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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文18年(1549年)

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第四百二十三話・朝を迎える者と迎えられぬ者たち

新作・チートキャンパーとドジっ子女神様の異世界旅情記


良かったらお願いいたします。

Side:本證寺の僧


 町が……、我らの町が燃えておる。


 空から焙烙玉が来なくなったと思ったら、あっさりと堀と塀を越えられた。


 織田は敵地でさえも、奪うことも焼くことも禁じておると聞いておったのに、あっさりと火をかけた。


 もう、終わりだ。今川が動く前にわしらは皆殺しにされる。


「行け! 退けば仏様に地獄に落とされるぞ!! 極楽に行きたくば仏敵織田を倒せ!!」


 頑なに教えを信じておる者が今も顔を真っ赤にして信徒どもに指示を飛ばしておるが、そんなことをしても無駄だ。


 死ねば極楽だと? 同じ仏に仕える者が殺し合うこの世で、いったいそんな戯言を誰が信じるか。


 叡山の破戒僧どもがそのいい例ではないか。


「おい、あの愚か者を始末しろ。あと玄海上人と学僧どもを罪人として織田に差し出すぞ」


「おっ、おい。いいのか?」


「死にたいのか! 早くしろ!! 条件はわれらの本證寺からの退去だ。以降織田領には足を踏み入れん。それでまとめろ!!」


 いかん。呆けておるわけにはいかぬ。あの狂った者どもを始末して戦を終わらせねば。


 我らは最早信用されまい。交渉ではない。降伏するだけだ。


 退去するから包囲を解いてもらう。ただその一点で構わぬのだ。


「おっ、おのれら、なんの真似だ!!」


「仏の教えを守るためには生きねばならん。死にたいなら我らが極楽へ送ってやるわ!!」


 信徒どもはまるで状況を理解しておらぬようで、死しても織田を討つと息巻いておるが、僧と僧兵は半数がこんなところで死にたくないとわしに賛同した。


 思えば奴らだ。奴らが声高に長引く戦になれば、我らが有利だなどといい加減なことを言って、今川も味方だなどと戦を煽ったのだ。


「死ねーー!!」


「おのれら、許さぬぞ!」


 ほれみろ。奴らとて同じ仏を信じる我らの言葉ですら一切聞かぬではないか。


 だが先手を取ったわしの勝ちだ。周囲に手練れの僧兵がおっては、いかに血気に逸る奴らでも多勢に無勢だ。


 諸皆もろみな、極楽に送ったな。早く玄海どもを織田に送らねば。




Side:久遠一馬


 そろそろ夕暮れだ。流石に本證寺は一日では落ちなかったか。


 理由ははっきりしている。今回、織田家は、本證寺内の寺内町などでの火付けと乱取りを許可したことだ。


 信秀さんはここに至るまでに、散々使者が殺されたことを重く見ている。オレたちも今回は町を燃やさないことは頼まなかったしね。ある意味、使者を殺めた罪人の砦だ。焼き払ってもなんの問題もない。


 現状では寺内町などは既に焼け落ちていて、一揆勢は内堀より中にある本證寺内の寺院に立て籠もっている。


「手ぬるいな。火矢を射て」


 夕暮れを目前に軍議が再度開かれたが、信秀さんはここで手を緩める気はないようだ。


 ピリッとした空気が流れる。


「いったい如何程の者が、この愚かな蜂起を止めんとして命を落としたと思うておるのだ。死した者たちの無念を晴らせ。連中に朝日を見せてはならぬ」


 この時代、夜は戦中でも攻撃を止めることが普通だ。敵味方の識別が難しいのが大きな理由だろう。


 とはいえここで一旦攻撃を止めれば、連中に無駄な時間を与えることになるか。


「申し上げます! 寺院側より使者が来ました!!」


 今の信秀さんには誰も口を挟めない迫力がある。


 そんな場の空気をさら尖鋭化せんえいかさせたのは、本證寺からの使者が来たとの知らせだった。


「斬れ。すでに最後通告は終わっておる」


「……お、恐れながら申し上げます。使者が連れてきたのは、本證寺の玄海上人と畿内から派遣されておった学僧たちでございます」


 信秀さんは最早交渉など不要だと即決(そっけつ)したが、その言葉に報告に来た者が戸惑いながらも、使者が連れてきた者について告げると周囲の武将がざわついた。


「大殿、玄海上人や学僧たちは使えますよ。向こうから出てきてくれたのです。確保してはいかがでしょうか?」


 しんと静まり返った中、信秀さんは何故かオレに視線を向けた。その意味を察したというわけではないが、オレはこの機会を逃すのはあまりに惜しいと思えた。


 石山本願寺はいずれ敵対するだろうが、それは今ではない。


 この重苦しい空気の中で発言したオレに、美濃の斎藤義龍さんとかあまり馴染みがない人は、驚いた様子でオレを見ていた。


 いや、空気はちゃんと読めてるよ。ただ信秀さんが何かを求めたから答えただけで。


「よかろう。使者は捕らえろ。玄海上人と学僧は丁重に扱え。なれど罪人には相違ない。勝手な真似はさせるな。さて、めいは変わらぬ。本證寺には矢が尽きるまで火矢を射ち込め!」


 今後の方針が決まった。


 使者が来たと知らせに来た人に帰りがけに少し話を聞いてみたが、どうも降伏の使者らしかった。


 玄海上人と上位の学僧を罪人として引き渡すことで、一部の僧が助かろうとしたようだ。寺院内からは争う声が聞こえたともいうので、継戦派と降伏派で内部分裂したのかもしれない。




 翌朝、本證寺の寺院で無事な建物は皆無だった。


 逃げようとした僧や僧兵は全員討たれたようだ。玄海上人と畿内出身の学僧が使者と共に罪人として連れてこられたので、遠慮する必要はなくなったからね。


 すべては玄海上人の命でやったこと。それが使者が言おうとした内容だったらしい。


 彼らからすれば織田が満足する結果を用意したつもりだったのだろうが、それが逆に異例とも言える夜間(やかん)の総攻撃を誘発したのだから、最後まで愚かだったとしか言いようがない。


 金色砲は使わなかったが、ウチも鉄砲と木砲と音花火は使った。真夜中にあの音を鳴らされては敵もまともな反撃が出来なかったようだ。


 まあ弓を打てるほど練度の高い僧兵たちが、投石機を止めようと反撃した時に粗方討ち取られていたことも大きかっただろうけどね。


「終わったな」


「ええ。上宮寺がまだ残っていますが、向こうもじきに終わるでしょう」


 本證寺跡地の周囲では、織田側の軍勢が朝ご飯の準備をしている煙があちこちから上がっている。


 オレの陣では信長さんも交えて一足早く朝ご飯にしていた。


 徹夜明けの味噌汁は美味しく感じる。まあ朝ご飯はエルたちが作っているので美味しいんだけどね。


「ここの始末は後回しか?」


「大殿と上位の諸将が相談されていますが、その予定です。ただ、亡くなった者の供養はします。罪人とはいえ供養することは問題ないでしょう。もっとも、本證寺の僧が供養することは認められていません。大殿のお怒りがそれだけ大きいということですね」


 本堂を含めて焼けてしまい、焼け跡と瓦礫しかない場所になった。


 信長さんはこの光景にも動じることはなく今後のことを訊ねてくるが、ここは当面は立ち入り禁止にする予定だ。


 死者の供養ですら、願証寺と一向衆以外の寺社には執り行うことが認められたが、本證寺の関係者には認められなかった。


 加えて本證寺領は扱いが決まるまでは、一切の復興を許可しないことが決まっている。


 本證寺に荒らされた織田領の復興が先だし、石山本願寺がここを手放さない限り、織田は一切の銭も人も出さないからね。


「幾ばくかの者が願証寺のように織田と誼を良うすることを条件に、本證寺を再建せんとしておるようだな」


「そこは大殿のお心次第ですね」


 信長さんが気にしているのは今後だ。信秀さんも前に気にしていたが、北条のように一向宗を禁止したほうがいいかと悩むのかもしれない。


 一揆に加わらずに生き延びた本證寺の関係者は、ここを願証寺のような親織田の寺にすることで本證寺を残したいらしいが、正直難しいだろう。願証寺も親織田の寺になるときには内部で揉めた。願証寺では親織田派が勝ったので問題は起きなかったが、反織田派が勝てば本證寺と同じように一向一揆となる。


 さらに、本證寺と寺領の復興にかかる銭を出せる財力と責任の持ち主は石山本願寺だけだ。なのに織田に銭の無心をしてくる馬鹿がもう現れてる。


 今回一番働いた願証寺が、責任を肩代わりして三河の一向宗をまとめるならば任せてもいいかもしれないが、あそこでも復興費用は出せないだろう。


 守護使不入の権利がある願証寺には、織田は理由もなく銭は出さないし、そこまでしてやる義理もない。


 一部の僧は織田の賦役に人を出すことで願証寺のように礼金を手に入れて、それで本證寺の復興をと考えているようだが、肝心の人がどれだけ本證寺領に残るのかを考えたら難しい。


 第一、人を寺領から出しては復興が遅くなる。


 そもそも本證寺の僧は寺院の再建は考えているが、水害と戦で荒れた寺領の復興までは考えてないみたいなんだ。


 それはこの時代としては当然だが、織田との経済格差が戦の原因だと未だに理解してない人が多い証でもある。


 本證寺の復興を許せば、そこは西三河で一番貧しい地域になりかねない。


 それを理解してない人が多過ぎるというか、理解している人があまりに少ないことにオレは驚いているくらいだからね。




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