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永禄五年(1559年)

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第二千二百五十二話・子供たちの久遠諸島訪問・その四

Side:久遠一馬


 楽しい日々も終わりが近い。


 久遠諸島で最後の日程は、今回も島のお祭りで見送りをしてくれることになっている。オレたちが戻った時にやろうとお祭りの支度をして待っていてくれたんだ。


 ふと目を閉じると、ここに初めて足を踏み入れた時を思い出す。


 無人の手付かずの自然しかない島だったんだ。オーバーテクノロジーの重機やロボット兵を使って作った故郷。


 それが今では人も多く住んでいて、人の手によって日々様相が変わっている。


「おまつり~」


「ちーち、おまつりだ!」


 たくさんの子供たちと一緒に町の中を歩く。学校の子たちも家臣の子たちも孤児院のみんなも、島に馴染んで楽しんでいる姿があちこちで見られる。


 そうそう、先日には恒例となった墓参りをした。実は学校の子供たちは別行動でいいかなと思ったんだけど、一緒にお参りしたいという意見が多かったらしく子供たちも同行しての墓参りだった。


 みんな寺社のような立派な仏像や建物がないことに驚いていたね。それでも一生懸命、祈ってくれる姿には感動して、ただただ感謝しかなかった。


 今日はそんな子供たちにたくさんの思い出を作ってほしい。中には一生に一度の旅行になる子だっているんだろうし。


「そうだねぇ、お祭り楽しいね」


「うん!」


 この時代らしいお祭りだと思う。みんなで支度してみんなで楽しむ。


 さらに島の場合は余所者とか旅の人とかいないからね。子供たちも誘拐とかされる心配などないし自由に見て回って楽しめるんだ。


 ほんとウチの島は驚くほど上手くいっているが、上手く行き過ぎているところもある。


 懸念として、この時代の日ノ本の人は、日本という国があるという認識があまりないんだ。国と言えば領国であり、領国の外は余所の国になる。


 古くから日ノ本の中心となる畿内でさえ余所の国という感覚になるので、そんな人たちがウチの島に来ると、畿内より親近感を覚えて新しい世の中のためにと励んでくれる。


 ただ、それが日本という国を分断するきっかけになるのではと思うと、素直に喜べないところもある。無論、だからといって尾張や東国の人たちに畿内のためにお金を出して血を流せとは思わないし言わないが。


 逆の立場で考えると、畿内は東国を属領以上には扱わないし、力を失えば富も文化もすべて奪うだろうと思う。


 個人的に言わせてもらえば、史実において武士は当主なりトップが責任を取る場合が多いが、朝廷、公家、寺社はほとんど責任を取っていない。主に室町末期から江戸初期までの歴史を紐解くと。


 そういう意味では、武士のほうがオレは共感出来る人たちだなと思うところがある。


 近衛さんや山科さんとか個人的な付き合いをして尊敬出来る人はいるが、だからといって彼らの権威と立場を無条件で守って後顧の憂いとするのかと言われると難しいんだよね。


 文化・伝統・歴史、これらは守る必要があるが、それを担う人をどこまで守って厚遇するのか。後の歴史でも見ないと評価することは難しいだろう。


 言い方は悪いが、失っても飢えるわけでも人々が生きていけなくなるわけでもない。それを踏まえて誰が負担をしていくのか。


 一概に言えないことが現実には多すぎる。


 ひとつだけ言えるのは、オレが久遠一馬として生きる間に一定の決着を付けないといけないということだけだ。これだけは心に決めている。


 実の子や孤児院の子たちばかりじゃない。学校の子たちのためにも、憂いはなるべく解消して次の世代に引き継がないと駄目だろう。


 楽しげな人々を見ていると、その覚悟だけは揺るぐことがあってはならない。


 あんまり思いつめても駄目だけどね。きちんと今から考えておこう。




Side:とある公家


 楽しげな賑わいに身を委ねておると、過ぎ去り日々も己の血筋もすべて忘れそうになる。いや、忘れたくなるというべきかの。


 食うてゆけず、京の都を出た日のことは今でも忘れられぬ。一時は公卿も武士も寺社も、世のすべてを恨んだことさえある。


 いつからであろうか。左様なことを考えぬようになったのは。駿河に下向してからであることは確かじゃが。


 京の都に戻らずともよい。駿河で骨を埋めてもと思うたこともあったの。


「ふむ、それをひとつもらえぬか?」


「はい、少々お待ちください」


 祭りということで白粉を塗り公家として振る舞うことも考えたが、共に参った公家の教師と共にいつもと同じようにすることに致した。


 特に理由はないが、この地に公家など不要であろうと思うたことと、公家としてあることでよそよそしくなるのを恐れた。


 ふと島の者が並んでおる物売りを見つけわしも並ぶ。しばし待つと自ら銭を払い、島の者が美味そうに食うておる料理を頂く。


「ほう、これは美味いの!」


 なんとも美味なるものじゃ。豪快に作っているものの、熱々で味は文句なしに美味い。


「大袈裟なお方だぁ」


「ほほほ、済まぬの。つい美味くての」


 この島に来た者の多くは、口を揃えたように同じことを言う。己は久遠と共に生きるのだと。先に訪れたという山科卿は腹を割って話したことがない故、知らぬがな。


 その心情が吾にも分かる。


 これほどの国を知れば、穢れきった朝廷や寺社が治める日ノ本に未練が残る者は少なかろう。民とて選ぶのだ。自ら従う武士を。同じように東国では皆が選びつつある。誰と共に生きるかということをな。


「よかったらこちらもいかがでございますか?」


「良いのか?」


「もちろんでございます」


 人の目を気にせず思う存分食うておると、近くの男から別の料理を頂く。


「これも美味いの。さすがは内匠頭殿の本領じゃ」


 差し出してくれた料理の借りは小さくない。ふと左様なことを思う。


 守りてやらねばなるまいな。この国が日ノ本に飲まれぬように。


 わしなどに出来ることは高が知れておる。されど……、いずこかで朽ち果て消えていく身だったのかもしれぬのだ。


 ひとりくらいは、主上を裏切ってもこの国を残すべく努めた公家がいてもよいのではあるまいか?


「畏れ多いご身分のお方でございましょう?」


 ふと、問われたことに苦笑いが出てしもうた。


「いや、尾張の学校で師を務めておるだけの身じゃよ。内匠頭殿には世話になっておっての。遠慮など無用じゃ」


「左様でございますか。では島の果実酒を一献」


 高徳な者に教えを請うのも悪うない。されど、市井の民に教えを請うのも悪うない。


 吾は共に生きることにするか。尾張とこの国と共にな。


 日ノ本を追われたら、この国で手習いでも教えて暮らすのもよかろうて。




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