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第六話・当面の方針と新たな関係

side・一馬


 信長さんが何とか帰ってくれたんで、オレとエルたちは新居の準備をすることにした。


 大橋さんが掃除とかしてくれたみたいで、家の中は綺麗だ。船から降ろした布団とか荷物を整理するくらいで住めるね。


 ただ広い屋敷なのにお風呂がないんだよね。お風呂の増築と、ちょっと汚いからトイレの改修はしたいね。


 大橋さんからは、好きに使っていいって言われてるし。明日にでも大工さんを探してみようかな。


「司令。少しよろしいですか?」


「うん。なに?」


「今後のことです」


 庭が広いから家庭菜園でもやろうかって考えてたら、エルに呼ばれた。そういえば今後のことを話し合ってなかったな。


「司令。私たちはこのままでは歴史を見物するのではなく、歴史の当事者になってしまいます。そのことについて、いかがお考えなのですか?」


「うーん。どうしよっか。巻き込まれる前に帰る?」


「ねえ、その前に元の世界に帰りたくないの?」


「そっちはあんまり。家族も居ないし」


 麦茶を飲みながら、今後のことを相談することにしたけど、現状が中途半端なのはオレにも分かる。


 どうしようか、少し悩んでるんだよね。本当のとこ。


 元の世界には帰らなくていいよ。別に。元の世界のリアルより宇宙要塞の方が便利だし、みんなが居るし。


 それは以前に伝えたはずなんだけど、若干呆れられたのは何でだ?


「元の世界に帰らないのなら。ここを過去だと思うのは、もう止めた方がいいと思うわ。この世界で生きていくつもりで考えるべきよ」


「私もそう思う」


 オレとしては日本と関わるか、島に帰るかの選択肢で考えてたけど。メルティとケティは、信長を見物したいという理由で来たオレの基本的な考え方に疑問があるみたい。


 確かにオレはここを過去の歴史として見てたけどさ。


「技術的なアドバンテージがあるから、千年は何もしなくても優位に生きられると思うわ。でもそれだと、いつか追い付かれるわ」


「司令も私たちも老化はないから、殺されない限りは死にはしない。でも、客観的に考えて私たちの生存圏は確立すべき」


「そう考えると、アタシたちがそれなりの地位になれるのって、この時代が一番やりやすいかもしれないわね」


 エルとセレスは黙ったままだけど、メルティとケティとジュリアは今後のことを話し始めた。


 有機アンドロイドに老化などないし、生体強化されたプレイヤーにも老化はない。それは仮想空間からリアルになっても変化がないのは、すでに検査をして判明してる。


 宇宙要塞とオレたちが、この世界にとって異物であることは確かだし。場合によっては世界から危険視されて、狙われる危険性もゼロではないと。


 最悪の場合は宇宙要塞で太陽系外に逃げるという選択肢もあるから、そこまで深刻じゃないけどね。


「エル。セレス。どう思う?」


「私たちの居場所は作るべきかと思います。しかしこの時代でもそれほど簡単なことだとは思えません」


「司令次第かと。正直生存圏の確立だけなら、太陽系を離れて無人の惑星を探した方が早いかもしれません」


 みんな真剣に考えてるんだなぁ。もしかして楽天的に考えてたのはオレだけか?


「じゃあ、他のみんなにも意見聞いて、最終的に話し合って決めようか」


 信長も見たし、そろそろこれからのことを考えるべきかもしれない。


 今回ばかりはみんなの意見を聞いて決めないと。もう答えが用意されてるゲームじゃないんだから。




 みんなの意見を通信で聞いたら、この日の夜には集まった。


 細かい意見はいろいろあるけど、まずは地球で生存圏の確立のために動くべきだとの意見が多い。


「じゃあ、商人になってみようか」


 夕食後にみんなの意見を聞いて、改めて今後のことを話し合うことにしたけど。正直そこまで深刻に考えなくてもいいと思うんだよね。


 とりあえず無敵の宇宙要塞で製造した品物を交易で得たことにして売って、オレたちの居場所を作れば何とかなる気がする。




「ところで、司令。いつか彼女とか奥さん探して、迎えるのかしら? ずっと独り身は寂しいでしょう?」


「うん? みんなが居るし要らないかなぁ。リアルに考えると秘密がバレる危険が出るし、下手な親戚ができたら厄介なことになるし」


「そう。なら私たちを本当の妻として扱ってほしいわ」


「うん。いいんじゃないかな。その方が対外的に嘘がバレないと思うし」


 当面の方針を自分たちの生存圏を確立するために、商人として生きることに決めた。ただここでメルティが、オレの心配してくれたよ。


 リアルでも十年近く彼女居なかったしなぁ。今更寂しいとか騒ぐ齢でもないし、それに秘密が多いから下手な奥さん迎えると厄介なことになるしね。


 みんなとこうして一緒に居られれば、それでいいって思える。


 メルティもわざわざ確認しなくてもいいのに。


 うん。ちょっと待って。本当の妻って夜の営みも含めてってことか?


 まさかね。そんな無茶苦茶なこと。あり得ないよね。




 結果から言おう。メルティにハメられた。


 そもそもアンドロイドが子供を産めるなんて、オレは聞いてなかったよ?


 もしかしてオレはチョロいとか思われてたりして。


 順番も彼女たちで決めてた。一巡するまで年功序列で行くそうだ。そのあとはご自由にと言われたけどさ。


 これ呼ぶ回数によって、不満とか持たれたりしないよね?


 身内のアンドロイドが不満を溜め込むとか怖い。


 でもさ。ここで断れるような強い意見なんて、オレにはないんだよね。


 しかもオレはエルが部屋に来るまで気付かなくて、庭の家庭菜園に植えるものを考えてたくらいなのに。


 断れるわけないよ。自分の好みで作ったアンドロイドを。


 しかも覚悟を決めてきたエルを前に、話が違うなんて言えるはずがない。


 問題は本当百二十人のアンドロイドが、不満を抱えないでやれるかが悩みどころだ。ハーレムって言っても限度があるよね。


 今度こっそり宇宙要塞のコンピュータに聞いてみようか。どうすればみんなと上手くいくのか。




side・エル


 メルティもあんな騙すようなこと、しなくてもいいのに。


 司令は奥手で人付き合いも得意じゃないから、ズルズルと待つよりは早めにきっかけを作ってあげないと、厄介なことになるなんて言うけど。


 一番最初の私の身にもなってほしい。拒否されたらと思うと。


 ただ現実問題として私たちが伴侶を得るには司令を選ぶか、新たな男性型有機アンドロイドを作ってもらうかの、二つに一つしかない。


 仮想空間の人工知能として生まれた私たちは、限られた特殊な環境で育ち生きてきた。


 多分司令は私たちが伴侶のアンドロイドを欲しいと言えば、作る許可はくれる。でもそれだと司令は、寂しい思いをすると思う。


 脇が甘いのは今回の件でも明らか。困った人でもあるけど私たちは全員が自らの意思で司令を選んだ。


 恐らく人ならばあり得ないことで、私たちは自らの創造主である司令に、元々好意を持つように仮想空間のシステムにより作られたことが影響してる。


 それは全員理解してる。急ぐ必要はないからと、私はみんなに話したんだけど。


 私たちは人ではない。ならば私たちなりの生き方をすればいいのではないかというのが、私たちアンドロイドの答え。


 私たちを人と同じように扱い、愛情を注いでくれた司令と共に生きるというのが、生命として自ら決めた第一歩。


 多分司令は一生気付かないかもしれない。私たちの覚悟。


 でも。私自身はどんな理由や形であれ、司令に愛されるのが嬉しくてならないのが本音。


 司令。不束者ですがよろしくお願いします。




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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[良い点] 120人だと毎日いたしても一周4ヶ月。 人間なら不満でそうだけど寿命無しならそれくらいも有りだな 小説で長寿のエルフとか出た時、時間の感覚バグってても違和感なく読めるし
[一言] 読むたびに思う事は、やはり120人は多すぎたと思う。 30人位でよかったかも。
[一言] お!とゆう事は現代編までは書くのかな?
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