プロローグ
この世界に来て一ヵ月が経過した。
今、俺の目の前には元の世界では信じられない光景が広がっていた。
――盗賊に積荷を奪われ、途方に暮れる商人。
――大怪我を負って、明日の生活費すらままならない冒険者。
――冒険者の父を亡くし、泣き崩れる少女。
――死んだ目で座り込む、奴隷として売られている者達。
理不尽だ。この世界は本当に理不尽に包まれている。
今の俺なら積荷を奪った盗賊を退治できるだろう。冒険者を困らせるモンスターを討伐できるだろう。泣き崩れる少女の生活費を出すこともできるだろう。売られている奴隷を……全部とは言わないが、数人は助けることもできるだろう。
しかし、それでどうなる? そんなことをしても根本的な解決にはならない。
「ご主人様……」
俺の隣に並ぶ可憐なエルフの少女が俺の服の軽くつまむ。
「大丈夫。俺が何とかしてみるよ」
俺は不安な表情を浮かべるエルフの少女に笑顔を向ける。
「はい!」
エルフの少女は信頼を超えた、信望の眼差しを向けて大きく頷く。
どうすれば彼等を救える? 俺に何が出来る?
俺の中で一つの答えはすでに導き出されていた。
これは大儲けできるチャンスじゃないのか? この世界に足りないモノ……それは――。
「よし! 保険会社を立ち上げるぞ!」
こうして、俺は異世界で保険会社を立ち上げることを決意したのであった。
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本日(12月30日)から三日間は一日三話投稿します。そこからは一ヶ月は毎日投稿の予定です。
お付き合い宜しくお願い致します。