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【小ネタ②】朝霧陽奈と受験勉強

これは去年の夏の日の話。

俺が高校一年、陽奈が中学三年の時のことである。


世は天下の夏休み、俺は幼馴染みである朝霧陽奈(あさぎりひな)の家で彼女に勉強を教えていた。

陽奈は俺と同じ高校に通いたいらしく、勉強を教えてくれと頼み込まれたのだ。


正直な話、学力的にはかなり厳しいものがある。

というか偏差値だけ見ればぶっちゃけ無理だ。

あの高校の入試は例年、高水準のものである。

だがそれは筆記試験のみで受かろうとした場合であった。


うちの高校は部活動が盛んで学校も力を入れている。

中学の頃に何かしらの部活動等で成績を残している者であれば、入学後その部活に入る事を条件に特別加点が与えられるのだ。


陽奈は中学の空手部で全国大会に出場している。

惜しくも優勝には至らなかったが、ベスト4にまで残った実績がある。

加点もそれなりに大きいだろう。


ここまで来ればよほど筆記が酷くない限り落第はないのだが、陽奈はそのよほど(・・・)の点数を取る可能性が非常に高かった。


「……なぁ、何度も言ってるが、別に他の高校でも良いんじゃないか?空手の強い学校は他にもある。受験免除のスカウトだってきてるんだろ?」


俺は何度かこんな提案をしていたが、陽奈は頑として頷かなかった。


「嫌だっ!陽奈は吾郎兄ぃと同じ高校行くんだもん!!」


この一点張りだ。


「とは言ってもな………」


夏休み前に行われた定期試験の結果を見つつ、頭をポリポリと搔く。

受験生とは思えない悲惨な現実がそこにあった。


「……やっぱり、無理かな……?陽奈、吾郎兄ぃと一緒に学校行けないのかな……?」


陽奈が涙目で問う。

無理と言ってやるのは簡単だが、折角頼ってくれた可愛い幼馴染みを蔑ろにはしたくない。

幸い、スカウトしてきている高校の中には、志望校の結果が出てから決めても良いと言ってくれているところもあるらしい。

それだけ陽奈が欲しいという事だろう。


いずれにせよ、セーフティネットがある状態で志望校を諦める必要はなかった。

ただ、陽奈が他でも良いのならその方が確実だと考えただけである。

しかし陽奈がどうしてもというのならば、それを助けてあげたいと素直に思った。


何より、彼女の涙に勝つ術を俺は知らない。



「……まぁ、諦める事はないか。勉強も無駄にはならんだろう。」


潤む瞳で見上げる彼女を優しく撫でる。

最近気付いたのだが、俺は陽奈の頭を撫でるのが昔から好きだったようだ。

サラサラの短髪は家では結ばれず無造作に落ちている。


「陽奈」


「……ん?」


「受験……頑張るぞ。」


「あっ………うんっ!!」






「次の漢字の読みを答えよ。『首肯』『秘匿』『前衛的』。」


「『イエス』!『シークレット』!『アヴァンギャルド』!!」


「これは国語の問題だ。」



「この図において三角形ABCと…………を証明せよ。」


「Q.E.D.!!」


「勝手に終わらせるな。まだ何も証明できてない。」



「足利幕府最後の将軍の名は?」


「足利義男!!」


「………微妙に惜しいな。」



「個体から液体を経ずに気体へ変化する事を何と言う?」


「進化!!」


「しねぇよ。」



「What are you doing?」


「マイネームイズヒナ!!」


「Get out………」





「ねぇねぇ吾郎兄ぃ!陽奈どうだった!?」


陽奈がキラキラした瞳で身を乗り出す。


「………陽奈。」


「ん?」


「志望校……やっぱ変えた方が良いかもしれん。」


「えっ!?何で!?」



騒がしくも平和な、夏の日の記憶。

アヴァンギャルド!!


小ネタ、いつでも受け付けてます。

気に入ったキャラで読みたいエピソード等あればご連絡下さい。

妄想が膨らむものがあれば都度書かせていただきます。

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