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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄五年(1559年)

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第二千二百四十話・子供たちの久遠諸島訪問

Side:久遠一馬


 やはり速鰐はやわに船は速い。三日ほどで本領に到着した。史実でも最速の帆船だからな。


「うわぁ……」


 島の港に着くと、子供たちの驚きと喜びの声があちこちから聞こえる。


 子供たちが多いこともあって、ほんと修学旅行とか遠足みたいな雰囲気だ。ウチの家臣と孤児院の子たち、あとは学校に通う子たちが一緒なんだ。


「島に病のもとになるものを持ち込まぬために、検疫というものを受けるのですよ」


 すっかり案内役になっているお市ちゃんだが、学校に通っていることもあって帰省同行の皆勤賞は継続中だ。経験者として、学校の子たちや初参加の家臣たちに声を掛けるなどして船でも働いていた。


「ここが御本領か……」


「ありがたやありがたや」


 ふと声がするほうを見ると、お年寄りが手を合わせて拝んでいた。誰かというわけでなく、島に祈る感じだ。家中のお年寄りも連れて来たんだよね。一度は見てみたいと言う人も多かったし。


 ただ、子供たちが真似するから拝むのは止めてほしい。


「ちーち!」


 検疫を終えると島に滞在している子と再会だ。ナディとの子であるカメリアとかライラとの子であるシャラとか、ここで暮らしている子が何人かいるんだ。


 連れて来た子たちと再会して、大騒ぎで喜ぶ子たちを見るのはいいね。


「さあ、みんなを屋敷まで案内しましょうね」


 出迎えてくれたシェヘラザードに促されるようにみんなで屋敷まで歩いていく。学校の子たちや家臣の子たちはどうかなと様子を見ているけど、みんな緊張とか気を使い過ぎないでリラックスして島の景色を楽しんでいるのがいいね。


「鉄道馬車だ!」


「あれが本物の……」


 男の子たちが一際喜んだのは、島の中を走る鉄道馬車が見えた時だった。


 尾張の鉄道馬車も人気なんだよねぇ。目的があって鉄道馬車に乗るのではなく、鉄道馬車に乗るのが目的になっているんだ。


「オレの生まれた地なんて川に橋もないのに……」


「日ノ本だと尾張以外は、寺社だけだからな。立派なのは……」


 景色を楽しみ、日ノ本や尾張、それぞれの故郷との違いを噛みしめるようにする子供たちを連れ立って近くの屋敷に行く。


 港と近くの町は織田水軍がよく来ることから、日ノ本の人も珍しくない。蟹江と似たような建物や店もあって水軍向けの旅籠や店もある。ただ、そこから離れると異国情緒が徐々に増える。


 こういう生まれ育った地以外の景色を楽しめるのも、この時代では贅沢なことになるんだろう。


 連れてきた皆さんがどんな反応するか楽しみだなぁ。エルたちとも相談していろいろと考えているんだ。


「さあ、行こうか。島の中は、日を改めてゆっくり見せるから」


「はい!」


 政治的な役目がないと楽でいいな。みんなの思い出に残る滞在にしてあげよう。ここに旅行に来るなんて生涯に一度になる人だっているんだろうし。


 短い滞在だけど、いつまでも思い出として希望の欠片になるように。




Side:斯波義信


 尾張介のところで一馬らがおらぬ間のことを話す。一馬らも留守中に困らぬようにしておるが、まったく同じようにというわけにはいかぬからな。


「父上は今も人を信じておらぬのだな。さすがに驚いた」


 ついこぼれてしまった言葉に、尾張介が思案するような顔をした。


 皆が変わりゆく尾張を信じて励んでおるというのに、父上はあの頃……、かつての清洲城で軟禁されておった頃と変わっておられぬ。


「事実でございましょう。いつの日か、京の都や寺社が久遠から奪うというのは……。それをさせぬために我らは動いておりますれば。ただ、守護様は臣従した者らも信じておられませぬ。畿内や関東を見ると、それもまた当然のことと存じまする」


 尾張介もまた同じか。


「臣従を請われて許すというのも考えものだな。一馬がおらなくなれば、家中で争いを始めるのではあるまいか?」


 朝廷への信が失われつつある尾張において、朝廷に由来する権威は避けられつつある。それが氏素性と血縁に及ぶのも遠くないことなのかもしれぬの。


 実のところ今川と遠江衆に関しては、今でも家中の風当たりがいいわけではない。今川がよう働くことと一馬が今川を推したことで表立って異を唱える者はおらぬが。


 斯波家から奪った遠江を加えた二ヵ国待遇であること、わしの祖父を裏切った遠江衆が今川家中におること。尾張者からすると疑う理由には事欠かぬ。


「かもしれませぬ。されど今のところ代わる方策はなく、根切りにしても恨みが残りまする。さらに久遠に頼らぬ国にするには使える者は使うていかねばなりませぬ」


 尾張介の表情は渋いの。分かっていてもいかんともしようがないか。一馬に頼らざるを得ぬ己が力不足を許せぬのかもしれぬ。


「誰かが言うていたと聞き及ぶが、最早、日ノ本を捨てたほうがいいのではあるまいかと思えるな。外のほうが広いのであろう? 恨まれつつ変えてやり厚遇せねばならんとは」


 最初は戯言だったはずじゃ。日ノ本を捨てて久遠に従い生きるほうがいいのではとな。ただ、今ではまことにそう考える者が増えておる。


「若武衛様がそれを言えば、止められなくなりまする」


「分かっておる。そなた故に愚痴っただけじゃ」


 古き習わしに囚われず考える。これは久遠の教えじゃ。それ故、皆、考えてしもうた。誰に従い、誰と共に生きるか。


「久遠と共に生きるべく、日ノ本を統べる公儀をつくるしかありませぬ。我らの手で」


 強いの。尾張介は。己が家のためではない。久遠のため、久遠と共に生きるために世を変えてしまう気か。


 父上はいずれ織田に天下の差配を任せて降るおつもりだ。父上が間に合えばいいが、間に合わねば、それはわしの役目となる。


 尾張介にならば降っても上手くやっていけよう。


「うむ、左様であるな」


 誰にも言うておらぬのであろうな。唯一同じ場におる勝三郎が、尾張介の言葉に驚き信じられぬと言わんばかりの顔をしておる。尾張介にもっとも近い男であろうに。


 言えるはずもあるまい。久遠と共に生きるために日ノ本をまとめたいなどとな。


 


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