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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文21年(1552年)

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第八百九十七話・晩秋の動き

Side:久遠一馬


 秋も終わりかというほど寒いこの日、幾つかの知らせが舞い込んでいた。


 今年も今川による武田攻めが信濃と甲斐で同時に進んでいたが、戦況が動いたのは信濃だった。信濃の赤須城近辺で行われた戦において、信濃守護小笠原長時さんが武田勢とぶつかり敗北。


 ただし今川方の岡部親綱が信濃勢をまとめて態勢を立て直し、武田勢を押し返して五分に戻したとのこと。


「これどうなんだろう?」


「小笠原殿ではこうなることもあるかと。今川方はそれも考えて岡部殿を出したと思われますな」


 報告は忍び衆のもので望月さんがもってきたものだ。望月さんの意見を聞いてみるが、やはりある程度予想通りということか。


 大内義隆さんの法要の時に見たので彼の性格とか大まかにはわかっているし、過去の戦の様子なども忍び衆が調べている。法要の時には公の場で武田家の人たちを睨んでいたからね。人望という面でもあまりない。


 武芸は得意らしいが、用兵というか戦はまあ史実を見てもわかるようにあまり得意ではないらしい。


 武田方は晴信その人が出てきていた。そこに小笠原さんが今こそ積年の恨みを晴らす時だと信濃衆を率いて突撃したが、完全に晴信に蹴散らされた。


 信濃衆が完全に崩壊する前に今川方が動いたことで、武田方は深追いせずに退いたらしい。今川と武田とするとどちらも想定の範囲内か。


 甲斐は今年も飢饉に近いほど農作物の収穫が悪かったらしい。負けたら飢えるという状況は後がないので強いのかもしれないね。とはいえ決着は今年もつかないか。


「うふふ。雪乃らしいわね」


 もうひとつの報告は急遽蟹江に寄港した雪乃がもたらした報告だった。メルティは雪乃が持参した北条氏康さんからの書状を見て笑っている。


 伊豆大島の火山の噴火と雪乃たちが伊豆大島の領民を避難させたこと。そのお礼が書かれた書状だ。驚いたのは返礼と両家の誼を深めるために伊豆諸島をウチにくれるという話が書かれている。


 メルティが笑っているのは、使者として謁見した雪乃を驚かせてしまい申し訳ないと書かれていたからだろう。


 雪乃は表情がそこまで顔に出るタイプではない。普段は普通に喜怒哀楽もあるが、重要な場面では表情を隠したり偽ったりするくらいのことは平気でする。氏康さん、コロッと騙されたらしい。


 所詮は女と侮っていたんだろうなぁ。とはいえ伊豆諸島の件はそこまで単純な話じゃない。


 久遠諸島と違い、伊豆諸島は伊豆に属する日ノ本の諸島になる。昔から流罪に使うような島で、北条としてもそこまで重要な領地ではないんだろう。とはいえ制海権をまったく考えていないわけではないはず。


 まあ商いでは随分と配慮しているけどさ。北条はこの時代では珍しいほど民を重んじているところだし。


「法要が効き過ぎたかな?」


「それもありそうね。三好との縁組も法要が原因だと思うわ」


 伊豆諸島の扱い、単純に見れば商いを含めた誼を深めたいのだと思う。現実問題としてウチが荷を止めると北条であっても苦しくなるはずだ。今川のように。必要なものを西から買わないといけない関東の弱みだろう。日本海航路もあるが、あっちには一向宗や長尾が居るからねぇ。


 そうそうメルティが口にした三好。ここも動いている。三好が北条に縁組を打診していることを掴んでいる。これは京の都にある武衛陣の留守役が聞きつけて先日裏取りしたことだ。


 三好長慶さんの息子である三好義興《みよしよしおき》さんの嫁に、北条の娘を幕府政所執事である伊勢貞孝《いせさだたか》の養女として欲しいらしい。


 三好としてはなんといっても細川家被官であったので地位が弱い。義輝さんにより幕府相伴衆に任命されているが、肝心の義輝さんは病と称して観音寺城にいることになっている。


 京の都を押さえているとはいえ若狭には未だ管領である細川晴元がいて、大坂にはウチとの取り引きで元気な石山本願寺もいる。


 さらに義輝さんは自身の命令書の添え状を六角義賢さんにさせた。京の都は三好に任せているが、以前は管領が書いていた添え状を六角義賢さんに任せたことで足利将軍の権力は六角のところにあるとも言える。


 その上に尾張での法要だ。現役の関白から多数の公家と周辺の守護や国司が集まったことや、亡くなった管領代を南蛮船で追悼したことにより危機感があるんだろう。


 三好は伊勢と繋がることで少しでも自身の地位を上げたいのだろう。伊勢は政所執事として幕府運営を担っている立場なので財源が増えるのは好ましいことだろうしね。この婚姻により三好からの支援は期待出来る、また分家筋である北条との関係を深めることにより北条からの支援も期待できる。このままなにもできずに三好と埋没するのも困るのだろうしね。


 北条が得るのは中央との太いパイプだ。


 これって、見方を変えると織田と斯波が警戒されているよね。三好は六角と斯波が同盟して自身が敵になることも想定しているのだろう。そもそも三好長慶は和睦してから義輝さんに会っていないはずだ。


 北条がこの話を受けるのかわからないが、多分受けるとオレは思う。伊豆諸島の件で織田との誼を深めたんだ。三好と誼をもっても関係がこじれることはないと判断しているのだろうね。織田に一点張りなんてしないだろうし、現状で京の都を押さえている三好とも誼を深めて当然だ。


 元の世界でも北条は畿内との関係を重視していたという説が有力だったはず。


「伊豆諸島でございますか。北条は更なる商いの利を得て、今川は泣きたくなるかもしれませんな」


 地図、というか海図か。それを開いてみんなで考えてみる。資清さんも望月さんも伊豆諸島を得る意義を大筋でわかっている。資清さんは太原雪斎さんを思い出したのか泣きたくなるとまで言っているが。


 北条は西との関係を安定させて関東を押さえたいんだろう。伊豆諸島に関しては今後ウチの島に来ることが増える織田水軍のほうが助かるかもしれない。やはり航海の安全が桁違いに変わる。


 ウチとしても悪い話じゃない。伊豆諸島の防衛を考えないといけなくなるが、久遠諸島だと少し手狭なことは確かだ。あちこちに開拓地はあるが、今後日ノ本を統一すると思うなら、伊豆諸島の存在は大きいのかもしれない。


 伊勢湾から伊豆諸島まで防衛することを考えないといけないか。織田水軍の強化が必要だなぁ。伊豆諸島の開発もいるか。流罪の島にしておくなんてもったいない。


 しかしまあ、元の世界の歴史が参考資料くらいにしかならなくなりつつあるくらいに変わっているなぁ。


 先日には飛騨から職人と賦役の人足が美濃に入ったと報告があった。職人は尾張に、人足は美濃で働いてもらう予定だ。


 歓迎として米の飯を出してやったら泣いて喜んでいた人もいたらしい。人足なんかはどこかで強制労働をさせられると勘違いしていた人もいるみたい。きちんと説明してほしいよ。案内役は東美濃の国人だったが、驚いて説明したらしい。


 ひとつ変えれば、様々なところに余波が及ぶ。難しいね。




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― 新着の感想 ―
[一言] 連続更新お疲れ様です 赤須というと駒ケ根市の天竜川付近ですね 小笠原では負けるから岡部を出したみたいですね 負け戦を押し返して五分に戻したって相当なものですよ。信濃衆が崩壊する前に動いたと…
[一言]  武田は信濃で勝ち切れませんでしたか  今回の引き分けで信濃からの収奪がし難くなると、飢えから逃れるために甲斐や信濃の豪族が今川になびく事も考えられますな  また敗北した根無し草の小笠原長時…
[一言] 伊豆諸島か… 調査して、完全に無人の島は久遠諸島と同様にSF的開発をしちゃっても良いかも。
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