はじめての戦闘とトップを目指せ!『挿絵あり』
なんだかんだで帰りの遅くなってしまった俺はコースカットにさっきチョコに襲われた公園をまた使う。
すると突然右肩がチクリと熱くなった。
またチョコとかいう女か?
俺がめんどくさそうに振り向いた時だった。
そこには制服姿のチョコではなく、動く骸骨が居たのだ。
「避けなさい!」
俺は間一髪骸骨の攻撃をかわし、そこにどこからともなくチョコが現れたのだった。
「ラムネ君!そいつはチョコとカカオに任せて君は車に乗って。」
フレークさんが俺を呼ぶ。
車に駆け込んだ俺が外を見るとチョコは二本の日本刀で、カカオさんは大剣と銃を構えて骸骨と戦っていた。
「間に合って良かった。
ラムネ君から悪魔の匂いがしてるからしばらくは襲われやすいんだ。
それとラムネ君悪魔となんか契約しなかった?」
「それでわざわざ親切に名刺まで渡してくれたのか。
でも助けて信用させて、このタイミングで悪魔の話を聞くのは虫が良すぎないか?」
「まあこっちにも仕事だからいろいろあるんだよ。」
「まあいい。
俺は悪魔とは契約してない。
俺の身体から黒い何かを食べた悪魔が美味しいかったからってお礼に俺に何か埋め込んだんだ。」
「埋め込まれたのはどこだい?
見せて貰っていいかい?」
「右肩だ。」
俺はシャツを脱いだ。
「これは宝珠じゃないか!
契約もなくこんな物をプレゼントしてくれる何てどんな凄い悪魔だったんだい?」
「悪魔に会ったのは初めてだったんだ。
凄い奴だったのかはわからない。
それより骸骨が3体に増えてカカオとチョコが苦戦してるぞ。この宝珠はどうやって使う物なんだ?戦えるのか?」
「ごめん宝珠は僕等の世界でも珍しい品で、良くわからないんだ。」
俺が右手に力を込めると黒い何かが腕から出てきた。
その黒い何かの形は自由に変えられる様だった。
「これで戦えるな。」
俺は剣に変えて車から飛び出した。
「ちょっと何しに戻ってきたのよ。」
チョコがまた怒っている。
「いや、奴等の狙いは俺だろ?」
俺は冗談めかして答えたが、実はさっから身体が熱いのだ。
戦え、戦えと身体が熱くたぎる。
俺は黒い剣に力を込める。
熱い、熱い、俺の身体が熱い。
「うおー!いくぜ暗黒剣。」
俺は黒い剣で骸骨を一体切り捨てた。
俺が戦える様になって3対2に逆転したせいか、骸骨達が土の中に逃げていった。
「ふう、やれやれだぜ。」
カカオが疲れた表情で言う。
「じゃあな。」
俺はさっさと帰宅した。
さっきあんなに焼肉を食べたのに、なぜか家の夕飯も普段通り食べられた。
風呂に入って部屋に戻るとどうやって調べたのかスマホにカカオから連絡が入っていた。
その連絡の内容は
さっきの骸骨は俺の体についていた悪魔の匂いや俺の力を狙って襲ってきた。
俺が力を使える様になったから諦めて帰った。
しばらく悪魔の匂いがするうちは、変なのに襲われやすいから気をつけてくれ。
俺達以外の組織の勧誘もあるかも。
俺達も周りうろちょろしてるけど仕事だから許して。
あと、チョコがお前の部屋覗いてるごめん。
と書いてあった。
俺は窓からそっと外を見る。
なるほど、電柱に登ってこっちを監視しているチョコがいるな。
また右肩が少し反応している。
俺はわざわざ一度服を全部脱いでタオルを首に巻いてカーテンを開けた。
そのままチョコに気づかないフリしてラジオ体操をはじめる。
俺が大きく仰け反って股間を前に突き出した所でチョコは電柱から落ちていった。
「ふっ、俺のもう一つの暗黒剣だ。」
次の日の朝は何も起こらず、俺はいつも通りモナカと登校した。
一時限目の教師がテスト範囲を発表する。
俺の通っている学校は大学付きなので、国立大を目指す生徒以外はそんなに熱心には勉強しない。
「えー、進学出来るからって油断せず、一番を目指して頑張る様に。」
俺の右肩がチクリと熱くなる。
なんだ?敵か?
周りを見てみても何の変哲もないいつもの教室だった。
俺はこの原因不明の右肩の疼きの理由を次の授業で理解した。
「みんな一番目指して試験頑張れよ。」
熱い…。
「校内一位を…。」
熱い…。
「一番目指して…。」
熱い、熱い、俺の身体が熱い。
俺は授業中に叫んでいた。
「うおおおー、俺が絶対!絶対!一番になってやるー!」
クラスのみんなが笑った。
ギャグだと思ってくれたらしい。
変な奴だと思われなくて良かった。
放課後、入学以来一度も話した事ないクラス委員長の眼鏡間 悟が話しかけてきた。
「まさかラムネ君が僕のライバルに立候補するとはね!僕は負けないよ。」
何言ってんだこいつ…、と思ったのも一瞬だった。
熱い、熱い、俺の身体が熱い。
「ああ負けないぜ眼鏡間 悟。
正々堂々勝負だ!」
何だと…、俺はどうしてしまったんだ。
悪魔に植え付けられた宝珠は何だったんだ?
いつの間にか俺は眼鏡間と握手を交わしていた。
熱い…、身体がどんどん熱くなる。
一番になりたくて、身体が熱くて熱くて勉強せずにはいられない。
「うおー、三角定理が熱い!」
「古文漢文は暗記してやるぜ!」
結局俺はモナカにも助けてもらいながら二週間勉強しまくってしまった。
テスト当日俺は自信に満ち溢れていた。
あれだけやったんだ負けるはずがない。
国語と英語と社会は全部解けた。
理科は最後の問題に苦戦したが、教科書に載っていた実験から予想して答えを書いた。
最後の数学に明らかに試験範囲外と思われる問題が一問出ていた。
俺は悔しかった。
悔しくて悔しくて泣きながら何とか考える。
クラスのみんなも二週間の俺の頑張りを見ていたせいか、試験中なのに泣いている俺を見て応援してくれる。
熱い、熱い、俺の身体が熱い。
俺はこの問題が絶対解けるはずだ。
俺には二週間の勉強の実績と自信があるんだ。
思いついた…。
俺はテスト時間の終わりギリギリに何とか計算を終えて答えを書いた。
それと同時にチャイムが鳴る。
「うおおおーー!俺はやってやったぜ!」
クラスのみんなもテストから解放された解放感で俺達のクラスは拍手喝采だった。
帰りの電車の中、俺はモナカに支えられていた。
「ちょっと二週間徹夜ってどういう事よ。」
モナカが俺を心配して怒っている。
「すまない、眼鏡間 悟との真剣勝負だったんだ。」
「いや、だから何でそれで徹夜になるのよ。」
「俺にもわからねえ…。」
次の日テスト休みで俺が家で寝ているとモナカが大量の食材を持って俺を尋ねて来てくれた。
昨日は二週間の徹夜のせいで家に帰ってすぐに寝てしまったが、身体が熱くなった後は腹が減るのだ。
「モナカ美味えよ、マジで美味え。
モナカ絶対良いお嫁さんになるよ。」
俺はモナカが作る料理を片っ端から食べまくった。
「なんかラムネ最近凄く食べるよね。
おかげで作ってて楽しいよ。」
モナカは嬉しそうに笑ってくれた。
俺の右肩がチクリと熱くなる。
やばい…、これはやばいやつだ。
俺はモナカに抱きついてしまった。
「モナカ小さい頃からいつもありがとう。」
「なっなっ…なに、なに急に言ってんの!
もうおかずないわよ、あっ、後はお茶ずけでも食べなさい。」
モナカはそう言うと顔を真っ赤にして帰ってしまった。
なんなんだ俺の身体は…。
俺はすぐにカカオに連絡を取った。
フレークがすぐに車で迎えに来てくれた。
「あー、それは宝珠が関係してそうだね。
宝珠の力に対して、体と心の力が足りないんだよ。」
「なるほど。」
「そろそろ真剣にうちに所属しないかい?
ちゃんと給料も出るし、バイト感覚でうちに来て力の制御を覚えていくと良いよ。」
「お金ももらえるのか?
俺はまだ学生だし、この世界で働くつもりはないんだが…。」
「いや、うちからすれば君がウチに所属してくれれば警備観察にかかる費用が減るし、君が他の組織に行かないだけで十分に利益があるんだよ。」
なるほど。
この世界の事は良く分からないがそうなのか。
「とりあえず今日はうちの施設で黒い剣の修行をして力を使ってみると良いよ。
力を使って減らしておけば、暴走も抑えれるかもしれないね。」
「おう、頼む。」
「なんだったら君のもう一つの暗黒剣もチョコに鎮めてもらったらどうかな?
悪魔のせいでこんなになってるとか言って、任務だから鎮めてくれとか言えばチョコならやってくれるかもよ。」
俺達は真剣に悩むチョコを想像して笑った。