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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄五年(1559年)

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第二千二百二十八話・女たちの花火大会

Side:優子


 日暮れまでまだ時間があるというのに、十三湊の近辺は人で溢れているわね。


 もともと過疎地であるここは、見物出来るような平地も多くない。奥羽領ばかりか、遠くは越後あたりから来ている商人もいると聞いているほど人が集まっている。


「大宝寺と小野寺も名代を送って来たのね」


 今年は便宜上招待した、大宝寺と小野寺と最上の名代が花火見物に来ているわ。この中で斯波一門の最上は別扱いだけど、季代子は大宝寺と小野寺が名代を寄越したことは評価しているようね。


「臣従は望んでおらぬようでございますが、争う気はございませぬ故。いずこの家も同じでございましょうが、追い詰められねば動けませぬ」


 安東殿の言葉がすべてでしょうね。日本海航路を完全に掌握したことで越後の長尾であっても友好的な態度だというのに、彼ら程度だとなにも出来ないわ。


 ただ、争いもなく戦もないと臣従するきっかけがない。こちらから声を掛けるほどじゃないから放置しているのよね。飢饉もあるからこれ以上、食えない領地は重荷にしかならないし。


「まあ、いいわよ。しばらく捨て置いて。対等に付き合いたいなら対等に接してあげるわ」


「さすがに、左様な考えを持つほど愚かではあるまい」


 他家である以上対等に。そう語った季代子に浪岡殿があり得ないと笑った。これがこの地の人たちの感覚なのよね。


 そうしているうちに津軽三郡の代官である神戸殿が姿を見せた。


「お方様、雑炊の評判はようございまする」


 良かったわ。お腹を空かせたままだと花火も楽しめないものね。尾張と違い、集まる者たちもギリギリで来ている者が多いのよ。


「本当はもう少しお祭りらしい料理を配りたいんだけどね」


 武士や寺社の者には相応のもてなしをしてある。ただ、身分などない領民や旅人には雑穀がメインの雑炊しか配ることが出来なかった。


 味付けを味噌にすることが精いっぱいだったのよ。


「十分でございましょう。皆、喜んでおりまする」


 神戸殿はそう言ってくれるけど、思い出に残る日なのだから、なんとかしたかったんだけどね。今年の不作と来年の大規模な不作さえなければ……。


 実は、密かにシルバーンの力を使えばと検討もした。


 ただ、私たちはずっとこの地で生きるわけじゃない。やり過ぎると後任の者たちが困ることになる。それでなくても飢えさせないようにと差配したことで、久遠の力に奥羽の地が驚愕しているんだから。


「そうね、分け隔てなく配るようにして」


「はっ、畏まりましてございます」


 結局、船の輸送力の限界が私たちの限界になりつつある。花火みたいに小さくても影響が大きなものはメリットが大きいけど、食料のように物量が必要なものは、多少水増しして運んだとしてもやり過ぎてはいけないのよね。


 領民に対して出来ることは多くない。ただ、お腹を空かせないで花火を満喫してほしい。それだけはなんとしてもやってみせる!


 続けることこそ意義がある。京の都でも見られない花火を毎年見られる。その事実がこの地の人たちの力になりつつあるんだから。


 これだけは……。


 司令の元の世界でも、豊かさの恩恵がなかなか届かなかったこの奥羽の地。畿内や関東ばかり発展させるのではなく、地方に少しでも希望の芽を残したい。


 いえ、残して見せるわ。必ずね。




Side:慶光院清順


 津島の町の賑やかさを聞きつつ、己が立場の難しさを痛感しております。


 神宮の者たちは招かれていないのに、私は招かれてしまうとは。


 信濃代官殿には拒絶されたというのに、慶光院には前筆頭家老である平手殿や久遠家家臣の湊屋殿から寄進もあり誼が続いております。


 招かれた以上、拒むことは出来ませぬ。目通りを許された方々に神宮と仁科三社の一件を謝罪するだけ。結果が伴わずとも……。幾度でも……。


 ただ、そんな私のところに仁科三社から使者が参っております。


「何卒、清順様のお力で我らをお救いくださりますよう、伏してお願い申し上げまする」


 喧嘩両成敗として、仁科三社ともども沙汰なしのまま捨て置かれていた仁科家を、小笠原家が許して信濃を離れた。三社にとっては驚天動地の驚きだったのは理解します。されど……。


「仁科家と和睦をしたのでしょう? ひとまずそれでよしとしてはいかがでございましょう」


「あれを和睦などとは詭弁でございます」


「仁科は信濃を離れたのでしょう? いつまでも世話をする義理はないはず。それは織田領内の多くであること。三社だけではありません」


 和睦をして遺恨なしと世に示しつつ、すでに信濃を離れた身故、世話は出来ぬ。武士らしいといえば、そうなのでしょう。武士は己が家と所領を守る者、所領の代官と三社を捨てて家を守ったのです。仁科は。


 ただ、使者は私の言葉に不満げな顔を僅かに見せました。この者もまた、私を女の身故、侮り、軽んじているのでしょう。謝罪行脚をしている私ならば、三社のことも赦されるように動くと思っていたというところでしょうか。


 皮肉なことですが、神宮や三社よりも尾張のほうが私を対等に扱ってくれる。女と侮らず見下さず。


「代官殿の面目を潰した償いは致しましたか? 仁科は所領を捨てて信濃を離れました。それは仁科にとっても苦渋の決断だったはず。貴殿らはなにをしましたか?」


 命を以て償えとは言いません。されど、俸禄の多くを返上するくらいは出来るでしょう。訪れる者もいなくなった寺社には無用と思えるほど俸禄が与えられていること、私が知らないとでも思っているのでしょうか?


 神宮もそう。放っておいても織田から得られる銭で己らは困らぬ。いずれ和睦する時がくる。左様な甘い考えでのうのうと生きている。


 はっきり言わねば伝わらないのでしょうか? この者らも神宮も由緒ある寺社を営むには相応しくない者ばかりだと。


 神仏に祈りを捧げ、朝廷を祖とした日ノ本の安寧のために生きていないのです。


 それでも神宮は残さねばならぬと思い、私は謝罪をしていますが……。


「まずは自ら出来ることをしなさい」


 代官殿も斯波殿も織田殿も、なんと慈悲深いのでしょうか。かような者たちに銭を与え続けるとは。立場が逆になったとしたら、かの者らは皆、斯波と織田を見捨てるというのに。


 使者が下がると、あまりの情けなさに涙が出そうになります。


 何故、斯波と織田の情けが分からないのでしょう。


 何故、自ら赦されるようにと動かないのでしょう。


 何故……。




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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
間違えたら反省して、自ら改善して、アップデートするということができないと生き残れない。これは現代も同じ。自浄作用がない組織は滅びて行く。
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