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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文20年(1551年)

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第六百九十二話・朝廷の動き

Side:近衛稙家


 内裏は相も変わらずか。塀が崩れても修繕すら出来ておらぬのが朝廷の現状じゃ。長き世を生き残った朝廷も、これほどの危機は過去を顧みても多くはあるまい。


 中には足利将軍家がいかになろうが、いかな者が都を治めようが変わらぬと公言する者もおるが、内心では不安であろうな。


「太閤、よう戻った」


「はっ、長らく都を空けて申し訳ありませぬ」


 主上のご機嫌は悪うないとお見受けする。公家は都から逃げられても、主上は左様なことがあってはならぬ御身おんみ。まるで人質だと陰口を叩く愚か者もおったが、そのご心中は察して余りある。


「よいのだ。して大内の件はいかがなのじゃ?」


 主上と主立った者たちにはすでに文で大内の一件を知らせておいたせいか、都におる主立った者は集まりておる。太閤の身が危ういというのでは、さすがに見過ごせぬということか。


 すでに朝議などあってないようなものとはいえ、ここで太閤と連なる者を失えば朝廷の威信はさらに下がり、この先いかになるかわからぬ。


「危ういと、われは思いまする」


「またれよ。近衛公。それはまことか? 大内家の内輪(うちわ)の争いと太閤はなんの関わりもあるまい?」


 吾の一言で主上は驚かれ、主立った者たちはどよめいた。そしてひとりの者が口を開くが、いかにも吾が大げさに言うておるか、謀でもしておると(うたご)うておるようじゃ。


「大内兵部卿はここのところ文治を重んじて政を行ないておるが、それが家臣の武辺者たちの不満になりておるようじゃ。もっと言えば太閤たちとの交流も気に入らぬらしい」


「そのような話は聞かぬが?」


「尾張の斯波武衛のところの者が知らせて参ったのだ。噂くらいは聞いておろう。南蛮船を持つ男だ」


 主上は静かにこちらの話を聞いておられるが、主立った者たちは騒めいた。無理もない。都で知らぬ長門や周防のことを、何故、近江におった吾が知るのだと思うて当然。とはいえ南蛮船という言の葉には皆も一目置くのかざわめきがしずまる。


「久遠の一馬でありまするか。ならば、吾は信じたほうがよいと思いまする」


 先に口を開いたのは、山科卿か。確か尾張に参っておったはず。武衛に三河守や一馬と面識があって当然か。


「然り。一馬は吾も会うたが、若いながら確かな見識を持った男。それに今更、嘘で恩を売る必要などあるまい? 季節の挨拶には久遠が手に入れた貴重な品々が多いのだ」


 風向きが変わったな。僅かな供の者と諸国を行脚あんぎゃする山科卿は主上の御信任も厚い。尾張からの季節の献上品も山科卿が取り次いだ話だ。


「遠からずに戦となるのかもしれぬ。そうなれば太閤の身とて危ういという見立てがあるのだ。そうならぬかもしれぬし、それ以上になるのやもしれぬ。だが危ういと思うなら動くべきではないか?」


 よし、反対する者も言の葉を止めた。疑念はあろうが、万が一を思えば反対する理由もない。誰も人と銭を出せと言うておるわけではないからな。


「太閤。そちに任せる。至急、策を考えよ」


 最終に御裁可ごさいかを主上にあおたてまつり、主上は動くことをお決めになられた。公家が次々に都を離れていくことを憂いておられると聞き及ぶ。三好も思うておったより大人しい。


 三好との和睦をまとめて都の不安を取り除いたのちに、太閤たちを一旦呼び戻すべきか? 武衛と三河守に相談するか。なんぞ考えがあるのやもしれぬ。


 あとは三好だな。




Side:久遠一馬


「鹿苑寺? ああ義満公が建てたあれか。左様なものとおに燃えてしまったぞ。愚か者どものせいでな」


 暇な午後、武衛陣にいるみんなでお茶している。ふと金閣寺がどうなっているのかと話題を振ったら、義輝さんが知らんのかと言いたげな顔で現状を教えてくれた。金閣寺で通じるかわからないので寺の名前である鹿苑寺で聞いたんだけど、義輝さんも察してくれたらしい。


 それにしても金閣寺がないのか? 今ならいろいろ見学出来るかと思ったのに。ちらりとエルたちを見ると苦笑いをしている。知らなかったのはオレだけ?


「都で一番立派なのはここであろう。いずこかの小物も随分と都を荒廃させてくれたからな。それよりも、この羊羹と言ったか? 美味いな」


 義輝さんは金閣寺よりも初めての羊羹に衝撃を受けたらしい。いや、足利将軍家の誇りとかじゃないの? 金閣寺。


 二切れほど出した羊羹がなくなると悲しそうにお皿を見ている。もっと寄越せと言わないところは褒めてあげるべきかもしれない。ただエルは武衛陣の奉公人にお代わりを持ってくるようと頼んでいたけど。


 貴重なのは理解しているらしいし、まあお代わり一回くらいはいいか。


「随分と美味そうじゃの」


 義輝さんのお代わりが来ると、ちょうど内裏に参内していた近衛稙家さんが山科言継さんを連れて戻ってきた。というか稙家さん。ずっと武衛陣に泊っているのは何故だろう。


 まさかご飯が目当てじゃないよね? 天下の近衛家の当主が。


「これは美味い。なんともよい口触りじゃ。小豆の甘さもよいのう」


 稙家さんにはさっき羊羹たくさんあげたのに。内裏に全部献上しちゃったらしい。あとで下賜してもらえそうだけど。


 ご機嫌麗しいようで、なによりです。殿上人も意外に安いな。羊羹でご機嫌なんて。氏素性の怪しい下郎が! と見下されるかと思ったのに。


「一馬殿、大内の件であるが……」


「こちらでも幾筋いくすじもの伝手で確認はしました。事態が深刻なのは確かかと」


 久々の再会となった山科さんとは挨拶もそこそこに、大内家の内乱の件で聞かれた。情報源がうちであることがもうバレているのか。


「尾張守陶隆房か。あまり評判のよい男ではないのは確かじゃの」


 山科さん。陶隆房のこと噂程度でも知っているのか? まああっちにも公家がいるしね。手紙のやり取りがあって当然か。だけど尾張守とは皮肉だね。


「厄介なのはここからじゃな。危機を知らせるだけでよいのか。それとも呼び戻すか」


 羊羹をニコニコと食べていた稙家さんだが、悩む様子の山科さんに少しため息交じりに声を掛けた。危ないから帰ってこいでは大内家の面目を潰すしね。


 公家が本格的に旅に出るといえば、準備や道中安全の祈願とかやることが多くてなかなか出立も出来ないらしい。多少歴史がずれてきているとはいえ、史実と比較するとあまり時間はない。


 手紙だと多分助からないだろう。


「少し知恵を貸してくれぬか?」


 ふたりは悩みだしたが、しばし間を空けて義統さんや信秀さん、そしてオレを見てそう口にした。


「文では難しいのでございましょうな。しかるべき方が使者に立つしかないのではありませぬか」


 先に口を開いたのは義統さんだった。多分身分的なものもあるんだろう。無難な策だと思う。現地の正確な情報が京の都にはないからね。


「周防と長門は遠いからの」


「船ならば早いのでは? 南蛮船ならば特に早いと聞くが……」


 そう問題は大内家の領地が遠いことだ。道中も安全とは限らないしね。山科さんは悩む稙家さんとオレを見て、南蛮船を使えばという案を口にした。


「瀬戸内は通れませんよ。当家の船はあの辺りの海を知らないので。まあ四国を迂回すれば……、エル、どれくらいでいける?」


「二日ですね。風で前後しますが」


 別に乗せていってもいいが、瀬戸内海は回避したいね。あそこは細々とした島が多くて潮の流れが複雑だ。行くとすれば石山に待機している船団だろうが、さすがに五隻で村上水軍や諸々のいる瀬戸内海を行くのはちょっと面倒。


 ましてこっちには佐治水軍の久遠船もある。


「二日なのか?」


「それほど早く着くなら……」


「殿下、大内に使者を送るのならば、三好にも声を掛けて船を出してもらうべきでございます。西国は我らの与り知らぬ土地。なにかあればとお思いならば三好も動かすべきかと思いまする」


 二日という日数に一気に使者をと考え始めた稙家さんと山科さんだが、そこに無言だった信秀さんがそのままではまずいと意見を口にした。


 確かに暴発寸前の陶隆房のいるところにウチの船を使っても使者だけで行くのは危険すぎる。ウチの船は逃げ出せるけど、下手すれば使者が謀叛のきっかけになりかねない。


 別に三好も動かしておくべきだろう。


 しかし、面倒なことになってきたね。




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