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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄五年(1559年)

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第二千二百十四話・忍び寄る飢饉

Side:季代子


 今年も奥羽では花火を打ち上げているわ。八戸は熱田祭りと同じ日にすでに打ち上げていて、次は津島と同じ日に十三湊での花火よ。もっとも尾張は順延したので、こちらが先に花火を打ち上げちゃったけどね。


「稲の実りが厳しくなりそうでございます」


 そんな中、とうとう私のところまで報告が上がってきた。冷夏、長雨などによる稲の生育不良が目に見える形となって現れ始めた。


 史実の記録もあったし賦役や作物の転換などもしていて対策をしていたので、飢えるほどじゃないけど。


「申し訳ないけど、奥羽北部の稲作は厳しいのよね」


 対寒冷地用の稲の作付けもまだやれていないしね。ただ、稗の作付けは私たちが来る前より大幅に増やした。その成果は出ているわ。


 津軽三郡などは米を大きく減らしてほとんど稗にした。さらに米が作れなかった土地であっても、稗ならば作れそうなところではダメ元で植えてそれなりに成果が出つつある。


「季代子、領外への米や雑穀の流通を止められない?」


 ただ、技能型の優子は現状でも不安があると見ているか。


「ひとまず、許可制にしましょう。勝手な他領への持ち出しは禁じます」


 正直、そこまで領外に米が売られているわけじゃない。基本は当地で地産地消しているのよね。奥羽領の場合、むしろ奥羽領内にある寺社が大量に買うことが多い。米を食べてお酒を造って飲む分でしょうね。


 その寺社だけど、だいぶ降ったわ。まだ細かい処遇や今後に反発して意地を張っているところはあるけど。


 申し訳ないけど、飢饉となると交渉中の彼らに与える食料はない。


「冬が来る前に少しでも大蝦夷と蝦夷から食糧を運びましょうか。焼け石に水だと思うけど」


 シルバーンの計算では奥羽領はなんとか食べていける。由利十二頭の残りが降っても。ただ、この計算には葛西や伊達などは入っていない。不確定要素が多すぎるのよね。あちらは。




Side:鳥屋尾満栄


 内匠頭殿の奥方衆が来たことで南伊勢は大きく変わりつつある。


 織田の文官衆も大きな助けとなっていたが、有無を言わさぬ力がなくばごねる者がおるのも事実。


 まあ、ちょうど神宮が騒ぎを起こしたことも変わりつつある理由であろうがな。織田は神宮といえども突き放すのだと示したことで、誰もが恐れおののいた。


 穢れも恐れず身重の者を救う織田であっても道理に合わぬとみると引かぬ。それは、まさに武士の強さとみて間違いあるまい。


 もっとも、所領を失うても家や寺社が絶えるわけではない。尾張ではむしろ栄えておる。その様子をみると、頃合いなのだろうと誰もが察した。


 仏の弾正忠とて、幾度も慈悲を与えて下されるのか分からぬのだ。先年の宮川の大水の際に御所様に放逐された者たちの末路は他人事ではないからな。


 わしは今、その宮川に来ておる。内匠頭殿の奥方であるミョル殿と共にな。宮川の堤の再建と今後を検分するためだ。


「そうね、ここをもう少し広げましょうか」


「やはり、そのほうがようございますか」


「ええ、やって無駄になることじゃないわ」


 賦役に携わる者らに自ら声を掛け、意見を求める。その上申された話をその場で決めるだけの知恵も持ち合わせている。名を成しておらぬ奥方でさえ、この程度は造作もないことだとはな。


「石見守殿、御所様に上申をお願い致します」


「心得た。費えは、多少増えるがなんとかなろうな」


「ええ、皆よくやっているわ」


 この宮川の賦役で南伊勢の者たちは理解しつつある。一致結束することこそ豊かな国をつくる第一歩なのだと。


 あまり評判とならぬようにと随分と気を使っていただいておるが、それでも時折現場に訪れては助言を頂くのだ。当地の者や高徳な僧ですら、その助言を聞いて理に適うと納得する。


 わしが一番驚いたのは、いくら川筋を整え堤を高くしても大水は起こりうることだと言われることだ。


 民が大水から逃げて、その後暮らしてゆけるように時を稼ぐためでよいと言われるのだ。驚くなというほうが無理であろう。


「田丸の御所もあるしね。ここらがもう少し落ち着くと栄えるわよ」


 古より神宮の湊と言われた大湊と門前町である宇治山田。これが今では北畠の湊、北畠の町となりつつある。大御所様の頃より北畠はここらを制して配下に収めんとしていたが、今では町衆が進んで北畠に従う。


 誰もが夢を見ておるのだ。尾張のように豊かになれるかもしれぬと。申し訳ないが、神宮に従うて豊かにはなれぬと民ですら見切りを付けつつある。


 神仏への祈りであっても己の暮らしがあってこそ。祈るならば仏の弾正忠様がよかろう。民すら救いを下さる。そう噂されるのだ。


 そろそろ神宮も折れてくれればよいのだがな。信仰を失うてしまうぞ。




Side:久遠一馬


 花火の延期はいろいろと得るものがあった。


 織田家としても延期した場合の対処を検討してはいたが、末端までそれを周知してどうするか決めていたわけじゃない。


 そういう意味では、末端や商人組合はそれぞれ独自の判断で動いていた。


 今後は末端までの周知と、商人組合などの外部組織との意思疎通がさらに必要となるだろう。上手くいったからこそ、きちんと今後に備えたい。


 まあ、奉行衆とか近江から来た人たちは商人から動いて一致結束する様子に驚いていたけどね。結果論ではあるが、尾張の結束と人々の様子を足利政権中枢の者たちに示せた事実は大きい。


 もうオレたちが変えているだけの国じゃないんだ。みんなで変えているのが尾張になる。そんな国を見てくれたのは良かった。


 みんな分からないんだ。どうしたら平和な国になるのか。それを見せることも尾張の役目になりつつある。


「やはり今年は冷夏になっているわ」


 アーシャの報告に資清さんたちの表情も曇る。学校では天気と気温の記録を数年前からしているが、今年は夏場だというのに暑くない日が多い。


 庭とか牧場の野菜も生育がいまいちなものがある。子供たちもがっかりしているんだよね。きっと領民はもっとがっかりして不安になっているだろう。


「稲の収量は落ちるか」


「ええ、それは確実に」


 飛騨、信濃、甲斐、ここらはそこまで余裕があるわけじゃない。甲斐なんて毎年のように飢饉が起きている国だ。


 甲斐では、米を減らして粟や稗や大豆を増やす。いろいろと試行錯誤しているけど。なんで米を減らすんだという抵抗も大きいと報告にある。


 みんなで飢えないようにするより、自分の収入を上げたい人が一定数いる。


 一揆のように地域の代官がいる城に押し掛けてきたりした者たちもいて、甲斐代官である武田晴信さんの判断で厳罰に処したことすらある。


 史実と同じように関東が揺れると、甲斐は少し苦労するかもしれない。信濃も同じはずだったんだけどね。仁科騒動でだいぶまとまった。


「分かった。報告はオレから上げておくよ」


 対策もしてあるし、友好関係にあるところには飢饉対策をするようにと警告もした。ただ、どうなるのかはやってみないと分からないところがある。


 史実のように関東は飢饉だからと略奪と戦に傾くのかな? 結局、身分ある者だけが面目を保ち助かるなんて個人的にあんまり好きじゃないんだけどね。


 さてはて、どうなることやら。





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