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スクランブルなデートにナンパを添えて

GW中の話です。

前回の小ネタでGW後の話を書きましたが、小ネタは思いついた時に適当に書いてるので時系列とかは気にしないで下さい。

GWの終盤。

俺はハルさんと共に某スクランブルな繁華街へ来ていた。

特に目的はない。

服などはGW前に纏めて購入している為、今日は雑貨を見て回ったり適当に遊ぼうという事で集まっている。


「ハルさんの部屋ってどんな感じなんですか?」


洒落た雰囲気の雑貨屋で小さな木彫りの熊を見ながら、隣を歩くハルさんに問いかけた。


「どんな感じっていっても…普通だよ?」


「マンションですよね。」


「賃貸だけどねー。まぁそこそこ広めではあるかな。」


「内装や置物のこだわりとかあります?」


「あんまり派手にはしたくないんだよねー……実家がお寺で、部屋も質素な感じだったから、派手な色のカーテンとか見てると落ち着かなくて。」


「置物とかはどうです?例えばこれとか。」


鮭を咥えた木彫りの熊を手に取って見せる。


「いやー、それはちょっと……」


苦笑するハルさん。


「ですよね。ならこれは?」


熊の横にあった招き猫を見せる。

何故か猫の瞳孔がこれでもかというほど開いており、ホラーでユニークな招き猫だ。

怖いもの見たさで招かれる者は多いかもしれない。


「い、いや、私の家はお店じゃないから。」


「駄目か。」


ちなみに俺も欲しいと思わない。



「何か置きたいものとかないんですか?」


「んー……あっ!加湿器!」


「加湿器ですか。」


思いの外、実用的な物が出てきたな。


「うん!アロマ付きの加湿器が欲しいの!」


「アロマ加湿器……洒落てるかもしれないですね。」


「でしょ!よし、見に行こっ!」


ハルさんが俺の手を取って歩き出した。




「部屋全体を加湿したいなら、それなりの物を買わないといけないみたいですね。」


「だねぇ…むむむ、結構いっぱいあるんだなぁ……」


「これなんかどうです?」


空焚き防止機能がついている安心設計の加湿器。


「可愛くなーい。」


口を尖らせて首を振る。

可愛い。


「ならこれ。」


シックな見た目のハイパワー加湿器。


「かっこいいけど女の一人暮らしだから……」


「これは?」


雫の形の可愛らしい加湿器。


「ちょっと馬力が足りないかな。」


「んー………」


あれでもないこれでもないそれでもない。

探しに探してふと見つけたそれ。


「あっ……これはどうですか?」


洒落た木目デザインのライトアップ加湿器。

小さい割にパワーはそこそこあり、部屋全体とまではいかないまでも、ベッドとその周辺やリビングくらいは余裕でカバーできる。


「お!それ良いかも!」


「七色に光るイルミネーション効果付きです。」


「お洒落!それに決めた!」


「……そんな簡単に決めて良いんですか?」


あんなに悩んでいたのに。


「良いの良いの!ビビッと来ちゃったから!」


さいですか。


「折角ですから、他にも色々と見ましょうか。」


「そうだね!」


俺は満足げに笑うハルさんから加湿器を受け取った。





「ねぇ、良いでしょ?ちょっとお茶するだけだからさぁ。」


「そうそう、俺らと遊んだ方がぜってぇ楽しいって!まじ後悔させねぇから!」


「いえ、そう言われても………」



………どういう状況だ?


「ハルさん?」


苦笑するハルさんに声をかけると、こちらを見て安堵の笑みを浮かべた。


「あ、ツバメくん!」


タッタッと駆け寄ってくる。


「すみません、お待たせしました。それで……どなたです?」


「えっと、急に声かけられて……」


ナンパか。

ちょっと手洗いに行っている間にナンパされるとは、流石ハルさんだな。



「ちょっ、おい、お前なんだよ!」


ジャケットスタイルのチャラそうな男が現れた。


「そいつがお姉さんの彼氏?へぇ、かっけぇじゃん。」


ノースリーブでフード付きのダウンを着たグラサン男も現れた。

ニヤニヤと俺を見ており、なかなかに鍛えられた腕を誇るように力を込めている。


「彼女は俺のツレですが、何か?」


「何かじゃねぇだろ!こっちが先に声かけたんだってぇの!」


いやちげぇよ、こっちは普通にデートしてたんだよ。


「諦めて下さい。それじゃ。」


適当にあしらってハルさんの手を取り歩き出そうとするが、後ろからグラサン男が肩を掴んできた。


「ちょっと待てよ。話はまだ終わってねぇぜ?」


終わってんだよ。


「あんたらと話す事なんてねぇけど?」


軽く睨んで威嚇する。

急に態度が変わった為かグラサン男が息を飲んだ。

だがすぐに眉を寄せて詰め寄ってくる。


「おい、何だその口の聞き方はよぉ?お?」


「お?じゃねぇよ。ナンパしてんなら失敗した時くらい潔く諦めろ。」


肩を掴んでいた手を払い除ける。


「お?お?そういう事しちゃう?今の暴力行為だよな?」


「この程度で暴力だって?厳つい見た目に反してか弱いんだな。もうちょい鍛えたらどうだ?」


馬鹿にするようにニヤッと笑った。


「て、てめぇ!!」


「きゃっ!」


グラサン男が俺の肩を突き飛ばそうとする。

後ろでハルさんが悲鳴を上げた。

だが、俺の身体はびくともせず、呆れたように溜息をこぼす。


「……え、なに?蚊でも止まってた?ありがとな。」


手を払い除けながら鼻で笑った。

沸点に至った男の拳が顔に迫る。

素人にありがちなテレホンパンチだ、回避も防御も簡単であるが、俺はあえて受ける事にした。

顎を締めて額で拳を受け止める。

ガチッという音がした。

俺はニヤッと笑った。


「正当防衛って、これくらいで良いのかね。」


「は、はぁ?…てか、い、いてぇぇ……」


拳を痛めたグラサン男が顔を顰める。

こちとら殴り合い蹴り合いどつきあいの世界で生きてきたんだ。

耐久力には自信あるんだよ。



「ふっ!」


グラサン男の腿に左のローキックを打ち込む。

めきょっというような鈍い音がした。


「ぐあっ!!」


一瞬で崩れ落ちる男。

当てた感触からすると、今日は夜まで痛むだろうな。

自業自得だ、と息をつく。

そして残ったチャラ男を見た。



「え、ちょ、え……?」


「うわぁぁ……」


チャラ男が蹲っているグラサン男と俺を交互に見る。

後方でハルさんが驚きの声を上げた。


「なぁあんた。」


「へ、え……?」


「こいつ連れて行けよ。あと、あんまりしつこく他所様に絡むんじゃねぇ。じゃねぇと、こいつみたいに痛い目見るぜ。」


呆然としているチャラ男を捨て置き、ハルさんの手を掴んで歩き出した。





「す、凄いねツバメ君!空手してたとは聞いてたけど、あんな強かったんだ!!」


ハルさんが眼をキラキラさせて言う。


「いや、そんな大したことじゃ……それより、怖がらせてしまって、すみませんでした。」


「ううん!確かにちょっと怖かったけど、ツバメ君が守ってくれてとっても嬉しかったよ!!」


「それは…良かったです。」


俺は心から安堵した。

避けられるのではないかと少し怯えていたのだ。



「……ツバメ君。」


「はい?」


「これからも…私を守ってくれますか?」


柔らかな微笑み、その頬はほんのり赤く染まっていた。


「……勿論です。これからも、ハルさんを守ります。」


思えば、俺は大切なものを守る為に空手を始めたのだ。

ハルさんと出会ってまだ1ヶ月ほど。

しかし、彼女は既に俺にとって大切な存在になっていた。


「……うん、ありがと!!」


ハルさんの笑顔は、屋上で見た時と同じように、とても魅力的で、美しかった。




「………ときにハルさん。」


「ん?」


「加湿器含め、結構な荷物になりましたが……ハルさんの部屋まで運びましょうか?」


「え、それは悪いよ!」


「いや、大丈夫です。その代わり、ご褒美を下さい。」


「ご褒美?」


「今夜、泊まっても良いですか?」


「………そ、それって……」


頬を赤くするハルさん。


「駄目なら良いんですけど。明日の予定はないって言ってましたよね?」


「う、うん、明日は暇だよ。」


「嫌ですか?」


「うっ……い、嫌な訳…ないじゃん。」


「なら、良いですか?」


「う、うん。ご褒美…だもんね。仕方ないよね。」


「泊まってほしくないなら無理にとは言いません。」


「そ、そんな事言ってないじゃん!泊まってほしいよ!!」


「ほう?」


「……うぇっ!あ、いや、今のは!その………」


赤面して俯くハルさんの頭を撫でる。


「……それなら良かった。お邪魔しますね。」


「……うん。良いよ、ツバメ君。」


顔を赤くしたまま、ハルさんは恥ずかしそうに、しかししっかりと頷いた。

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