チョコの曲がってしまった心と闇
俺はいい機会なので施設で黒い塊を剣にして振ったり、拳に纏ってマネキンを殴って見たりした。
木で出来たマネキンが俺のパンチで気持ち良く壊れていく。
フレークさん達がこちらを見て何やらデータを取っているがまあいいだろうと思った。
二週間もずっと勉強だけをしていたので体を動かすのが気持ちいいのだ。
しばらくするとチョコが竹刀を持ってこっちに歩いてきた。
「まるで素人の動きね。
フレークがデータ取りたいって言うから打ち合ってくれる。」
「まあいいぞ。」
俺はチョコと打ち合ってあっさり負けた。
長年修行をしてきたであろうチョコと体育で少しだけ剣道をやった俺とでは実力が違い過ぎた。
「やっぱり素人ね。
怪我する前に宝珠をこっちによこさない。
それはあんたなんかに扱えるものではないわ。」
右肩がチクリと反応する。
俺はチョコの上から目線の言い方にムカついたのだ。
「俺が素人なのと宝珠は関係ないだろ。
なんでお前なんかに渡さなきゃならないんだ。」
「だったら奪うまでよ、私と勝負しなさい。」
なに言ってんだこいつは、今俺の実力を確かめて俺が素人だとわかったところだろうが。
それを勝負だと…、勝ちの決まった暴力で俺から取り上げるだけじゃないか。
まるで強盗の様なものだ。
俺の右肩がどんどん熱くなる。
「今俺の実力を確かめたばかりで卑怯な奴だな。
いいだろう、お前と勝負してやる。
ではもしお前が負けたら何をくれるんだ。
言っとくが俺はお前の日本刀なんかいらないぞ。」
なんだと俺はまた謎の右肩のせいで勝負を受けてしまった。
「日本刀なんかですって!
私の日本刀は代々受け継がれてきた物なのよ、バカにしないで。
いいわよ、あんたが勝ったら一生あんたの言う事聞いてあげるわよ。」
そう言い終えると同時にチョコは俺に襲いかかってきた。
なんて卑怯な奴なんだ。
悪魔に親を殺されたとは聞いたが、こいつは間違っている。
こんな奴に負ける訳にはいかない!
熱い、熱い、俺の身体が熱い。
「勝負と言っておきながら不意打ちとは、お前カスだな。
俺がお前の曲がった精魂叩き直してやるよ。」
チョコの渾身の一撃が俺の頭を捉える。
いくら竹刀でも目眩くらいは起こしてもおかしくないダメージの筈だが俺は全く痛くなかった。
俺は思いっきりチョコの脳天に竹刀を叩きつけた。
チョコの足が震えてその場に座り込む。
「俺の勝ちだ。」
余程悔しかったのかチョコは何も言わずに足を引きずって去って行こうとする。
「待てよ。
お前は一生俺の言う事を聞くんだろ?」
俺はチョコを止める。
「なっ…。」
チョコは黙って下を向いた。
「自分の方が強いのを確信してから俺に勝負を挑んで負けたら約束も守らないのか?
卑怯なだけでなく嘘つきか。
お前の先祖代々続く家業も親の仇を討つと言う想いも全てその程度のものなんだよ。
もう辞めて普通の女として生きな。」
俺の身体が熱い。
「一人の女がこんな道を生きていくなど常識的に無理だ。
無理をしてるからよく確認しないで人を襲ったり、平気で卑怯な手を使ったり出来るんだ。
俺からの命令だ。もう辞めろ。」
チョコは涙を堪えてこちらを睨みながら立ち上がり、服を全て脱ぎ出した。
「どうせあんたがしたかった命令なんてこういうのでしょ!好きにしなさい。
私はこの世界で、この道で生きていくんの。
親の仇を討って家業も継いでいくんだから。」
チョコの裸を見て俺か右肩が疼いた。
俺の身体がどんどん熱くなる。
熱い、熱い、俺の身体が熱い。
俺は全裸のチョコに竹刀を叩きつけた。
「いいだろう、俺の扱きに耐えられたらこの世界で生きる事を認めてやる。
よく確認せずに人を襲ったり卑怯な手を使うのは認めないがな。」
俺はギリギリの理性で裸のチョコを気遣い、フレーク達に部屋から出て行って貰った。
チョコは俺の扱きを耐えきった。
俺は何度も竹刀でチョコを叩いただけでなく、もちろん俺自身の暗黒剣も遠慮なく使った。
チョコは全身ボロボロにされながらも、最後まで親の仇を諦めて普通の女の子として生きるとは言わなかったのだ。
いつのまにか落ち着いてきていた俺の身体がまた熱くなる。
「チョコ、俺はお前を認める、お前を俺の奴隷兼弟子とする。
普段はちゃんと女の子として過ごし、夜や土日に悪魔狩りをするんだ。
それでいいな。」
チョコは倒れたままだったが、力強くうなづいた。
俺はチョコに服を着せてベットのある部屋に運んであげた。
そこにカカオさんとフレークが来た。
「どうやらようやく終わったようだね。
いやー、若いって凄いな。」
フレークが俺達を茶化してくる。
「その話しは後にしてくれ。
二人に大事な話しがあるんだ。」
俺は俺の考えを二人に伝えた。
チョコは俺の弟子になった事。
昼はきちんと学校に通わせる事。
その分俺もこの組織に入り夜と土曜は悪魔退治に協力する事。
カカオさんは言う。
「俺達もチョコには学校に行けと言い続けてたんだ。やっとの思いで今は通信制の学校で単位だけは取らせている。
やり方はともかく助かったよ。
それとお前の組織入りに関しては土曜と夜だけでも大歓迎だ。
もちろんきちんと給料も出すぞ。
ついでにその給料でチョコに普通の遊びも教えてくれると助かる。」
こうして俺はチョコのご主人様兼師匠となり組織に所属したのであった。