↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文20年(1551年)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

626/2283

第六百二十五話・出発と残る者

戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。2

書籍版発売日7月31日。電子書籍版は8月2日です。

どうぞよろしくお願いいたします。

Side:久遠一馬


 信長さん率いる本隊が清洲を出発する。沿道には多くの領民が見送りに出ており、祭りのように盛り上がっている。


 本隊はおおよそ五千。陸路と川舟で大垣に向かう。


 ウチのメンバーとしては、エル、ジュリア、ケティ、メルティがいる。セレスは警備奉行として仕事もあり残った。病院はパメラとマドカに任せる。


 まあほかにもリンメイ、シンディ、アーシャ、リリー、ミレイ、エミール、鏡花とか尾張にいるからね。留守の心配はない。


 織田一族からは因幡守家の信友さんと伊勢守家の信安さんが同行していて、あとは初陣である勘十郎君や信光さんの息子である信成君がいる。


 戦のあとにはそのまま六角と朝倉との戦後交渉がある可能性が高い。戦後処理は決まっていない部分もあるからね。信友さんと信安さんは元守護代だから、両家との交渉のためにも同行している。


 信長さん自身は交渉ごとの経験もないし、正直あまり得意ではないだろう。この時代は交渉も家柄があったほうがいいので、元守護代の二人の出番となる。


 ああ、ウチの家臣としては資清さん、望月さん、太田さん、慶次、益氏さんなどがいる。望月さんも六角との交渉に必要なので呼んだ。六角をよく知る人だからね。


「某も初陣以降は数えるほどしか戦に出たことがなくてな。己で采を振れと言われても如何にしていいかわからぬ。外向きの戦はすべて殿が差配しておったからの」


 お昼時、休憩を兼ねて一休みしていると、信友さんがふとそんなことを漏らした。


 武士とはいえみんながみんな戦に慣れているわけでもないし、差配した経験があるわけではないということか。水利権や入会地を巡る小競り合いなら身分の低い武士は経験しているんだろうが、信友さんほどの身分になるとそれくらいで出ないからな。


 浅井久政も今回の戦、小競り合いの延長程度だと考えている節がある。関ケ原での戦は武威を示す戦。そんな認識らしい。浅井の家中はもっと酷い。美濃や尾張の兵や領民を捕まえて売り飛ばすとか、関ヶ原の城を自分の物にするから、近江商人たちに銭の用意をしておけとか、夢いっぱいだ!


 むしろ久政は織田を北近江に引き込み、六角や朝倉などの近隣勢力を味方に付けたいのが本音だろうね。元の世界の感覚だと散々好き勝手に騒いで、それは無理だと思えるが、この時代だと敵味方がコロコロと変わることはあり得る。


 実際、織田が北近江に単独で制圧に乗り出せば、六角と朝倉は敵に回るかもしれない。


 そもそも久政は、自分の代で浅井が滅ぶなんて思ってもいないだろう。代々続く家でたまたま父の代で大きくなった。駄目なら臣従すればいい。そんな認識がこの時代では一般的だ。


 周りの国人衆からすると、久政の父である亮政の時代までは浅井は同格の国人だったんだ。亮政が京極を蹴落として浅井が北近江三郡を現在は得ているが、周りの国人衆からしても浅井を心から主君だと喜んでいるわけではないだろう。


 とはいえ代わる人材が出てこないことと、六角と朝倉がほぼ全盛期なので大人しく従うふりをして勢力の拡大を狙う久政が、北近江三郡の国人衆にとっては悪くないトップだったんだと思う。


「しかし本当に美濃に入り込んでおったとは……」


 一方、例の賊に関して少し考え込んでいたのは信安さんだ。


 実は先日、賊の一部が浅井久政の命令で美濃にて織田の荷駄を狙えと言われてきたと自白した。イザベラが捕らえた連中だ。


 イザベラに限らずアンドロイドのみんなには、裁量権をある程度与えている。自分で考えて実行することもある。賊連中が女子供を人質にとっていたことと、立ち去る時には皆殺しにする気だったこと。近隣に急行出来る部隊がいなかったこと。また場所が織田領でないことで、深夜に領主の許可もなくすずやチェリーが行くのも問題だったことで密かにイザベラが処理したのだろう。


 織田家にはウチの忍び衆の一部ということにしておいた。ウルザとヒルザが使っていた精鋭、今川は影の衆なんて呼んでいたが、彼らは別に解散したわけではなく実際に今は美濃でウルザたちのところにいる。


 ウルザにも話を通しておいたので、後で誰かに聞かれても問題はない。


「己の力を見せることで、和睦がなると思うておるのでございましょう」


 信安さんの様子にエルが配ったお茶を飲んでいた政秀さんが、久政の心境を推測して語った。


 多分、政秀さんの考える通りだと思う。この時代はとにかく強く優秀な謀が出来る人が評価され認められる。織田が浅井を相手にしてないことで、久政は自分を認めさせようと意固地になっているんだと思う。


「我らは浅井など興味がないというのに」


「関ケ原を十全に押さえて、関所を設ける。それが狙いだと浅井は気付かぬのであろうな」


 信友さんと信安さんは少し憐れむような表情で西の空を眺めていた。もしかして、この件もウチの謀略だと思われている? 風評被害? 冤罪だよ。近江の方の行動から発展した偶然の出来事だ。


 そもそも妹に嫌われて帰りたくないと言われる久政が悪い。それに織田を認めないで田舎者と馬鹿にして早々に近江の方に絶縁状を送ってきたのも久政だ。おかげで浅井とは交渉の窓口すらまだない。もちろん織田はすでに主の六角と交渉すると決めているので困らない。


 さて、浅井家はどうなるかな。




Side:斯波義統


「朝倉と六角を信じてよいのか?」


 雨が降っておる。弾正忠と共に雨音を聞きながら茶を飲むのも悪くはない。


 ただ気になるのは、あまりにもこちらに優位に動き過ぎておることか。これが織田を叩くための六角と朝倉の策ではないかと不安になる。


「某にもわかりませぬ」


 身分があれば言えぬこともある。わしも弾正忠も軽々しく愚痴も零せぬ立場になってしまった。故にこうしてふたりで茶を飲んで愚痴を零す。皮肉にも感じる。


 わしの不安に対して、弾正忠の答えは驚きであった。六角と朝倉と上手くやっておるように見えたからの。


「ですが、敵に回るならそれはそれで構いませぬ。そのためにも一馬たちを行かせました」


「なるほど。関ケ原で守るか」


 なるほど。信じられぬままでも手の打ちようはあるか。


「しかし嫌になるの。つまらぬ理由で騒ぎ、戦をするというのは。根となる原因はなんであろう?」


 きっかけは近江の方か。あれは誰かの策ではない。様々な意図が糸となり織り上がり、そこに起きたことに対して皆が動いた結果というところか。


 とはいえ各々の勝手な理由で動き戦をすることを無くさぬ限り、日ノ本は何度でも荒れよう。


「鎌倉の世から武士は土地を治め、土地に拘りました。まずはそれを変えねばなりますまい」


「武士の根幹であろう? それを変えるなど出来るのか?」


「やらねばなりませぬ。さもなくば、いずれは斯波家や織田ですらも同じ末路を辿ることになりましょう」


「難儀なことよの」


 古《いにしえ》の昔、土地は朝廷のものだったはずだ。しかし世が荒れるに従い、その土地の者たちが武装して好き勝手にした。


 つまりは日ノ本を確実に治めるには、武士から土地を取り上げることが必要ということか。


 恨まれるであろうな。何も持たぬ者と違い、今何かを持つ者は新たな世よりも今の己の領分を守りたいのが人というもの。もし仮に、わしにそれをやれと言われたらいかがするか?


 適度なところで妥協しそうではあるの。今までも日ノ本すべてを確実に治めた者はおらん。鎌倉も室町も従う者を認めたに過ぎん。


 仮に土地を認めるとしても法を守らせて、守らぬ者は天下人が罰を与えねばならん。それが出来ぬ足利家がいつまでも天下に執着する故に世は荒れるのだ。


「さて、浅井は新しき世を感じることが出来るのか否か」


 たとえ負けても領地を失っても、新しき世では生きる場所はあろう。浅井が何処まで新しき世を見通せるか。楽しみでもある。


 このまま足利の世と共に消えていくのを見るのも、また一興じゃがの。





因幡守家の信友さん。元大和守家の守護代だった人。実家の因幡守家を継ぐ形で復帰した人。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

f32jl8qbc3agfyxy6wkqi1e64pdq_usm_gp_oi_b3h407nu97vpxj6mn46wo16nzbyfl_a86_gp_on_d1i3l8a7jekdaacv9fwp2m0w2eaxh_l5t_140_1mj58tiewczhgh6e0rrl48o4mhrhy3h_wmh_16e_1pqf32jl8qbc3agfyxy6wkqi1e64pdq_usm_gp_oi_bf32jl8qbc3agfyxy6wkqi1e64pdq_usm_gp_oi_bf32jl8qbc3agfyxy6wkqi1e64pdq_usm_gp_oi_bf32jl8qbc3agfyxy6wkqi1e64pdq_usm_gp_oi_bf32jl8qbc3agfyxy6wkqi1e64pdq_usm_gp_oi_bf32jl8qbc3agfyxy6wkqi1e64pdq_usm_gp_oi_b

書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[良い点] 〉浅井久政も今回の戦、小競り合いの延長程度だと考えている節がある。関ケ原での戦は武威を示す戦。そんな認識らしい。‥近江商人たちに銭の用意をしておけとか、夢いっぱいだ!←夢いっぱい。たまには…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。