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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄五年(1559年)

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第二千百九十八話・花火を前に

Side:足利義輝


 東海道を進み、伊勢の平野に差し掛かると安堵する。


 つい先日まで尾張におったのだがな。近江に戻り、将軍として再び尾張へ行く。此度は母上と共にな。熱田と津島で花火見物をするためだ。


 休息にと立ち寄った村にて、昼餉となる。握り飯と味噌汁だ。昼は質素で構わんからな。あれこれと要らぬ手間をかけるなど無駄だ。


「うむ、美味いな」


 味噌汁を一口飲むと、いつもと変わらぬ味に一息つく。


 東海道は尾張に向かう者らが多い。村にも仰々しい出迎えや歓迎は不要と予め命じており、道中も無頼の輩を近づけることは出来ぬが、通行を大きく妨げぬように命じておる。


 それもあってか、今も村から出立して先を急ぐ者がそれなりにおる。


「四郎、いかがだ? 旅はよかろう」


 ふと、目に留まった者、管領代の倅に声を掛ける。


「はっ!」


 まだ、固いな。されど、共に飯を食っておる春らに目を向けると、その様子に不満があるようには見えぬな。今は、これでよいというのか?


 管領代と春に頼まれ供として連れてきたのだが……、四郎と話すのは無理だな。


「警護衆、なかなかよいものだな。春」


「ええ、皆様がよう励んでおりますから」


 今までも詰衆番衆や走衆がおったが、それらを廃し望む者は警護衆とした。詰衆番衆は奉公衆が潰れて以降、父上が苦心しつつ形としておったのだがな。最早、古き形のままではいかんともならぬ。


 僅かながら警護衆となることを望まず、一族の下に戻った者もおるがな。そもそも詰衆番衆や走衆にしても共に朽木まで供をした者もおれば、畿内でそれを名乗り勝手をしておった者もおる。


 前者はともかく後者は厚遇するなどありえぬ。


 無論、異を唱えた者もおるが、近江に御所を造営すると知ると閉口した。管領は若狭の地にあり、三国同盟が今のオレを支えておる。そこに逆らってまで意地を通す者はおらなんだ。


「そろそろ行くか」


「ははっ!」


 飯を食い終わると、急ぎの旅の者らがおらなくなった。母上の輿などあるからな。行列は遅い。オレたちが進んでおると、先を急ぐ者が行列を越して行けず困るからな。待っておったのだ。


 とはいえ、こちらも夜までにはもう少し進みたいからな。急がねば。




Side:久遠一馬


 今日は義統さん、信秀さんたちとお茶会の日だ。義信君、信長さんもいる。斯波、織田、久遠で意見交換をしつつ話すための場になる。


 特に喫緊の懸案があるわけではないが、暇を見つけて一緒に話す時間は設けているんだ。


「花火が近くなると人が増えるの」


 初夏の日差しは強い。今日は日傘の下でのお茶会だが、義統さんは遠く西の空を見つめていた。


 公式、非公式、身分や立場を問わず訪れる人が多い。名のある人、身分のある人もお忍びで訪れている。領外にある寺社の関係者なんかはお忍びで来る人も割と多い。


 堂々と来て、毎年楽しんでいる人たちもいるけど。雑賀衆とかは特にそうだ。あそこは傭兵業みたいなことしていて、報酬で得た所領が尾張にあったんだよね。統治法が変わった現在、俸禄に変えて支給しているけど、尾張から品物を買ったり花火見物の滞在費にしたりしている。


 昔から少量だが硝石も売っていたこともあって、もとから関係は悪くないんだ。


「上様ももうじきご到着なされる。ゆるりとしておれぬな」


 義統さんもそうだが、信秀さんも忙しくなる季節だからなぁ。実務は信長さんに任せつつあるが、どうしても対外的な挨拶とかは受ける必要がある。


 上様、義輝さんに関しては話し合いの末に斯波家で招く形をとっている。これ、ジュリアから指摘されたんだよね。義輝さんが菊丸として尾張にいるのがバレるのを恐れるあまり、将軍との交流が少ないんじゃないかって。


 六角と北畠とも相談して、義輝さんと公式な交流を増やすことにした。


 義輝さんは少し渋い顔をしていたけどね。尾張にいる時くらいは菊丸でいたいようなんだ。ただ、現状で三国同盟と将軍家の関係が重要なのは誰よりも理解している。


「今回、管領代殿の嫡男。四郎殿が同行しています。管領代殿からは世を見せたいと頼まれまして……」


 それと四郎義弼君。史実の六角義治なんだが、義賢さんが悩んでいて春たちが相談をされた。いろいろ助言したりした結果、尾張をしっかりと見せることにしたんだ。


 義弼君、尾張来訪自体は上皇陛下の御幸された時に義賢さんのお供として来ているが、当時はまだ元服前の子供だったこともあり公式の場には出ておらず、海水浴で姿を見たくらいだ。


 ちょうど義輝さんの尾張訪問の話があって、六角家からは彼と宿老などが同行している。言い方がよくないかもしれないが義輝さんのお供なら目立たないし、やんちゃな性格だとしてもおかしなことしないだろうしね。


 今回は大人として扱われるし、なにか学んでくれるといいんだけど。


「ふふふ、よいではないか。三郎もそなたが来る前は勝手をしておった。若いのだ。少しくらい勝手をするくらいでよい」


「親父、オレの話を持ち出さんでも……」


 思わず笑ってしまった。義信君は抑えているが、義統さんも同席しているエルとシンディも笑っている。そういや、信秀さん。やんちゃな若い子が嫌いじゃないんだよね。信長さんは戸惑い、少し恥ずかしそうにしているが。


 オレたちの行動も、最初はそんな形で受け止めていたと後から知った。


「大殿とお会いになるほうが、四郎殿にはいいかもしれません」


「そうですわ。此度はいい機会かと」


 少し笑いながら語るエルとシンディも何気に酷いな。今の信秀さんに十代の子が敵うわけがないのに。オレたちが持ち込んだ価値観とか知恵を学んでいる。信秀さんと互角に渡り合うのは、権威も力もある人じゃないと無理だろう。


 義賢さんはかなり悩んでいたと聞いているが、尾張だとそこまで深刻に受け止めてないんだよなぁ。


 環境と教育、経験する場を与えると、よほどおかしな人以外は相応に成長する。


 この時代だと器とか才覚とか気にするけど、元の世界だと教育と経験とかそっちを重視するしね。織田家では新参者や新しく元服した子たちは育てていこうという形になっている。


 正直、オレが恐れていたのは義賢さんがひとりで悩み追い詰められることだ。そういう意味では春たちを頼ってくれてホッとしている。打ち明けてくれないとこちらも動けないからなぁ。


 しかし、三国同盟。外から見た形と実情も違うし、この時代の価値観とも微妙に違うのに思った以上に上手くいっている。


 管領代として足利家を支える六角と、南朝大将軍の末裔の北畠、新しい形で急速に拡大する斯波と織田。驚くほどバランスがいい。


 生き残る。世の中を落ち着かせたい。そんな人々の思いが詰まっているからだと思うが。


 一番、離脱する可能性があった六角が腹を割って付き合ってくれるなら、この同盟が新時代を迎える鍵になるのかもしれない。


 義賢さん、後の世でどう評価されるんだろう? ふとそんなことが気になった。





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