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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄五年(1559年)

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第二千二百二十七話・祭りの最中で

Side:足利晴氏


 祭りの賑わいが聞こえてくる。


 関東どころか、畿内、京の都すら捨て置き、己が国をこれほど豊かにするとはな。


「父上……?」


「いかがされましたか?」


 関東より呼んだ三男と四男が、わしを見て戸惑う顔をした。ひとりで笑みをこぼしておったらしい。


 わしの心情を察することも出来ぬうえ、この国に来て花火を見ても理解せぬとはの。情けない限りじゃ。


 本当は一番上の倅にも声を掛けたのじゃがの。あやつめ、古河公方の地位を諦めきれぬと見える。わしが手を差し伸べてやったものを理解もせずに。


「そなたらは少し人の心情を察しろ。上様など臣下の心情すら見抜いておられるぞ」


 まあ、よい。上のふたりが駄目でも、こやつらのいずれかは残ろう。愚かではあるが、分不相応の野心を持つわけでもない故にな。


「祭りを前に心浮かれるは当然であろう? ここは良き国じゃ。毒を盛るような者もおらぬ故に温かい飯が食える」


 要らぬことを考えておるであろう倅らに、偽りの理由を説いて大人しくさせる。祭りが楽しみなのは事実じゃが、わしが面白いのはこの国そのものに対してじゃからの。されど、それは言えぬ。


 近江に来て思い知らされたのじゃ。北条を恨んだところで何ひとつままならぬのは同じじゃと。他の関東諸将も上杉も、もう少し言えば、家臣らとて北条と大差ない。


 己の私利私欲と面目ばかり並べて、わしを軽んじた者たちが、斯波と織田に敵わぬまま面目を捨てられず潰れていくかと思うと、楽しみで仕方ないのじゃ。


 まあ、それを察して動こうとしておる者もなくはないが……。北条も含めてまとめて潰れてくれたほうが面白いわ。


 もっとやれ! 分不相応な面目を持つ関東など潰してしまえ! と煽ってやりたくなる。


「そなたらは関東など忘れて上様の下で励むのじゃ。よいな」


 こやつらはいずれ理解しよう。さっさと関東から出たわしが正しかったと。連れ出したことに感謝する日が必ずくる。


 少なくとも上様と尾張が健在なうちは揺るがぬ。あんな蟲毒のような地におれば、皆、穢れて毒まみれになってしまうわ。


 愚かな倅らじゃが、野心を抱かねば捨てられまい。相応に使ってくれるはずじゃ。




Side:北畠晴具


 まだ日が高く。花火まで時がある。上様は気分が優れぬと今日は夜までなにもない。せっかくの祭り故、皆に町に出て祭りを楽しんで来いと命じ送り出された。


 慣例もなにもあったものではないが、最早、上様がなさることが新たな慣例となりつつある。


 夕刻には治る病だ。なんとも都合がいい病だが、最早、異を唱える者などおらぬ。


 そんな折、上様からお呼びがあった。


「済まぬな、唐突に。少し相手をしてくれ」


「はっ、畏まりましてございます」


「少し話そうと思うてな」


 同席しておるのは慶寿院様と塚原殿のみ。なんとも奇妙な場よ。とはいえ、久遠絵札の遊びは学校で幾度もしたことがある。


 確かに数人で話しながら遊ぶにはちょうどよいか。


「もっと早くにするべきであったな。北畠との和解は」


「難しゅうございました。我らとて、尾張がなくば……」


 南北朝で争うておった祖先は、今の我らをいかな顔をしてみ見ておろうな。同じ卓を囲み遊戯に興じるとは。


「オレなど尾張がなくば、今でも畿内で三好と戦をしておろう。勝っても負けても年月を費やし得るものは荒れた世だけだ」


 確かに。言いたきことは理解する。足利と北畠の縁組は、それだけ多くの者に驚きと戸惑いを与えたからな。


 戦でなすべき武功では得られぬほどのものであろう。


「このまま朝廷も上手く進むと良いのだが……、いつまでも近衛殿下頼りでは困る」


「難しゅうございましょう。叡山や五山は、今のままでは降らぬと思いまする」


 帝と院は恐らく望まれる。されど、朝廷は公卿公家や寺社など厄介なものが付いて回る。とはいえ壊してしまえば困るのは、そのあとだ。誰も代わりたい者などおらぬからな。


「寺社か、あれは今のまま残しておけぬ。一馬が生きておる間に丸裸にしてしまわねば。一馬らも考えておろうが、難しいならばオレの名で潰してもいい。将軍として穢れきった寺社を冥府へ送ってくれるわ」


「上様、それは早計でございまする」


 思わぬ言葉に驚かされるが、さすがに塚原殿が止めに入った。余人がおらぬとはいえ、あまりに危うい言葉だ。安堵したわ。


「おっと、言い過ぎたか? すまぬな」


「某が口を挟むなどおこがましゅうございますが、寺社など内情に問わずあればいいと思う程度でお考えいただければと思いまする。潰したところで、同じように神仏の名を騙り人を惑わす者が現れまする。ならば確と手綱を握ることをお考えいただいたほうがよろしいかと」


 塚原殿の言葉に上様は苦笑いを浮かべられたが、それを見た塚原殿がさらにとんでもないことを言い出すと慶寿院様が面白げに笑われた。


 わしと同じく出家した身ながら、神仏への信仰も寺社への敬意もまるでないように聞こえるわ。実際、あまり信じておらぬのはわしも同じ故、人のことは言えぬが。


「フフフ……、塚原殿には政をしていただいたほうがいいかもしれませんね」


「確かに」


 慶寿院様の戯言のような言葉にわしも同意する。この御仁は、まさか、ずっとすべてを知りつつ動いていたのではあるまいな?


 織田と北畠を繋ぎ、さらに上様とも繋いだ。足利家と北畠の縁組もこの御仁が導いたのか? 内匠頭とは違うが、恐ろしきことぞ。


 さすがにあり得ぬ……と思いたいわ。


「師よ。寺社が本分に戻ることはないというのか?」


 上様も今の言葉には驚かれたらしい。


「戻る者もおりましょう。されど権威ある者、名のある者、また高僧などと崇められた者は、必ず人が頭を下げて当然と思いまする。いずれの宗派も本分だけで生きるなど無理でございましょう」


 なるほど。人を良く知るという意味では、この御仁は抜きん出ておるわ。確かに人には無理なことだ。


 人を良く知り、相手を見極める力もある。さらに久遠に教わった知恵もある。もう少し若ければ、まことに政をさせたいところだ。


「一馬はそれを知って動いておるか」


「御意、いかな形にするのかまでは某にも分かりませぬが。故に徐々に力を削がねばなりませぬ。徐々にゆるりと」


 出された茶を飲んだ塚原殿は、穏やかな顔をしておる。まるで仏のようにな。


 やはり、世を変えるには今しかない。ひとりやふたりでは駄目なのだ。多くの力ある者がおる今しかない。


 塚原殿を見てそれを確信した。




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