からもらったチート能力の一つだ。そもそもこの世界に来るとき、流石に言葉や文字が分からないと困るからお願いした結果この能力をもらった。まさか古代語まで読めるとは思わなかったよ。言葉を発することが出来ないヒスイみたいなスライムも、なんとなく言っていることが理解できるのはこの能力のおかげだ。
その後の解体作業や城壁の強化、魔剣の修復は付与魔法で解決できる。珍しい魔物でも鑑定を使いながら部位を分けていけば問題ないし、城壁の強化は城壁そのものに耐久を上げる魔法を付与、魔剣の修復には特殊な金属が必要だったけど、それも用意してくれてるみたいだったからその金属を魔剣に融合させて修復させた。
流石なんでもできる付与魔法様様だね。
「隼人さんが万能と呼ばれる所以が分かった気がします。こんなに多方面な高等技術を持っている人はいません」
「それでも専門家には勝てないよ。言ってしまえば俺の力は器用貧乏、その問題に特化している人が時間をかければもっとしっかりとした仕事をしてくれるよ」
解体だって専門の職員がやった方が魔物の内部構造なんかをしっかり把握できるし、城壁の強化はあくまで補強、しっかりと修復や強化をするならやっぱり長い時間をかけて専門の業者が行う。魔剣の修復なんて折れたものをつなぎ合わせただけ、より強固なものにするにはやはり専門の鍛冶屋に頼むしかない。
「暗号解読が一番分かりやすいよ。読めるだけでなんのことかさっぱりだもん。でも、俺が解読したところを参考にして古代語の研究も進んでくれてるみたいだし、そういう意味で役に立ってるならなによりだよ」
こればかりは本心だ。例え、その場かぎりのものだったとしてもそれを糧にしてより高みを目指してくれるなら本望だ。
「思ったより時間が余ったし、何件か討伐依頼でもこなしてこようかな。ヴァン君、ここから1.2時間で行ける場所にある討伐依頼選抜してくれる」
「は、はい・・・・・なら、これと・・・・これですかね。2か所ともここから割と近くではあるんですけど、それぞれ場所が真逆なので今日はどちらか一つになるかと」
もらった依頼書を確認してみたけど、この距離なら大丈夫そうだ。
「これなら大丈夫、2時間ぐらいで帰ってくるからヴァン君はギルマスの部屋で完了した依頼の整理お願いね」
俺にはコクロという超便利な車、もとい移動手段があるので、討伐の時間も含めて2時間もあれば終わるだろう。それから依頼完了の受理をしてもらって、報償もらったらようやく帰れる。
「さっさと帰って、庭の野菜収穫しよ」
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ヴァン視点
「とんでもない人ですね。それともS級冒険者ってみんなあんな規格外な人たちなんですか?」
S級冒険者の隼人さんの補佐を始めてから数時間で驚かされることばかりだった。
「いや、S級の中でもあいつの依頼達成スピードや量は異常だ」
これまで達成した依頼書の整理をしている横でギルマスの鑑定がようやく片付いた。
「あいつの二つ名には納得だよなぁ。我ながら良い名を付けたと思うぜ。あれに加えて戦闘に関しては、前衛職顔負けの戦闘力があるし、最強種との契約までやってんだから欠点を見つける方が難しい」
S級冒険者となるには戦闘力だけでなれるものではない、どれだけギルド、果はこの世界に貢献できたかが大きく関わってくる。今日難なくやってのけた依頼だって、本来なら数か月も時間を有するようなものばかりだ。
「隼人さんの指名依頼ももちろんあるんでしょうけど、ギルドで凍結扱いになってる案件も混じってましたね。暗号解読なんて半年前の依頼じゃないですか」
「俺が無理を言ってるせいで、あいつギルドに寄り付かなくなっちまったからなぁ。そもそも本人も言ってたが、金には困ってないだろうし、あいつにとっては地位や名誉も不要だろうしな。SSランク昇格の話をしてからさらに寄り付かなくなっちまったし」
SSランクとは驚きの単語が聞こえた。冒険者ランクの頂点SSランクは世界中のギルドに登録している冒険者の頂点、当代最強の冒険者に与えられるランクだ。
「確か今のSSランクは引退された“魔導王”がそのまま持っていらっしゃるんでしたっけ」
「ああ、あいつが引退するから新しいSSランクを選抜するときに最も有力だったのが隼人だったんだ。依頼達成精度、戦闘力、依頼範囲、ギルド貢献度、色々加味してあいつが最も適任だったんだが・・・・本人が強く拒否しやがってな。Sランクに上げるのだってかなり苦労したのに、SSなんて絶対嫌だってギルドに寄り付かなくなっちまって、あいつの指名依頼が溜まる溜まる」
そんな理由で魔導王が引退してもなおSSランクを預かっているわけか。
「それにしてもあの人は何者なんでしょうね。正直、冒険者にしては野心家でもないようですし、あの知識量と魔法やスキルに比較して性格は温和で控えめ、とても荒くれ者の冒険者トップには見えません」
「まあ冒険者なんて色々事情を抱えた連中の集まりさ。隼人や凛みたいにこの国の産まれじゃないやつらも多い、その中でもあの2人は別格だがな。俺も付き合いは4年ほどでそれほど長くはねぇが、あいつらには驚かされることばっかりだ」
恐らく隼人さんより有名であろう大商会“美皇帝”の会頭、凛さん。3年という脅威の期間で王国一の大商会を立ち上げた凄腕商人だ。彼女が作り出す衣類やポーションは今ではこの王国になくてはならない、必需品となっている。各地に支店を作ることをしない彼女の作る品を求めて、王都へ来る人口が数年前の数十倍に跳ね上がったほどだ。
彼女のアイディア力や容姿もさることながら交渉術が巧で、国の上層部や有力貴族との太いパイプまである。それでいてどの勢力にも加担することなく、全ての人種に分け隔てなく商いをしている。
「凛のやつだってギルド登録はしてんだぜ。Dランクまでいって商業ギルドメインに切り替えちまったが。隼人と凛が最初に組んだパーティーが俺の昔馴染みだったこともあって、それから二人には仲良くしてもらってんだ。まぁ二人とも有名になって一緒に会える機会も減っちまったがな」
色々訳アリなのは分かったが、やはり根本的な部分が分からない。一体彼らは何者なんだろう。
「戻りました~~」
別れてから2時間ほどしか立っていないのに、隼人さんが2つの討伐依頼を完遂してきた。本当に一体何者なんだろう。
お読みいただきありがとうございます。
少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。




