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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文22年(1553年)

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第九百五十四話・正月の慶事

side:警備兵


「あんたがこんなに立派になるなんてねぇ」


 おっ母は未だにオレの顔を見るたびに信じられないという。


「おっ母、これでも警備兵小組頭なんだ。この前だって手柄を挙げたんだ。そろそろ信じてくれよ」


 あの夏、そう久遠様が尾張に来た夏から幾年が過ぎたのだろう。


 オレは小作人の四男だ。生きていくだけで精いっぱいだった。本家がなんとか食わせてくれるから生きてこられただけ。そんなオレは腕っぷしだけは強かったせいか、喧嘩をしているところを仲裁していただいたことをきっかけに織田の若様に顔を覚えられた。


 いつだったか呼ばれて警備兵という役目を作るので働け。そう命じられたから従っただけだ。


 賊の討伐に喧嘩の仲裁、市中の見回りなど役目は領内を守ること。田仕事がない頃には暇を持て余していたからちょうどよかった。村の若衆として呼ばれることもあったが、この辺りだと織田様が戦をしないとほとんどやることはねえ。


「ああ、そうだね。さあ、たんとおあがり」


 おっ母はわかっているのか、わかっていないのか。話を聞きながら笑みを浮かべて、餅の入った汁を椀に入れると手渡してくれた。


「お前が一番の出世頭になったなぁ」


 上の兄らも田仕事がない時には賦役に出ているようで、家の暮らしも楽になった。そう笑う一番上の兄は、立派になったオレを見て嬉しそうに餅を頬張る。いつか戦で手柄を挙げて武士になりたい。そう昔は言っていた兄だ。


「かぁ、この金色酒ってのは、いつ飲んでもうめぇな~」


「そりゃそうだろ。混ぜ物なしなんて八屋のような久遠様の店くらいだ。おらたちが飲める酒じゃねえ」


 親父とほかの兄らは、正月祝いにと昨年末に警備兵皆に配られた金色酒を飲んで騒いでやがる。


 金色酒と鯨肉を祝いにと頂いたんだ。信じられるか? 農民出の者まで皆に配られたんだぞ。


「美味えな」


 ああ餅の入った汁も美味え。味噌が違うんだな。安い糠味噌じゃねえ。豆味噌だ。警備兵の屯所で出される飯だとこんだけ美味えものも珍しくねえが、家だと正月だから奮発したんだろう。


「そうだ。お前に縁組の話がある。本家のお稲だ。いい話だろ」


 腹いっぱい食うと囲炉裏の横で寝転ぶ。すると酔っぱらっているおっ父が思いもよらないことを口にした。


「あいつは領主様の三男の妾になるんじゃねぇのか?」


「やめたらしい。妾よりはお前に嫁がせたほうがいいだろうってな」


 嫁か。そろそろかとは思っていたがな。親しい奴らも所帯を持ったやつが増えた。警備兵になったおかげで所帯を持てたと喜んでいる奴らが多い。


 断れんな。本家には世話になった。お稲も別に器量が悪いわけじゃねえし。


「挨拶に行っといで。お前が元日も役目でいないって言ったら驚いていたからね」


 すでに話は決まっていた。まあそんなもんだ。おっ母に促されるままに、金色酒と鯨肉を幾らか持って本家に挨拶に行くか。


 屯所に戻ったらなんと言われるのやら。




Side:久遠一馬


 今年もみんなで初詣に行った。神社、年々混んでいるなって実感する。津島神社も熱田神社も初詣に来た参拝者が多く正月早々から忙しいみたい。


 縁起を担ぐのが当然な時代だしね。ウチが成功していることで、それにあやかろうとしているんだろう。


 一部では市も出ていた。人が集まる以上は商売になると踏んだんだろう。逞しいなと思う。


「姫様、明けましておめでとうございます」


「明けましておめでとう!」


 新年明けて五日、この日は烏賊のぼり大会の日となる。お市ちゃんとも新年の挨拶をして烏賊のぼり大会の会場である清洲の運動公園へと来ている。


 今日は信秀さんの子たちとか吉法師君もいる。みんなで烏賊のぼり大会の見物だ。


「じい! じい!」


「あれが烏賊のぼりでございまするぞ。若様」


 吉法師君、初めて見る烏賊のぼりに興奮気味に政秀さんに声をかけているね。去年は体調不良で来られなかったはずだ。


「しかしまあ、派手な烏賊のぼりが増えたな」


 この烏賊のぼり大会。今年はやけに派手な烏賊のぼりが目立つ。風景画や美人画のようなものはまだいい。誰だ、春画みたいな烏賊のぼりを揚げている奴は。


「絵師も増えたもの。烏賊のぼりの絵を依頼されることも多いって言っていたわ」


 まさかと思ったが違った。揚げている人は領民らしい。メルティが少し苦笑いで教えてくれた。てっきり慶次でも揚げているのかと思ったよ。


「結構人気のようですね」


 今日はロボ一家と大武丸と希美も同行しているのでエルもいる。エルは春画の烏賊のぼりが領民に人気の様子にちょっと複雑そう。まあ絵自体が珍しいんだよね。この時代。エロ本なんて当然ないし。


 そもそも性的なものを恥と感じる文化って庶民にはあまりない。当然の営みという感じか。


「あれ、ろぼとぶらんかだ!」


 お市ちゃんが見つけたのはロボとブランカの写実的な絵が描かれた烏賊のぼりだ。これはすずとチェリーのやつだった。日本画っぽくないが、あのふたりが描いたのか? 慶次が描いた気もするが。


 よく見るとウチの南蛮船の絵が描かれた烏賊のぼりもいくつかある。


「あれ、あのふたりって……」


 そのまま烏賊のぼりを見物しているが、ふと少し先を歩く人たちに見覚えがあった。


「彼女、懐妊したんだよ。今、半年くらい」


「お夏殿、懐妊したのか」


 パメラが懐妊を教えてくれたあの人は、数年前の烏賊のぼり大会で敵襲から互いに守ろうとしていた元武田の渡り巫女のお夏さんと旦那さんだ。


 今でも病院の看護師として働いているはず。人出も多いのでこちらには気付いていないらしいが、仲睦まじい姿で歩く様子に嬉しくなる。


 良かった。そうそう、ウチでも一益さんと太郎左衛門さんの婚礼が近々ある。互いに滝川家と望月家から正室をもらい結婚するんだ。話自体は春に決まっていたが、大内義隆さんの法要などで忙しかったこともあり新年を迎えてめでたい頃にと決まった。


 人のこと言えないけど、世話しないと結婚しないんだよね。この時代の人も。それが当たり前になっているから。益氏さんには池田勝三郎さんの親戚から勝三郎さんの養子になり嫁が来ることになっている。


 これ勝三郎さんから頼まれたんだ。もともと滝川家から池田家に養子に入った人はもう亡くなっているので、新しい縁がほしいらしい。まあ勝三郎さん自身というよりは池田家の総意としてという感じか。親戚の年長の人からいろいろ言われるんだろう。


 資清さんとも相談して本人も承諾したのでそれで進めている。一応事前に会わせて何度かお茶を一緒にさせてみたが、場を設けたシンディいわく互いに印象もよく乗り気らしいのでとんとん拍子に進んだ。


 問題は慶次なんだよねぇ。縁談は結構くる。ただ本人にその気があまりないうえに、この時代の人からすると変わり者というちょっと高いハードルがある。


 名前も知られているし、細かいこと気にしないなら相手いるんだけどさ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 第七十三話で禄が多いから遊べるって言ってるしお金持たせてるから結婚しない可能性もあったり??
[一言] 慶次といえば奥村助右衛門はどうしてるんだろ? 生年1541年だし今は学校に通ってるのかな? 花の慶次が大好きっぽいすずとチェリーには目をつけられてそうだが果たして・・・
[一言] その内誰かが昔のホーロー看板みたいなデザインで、店の宣伝を空に上げる事を思いつきそう(´・ω・`)
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