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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文18年(1549年)

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第四百話・第二回武芸大会

Side:久遠一馬


 那古野は多くの人で賑わっている。明日からいよいよ第二回武芸大会になるんだ。


 メイン会場の清洲は元より、那古野や津島や熱田にも多くの人が集まっている。美濃や伊勢からの訪問者は天気が悪いと川止めなんかで移動出来ないこともあるので、数日前から来ているみたいだ。


 三河? 相変わらず爆発寸前の火薬庫のような感じだよ。最悪の場合は一揆が織田に向きかねないので、ウルザとヒルザが安祥城にて信広さんの手伝いをしている。


 邪魔者扱いされないか心配だったけど、信広さんはふたりの派遣に感謝してくれているようで、ふたりは必ず守るというありがたい文が来た。


 現状だとおそらく史実の三河一向一揆よりはマシな状況だろう。規模がまったく違う。


 ぶっちゃけ本證寺以外はそこまで一揆をやる気がない。願証寺が本気で止めていることも大きい。特に本證寺の末端の寺なんかにまで直接説得に行っているみたいだからね。


 織田に臣従してる国人衆も苦しい本證寺領の村に援助している人は何人かいるが、織田を裏切ってまで一揆に参加する人は恐らくほとんどいないだろう。


 あまり知られてないが史実の徳川家康は、今川から独立する際に西三河の国人衆たちの人質を見殺しにしていた。そのことも一揆に加担した家臣が多かったことと無関係ではないはずだ。


 それに織田の統治で飢えないとわかっているのに、寝返ってまで飢えを強制する本證寺に従いたい者なんてそうそういるとは思えない。


 さすがにオレたちも心の中までは覗けないし、信仰心と現実の生活が切っても切れないのが、この時代の人達の生き方だけど、この状況で一揆が必要だと思っている人はほとんどいないと思いたいね。それに、織田側の国人衆は特に困っているわけではないのだ。本人が一揆に参加したくても、家臣や庄屋、領民が反対するだろう。


 また、ウチが信広さんに送ってテストを頼んだ試作兵器や、お酒とか甘味の効果もかなりあったみたいだし。


 三河の国人衆からすると見知らぬ武器や、高くて買えないような酒や甘味が季節の変わり目になると大量に届くことで織田の力を理解したようだ。


「本證寺はどうなるんだろうね」


 今日は那古野の屋敷で資清さんやエルたちと武芸大会の打ち合わせをしているが、ちょうど三河からの報告が届いたので話が三河の問題になる。


「本證寺の影響力、三河に及ぼす全ての力、信仰・財力・縁故・地盤などの一切を確実に落とします。この機会は逃しませんよ」


 三河では本證寺領の流民と、織田領に米を盗みに来た人たちをそのまま臨時の兵として本證寺領との境界に配置した。


 罪人は事情が事情だし、本證寺領の領民をこれ以上追い詰めるのは適切じゃないし、得策でもないからね。


 三河の織田領から兵を集めてもいいが、下手に集めると一揆の引き金になるかもしれない。本證寺の影響力を落とす目的として、本證寺領の人達に織田領を守らせることにしたんだ。


 どん底を体験して非道な仕打ちをされた末の流民や盗みなんだ。温かいご飯と生活の安定と引き換えに織田を守らせる。エルたちの考えた策だけど、恐ろしいほど効果を上げている。


 流民はもとより盗みを働いた者も喜んで働いている。まあこの策はこの時代でもそこまで斬新な策ではないんだけど。


 エルとメルティはこれを機会に、本證寺の影響力を可能な限り落とすつもりらしい。優しく微笑むエルだが、結構怒ってるようで言葉が厳しい。


 割と非道な武士が多い時代だけど、本證寺は負けず劣らずに酷いからね。


「この紙芝居も役に立ってるね」


「うふふ。当然よ。自信作だもの」


 メルティの新作紙芝居が三河の織田領を中心に評判なんだ。織田の災害対応をわかりやすくして紙芝居にしたものだ。


 内容は織田家では、みんなで飢えないように頑張っているということと、余所を襲うようなことは駄目だということ。賦役という食事や銭を得られる働き口を織田家が提供していることも大きい。どんなにモラルを教えたところで、食べるものが無ければ犯罪に走るしかないんだ。


 特に本證寺領から来た流民や盗人たちにも見せて理解してもらっている。本證寺の名前はさすがに書いてないよ? でも本證寺との違いが気になるような読み方はしている。


 織田の関与を拒否・拒絶しているのは本證寺だ。それを紙芝居にはしてないが言葉として広めてもらっている。


 領民だって馬鹿じゃない。特に最近は同じ一向宗の願証寺が一揆を防ぐために動いてるからね。一揆が起きても参加する人がなるべく出ないように、紙芝居できちんと広めているんだ。


「あの殿、本證寺が怒るのでは? 一揆がこちらに向いたら……」


 悪だくみをしているような意味深な笑みのメルティに思わず笑ってしまうが、控えていたお清ちゃんが少し不安そうな顔で疑問を口にした。


「先に手を出してきたのは本證寺なんだよ。こっちの領地から刈り田をしたり干していた稲を奪ったり。支度が出来てないから報復はしてないけど」


 お清ちゃんは一揆が怖いものと考えるみたいだ。この時代の感覚では一般的な感覚なんだろうな。


 でも本證寺が織田領からの略奪を強要して、織田家が我慢してるのが現状で一番の問題なんだよね。


 本證寺としては織田との敵対はしたくないらしいが、領民には奪ってでも税を払えと言っている。どこから奪えとまでは言ってないようだが、領民の立場で周囲を見渡せば、近隣で奪えるほど豊かなのは織田だけだ。


 今年は松平宗家が大人しくなって随分減ったが、昨年までは今川方の国人衆や村から攻撃をされたり略奪されても、織田は最低限の反撃以外は動かなかったからね。


 織田は刈り田くらいでは動かないと舐められているんだって、資清さんが指摘していた。


 願証寺にはすでにそれとなく伝えているが、織田領内からの略奪を黙認したつもりはない。時期を見計らって、きちんと罪を贖ってもらうつもりだと。


 願証寺みたいに協力する姿勢なら別だが、守護使不入の権利を盾に独自運営するなら当然責任はとってもらう。


「武芸大会の期間内は大人しくしていてほしいね」


 オレの一番の懸念は織田の武芸大会を狙って本證寺が蜂起することだ。松平と今川を狙うなら関係はないが、織田が来ないとわかってるこの期間を狙う可能性もありうる。




Side:松平広忠


「いかなることだ?」


「詳しくはわかりませぬが、野分の被害が酷い本證寺領が荒れておるようで……」


 また矢作川が氾濫した。珍しきことではない。矢作川は数年に一度は大なり小なり氾濫することがある川だ。


 こちらの領地にも被害が出ておるが、一番酷いのは本證寺領だという。


「まて、それで何故一揆となるのだ!? しかも狙いはこちらだと!?」


 少し前から大湊の商人から本證寺の動きがおかしきとは聞いておる。それに広きに渡り水害にあった本證寺の領民が、織田や我が松平の領地に刈り田に来ておるのも知っておるが……。


 半蔵の知らせは道理に合わぬものだった。わざわざ人払いを頼んできたので何事かと思えば。本證寺が一揆を企てておって、しかもこちらを狙うだと!?


「言いにくいことでございますが、織田に手を出せば勝てぬばかりか、根切りにされる恐れすらあり得るのが理由かと」


「つまり弱きこちらを狙うと?」


「はっ」


 おのれ、本證寺め。それが仏に仕える者のやることか!?


 拳を握る手に力が入る。本当ならば今すぐにでも攻めて滅ぼしてやりたいくらいだ。だがわしにそれが出来ぬのも織り込み済みか。


「ここ数年で織田と本證寺や松平の諸家一党などとの差は開く一方。織田は地道に荒れ果てた田畑の復旧や川の治水をしておりました。今年はそれが結果として出ておる頃でございます。本證寺としては面白うないのが本音でございましょう」


「寺領には手も口も出すなという連中の言い分を、織田もそのまま受け入れておったはずであろう?」


「はっ、手も口も出さぬ代わりに援助もしないのが織田の方針でございましょう。その結果、同じ西三河であるにもかかわらず本證寺領だけが貧しいまま。おごり高ぶる本證寺がその現状を素直に受け入れるはずもなく……」


 坊主も所詮は人か。信秀は仏と言われておるが、奴が本当に仏に見えるほど本證寺は腐っておるな。


 水害の理由を付けて弱き松平から奪い、あわよくば寺領を広げるか。今川が出てきたら織田にでも擦り付ける気であろう。


 勝鬘寺しょうまんじ上宮寺じょうぐうじも動くのか?


 今の松平宗家ではいかにしようもない。家中からも離反者が出るぞ。すぐに今川に知らせて後詰ごづめを頼まねば。織田にも万が一を考えて助けを求めるか?


 今川は動くのか? 駄目なら織田に臣従してでも……。




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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[良い点] 何度目かの読み返し中です。結構前の事は覚えてないですね。 [気になる点] なんちゃって南蛮人が尾張に着いて統治方法が変わって二年なので、ここ数年というのは大袈裟ではなかろうか。 それか数年…
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