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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄五年(1559年)

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第二千百九十五話・次なる動きに向けて

side:シンシア


 ミョル、やよい、カリナと共に南伊勢の田丸御所にやって来た。


 御所と称しているけど、割とどこにでもある平山城だわ。


 城下に町があるわけでもない。肝心の御所を今改築している最中になる。本来なら来るべきじゃないんでしょうね。


 ただ、御所やら城下を整備して、私たちの受け入れ体制が整うのを待っていると改革が遅れてしまう。


 時間も惜しいのですぐに亜相様の下を訪ねると、喜んで迎えてくれたわ。


「よう来た。城下に屋敷を与えたいが、まだそこまで手が回っておらぬ。城内の離れを使ってくれ。案内しよう」


「ありがとうございます」


 もともと北畠一族の城だったし、城内にはそれなりに広い離れもあるわ。これ、以前は一族の前当主とか正室が使っていたところでしょうね。


 私たちは城の外のほうが気楽でいいんだけど、万が一を考えると防備の整った城にいるのが一番。近くの神宮とは未だに上手くいっていないこともあるわ。


 無論、神宮が私たちを狙うとは思わない。ただ、ここで私たちが狙われると北畠と尾張の関係が悪化するし、神宮が犯人と思わせることで神宮の権威にとどめを刺すことも出来なくはない。


 まあ、無理よね。


「改築なりなんなり、好きに使うてくれ」


「亜相様、シンディたちが戻ったあとはいかがでございますか?」


 一通り案内をしていただいたついでに、今後のことを話しましょうか。


「皆、必死に励んでおるが……な」


 家臣たちの働きを認めてはいるが、不満もありそうね。さらに北畠には、伊賀と大和で従う者たちがいる。彼らを要らないとは言えないのよね。伊賀は公方様直轄にすることで話が進んでいるけど、それまでは北畠で面倒を見る必要がある。


 ひとまず北畠の直轄領と、積極的に従う者たちを中心に進めているけど。


「臣下の者が意思疎通をする場については、いかがでございますか?」


「それなりというところであろう」


 北畠家中の意思疎通が足りない件について、シンディたちが形を整えるように提言して始めてはいる。ただし、家柄や身分、年齢などで腹を割って話せていないのが現状のようね。


 ただ、思ったより上手くいっていることもある。まず、長年対立していた長野家との関係。所領を半分俸禄にした影響が良くも悪くもある。


 北畠と織田で織田農園として重点的に開発したこともあり、中伊勢の北畠直轄領ばかりか長野領もかつてよりは状況がいい。


 家中の序列や派閥争いなど、いろいろとあるけど、隣に強大な織田がいることで争うまではしない形でなんとかやっているのよね。


「私たちは、すぐには口を出しません。しばらく領内を見聞する許しが欲しゅうございます」


「よかろう。すべて任せる」


 事前に必要な情報は得ている。ただし到着早々口を出すほど、私たちの存在は北畠家中で知られていないのよね。


 まずは人間関係の構築からね。頑張りましょうか!




Side:久遠一馬


 オレは今日、清洲の太原雪斎さんの屋敷を訪ねている。遠江のことを少し聞きたくてね。


「ほう、天竜川に目を付けられましたか。あそこは遠江では大天竜と小天竜のふたつが大きな川でしてな。よう氾濫をしておりまする。あの川を今少し鎮めて使えるようにすれば、信濃遠江は大きく変わることでしょう」


「やはり、そうですか」


 信濃訪問の話をしつつ、遠江の事情を聞く。雪斎さんも天竜川の治水を考えたことがあるのかもしれない。そんな様子に見える。


 現在、遠江代官は織田信広さんだが、遠江衆は今も今川家家臣だ。やるとすると今川との調整もいる。大規模賦役に関しては織田家の専権事項なので許可がいるわけではないが、地域や地元の勢力との話し合いは事前にしているんだ。


 少し考え込んでいると、ふと雪斎さんが優しい笑みを浮かべた。


「実は、拙僧も織田の賦役を聞き及んだあと、同じことを出来ぬかと思案したことがございます。皆で働き、飢えぬようにしつつ領内を整える。知れば知るほど見事なこと。外と争わず領内で豊かになっていければ……、そう思いましてな」


 その話は初耳だな。


「されど、出来ませなんだ。織田の真似をするなどあり得ぬと騒ぐ者も多く、民に飯や銭を与えて働かせるのを恥だと言う者もおりましてな」


 まあ、そうだろうね。内需拡大と領内統治の改革は、検討しても今川だと難しかっただろう。


 織田家でも、今川を力あるまま臣従を許すことには根強い反対があった。きちんと向き合っても理解してもらうのには苦労をした。突き詰めると感情論で反対していた人も多かったし。


 織田家と他所の勢力の違いはそこだろう。新しい治世や方法を聞いても真似出来ないんだ。既得権と権威が雁字搦めで絡みついて。


 その後も雪斎さんからはいろいろと参考になる話を聞いて屋敷を後にした。


「明日は我が身だね」


「ええ、そう思います」


 言葉少なく声を掛けたものの、エルはオレの言いたいことを察してくれたらしい。


 なにを変えてなにを変えないのか。選ぶ方も大変だが、従うほうも大変だ。今の織田家は変わることで上手くいっている。ただし、この流れがいつまで続くのか。


 統治機構として安定して落ち着いていくと、また違ったフェイズに入るだろう。オレたちがやったことが将来の人にとって重荷になるかもしれない。雪斎さんとの会話でそれを痛感した。


「身の退き方、終わらせ方も考えていかないとなぁ」


 曲がりなりにも政治に携わり十年。その上にある今の影響力と今後を見据えると、今からきちんと考えて動かないと駄目だろう。


 信秀さんと義統さんとも話しておかないとなぁ。史実の神君家康公のように崇め奉られて後世の改革の妨げになるなんて、目も当てられない。


「ですが……、今は信頼を集め、心の拠り所になる存在として私たちは必要です」


「それもあるね」


 この時代の人は優秀だ。生死が常に日常にあるからか、それとも厳しい生存競争があるからか分からないけどね。


 彼らが前を向けるように導き手となる者はまだ必要なんだ。


 ジレンマだね。上手くいけば行くほど、オレたちは名を残して消そうとしても消えないほど世の中に影響を与える。


「まずは、飢えないようにするのが先か」


 あまり考えすぎても駄目だね。まずは天竜川の件だ。関係各位に相談しつつ具体的な検討に入ろう。


 水害はなるべくなくしたいし、河川は有効活用しないと。




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