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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄五年(1559年)

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第二千二百四十六話・子供たちの久遠諸島訪問と近江の山狩り・その六

Side:久遠一馬


 今回の同行者である子供たち、ほんと純粋に楽しんでくれている子たちが多くて、一緒にいて楽しい。


 無論、前回までの大人たちの同行者が不満だったわけではない。ただ、なんというか難しいことを考えないで楽しめるっていいなと改めて思った。


 昨日と今日は子供たちが島の暮らしを学ぶためにという名目で、農業や漁業を体験している。これは学校の子たちから要望があったことだ。


 今は恵比寿船の上で、漁業に参加するには早いくらいの幼い子たちと一緒に漁業をする子供たちと島の人たちを見守っている。


「子供って凄いね。見知らぬ土地に来て上手く付き合って友誼を深めるって難しいのに」


 ウチの立場とか力から考えると、丁重な扱いになるのは当然ではある。ただ、それでも本気で一緒に楽しんで相互理解しようとするのは、見ている以上に難しいことだ。


 子供たちは、それが出来ている。


「みんな、私たちに追い付き追い越したいと頑張っているのよ」


 うん、アーシャの言いたいことは理解する。そういう学問を教えたのはオレたちだ。


 でもね、追いつき追い越せ。追い越したらオレたちが上だ! と心の中で考えている人が尾張にも多かったはずなんだ。畿内の人は今でもそうだけど。


 ただ、子供たちは違う。一緒に頑張っていこう。そのために自分たちは学ぶんだと思ってくれている。追いつき追い越したら、今度は自分たちがウチを助けて教えるんだという夢を抱いている子だっている。


 人の心を動かす。難しいことだ。正直、出来過ぎだなと思う。


「獲れたぞ!!」


「こっちもだ!」


 おっ、双胴船で漁をする子供たちが続々と魚を獲ると賑やかになる。無論、手助けしている漁師たちが上手く教えて獲れるように導いているんだけど。


 こういう経験は貴重だ。家職が当然のこの時代だと、家職以外の職業を学ぶことすら難しい。まあ、尾張の学校でもやっているけどね。最初は抵抗があったらしく、あまり人気がなかった授業だ。


 いつの間にか、武芸とか学問と同じくらい受けてくれる子たちが増えた。


「なんとも見事なものじゃの」


「ほんに、吾も教えてほしいわ」


 ああ、見守っている恵比寿船も賑やかだなぁ。教師陣も楽しんでいる。ちなみに公家衆の教師も同行していたりする。


 彼らや寺社に所属する教師陣には、山科さんと同じように他言しないという誓いを求めて受け入れた者だけ同行を許可した。


 結果として教師陣は自主的に他言しないという誓紙を全員が提出してくれたんだ。公家衆を含めて一切の異論も交渉もなかったことには苦笑いが出たけど。


 公家衆に関しては、教師としての評価が高すぎて、彼らだけ同行を許さないと言えなかったんだよなぁ。


 授業内容も外に漏らさないという誓紙を交わしているが、きちんと守っている。そのうえで礼儀作法や公家に関連する常識などを教えてくれる、貴重な教師となっている。


 家伝を秘匿し守ることが当然の公家なだけに、秘匿は当然と受け取ったみたいなんだよね。




Side:六角義賢


 倅の四郎が大人しゅう学ぶようになった。


 己を過信しておった愚かな倅が謙虚さを身に付け、臣下に求める前に己の力不足を考えるようになっておる。


 それだけでも尾張に行かせた甲斐があったな。


 無論、まだまだ学ぶべきことは多いが……。


 ふと考え込んでおると、曙殿から紅茶を差し出された。


 周囲には未熟な倅と宿老らしかおらず、あとは曙殿ら四人だけだ。倅は曙殿らと本音で話す場にあえて同席させた。


「上手くいかぬな。差し出してきた賊の中に解死人がおった。半数ほどは本物の賊であると思われるが、数が足りず解死人を入れたところがあったわ。本物の賊を入れることで許してほしいというのが本音であろう」


「そんなものよ。本物を捕らえたところを褒めるべきね。あとは許しを請うなら、謝罪と賠償をさせましょう」


 やはり、ここらが落としどころか。


「ああ、要らないなら捨て置いてもいいわよ。寺社にしろ土豪にしろ村にしろ、己の力で生きればいい。出来ないなら滅ぶだけになるわ」


 その言葉に倅の顔が青くなった。織田は慈悲深いと言われておるが、実情はそこまで甘くはないからな。神宮のようなことがようあるのだ。ただ、他の場合はすぐに降伏して許しを請うので目立っておらぬが。


「四郎殿、なにか問いたいことがあるならば、遠慮なさらず言ってほしいわ。無知をさらすより、知る振りをするほうが愚かよ」


 左様な倅のことなどお見通しか。曙殿は自ら倅に声を掛けてくれた。


「……その甲賀との違いが気になってな。随分と助けたと聞き及ぶ故に」


「ああ、その件ね。それは難しいことじゃないわ。私たちと甲賀は縁があった。それだけよ。滝川、望月という両家との縁もあり、あの地は見捨てられなかった。もう少し言うと、あの一件の前から甲賀者は良く働いてくれていたこともあるわ。そこらの事情は六角家と大差ないことよ」


「確かに滝川家の忠義を思うと粗末には出来ぬか」


 そうなのだ。甲賀者は久遠家に恩義を感じてよく働いておった。故に三雲の一件が片付いたあと、所領を召し上げた際にも逆らうことはなかった。久遠を信じておったからな。


 今も甲賀衆は内匠頭殿を頼りとする者が多い。織田と六角が争えば、途端に内匠頭殿の所領となろう。


「うふふ、そうよ。四郎殿も身を以て知ったでしょう?」


「ああ、慶次郎殿の忠義は見事であった。あのような形で命を懸けて忠義を貫く男がいるなど思いもせなんだ。愚か者など捨て置いていいというのに……」


 愚かな倅をここまで改心させたのは今弁慶か。つくづく惜しい一族が出ていったものだ。


 その時、何故か笑うていた曙殿の顔がすっと険しくなった。


「四郎殿、ご自身でも他者でも同じだけど、軽々しく愚か者と断じるのはよくないわ」


 その様子に倅は驚くが、続く言葉にただただ感謝しかない。


 わしも愚か者と断じることはあるがな。ようないのは確かだ。


「誰にでもね、向き不向きはある。愚かと断じることではなく、その者が功を上げられる場を探してあげなさい。少なくとも我が殿はそれを常に考えているわ。それが貴殿の役目よ」


「……確と承ってございます」


 耳が痛いな。臣下が功を上げられる場を探して整えてやるなど、わしですらやれぬ。内匠頭殿と同じことなど出来ぬわ。とはいえ大事とするのは、その心構えだ。


 倅にそこまで教えて……、いや、今の言葉。わしに向けた言葉でもあるのか。倅を愚かだと断じて厳しくなりつつあるわしにな。


 倅を諭す形で、わしに苦言を呈しておったのだ。


 相も変わらず恐ろしき御仁だ。


 もっとも、これが出来る故、近江で三国同盟の要となっておると言える。わしを立てつつ、天下に睨みを利かせておる者の力量だ。


 わしはまだまだ及ばぬな。



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