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アドランの頼み事

「条件は何だ?」

 俺は警戒心を露わに、アドランに尋ねる。


「この前盗難保険とかいう保険の話をしていただろ?」

 アドランはニヤリと笑い、答える。


 盗難保険……? そういえば、この前世間話ついでに話したな。


「あぁ。したな」

「その保険を形にして欲しい。今度は、傷害保険と違って冒険者ギルド主導ではなく、リク主導でだ」

「俺主導?」

 アドランから提示された条件に俺は間の抜けた声をあげる。


「そうだ。多大な被害があっても、リクが補填する。代わりに手数料もリクの独り占めだ。悪くはない話だろ?」

 傷害保険は、保険金の支払いが保険料を大きく上回る――俺の手数料を超える――時は、冒険者ギルドが補填する取り決めになっていた。


「そうだな……。支払う可能性のある保険金の額によるな」

 ある程度の蓄えはあるが、百万Gの損害とか言われれば、俺は即奴隷落ちだ。


「リクは傷害保険で儲けているとは言え、確かに大口は厳しいか」

「そうだな。限界でも保険金は二十万Gだな」

 俺は現在の貯蓄から、限界と思われる金額を提示する。


「二十万Gか。少し心もとないな。そうだな……。冒険者ギルドと商業ギルドから百万Gづつ、それぞれ無利息で貸してやる。それを元手にどうだ?」

 アドランは指を二本立てて、ニヤッと笑う。


「は?」

 俺は思わず間の抜けた声を出す。


「いや、だから冒険者ギルドと商業ギルドからそれぞれ百万G。併せて二百万Gだ。それなら保険金額の上限を五十万Gまで上げられるだろ?」

「いや、待て。さっきの二十万と言ったのも、適当に答えた金額だ。実際に、盗難保険の件数がどのくらいあるのか分からないと、答えられない。それより、何でそこまでするんだ? 二百万Gも出資するなら傷害保険同様にギルド主導でやれば良くないか?」

 おいしい話には裏がある。アドランは信用していたが、俺の警戒メーターはマックスだ。


「話せば長くなるが……聞くか?」

「頼む」

 こうして、俺はアドランから詳細を聞くことになった。


 アドランの話を簡単に纏めると、以下の通りだ。

 商業ギルドのギルド長と会合があった。傷害保険の話で盛り上がった。商業ギルドは最近荷物を運搬する際のリスク――盗賊や魔物の襲撃――に悩まされていた。また、そのリスクは運搬の護衛をする冒険者を纏める冒険者ギルドでも共通していた。そこで、アドランは前に俺が話した盗難保険の話を商業ギルドのギルド長に話した。盗難保険を導入しようとしたが、問題が発生した。

 その問題とは――どちらのギルドが主導権を握るかであった。

 互いに大きなギルドであることから面子もあり、どちらが主導権を握っても、角が立つ。

 そこで妥協案として提示された案が、第三者である俺が取り仕切るというものであった。


「なるほど。事情は理解した」

 俺はアドランからの話を聞いて思案する。いずれ、傷害保険以外の保険も取り扱いたいとは思っていたが……盗難保険か。火災保険でも、生命保険でもなく、盗難保険か。盗難保険と言うか、運搬保険。元の世界で言えば海上保険に近い性質の需要か? 海上保険は、元の世界でも俺は扱ったことはない。とは言え、○○海上という大手保険会社は幾つかあることから推測するに、根幹となった保険の一種だろう。そう考えると、マイナーに感じるこの保険の需要が成立するのも、自然な流れなのかも知れない。


「どうだ? 引き受けてくれるか?」

 アドランは期待の籠もった眼差しで俺の目を見る。


「まずは、盗難のリスクを把握してからだな。保険が成立するのかどうかを把握しないと、答えは出せないな」

「わかった。後で、うちのギルドにある資料と商業ギルドにある資料を、リクの家に届けさせる。それを見て判断してくれ」

「俺の家?」

「おうよ。さっき言っていた物件だ。これ以上の好物件はまずないぞ。っと、鍵はこれな。今月の賃料はサービスだ。まけてやるよ」

 状況について行けない俺にアドランが捲し立てる。


「おい。俺はまだ――」

「はっはっは。期待してるぜ!」

 慌てる俺に対して、アドランは力業とも言える強引さで説き伏せるのであった。

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